父樣とゝさま)” の例文
新字:父様
吾儕わがみが先立てば誰とて後で父樣とゝさまの御介抱をば申し上ん夫を思へば捨兼すてかねる生命を捨ねば惡名をすゝぐに難き薄命ふしあはせお目覺されし其後に此遺書かきおき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
父樣とゝさまにも春彦どのにも褒められようぞ。わたしはいやぢや、忌になつた。(投げ出すやうに砧を捨つ)
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
あいかはらず父樣とゝさま御機嫌ごきげんはゝをはかりて、我身わがみをないものにして上杉家うへすぎけ安隱あんおんをはかりぬれど。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
言葉ことばではつくされぬ不幸ふしあはせぢゃ。……なう、父樣とゝさま母樣はゝさま何處どこにぢゃ。
呼寄よびよせ父樣とゝさま死なれし以來種々不幸が打續うちつゞきかく貧窮ひんきうとなりしこと如何にも殘念なれば其方何卒なにとぞ辛抱しんばうして田畑でんぱたも元の如くに取もどし河口九郎右衞門が名跡みやうせき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
子之介 けふは月こそ違へ、父樣とゝさまの御命日で、今まで奧で御囘向をして來ました。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
いつぞは正氣しやうきかへりてゆめのさめたるごとく、父樣とゝさま母樣かゝさまといふをりのありもやすると覺束おぼつかなくも一日ひとひ二日ふたひたれぬ、空蝉うつせみはからをつゝもなぐさめつ、あはれかどなるやなぎ秋風あきかぜのおとこえずもがな。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
取換とりかはし如何成れば姉妹二人斯る苦界に沈みしぞ父樣とゝさまには私の身の代金しろきんの爲に人手に掛り果て給ひ母樣には麹町におはするとの事成れどなどかあひには來給はぬぞ手紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こけのしたにてかばいしもゆるぐべし、井戸ゐどがはにかけみづをのぞきしこと三四およびしが、つく/″\おもへば無情つれなしとても父樣とゝさま眞實まことのなるに、れはかなくりてからぬひとみゝつたへれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おもては唯今獻上いたしまする。なう、父樣とゝさま
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
まをさばそのこゝろうらみなり父樣とゝさま惡計わるだくみそれおあそばすにおこたへのことばもなけれどそのくやしさもかなしさもおまへさまにおとることかは人知ひとしらぬ家具やぐえり何故なにゆゑにぬるゝものぞなみだいろのもしあらば此袖このそでひとつにおうたがひはれやうものひとあなけものとはあまりのおほせつもりても御覽ごらんぜよつながれねど
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこねもして愛想あいそづかしのたねにもならばはぬにまさらさぞかしきみさまこそ無情つれなしともおもこゝろに二不孝ふかうらねど父樣とゝさまはゝさまなんおほせらるゝとも他處よそほかの良人をつともつべき八重やへ一生いつしやう良人をつとたずとふものからとはおのづかことなりて關係かゝはることなく心安こゝろやすかるべし浦山うらやましやと浦山うらやまるゝわれ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とゝさま二の御懇意ごこんいとてはづかしき手前てまへ薄茶うすちやぷくまゐらせそめしが中々なか/\物思ものおもひにて帛紗ふくささばきのしづこゝろなくりぬるなりさてもお姿すがたものがたき御氣象ごきしようとやいま若者わかものめづらしとて父樣とゝさまのおあそばすごとわがことならねどおもあかみて其坐そのざにも得堪えたへねどしたはしさのかずまさりぬりながら和女そなたにすらふははじめてはぬこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あさこゝろ思召おぼしめすか假令たとひどのやうなことあればとてあだびとなんのその笑顏わらひがほせてならうことかはやまほどのうらみもくるすぢあれば詮方せんかたなし君樣きみさま愛想あいさうつきての計略たくみかとはおことばながらあまりなりおやにつながるゝつみおなじと覺悟かくごながら其名そのなばかりはゆるしたまへよしや父樣とゝさまにどのやうなおにくしみあればとてかはらぬこゝろわたしこそ君樣きみさまつまなるものを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)