)” の例文
で、師匠も大きにこれを喜んでくれられ、当日は赤飯をき、さかなを買って私のために祝ってくれられ、私の親たちをも招かれました。
恥しいお話なんですが、今日なんか私の来ます時、あなたいて置いて頂戴ねつて云つて来ましたお米はもう一合あまりなんですよ。
女が来て (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「今からかしてもええが、もうみんな寝てしもうたで、今夜は芋でがまんするかの。芋なら炉にほうりこんどくと、すぐじゃが。」
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それをおもふと、つくゑむかつたなりで、白米はくまいいてたべられるのは勿體もつたいないとつてもいゝ。非常ひじやう場合ばあひだ。……かせがずにはられない。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何のくふうもなく食い込んでおれば家をこわしてくようなものだ。たちまち風雨のしのぎがつかなくなることは知れきっている。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
僕はうどんが煮える間を、米がける間を大抵いつも詩集をひもとく。小説なんかよりはこの方が勝手だから。こんな詩を見つけたりする。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
「今、米をいて上げましょうぞ、なんしろ鍋が二つしかございませんから、こいつを洗って、これでお米を炊くと致しましょう」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おつぎはけつして卯平うへい滿足まんぞくさせることとはおもはなかつたが、かれべてようといへばかゆにでもいてやらうとおもつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「しっ……。その李逵に違いないのが、飯をいてくれといって、さっきから店の横で昼寝して待ってるんだよ。静かにしないと」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一箇の釜は飯が既にけたので、炊事軍曹が大きな声を挙げて、部下を叱咜しったして、集まる兵士にしきりに飯の分配をやっている。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
焚火たきびがたかれていた。そうして夜更よふけから、き出しがはじまった。その時分になっても、私の両親はそこへ姿を見せなかった。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ゆい子は家事に慣れないようすで、めしのきかたもうまくないし、き掃除や洗濯せんたくなども、時間ばかりかかってとんと片づかなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
客「イヤハヤ僕は味噌みそをさえ摺る事が下手へたですからとても駄目だめです」妻君「男の人は誰でも台所の事を軽蔑してめしきようも知らんとか、 ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
東京で何不足なく暮していた時分には、ついぞ御飯なぞをいたことはなかったのに、さだめしお母さんは辛いことだろう。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
朝は人より先きに起き、飯櫃の蓋の簾からき立ての御飯の親密な匂いをさせ、丸盆を取って母や嘉六に給仕もいたします。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それをたたき起こして、酒をもとめ、かゆかせなぞして、しばらくそこにからだをあたためていると、騎馬で急いで来る別手組べつてぐみのものにあった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
普通の食料には早くからまとめて摺っておき、かついろいろの調合をしてすぐにけるようにして貯えてあったのである。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此山では「おげ」と称して毎月十九日に一斗五升の小豆飯を炊いて、それをお犬さまに供えるのが例だ。勿論山の中の一定の場所である。
奥秩父 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「何分とも空腹を覚える、先ず火をかずばなるまい、飯をいて貰いたい、明日のために身体を養わずばなりますまい」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
それは私に代表させた私一家へ対しての、夫婦ふたりの感謝だったのかも知れない。子供だけれど潔癖だからと、白い御飯を光るようにいてだした。
この飯をおろそかにしたのでは寿司にはならない。よき飯をき、よき寿司を作らんとすれば、一人仕事ではだめである。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「本当に幽霊が出るか出ねえか知らねえが、あんな奴のところへ出たら災難だ。幽霊に肩を揉ませるか、飯をかせるか、判ったものじゃあねえ」
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
飯のき方まで手を取らないまでにして世話してもらったのであるが、月日のつに従い、この新夫婦はその恩義を忘れたかのようにうとくなった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
ごはんをいて、その有様は、とても深刻で、気の毒なのだけれど、どうも異様で、つい噴き出したくなる程だそうだ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おばあさんは、囲炉裏いろりにまきをくべて、あたたかくしてくれたり、おかゆをいてお夕飯ゆうはんべさせてくれたり、いろいろ親切しんせつにもてなしてくれました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ああ、その事ですか。……めしなんかいたことはありませんよ。米は持っているには持っているんですが、とても、そんな時間がないもんだから」
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
