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こだち
ふりがな文庫
“
樹立
(
こだち
)” の例文
三
方
(
ぱう
)
は、
大巌
(
おほいは
)
夥
(
おびたゞ
)
しく
累
(
かさな
)
つて、
陰惨冥々
(
いんさんめい/\
)
たる
樹立
(
こだち
)
の
茂
(
しげみ
)
は、
根
(
ね
)
を
露呈
(
あらは
)
に、
石
(
いし
)
の
天井
(
てんじやう
)
を
蜿
(
うね
)
り
装
(
よそほ
)
ふ——こゝの
椅子
(
いす
)
は、
横倒
(
よこたふ
)
れの
朽木
(
くちき
)
であつた。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
熊笹は人の身の丈を没すという深さ、暗い林の遠くには気味の悪い鳥の声がして、
谿川
(
たにがわ
)
の音は
物凄
(
ものすご
)
いように
樹立
(
こだち
)
の間に
唱
(
うた
)
っている。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
巨
(
おお
)
きな
樹立
(
こだち
)
に囲まれていて、ふところの広い平庭である。樹々の蔭には、もう夕闇が漂って、蚊ばしらの唸りが何処ともなく耳につく。
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わしは宮の周囲にはえた
不格好
(
ぶかっこう
)
な
樹立
(
こだち
)
と、そしてちょろちょろと落ちる谷水を見ていると、何とも言えない欠乏の感じにうたれました。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
鋭い獣の鳴き声は——それは
猩々
(
しょうじょう
)
の鳴き声であるが——
樹立
(
こだち
)
の
彼方
(
かなた
)
、鉄柵の向こうの公園の外の人道から、またもその時間に聞こえて来た。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
そのような夢ともつかぬ絵姿を心に描いては、風の吹き荒れる晩など
樹立
(
こだち
)
のざわめくお庭先の暗がりに、よく眺め入ったものでございました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
疎
(
まば
)
らなマロニエの
樹立
(
こだち
)
の中央に例の
寛衣
(
くわんい
)
を着けて
劔
(
けん
)
を帯び
庇
(
ひさし
)
の広い帽を少し
逸反
(
そりかへ
)
らして
被
(
かぶ
)
つた風姿の
颯爽
(
さつさう
)
としたリユウバンスの銅像が立つて
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
それから私等は、杉の
樹立
(
こだち
)
の下の諸大名の墓所を通つて奥の院の方までまゐつた。案内の
小童
(
せうどう
)
は極く無造作に大小高下の
墳塋
(
ふんえい
)
をば説明して呉れた。
仏法僧鳥
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
○駒形の駒形堂を右に見、駒形の渡船場を過ぎ、左には長屋
越
(
ごし
)
に番場の多田の薬師の
樹立
(
こだち
)
を望みて下ること
少許
(
しばし
)
すれば
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
とブツ/\いいながら道恩和尚の手を引いて段々山を下り、影が見えなくなると
樹立
(
こだち
)
の間から二人の
悪漢
(
わるもの
)
が出て参り
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
遠くで
角笛
(
つのぶえ
)
の音がする。やがて犬の吠声、駒の
蹄
(
ひづめ
)
の音が聞えて、それがだんだんに近付いて来る。
汀
(
みぎわ
)
の草の中から鳥が飛び立って
樹立
(
こだち
)
の闇へ消えて行く。
ある幻想曲の序
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
見ると窓の外の庭の
樹立
(
こだち
)
の間を、一匹の白犬が、木の葉をカサカサ云わせながら、暗闇の中へ消えて行った。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
十坪ばかりの庭のはずれに、
垣根
(
かきね
)
のようになった
樹立
(
こだち
)
があり、そこから先はずっと
田圃
(
たんぼ
)
つづきで、あいだにバスの通る道があるほかは、
殆
(
ほと
)
んど家もなかった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
百メートルくらいしかないけれど、
樹立
(
こだち
)
がふかくて奥行のある山であった。見はらしのきく頂上へきて、岩の上にひざを抱いてすわると、熊本市街が
一
(
ひ
)
とめにみえる。
白い道
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
ほとんどだれも踏み込んだことのない、白楊の
樹立
(
こだち
)
のために、外からは見えないところだった。
なぐり合い
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
その流るゝやうな涼しい光は
先
(
まづ
)
第一に
三峯
(
みつみね
)
の
絶巓
(
いたゞき
)
とも覚しきあたりの
樹立
(
こだち
)
の上を
掠
(
かす
)
めて、それから山の陰に
偏
(
かたよ
)
つて流るゝ尾谷の渓流には及ばずに直ちに丘の
麓
(
ふもと
)
の村を照し
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
恋愛を有せざる者は春来ぬ間の
樹立
(
こだち
)
の如く、何となく物寂しき位置に立つ者なり。
