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手巾
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はんけち
ふりがな文庫
“
手巾
(
はんけち
)” の例文
滝田
君
(
くん
)
の
初
(
はじ
)
めて
僕
(
ぼく
)
の家へ来たのは
僕
(
ぼく
)
の大学を出た年の
秋
(
あき
)
、——
僕
(
ぼく
)
の
初
(
はじ
)
めて「
中央公論
(
ちゅうおうこうろん
)
」へ「
手巾
(
はんけち
)
」という
小説
(
しょうせつ
)
を書いた時である。
滝田哲太郎君
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「藤井は疑の外に居るよ、連弾し乍ら相手を撃つのは六づかしいし、それに、手袋や
手巾
(
はんけち
)
などを用意し乍ら、ピアノは弾けない」
音波の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
モウ五六間も門口の
瓦斯燈
(
がすとう
)
から離れて居るので、よくは見えなかつたが、それは何か美しい模様のある
淡紅色
(
ときいろ
)
の
手巾
(
はんけち
)
であつた。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
けれど秀子は
手巾
(
はんけち
)
で巧みに左の手先を隠していて分らぬ、此の様な隙でも斯う用心する程ゆえ、お浦に見られて必死に成ったのも無理はない
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
鳥
(
とり
)
が
飛
(
と
)
んで
行
(
い
)
ってしまうと、
杜松
(
ねず
)
の
木
(
き
)
は
又
(
また
)
元
(
もと
)
の
通
(
とお
)
りになりましたが、
手巾
(
はんけち
)
は
骨
(
ほね
)
と一しょに
何処
(
どこ
)
へか
消
(
き
)
えてしまいました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
▼ もっと見る
下着は
紬
(
つむぎ
)
かと思われる鼠縞、羽織は黒の奉書にお里の知れた
酸漿
(
かたばみ
)
の
三所紋
(
みところもん
)
、どういうはずか白足袋に
穿
(
はき
)
かえ、机の上へ出しそろえて置いた
財嚢
(
かみいれ
)
手巾
(
はんけち
)
巻烟草入
(
まきたばこいれ
)
を
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
と言ひ訳して、ぱたぱたと袖口より風を入れ、厭味たつぷりの絹
手巾
(
はんけち
)
にて滑らかなる額を押拭ふは、いづれどこやらの後家様で喰ふ、雑業も入込みし男と見へたり。
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
御自分
(
ごじぶん
)
はかくし
給
(
たま
)
へども、
他所行着
(
よそゆきぎ
)
のお
袂
(
たも
)
より
縫
(
ぬひ
)
とりべりの
手巾
(
はんけち
)
を
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
したる
時
(
とき
)
の
憎
(
に
)
くさ、
散々
(
さん/″\
)
といぢめていぢめて、
困
(
いぢ
)
め
拔
(
ぬ
)
いて、
最
(
も
)
う
是
(
こ
)
れからは
決
(
けつ
)
して
行
(
ゆ
)
かぬ
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
見るとパイプをしまって、
縞
(
しま
)
のある絹ハンケチで顔をふきながら、何か云っている。あの
手巾
(
はんけち
)
はきっとマドンナから巻き上げたに
相違
(
そうい
)
ない。男は白い
麻
(
あさ
)
を使うもんだ。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宣揚は
手巾
(
はんけち
)
で
襟元
(
えりもと
)
ににじみ出た汗を
拭
(
ぬぐ
)
いながら、今日帰って往く
己
(
じぶん
)
を夫人がどんな顔をして迎えるだろうと思ってその喜んだ顔を想像していた。黒い瞳と
朱
(
あか
)
い唇が眼の前にあった。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
先刻
(
さつき
)
から汚れた
手巾
(
はんけち
)
で汗ばんだ額を拭き/\、苦りきつてゐた『肉弾』の著者は、もう溜らなくなつたと見えて、つと妓達のゐる二階の方を振り向きざま、
狗
(
いぬ
)
のやうに吠えついた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
