披露ひろう)” の例文
かの新聞で披露ひろうする、諸種の義捐金ぎえんきんや、建札たてふだひょうに掲示する寄附金の署名が写実である時に、これは理想であるといってもかろう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
傾けられて大膳は氣後きおくれし然らば拙者は病氣と披露ひろうして貴殿面會し給はれと云ふに伊賀亮夫は何よりやすけれども平石次右衞門と手札を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二号にがう活字くわつじ広告くわうこく披露ひろうさるゝほかなんよくもなき気楽きらくまい、あツたら老先おひさきなが青年せいねん男女なんによ堕落だらくせしむる事はつゆおもはずして筆費ふでづひ紙費かみづひ
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
他人と他人に刃傷沙汰にんじょうざたはねえと見てきたようなことをご披露ひろうしたが、お駒音蔵、音蔵お駒と一本道にふたりのつながりばかりねらうから
懇意な友人の新婚披露ひろうに招かれてほしおか茶寮さりょうに行った時も、着るものがないので、袴羽織ともすべて兄のを借りて間に合せた事もあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「けさから私はこんなに生まれ代わりました御覧なさい」といってだれにでも自分の喜びを披露ひろうしたいような気分になっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
市蔵いちぞうというんだ。市蔵とな。いい名だろう。そこで、名前を変えるには、改名の披露ひろうというものをしないといけない。いいか。
よだかの星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その年の秋が冬に変ろうという十一月の候、例の某大国は日本国民の前にびっくりするような大きな贈物をするというニュースを披露ひろうした。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、早速奥へ披露ひろうします。歌舞伎座の狂言なども、出し物の変る度びに二三度立ち見に出かけ、直きに芝翫しかん八百蔵やおぞう声色こわいろを覚えて来ます。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、この座敷で披露ひろうしたことは、宮のお心をさらに苦しくさせたことであった。少将はすぐにそれを手もとへ取ってしまった。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「猫の鳴き声なんか、陰気いんきじゃありません? それよりか、ここには友愛塾音頭おんどというのがありますから、あたしそれをご披露ひろうしますわ。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ほとんど高品さんの炉端にいて、頭のあったかいところを披露ひろうしながら、炉端に集まる人たちに愛されたり笑われたりしていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼は、あらゆる手段で、朝野の名流を、その披露ひろうの式場にあつめようとした。彼は、あらゆる縁故を辿たどって、貴族顕官の列席を、頼み廻った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「私横浜の叔母のところへ行けば、少しは相談に乗ってくれますよ。」お銀ははしゃいだような調子で、披露ひろうのことなどをいろいろに考えていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
○さて口上いひ出て寺へ寄進きしんの物、あるひは役者へ贈物おくるもの、餅酒のるゐ一々人の名をあげしなよび披露ひろうし、此処忠臣蔵七段目はじまりといひてまくひらく
するとこの地の長官たる百川は、それが彼の最大の義務であるように、自ら進んで倭舞を披露ひろうした。舞の手はさして巧くはなかったが、その神妙さ。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
トランプの手品を次から次へと披露ひろうしたが、あげくの果てにカードをよく切ってから、札を四人に配る時、切札を全部わが手に収めてしまったので
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
(お千賀どのを、妻にもらう)と、かなり前披露ひろうしてしまったし、庄左衛門もつい当座の嘘に嘘がかさんで、退っぴきならない板挾みになってしまった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本妻みたいにはして居るが、仲人が立ったわけでも、祝言をしたわけでも、親類達に披露ひろうしたわけでもありません。
子供の初節句、結婚の披露ひろう、還暦の祝い、そういう機会はすべて村のバッカスにささげられる。そうしなければその土地には住んでいられないのである。
田園雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
が、大御所おおごしょ吉宗よしむねの内意を受けて、手負ておいと披露ひろうしたまま駕籠かごで中の口から、平川口へ出て引きとらせた。おおやけに死去の届が出たのは、二十一日の事である。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「島原通いの金に困って、預かりの金をつかい果した、その申しわけに腹を切る——隊中へはそのように披露ひろうする」
親しき友にも八重との婚儀は改めて披露ひろうせず。祝儀しゅうぎの心配なぞかけまじとてなり。物堅き親戚一同へはわれら両人ふたりが身分をかえりみて無論披露は遠慮致しけり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかし、最早もはや御近所へ披露ひろうしてしまった後だから泣寝入りである。後略のまま頓首とんしゅ。大事にしたまえ。萱野君、旅行から帰って来た由。早川俊二。津島君。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
これは何かの間違ひであらうといふので、表向おもてむきは牢中病死と披露ひろうして、實は生かして置いて下すつたのだ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
それで面目なさに、わたくしと子息のイワン・フョードロヴィッチにことづけまして、心からの遺憾と悔恨と懺悔ざんげを尊師様のお前に披露ひろうして欲しいと申しました……。
