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漣
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さざなみ
ふりがな文庫
“
漣
(
さざなみ
)” の例文
女教師鴎外、芸妓紅葉、女生徒
漣
(
さざなみ
)
、女壮士
正太夫
(
しょうだゆう
)
、
権妻
(
ごんさい
)
美妙、女役者
水蔭
(
すいいん
)
、
比丘尼
(
びくに
)
露伴、
後室
(
こうしつ
)
逍遥、踊の師匠眉山、町家の女房柳浪。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
といいきらないうちに奥さんは口許に袖口を持っていって
漣
(
さざなみ
)
のように笑った……眼許にはすぎるほどの好意らしいものを見せながら。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
握った丸太はいつも上段で、じっと敵を
睥睨
(
へいげい
)
した。静かなること水の如く、動かざること山の如しといおうか、
漣
(
さざなみ
)
ほどの微動もない。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここで若い靴磨きが変な街路詩人の詩を口ずさみ三等席の頭上あたりの宵の明星を指さして夕刊娘の淡い恋心にささやかな
漣
(
さざなみ
)
を立てる。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その間をば一同を載せた舟が
小舷
(
こべり
)
に
漣
(
さざなみ
)
を立てつつ
通抜
(
とおりぬ
)
けて行く時、中にはあわてふためいて障子の
隙間
(
すきま
)
をば
閉切
(
しめき
)
るものさえあった。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
今拵えた花綵を池の
水際
(
みぎわ
)
に浸していましたが、それが水の中から咲き出たように
漣
(
さざなみ
)
に揺られて、二つにも三つにも屈折して見えました。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
丁度同時に
硯友社
(
けんゆうしゃ
)
の『
我楽多文庫
(
がらくたぶんこ
)
』が創刊された。
紅葉
(
こうよう
)
、
漣
(
さざなみ
)
、
思案
(
しあん
)
と
妍
(
けん
)
を競う中にも美妙の「情詩人」が
一頭
(
いっとう
)
地
(
ち
)
を
抽
(
ぬき
)
んでて評判となった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
川の上手から静謐な、光り輝く
漣
(
さざなみ
)
の上を影絵のように急速力で漕いで来る
丸木舟
(
まるきぶね
)
も見えた。一人、二人、三人、四人、五人、あ、六、七人。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
漣
(
さざなみ
)
さえ打たない静かな晩だから、
河縁
(
かわべり
)
とも池の
端
(
はた
)
とも片のつかない
渚
(
なぎさ
)
の
景色
(
けしき
)
なんですが、そこへ涼み船が一
艘
(
そう
)
流れて来ました。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
高い、高い、眞黒な檣の眞上に、金色の太陽が照つてゐて、海——蒼い、蒼い海は、見ゆる限り
漣
(
さざなみ
)
一つ起たず、油を流した樣に靜かであつた。
散文詩
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
後を絶間なく喋ったり歌ったりして人が通るが、気がしずまって来ると河の
漣
(
さざなみ
)
がコンクリートにあたる静かな音もきこえる。
ズラかった信吉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
濠
(
ほり
)
は深く、幅も広い。本能寺のそれとはちがって満々と水をたたえている。どこかに自然と
湧水
(
ゆうすい
)
があるとみえて、
蒼々
(
あおあお
)
と
漣
(
さざなみ
)
たてて澄んでいた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
空はまだ暮れきってはいず、昼の色を拭いのこした静かな夕空は、目にみえぬ無数の
漣
(
さざなみ
)
の動くひろい川面のように見えた。
昼の花火
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
月は明らかに其田池を照して、溺れた人の髪の散乱せるあたりには、微かな
漣
(
さざなみ
)
が、きら/\と美しく其光に
燦
(
きら
)
めいて居る。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
緑
滴
(
したた
)
るばかりの森影に、この
妖姫
(
ようき
)
の住める美しの池は
漣
(
さざなみ
)
を立てて、
寂
(
じゃく
)
として声なき自然の万象をこの
鏡中
(
きょうちゅう
)
に映じている。
森の妖姫
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
一処
(
ひとところ
)
、大池があって、朱塗の船の、
漣
(
さざなみ
)
に、浮いた
汀
(
みぎわ
)
に、盛装した
妙齢
(
としごろ
)
の派手な女が、
番
(
つがい
)
の
鴛鴦
(
おしどり
)
の宿るように目に留った。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『向うの村に住む人間たちが、彼等の天性の愛と
情
(
なさけ
)
とを忘れてしまった上は、湖が再び彼等のすまいの上に、
漣
(
さざなみ
)
をたてた方がいいかも知れない!』