さて、そこに十分間の休憇があつた——その間、この時にはもうすつかり氣を落ちつけてゐた私は、ブロクルハースト氏の婦人たちが各自
懷
(
ふところ
)
の
手巾
(
はんけち
)
をとり出して、それを眼に當てるのを見た。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
と
衣紋
(
えもん
)
を
繕
(
つくろ
)
い
袴
(
はかま
)
の
皺
(
しわ
)
を伸ばし
手巾
(
はんけち
)
を
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
欄干をこわして、綾糸の帽子と白い
手巾
(
はんけち
)
を、展望台の下の岩鼻に
投
(
ほう
)
り出すことも、ささやかな準備の一つでした。
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
雨滴
(
あまだれ
)
の様に幾点か落ちて居る血を
手巾
(
はんけち
)
で拭っては見たが、真逆に其の寝床へ再び寝るほどの勇気は出ぬ、斯うも臆病とは余り情けないと自分の身を叱って見たけれど
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
脂
(
やに
)
を拭いた紙を寝覚の端へまるめ込んで、手を
手巾
(
はんけち
)
でもんで居るその手巾は、
過日
(
このあいだ
)
の白茶地ではないが、貞之進はそれに妙なことが思い出されて、じっと小歌の顔を
看上
(
みあ
)
げると
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
いひさしてお
力
(
りき
)
は
溢
(
あふ
)
れ
出
(
いづ
)
る
涙
(
なみだ
)
の
止
(
と
)
め
難
(
がた
)
ければ
紅
(
くれな
)
ひの
手巾
(
はんけち
)
かほに
押當
(
おしあて
)
て
其端
(
そのはし
)
を
喰
(
く
)
ひしめつゝ
物
(
もの
)
いはぬ
事
(
こと
)
小半時
(
こはんとき
)
、
坐
(
ざ
)
には
物
(
もの
)
の
音
(
おと
)
もなく
酒
(
さけ
)
の
香
(
か
)
したひて
寄
(
よ
)
りくる
蚊
(
か
)
のうなり
聲
(
ごゑ
)
のみ
高
(
たか
)
く
聞
(
きこ
)
えぬ。
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あの
手巾
(
はんけち
)
は屹度マドンナから巻き上げたに相違ない。男は白い麻を使ふもんだ。
坊っちやん
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
声の
主
(
ぬし
)
は妹である。旧式の
束髪
(
そくはつ
)
を
俯向
(
うつむ
)
けたかげに絹の
手巾
(
はんけち
)
を顔に当てた
器量好
(
きりょうよ
)
しの娘さんである。そればかりではない、弟も——
武骨
(
ぶこつ
)
そうに見えた大学生もやはり涙をすすり上げている。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『
戯談
(
じようだん
)
ば止しなされ。これ、そんだら何ですか。』と手を延べて、机の上から何か取る様子。それは
昨晩
(
ゆうべ
)
の
淡紅色
(
ときいろ
)
の
手巾
(
はんけち
)
であつた。市子が種蒔を踊つた時の腰付が、チラリと私の心に浮ぶ。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
するとマリちゃんは、
自分
(
じぶん
)
の
箪笥
(
たんす
)
へ
行
(
い
)
って、一
番
(
ばん
)
下
(
した
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
から、一
番
(
ばん
)
上等
(
じょうとう
)
の
絹
(
きぬ
)
の
手巾
(
はんけち
)
を
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
て、
食卓
(
テーブル
)
の
下
(
した
)
の
骨
(
ほね
)
を、一つ
残
(
のこ
)
らず
拾
(
ひろ
)
い
上
(
あ
)
げて、
手巾
(
はんけち
)
へ
包
(
つつ
)
み、
泣
(
な
)
きながら、
戸外
(
おもて
)
へ
持
(
も
)
って
行
(
ゆ
)
きました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
二人の手は、
何時
(
いつ
)
の間にやら
卓
(
テーブル
)
の上で、
手巾
(
はんけち
)
の下でまさぐり合って居ました。そして、その年の夏にはもう、二人は最後の一線の寸前まで辿り着いて居たのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:14 第四次元の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お浦を殺すとまで