そのようにじみな姿の花嫁ではあったが、披露ひろうの宴に連った人々は、二十年の野村の作家生活に心をつなぎ合った、社会的にも知名の作家や画家たちが顔を並べていた。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
あれはみんなこの地震の来る知らせでしたわい。なにしろ、吉左衛門さん、吾家うちじゃ仙十郎の披露ひろうを済ましたばかりで、まあおかげであれも組頭くみがしらのお仲間入りができた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
香具師やしがそばから披露ひろうをするのはいいが、自分で呼んでじぶんでこたえるのだから世話はない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いよいよそうとまれば、知り合いの待合や芸者屋に披露ひろうして引き幕を贈ってもらわなければならないとか、披露にまわる衣服きものにこれこれかかるとか、かの女も寝ころびながら
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
それもうぬ一個ひとりで鼻に掛けて、うぬ一個ひとりでひけらかして、うぬうぬ披露ひろうしている分の事なら空家で棒を振ッたばかり、当り触りが無ければ文三も黙ッてもいよう、立腹もすまいが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
但馬守たじまのかみ玄竹げんちくあいしたのは、玄竹げんちく岡部美濃守をかべみののかみ頓死とんし披露ひろうするにもつと必要ひつえう診斷書しんだんしよを、なんもとむるところもなく、淡白たんぱくあたへたといふこゝろ潔白けつぱくつたのがだい一の原因げんいんである。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
披露ひろうしたら、ふだん遊女の心理には通暁つうぎょうしていると自称する朋輩の一人から
朴歯の下駄 (新字新仮名) / 小山清(著)
妾も心中この人ならばと思い定めたる折柄おりからとて、直ちに承諾のむねを答え、いよいよ結婚の約を結びて、母上にも事情を告げ、彼も公然その友人らに披露ひろうして、それより同棲どうせいすることとなり
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
自転車で岡持おかもちを運んで来る若者は遠路をぶつぶつ叱言こごといったが、小初の美貌と、父親がてがう心づけとで、このごろはころころになって、何か新らしく仕込んだ洒落しゃれの一つも披露ひろうしながら
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その上に口が大変物である。俺は自信のある雄弁家だとそう披露ひろうでもしているように、やけに大きく薄いばかりか反歯そっぱでさえもあるのである。年はそちこち二十八、九か、色浅黒く肥えている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、チンドンなどがまわって、開店かいてん披露ひろうをしたのであります。
海が呼んだ話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つぐんだぜ。そしたら新宿の新歌舞伎座で、大々的襲名披露ひろうの看板を
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
其れから衛生委員えいせいいいんの選挙、消防長の選挙がある。テーブルが持ち出される。茶盆ちゃぼんで集めた投票とうひょうを、咽仏のどぼとけの大きいジャ/\ごえの仁左衛門さんと、むッつり顔の敬吉けいきちさんと立って投票の結果を披露ひろうする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
君は来るたんび引越しの披露ひろうをして行くね。
披露ひろうのとき呼んで御馳走ごちそうするです。シャンパンを飲ませるです。君シャンパンを飲んだ事がありますか。シャンパンはうまいです。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
披露ひろうは帝国ホテルで行うこと、御牧側では、子爵ししゃくは老体のことであるから、嗣子ししの正広夫妻が代理を勤めるであろうこと、等々の話をした。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
相違つかまつり候ては御役儀もかろ相成あひなり候故私しの内意仕つり候に付私再吟味御免をかうむり其後病氣と披露ひろう仕つり引籠ひきこもちう家來けらい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女連は大方は一度か二度以上口を利合ききあった人達であったが、それがいずれも、式のあとの披露ひろうの席に、酌や給仕をするためにやとわれて来たのであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あるものは演説口調くちょうで郷土の偉人いじんや、名所旧蹟きゅうせきや、特殊とくしゅの産業などを紹介しょうかいし、あるものは郷土の民謡みんよう舞踊ぶよう披露ひろうした。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
○さて口上いひ出て寺へ寄進きしんの物、あるひは役者へ贈物おくるもの、餅酒のるゐ一々人の名をあげしなよび披露ひろうし、此処忠臣蔵七段目はじまりといひてまくひらく
『神妙な仕方である。すぐ登城いたして、老中方へ披露ひろうに及び、お沙汰を仰ぐ事にするであろう。両所にはその間、緩々ゆるゆる当家に於いて休息あるがよい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お供をして来た役人たちの姓名の披露ひろうされる時にも、だれがいる、かれも来ていると、女王は深く耳にとまる気がした。高官たちも多数に来ていたのである。
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
奸黠かんきつな小田切久之進がことば巧みにその名笛を巻きあげて、まんまとそれを自分のくふうのごとくによそおいながら、将軍家に披露ひろうしましたものでしたから
ひそかに自任しているよりも、低く自分の徳を披露ひろうして、控目という徳性を満足させておきながら、欲念というような実際の弱点は、一寸見ちょっとみには見つからない程
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)