僕は裏木戸うらきどへ顔を出しながら、「どうだね? めしけるかね?」と言つた。が、O君はふり返ると、僕の問には答へずにあたりの松の木へあごをやつた。
O君の新秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私はもはや、この国のけがれた火でいたものを食べましたから、もう二度とあちらへ帰ることはできますまい。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
おおきいいえがありましてね、そこの飯炊めしたがまは、まず三ぐらいはける大釜おおがまでした。あれはえらいぜにになります。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
七種ななくさの日に飲み過ぎて、宿酲ふつかよい未ださめやらぬ結果、薺粥をもう一度くことを家人に命じた、というのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
「わたしだってご飯ぐらい、けるわ。そりゃわたし上手よ。去年逗子へ行っていたとき、毎日炊いたのよ。」
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
下女のおこんといふ女で、——殺された主人のお久良くらと同年輩の二十二三ですが、こいつは、飯をいて掃除を
二、三日の後、晴れた日に彼らは別れの宴のようなものを催したが、赤の飯をこうとしてもその年の虫の害は、畑に小豆あずきというものが一粒も実らなかった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ところがあの業突張ごうつくばりの事だから、どんな事をして持ってかないとも限らないのさ。そらその日の御飯をあたしにかせまいと思って、そういう意地の悪い事を
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……そうして何んだ、オイ隼太、女達にしっかり云い付けてくれ! セッセとき出しをするようにってな。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それには御飯をまきがなければなりませんので、毎日不承不承ながら、それを取りに出かけるのです。
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
けれども、昨夜もお絹の身の上話のもう十遍目位も聞かせられて悩まされて居た彼は、妻には米を洗はせて、水をしかけさせて、自分自身でくことにして居た。
たちまち身体の中は、アルコールをいたような温かさを感じた。と思ったら私の身体はもうブツブツふくれはじめた。シャボン玉のように面白いほど膨らみ始めた。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
玉の緒でき上げたような飯を食って一生を過ごして行かねばならぬ漁夫の生活、それにはいささかも遊戯的な余裕がないだけに、命とかけがえの真実な仕事であるだけに
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
汽罐室のま上のコック場では、コックが、いつも一度でく飯を五度ぐらいに分けて炊かねばならなかったし、お菜も同様な方法にしてなお、汁物は作るわけに行かなかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
お辰の病床びょうしょうを見舞うと、お辰は「わてに構わんと、はよ維康さんとこイ行ったりイな」そして、病気ではご飯たきも不自由やろから、家で重湯やほうれん草いて持って帰れと
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ホテルの台所で米のめしくことも出来ず、とう/\仕舞しまいには米を始め諸道具一切の雑物ぞうぶつを、接待がかりの下役したやくのランベヤと云う男に進上して、ただもらっもらうたのも可笑おかしかった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼女は鍋から熱いき立ての、白い湯気が一ぱい立ち上ってる御飯をついで彼に渡した。
晩餐 (新字新仮名) / 素木しづ(著)
ちょうど五月頃の客のない時で御飯もいちいちけないのかも知れないけれど、二、三日泊っている間に、私は二、三度ふかし飯を食べさせられて女中さんに談判したことがある。
朝御飯 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
まだ灯もともさない家のなかは、空気が冷や冷やして薄暗かった。お銀はちょうど茶のすみの方に坐って、腹をおさえていた。台所には母親がかまの下にちろちろ火をきつけていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
うかしてうすくとも見えるやうにしてげたいと思つて、茅場町かやばちやう薬師やくしさまへ願掛ぐわんがけをして、わたし手探てさぐりでも御飯ごぜんぐらゐはけますから、わたしつぶしても梅喜ばいきさんのけてくださるやう
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
三度食うめしさえもこわい柔かいがある。この浮世を渡るにめしきようについて、あまり明白な意思を有するものは、恐らくは生涯の三分の二は飯のために不満足を唱えて暮らさねばならぬだろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
家からお米も炭も取り寄せ、火鉢ひばちの炭火でいた行平ゆきひら中子しんのできた飯をんで食べた。自炊をきらふ階下の亭主の当てこすりの毒舌を耳に留めてからは、私はたいがい乾餅ほしもちばかり焼いて食べてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
小方こかたに全部知らせたら、永田親方の家に行って、朝飯を六十人前、すぐいて、パナマ丸に届けろ。そのころは、もう、船は港に入っとる筈。……おい、間男、猫の手一つでも借りたいところじゃ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
彼等の飯は彼等がいた。部屋の掃除も、便所の掃除も、被服の手入れも、歩哨勤務も、警戒勤務も、すべて彼等がやった。初年兵と二年兵の区別は、いくらかすくなくなった。が、やはり存在した。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)