而
(
しか
)
して各人各個の人生の
奥義
(
おうぎ
)
の一端に入るを得るは恋愛の時期を通過しての後なるべし。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
硝子張
(
ガラスばり
)
の障子を漏れる
火影
(
ほかげ
)
を受けているところは、
家内
(
やうち
)
を
覘
(
うかが
)
う曲者かと怪まれる……ザワザワと庭の
樹立
(
こだち
)
を
揉
(
も
)
む夜風の余りに顔を吹かれて、文三は
慄然
(
ぶるぶる
)
と身震をして
起揚
(
たちあが
)
り
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
かれは間もなく、殆ど幽霊のように
樹立
(
こだち
)
から樹立を縫いながら公園をあるいていた。かれ自身何の目的もなく、多くの用なしとともに其処のベンチにもたれていたのであった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
戸の外を、桜
樹立
(
こだち
)
がぐるりと囲む……桜が……しんしんと咲き静まった桜樹立が真夜中に……
棟
(
むね
)
を
圧
(
あっ
)
して桜樹立が……桜樹立がしんしんと……私は、ぞっとして
夜具
(
やぐ
)
をかぶった。
病房にたわむ花
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
樹立
(
こだち
)
や電柱や斑ら雪が、絶えず彼女の眼をかすめ過ぎるせいか、ひどく取り留めのない考えが後から後から浮かんで来た。彼女は思った——レストランでは百二十ルーブル払った。
大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
到頭
呪
(
のろ
)
われた六月の三十日が来た。
梅雨
(
つゆ
)
時には、珍らしいカラリとして
朗
(
ほがら
)
かな朝だった。明るい日光の降り注いでいる庭の
樹立
(
こだち
)
では、朝早くから
蝉
(
せみ
)
がさん/\と鳴きしきっていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
まだ
剖
(
わか
)
れない
巨
(
おお
)
きな
愛
(
あい
)
の
感情
(
かんじょう
)
です。すすきの花の
向
(
むか
)
い火や、きらめく
赤褐
(
せっかつ
)
の
樹立
(
こだち
)
のなかに、
鹿
(
しか
)
が
無心
(
むしん
)
に
遊
(
あそ
)
んでいます。ひとは自分と鹿との
区別
(
くべつ
)
を
忘
(
わす
)
れ、いっしょに
踊
(
おど
)
ろうとさえします。
『注文の多い料理店』新刊案内
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
……繁みの向こうには、窓と丁度むかい合わせに、石の塀が黒々とそそり立っていた。
宏大
(
こうだい
)
な庭園の
樹立
(
こだち
)
が、高い
梢
(
こずえ
)
に月光を浴び、また月かげを透かせながら、石塀ごしに
覗
(
のぞ
)
いていた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
やつと路が開けて、
樹立
(
こだち
)
が少し
疎
(
まば
)
らになり、やがて柵が見え、次には家が——この薄明りでは殆んど樹立と見分けもつきかねるくらゐに、その
朽
(
く
)
ちかけた壁はしめつて緑色をしてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼はそれが口惜しく、ひと思いに彼を狂人として払い落してしまいたかった。梶は冷然としていく自分に妙に不安な
戦慄
(
せんりつ
)
を覚え、黒黒とした
樹立
(
こだち
)
の沈黙に身をよせかけていくように歩いた。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
馬からおろされた姫は向うに見える城あとの
樹立
(
こだち
)
をじっとながめていたが、
遽
(
にわか
)
に気をあららげて、腰に手をやって、「こんなものが今更何になる。
益
(
やく
)
にもたたぬものは邪魔になるばかりだ」
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
境内
(
けいだい
)
では
頻
(
しき
)
りに
雉
(
きじ
)
が鳴いている。
樹立
(
こだち
)
の繁みは深い。華厳寺の建物は堂々たるものであった。
生憎
(
あいにく
)
金堂
(
こんどう
)
は今大修理中で見ることが出来ない。この寺は
新羅
(
しらぎ
)
時代の石塔
石燈
(
せきとう
)
を以て
殊
(
こと
)
に名がある。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
樹立
(
こだち
)
の間から前面の屋並みを見ると、電燈の明るい二階座敷や、障子の陰に見える客や芸者の影、箱をかついで通る
箱丁
(
はこや
)
、小刻みに歩いて行く女たちの姿などが、芝居の舞台や書割のようでもあれば
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
樹立
(
こだち
)
の青葉は、病後の人のように
喘
(
あえ
)
いでいる。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
人形
(
ひとがた
)
の
樹立
(
こだち
)
見
(
み
)
る
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
生身
(
いきみ
)
では渡られない。
霊魂
(
たましい
)
だけなら乗れようものを。あの、
樹立
(
こだち
)
に包まれた
木戸
(
きど
)
の中には、その人が、と足を
爪立
(
つまだ
)
ったりなんぞして。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのやうな夢ともつかぬ絵姿を心に描いては、風の吹き荒れる晩など