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
島を囲む黒い
漣
(
さざなみ
)
がぴたぴたとその
礎
(
いしずえ
)
を洗うごとくに、夜よりも暗い無数の
房々
(
ふさぶさ
)
がその明るい大広間を取り巻いている。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
ちょっとした人の足音にさえいくつもの波紋が起こり、風が吹いて来ると
漣
(
さざなみ
)
をたてる。色は海の青色で——御覧そのなかをいくつも魚が泳いでいる。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
じっとりした、ひどく冷い霧、それが、荒れた海の波のように、目に見えて一つ一つと続いて拡がっている
漣
(
さざなみ
)
をなして、空中をのろのろと進んで来る。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
沖はよく
和
(
な
)
ぎて
漣
(
さざなみ
)
の
皺
(
しわ
)
もなく島山の黒き影に囲まれてその
寂
(
しずか
)
なるは
深山
(
みやま
)
の湖水かとも思わるるばかり、足もとまで月影澄み
遠浅
(
とおあさ
)
の砂白く
水底
(
みなそこ
)
に光れり。
置土産
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
長い長い雪渓は終った、湖面を亘る
漣
(
さざなみ
)
のような雪田を蹈んで二十間も行くと三窓の若々しい草の緑が私達を迎えた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
雄はその平べったい
嘴
(
くちばし
)
で雌の
頸
(
くび
)
を軽く
噛
(
か
)
みながら締めつける。いっとき彼は
頻
(
しき
)
りにからだを動かすが、水は重く
澱
(
よど
)
んでいて、ほとんど
漣
(
さざなみ
)
も立たないくらいだ。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
前は
畝
(
うね
)
から畝へ
花毛氈
(
はなもうせん
)
を敷いた紫雲英の上に、春もやゝ
暮近
(
くれちか
)
い五月の午後の日がゆたかに
匂
(
にお
)
うて居る。ソヨ/\と西から風が来る。見るかぎり
桃色
(
ももいろ
)
の
漣
(
さざなみ
)
が立つ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
季節は春、時は夕、丘は青草の香高く、坐するほとりに
菫
(
すみれ
)
、
蒲公英
(
たんぽぽ
)
も咲いていたであろう。脚下には夕暮れのガリラヤ湖が、
漣
(
さざなみ
)
も立てずして鏡よりも静かである。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
ダニューブ河の
漣
(
さざなみ
)
は、あれはハンガリアをとったウインの喜びだ。しかし、ここの漣は、圧制のもとに唸り、遠吠え、あきらめ、沈み、悵怏として悲しむ漣である。
欧洲紀行
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
この古い琴の
音色
(
ねいろ
)
には
幾度
(
いくたび
)
か人の胸に
密
(
ひそ
)
やかな
漣
(
さざなみ
)
が起った事であろう。この道具のどれかが己をそういう目に
遇
(
あ
)
わせてくれたなら、どんなにか有難く思ったろうに。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
流れの美しさは、樹間を
洩
(
も
)
れる光によって異常な色調を帯び、不思議な美しさを呈している。その輝く水面の上を、カヌーの
一櫂
(
ひとかい
)
ごとに、数千の
漣
(
さざなみ
)
が伝わってゆく。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
第二に、潮がその時は退いていて、——
漣
(
さざなみ
)
の立っている強い潮流が内湾を西の方へ流れ、それから吾々がその朝入って来た海峡を南の方へ外海の方へと流れていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
この山の端と、金色の三尊の後に当る空と、
漣
(
さざなみ
)
とを想像せしめる背景は、実はそうではなかった。
山越しの阿弥陀像の画因
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
かすかな
漣
(
さざなみ
)
を立てている濠、はねる鯉、柳の並木、空からさすやわらかな月光——そういうものが、すこしずつ、警察署でのささくれだった金五郎の気持をほぐして行く。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
鏡面に
漣
(
さざなみ
)
がたったかと思うと、大統領ミルキの髭の中にうずもれた顔が浮きあがった。
十八時の音楽浴
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
四、五日吹き続いた風の名残りが、まだ折々
水沫
(
みなわ
)
を飛ばす波がしらに現れているものの、空はいっぱいに晴れ渡って、
漣
(
さざなみ
)
のような白雲が太陽をかすめてたなびいているだけだった。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
けれども猿沢の池は前の通り、
漣
(
さざなみ
)
も立てずに春の日ざしを照り返して居るばかりでございます。空もやはりほがらかに晴れ渡って、
拳
(
こぶし
)
ほどの雲の影さえ漂って居る
容子
(
ようす
)
はございません。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
明るい月が地平を離れ、河の
漣
(
さざなみ
)
