ちか)” の例文
今度の布告で見ると、諸藩の藩主または重職らが勤王をちかい帰順の意を総督にいたすべき場所として指定された場所も、また本陣である。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
後に白石長忠は『社盟算譜』を作ったが、これもまた神社の前にちかったところの算題集ということであり、『神壁算法』というのと同じい。
芸術と数学及び科学 (新字新仮名) / 三上義夫(著)
今夜吾人は香炉の前に拝跪はいきし、吾人の心神を清浄にし、而て吾人の指を刺し、吾人の血を混じ、これをすすりて同生同死をちかう。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
太子は從者に運ばせた牡豚を殺して父にちかはしめ、太子としての己の位置を保證させ、さて揮良夫こんりやうふの如き奸臣はたちどころに誅すべしと迫る。
盈虚 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
もちろんこの人々の胸にもつちかいは水戸という一国土だったが、その国土をかたちとして一身にもつ主君として、老公を神のつぎに崇敬していた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
劒岳の絶巓! 私は此絶巓に三度幸福なる足跡を印するの日が遠からざらんことを心にちかった、それに何の不思議があろう。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
入居の当初、お互いに理想的同居人たるべく努力しようとちかい合ったことなど、もはや夢の中の出来事のようです。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
なんだって、僕の為に三千代を周旋しようとちかったのだ。今日こんにちの様な事を引き起す位なら、何故なぜあの時、ふんと云ったなり放って置いてくれなかったのだ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
されど剛愎ごうふく我慢なるそのさがとして今かくとりこはずかしめを受け、賤婦せんぷの虐迫に屈従して城下のちかいを潔しとせず、断然華族の位置を守りてお丹の要求をしりぞけたるなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自らをもって両志士の生命を保護しようとちかい、そこに必死の猛運動が起されたことはいうまでもない。
こんな遺恨から、今度の軍評定の席でも、両々相争ったわけだが、非戦論者ついに敗れたので、馬場等は、大道寺山の泉を、馬柄杓で汲みかわし、決死をちかった。
長篠合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父は痰を病んでから、いつのまにか何かの神にぐわんを掛けて好きなものを断つことをちかつた。ただ、酒も飲まず煙草たばこも吸はぬ父は、つひに納豆なつとうを食ふことをめた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
慨世のなげき、憂国の涙、二人あいして、泫然げんぜんとして泣きしが、すなわち酒をみてともちかい、死を以て自ら誓い、済南せいなんはしりてこれを守りぬ。景隆ははしりて済南にりぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
漢高祖白馬を斬りてちかいし事『史記』に見ゆ。古インドにも、白馬を牲するは王者に限りしと記憶す。
善は急げと支度したくして、「見事金眸が首取らでは、再び主家しゅうかには帰るまじ」ト、殊勝けなげにも言葉をちかひ文角牡丹にわかれを告げ、行衛定めぬ草枕、われから野良犬のらいぬむれに入りぬ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
乙酉きのととり、天皇皇后及び草壁皇子尊くさかべのみこのみこと大津皇子おほつのみこ高市皇子たけちのみこ河島皇子かはしまのみこ忍壁皇子おさかべのみこ芝基皇子しきのみこみことのりしてのたまはく、れ今日なんぢ等とともおほばちかひて、千歳の後に事無からむとほりす。奈之何いかに
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
されば斉桓公せいかんこう鄭伯ていはくと会して武父ぶほちかい、旧盟のそうを伐つや、左伝にはこれを評して
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
エドウィンとモルカー、マーシアおよびノーザンブリアはくれにちかひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
呉起ごきおのれそしりしもの三十餘人よにんころして、ひがしゑい(六五)郭門くわくもんで、其母そのははわかる。((己ノ))ひぢんでちかつていはく、「卿相けいしやうらずんば、ゑいらじ」と。つひ曾子そうしつかふ。
ありしは何時いつの七せき、なにとちかひて比翼ひよくとり片羽かたはをうらみ、無常むじようかぜ連理れんりゑだいきどほりつ、此處こヽ閑窓かんさうのうち机上きじやう香爐かうろえぬけふりのぬしはとへば、こたへはぽろり襦袢じゆばんそでつゆきて