劫
(
おびや
)
かした事は余が確かに聞いた所だ、其の時秀子は余の許へ来てさえも
手巾
(
はんけち
)
を以て巧みに左の手を隠して居た、左の手に恐ろしい証拠の傷が有るにあらずば
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
通懸りの薄色
縮緬
(
ちりめん
)
がハイと
酌
(
つ
)
いで呉れるを、貞之進はしきりに顫えてそのまゝ
猪口
(
ちょく
)
を膳の端に置き、
手巾
(
はんけち
)
で手を拭いてながめて居たが、それで腹の中はすでに酔ったような心持だ。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
いひさしてお力は
溢
(
あふ
)
れ
出
(
いづ
)
る涙の止め難ければ
紅
(
くれな
)
ひの
手巾
(
はんけち
)
かほに押当てその端を喰ひしめつつ物いはぬ事
小半時
(
こはんとき
)
、坐には物の音もなく酒の香したひて寄りくる蚊のうなり声のみ高く聞えぬ。
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そこで
継母
(
ままはは
)
は、
自分
(
じぶん
)
の
居室
(
いま
)
にある
箪笥
(
たんす
)
のところに
行
(
い
)
って、
手近
(
てぢか
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
から、
白
(
しろ
)
い
手巾
(
はんけち
)
を
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
て、
頭
(
あたま
)
を
頸
(
くび
)
に
密着
(
くっつ
)
けた
上
(
うえ
)
を、ぐるぐると
巻
(
ま
)
いて、
傷
(
きず
)
の
分
(
わか
)
らないようにし、そして
手
(
て
)
へ
林檎
(
りんご
)
を
持
(
も
)
たせて
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
千束守の
手巾
(
はんけち
)
らしいものが、静かな海風に吹かれて息づくようにヒラヒラと動いていたということです。
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
怪
(
あや
)
しさよと
計
(
ばか
)
り
敏
(
さとし
)
は
燈下
(
とうか
)
に
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
みしが、
拾
(
ひろ
)
ひきしは
白絹
(
しろぎぬ
)
の
手巾
(
はんけち
)
にて、
西行
(
さいぎやう
)
が
富士
(
ふじ
)
の
烟
(
けむ
)
りの
歌
(
うた
)
を
繕
(
つく
)
ろはねども
筆
(
ふで
)
のあと
美
(
み
)
ごとに
書
(
か
)
きたり、いよいよ
悟
(
さとり
)
めかしき
女
(
をんな
)
、
不思議
(
ふしぎ
)
と
思
(
おも
)
へば
不思議
(
ふしぎ
)
さ
限
(
かぎ
)
りなく
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
小柴書記の顔の上へ
麻酔薬
(
クロロホルム
)
を浸した
手巾
(
はんけち
)
をのせて、麻酔させ、此会議室に入って、悠々と機密書類を取り出し、入った道を逆に取って、落付き払って出て行ったものらしい——
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
縁の太いロイド
眼鏡
(
めがね
)
の光って居る具合、
手巾
(
はんけち
)
の下から、ほんの少しばかりですが、
山羊
(
やぎ
)
髭の覗いて居る工合、どう見てもそれは、東京新報の記者、高城鉄也の肖像でなければなりません。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
写真は台紙にも何んにも貼らず、大急ぎで焼き付けたばかりと見えて、まだ生々しく濡れて居りますが、
中折帽
(
なかおれぼう
)
を目深に、
手巾
(
はんけち
)
で下半分を隠した曲者の顔が、非常に明瞭に映って居ります。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“手巾”の意味
《名詞》
手拭い。ハンカチ。
「手巾帯」の略。
(出典:Wiktionary)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
巾
常用漢字
中学
部首:⼱
3画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭
手段