を銀に彩っている。一同は口々に、「月だ、月だ、月が出た。」「さあ、出陣だ! 進軍だ!」と勢い込んでざわざわと起ち上り、月に向って立ち並ぶ。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
チロチロと
漣
(
さざなみ
)
の刻むような光りがする、岩石の間に、先刻捨てた尻拭き紙までが、真赤にメラメラと燃えている、この窪地一帯に散乱する岩石の切れ屑は、柔らかく
圭角
(
けいかく
)
を円められて
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
しかも、シュンシュンとその水は、自分の身体中で冷たく
漣
(
さざなみ
)
立てて
疼
(
うず
)
くのだ。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
一とき聞くに堪えないような失望の呻き声が聞える。だが河神は肘の雫を啜っていう「私はこの女神のために諦めということを取失わされてしまった。消ゆるかに見えて、また立つ
漣
(
さざなみ
)
……」
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
名にし負える荻はところ
狭
(
せ
)
く繁り合いて、
上葉
(
うわば
)
の風は静かに打ち寄する
漣
(
さざなみ
)
を砕きぬ。ここは湖水の
汀
(
みぎわ
)
なり。争い立てる峰々は残りなく影を
涵
(
ひた
)
して、
漕
(
こ
)
ぎ行く舟は遠くその上を押し分けて行く。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
狭い澄んだ額のまわりに
漣
(
さざなみ
)
のように揺らいでる細やかな髪の毛、やや重たげな
眼瞼
(
まぶた
)
の上のすっきりした
眉
(
まゆ
)
、
雁来紅
(
がんらいこう
)
の青みをもった眼、小鼻のぴくぴくしてる繊細な鼻、軽く
凹
(
へこ
)
みを帯びた
顳顬
(
こめかみ
)
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ボオトの場景が
最後
(
ラスト
)
を
飾
(
かざ
)
り、
観
(
み
)
ていれば、
撮影
(
さつえい
)
された覚えもある
荒川
(
あらかわ
)
放水路、
蘆
(
あし
)
の
茂
(
しげ
)
みも、
川面
(
かわも
)
の
漣
(
さざなみ
)
も、すべて
強烈
(
きょうれつ
)
な
斜陽
(
しゃよう
)
の逆光線に、
輝
(
かがや
)
いているなかを、エイト・オアス・シェルの
影画
(
シルエット
)
が
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
大袈裟なところでは眉が逆立ちをしたり、眼が宙釣りになったり、口が
反
(
そ
)
りくり返ったりします。デリケートなところでは唇がふるえたり、眼尻に
漣
(
さざなみ
)
が流れたり、眉がそっと近寄ったりします。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
茶と菓子とを運んだ
婢
(
おんな
)
に
昼食
(
おひる
)
のあと片付けを云いつけて、彼女はまた漠然たる思いの影を追った。遠くより来る哀悠が湖水の面にひたひたと
漣
(
さざなみ
)
を立てている。で側の小さい聖書をとり上げてみた。
湖水と彼等
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
空はやっぱり一面の黒雲に覆われ、風はなし、
目路
(
めじ
)
の限りの花の山は、
銀鼠色
(
ぎんねずみいろ
)
に眠って、湯の池に
漣
(
さざなみ
)
も立たず、そこにゆあみする数十人の裸女の群さえ、まるで死んだ様におし黙っているのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
延
(
のば
)
し
横
(
よこた
)
へ、
膝節
(
ひざぶし
)
も、足も、つきいでて、
漣
(
さざなみ
)
の
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
翌日
(
よくじつ
)
文鳥がまた鳴かなくなった。留り木を下りて籠の底へ腹を
圧
(
お
)
しつけていた。胸の所が少し
膨
(
ふく
)
らんで、小さい毛が
漣
(
さざなみ
)
のように乱れて見えた。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
山のような
五百重
(
いおえ
)
の大波はたちまちおい退けられて
漣
(
さざなみ
)
一つ立たない。どっとそこを目がけて狂風が四方から吹き起こる‥‥その物すさまじさ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
波のように背中を
蜒
(
うね
)
らせて追い、蜈蚣の大群は壁から下りて、床の上をさながら
漣
(
さざなみ
)
のように、騒ぎ立てながら追いかけた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一処
(
ひとところ
)
、
大池
(
おおいけ
)
があつて、
朱塗
(
しゅぬり
)
の船の、
漣
(
さざなみ
)
に、浮いた
汀
(
みぎわ
)
に、盛装した
妙齢
(
としごろ
)
の
派手
(
はで
)
な女が、
番
(
つがい
)
の
鴛鴦
(
おしどり
)
の宿るやうに目に
留
(
とま
)
つた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
やや
紅
(
べに
)
と金とを交えた
牛酪
(
バタ
)
いろの一面のはるばるしい
漣
(
さざなみ
)
であった。いよいよ夕凪だなと、私は私の
船室
(
ケビン
)
の方へ、穏かに、また安らかに歩みを返した。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
漣
漢検準1級
部首:⽔
14画
“漣”を含む語句
漣波
漣漪
漣々
漣山人
漣立
客魯漣
漣太夫
漣子
漣雲