樹立
(
こだち
)
のざわめくお庭先の暗がりに、よく眺め入つたものでございました。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
霙
(
みぞれ
)
の降るある朝私らは一台の車には荷物をのせて山に登りました。野原のようなところや、枯れ
樹立
(
こだち
)
ばかりの寒そうな林の中などを通りました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
宵のうちに、
隣帆亭
(
りんぱんてい
)
の方で、阿波守初め四人の
公卿
(
くげ
)
が、密議をこらしていた様子も
樹立
(
こだち
)
の中からうかがっていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おすえは微笑しながら頷き、手をあげてまわりの
樹立
(
こだち
)
をぐるっと指さしましたが、それからふと驚いたように、自分の耳を摘んで、聞えるのか、というしぐさをしました。
失蝶記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
池を一とまわりして、
樹立
(
こだち
)
のあいだの狭い道を通り抜けると、眼の前に円形の広っぱがひらけた。たった一つの常夜燈が、その全景を
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
ほどにボンヤリと照らしている。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
おりから春の朧月が苑内の
樹立
(
こだち
)
や湖を照らし紗の
薄衣
(
うすもの
)
でも纒ったように大体の景色を
﨟
(
ろう
)
たけて見せ、諸所に聳えている宮殿の窓から
垂帳
(
たれまく
)
を通して
零
(
こぼ
)
れる
燈火
(
ひ
)
が花園の花木を朧ろに染め
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私の眼の屆くモオトンの
谷道
(
たにみち
)
をくねつてゐる邊りでは、半ば
樹立
(
こだち
)
に隱れて教會堂と牧師館、そして遙か
端
(
はづ
)
れの方にお金持のオリヴァ氏とその娘の住んでゐるヴエイル莊の屋根があるだけで
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
八日、
朝餉
(
あさげ
)
を終えて立出で、まず妙見尊の宮に詣ず。宮居は町の大通りを南へ行きて左手にあり。これぞというべきことはなけれど
樹立
(
こだち
)
老いて広前もゆたかに、その名高きほどの尊さは見ゆ。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
成程二十間ばかり離れたうしろの、松の
樹立
(
こだち
)
の間にちらちらしている茶色の帽子と、
襟
(
えり
)
をたてた黒いオーバーが、顔は見えないが、のぼるときにもたしか背後から歩いていたようだった。——
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
青年は
弾
(
はじ
)
かれたように、身体を
飜
(
ひるがえ
)
すと、緩い
勾配
(
こうばい
)
の芝生の道を、一気に二十間ばかり、
馳
(
か
)
け降りると、その白い
浴衣
(
ゆかた
)
を着た長身で、公園の
闇
(
やみ
)
を切る姿を見せていたが、直ぐ
樹立
(
こだち
)
の
蔭
(
かげ
)
に見えずなった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
通りを少し離れて
樹立
(
こだち
)
の深い高みの場所にその家があった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
という勢いに驚いて
樹立
(
こだち
)
の間へ逃げ込んで仕舞いました。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
隣りのからたち寺の
樹立
(
こだち
)
、これだけは昔のままらしい。
病院風景
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
夜は遅くまで灯の影が庭の
樹立
(
こだち
)
の間にかがやいた。
『田舎教師』について
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ここには森の木の
樹立
(
こだち
)
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
御堂
(
おどう
)
は
颯
(
さっ
)
と松風よりも杉の
香
(
か
)
檜
(
ひのき
)
の香の
清々
(
すがすが
)
しい
森々
(
しんしん
)
とした
樹立
(
こだち
)
の中に、青龍の背をさながらの石段の上に玉面の獅子頭の如く築かれて
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
後の俥は
樹立
(
こだち
)
の加減で見さだめる暇がなかつたが、まづこのあひだの小間使だつたらしい。とにかく女に違ひなかつた。……
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
かれの目はしきりにうごいて、うしろの
樹立
(
こだち
)
をすかしたり
暗緑
(
あんりょく
)
な
境内
(
けいだい
)
を見まわしたりしたが、ついに、そこからなにものも見いだすことはできなかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
樹
常用漢字
小6
部首:⽊
16画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“樹立”で始まる語句
樹立等
樹立途