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれはこの時はじめて詩人になろうとちかって、おれはこれから詩人になるのだと叫んでみて、その声を自分自身に言い聞かせた。そうして既に詩人となったつもりで詩を書こうというのである。
三一八海にちかひ山にちかひし事をはやくわすれ給ふとも、三一九さるべきえにしのあれば又もあひ見奉るものを、三二〇あだし人のいふことをまことしくおぼして、あながちに遠ざけ給はんには、うらむくいなん。
廻らぬ重い口で固くちかって宿を辞した。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
「じゃ、ちかってくれて」
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と津島君はちかった。
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
太子は従者に運ばせた牡豚を殺して父にちかわしめ、太子としての己の位置を保証させ、さて渾良夫の如き奸臣はたちどころにちゅうすべしと迫る。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
陳宮は、かつて曹操が、都から落ちて来る途中、共に心肚しんとを吐いて、将来をちかい合ったが、やがて曹操の性行を知って
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
滞坂中の各国公使の間には、帝に謁見の日限を確定して、それをもってちかいの意味をはっきりさせたいと言うものと、ひどく上京を躊躇ちゅうちょするものとがあった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
君は何だつて、あの時僕のために泣いて呉れたのだ。なんだつて、僕のために三千代を周旋しやうとちかつたのだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さんざんなだめ、やっと泣き止んで貰って、これより当分同居することだから、お互いに理想的同居人たるべく努力しようとちかい合い、西東にわかれてやっと寝に就きました。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
(美女、手をかる。ともに床にのぼる。公子剣を軽く取る。)終生をちかおう。手を出せ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こは鷲郎ぬしとて、いぬる日斯様々々かようかようの事より、図らず兄弟のちかひをなせし、世にも頼もしき勇犬なり。さて鷲郎この牛殿は、日頃それがしうわさしたる、養親の文角ぬしなり」ト、互に紹介ひきあわすれば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
信長公と結べる一たんのちかいを破棄し、義にそむき信を捨て去らんか、たとえふたたび官兵衛がこれへ生きて還ろうとも、われらの上に武門の名もなし誇りもなしじゃ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子路と一面識のあったこの男は、「季路をして我に要せしめば、吾ちかうことなけん。」と言った。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「いや、厭になるか、なりませんか、黙って見殺しにしましょうか。何しろ、訳をおっしゃって下さい。夫人おくさん、廉平です。人にいって悪い事なら、私はちかって申しませんです。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このたび万国と条約を改めた上は、帝自ら各国公使に対面して、ちかいを立てようとのおぼし召しである。不日ふじつ上京あるべき旨、各国公使に申し入れるよう、帝の命を奉じたのであると。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かなえんとならば、残りなく円卓の勇士を倒して、われを世にたぐいなき美しき女と名乗り給え、アーサーの養える名高きたかを獲て吾もとに送り届け給えと、男心得たりと腰に帯びたる長きつるぎちかえば
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
言うのもはばかりますが、その花嫁のわけなんです。——実は、今更何とも面目次第もありません、跣足はだしで庭へげましたのも、ちかって言います。あなたのお姿を見てからではないのです。……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
官兵衛の兇変きょうへんにつづき、その決死救出組のちかいが結ばれたのを知ると、老いたりといえ、与次右衛門も先代以来の恩顧おんこの臣、ぜひにと、自分も十三人組のなかへ加盟を申し出たが、老人は足手まといと
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに、宝珠寺の賊寨ぞくさいは、たちまちそのあるじを代えてしまった。——花和尚、青面獣の二人を新たな頭目とうもくとして仰ぎ、四百の配下は、義をちかって、その晩、庫裡くりの酒をみな持ち出して、大盛宴を張った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)