“展:ひろ” の例文
“展:ひろ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治19
海野十三11
田山花袋6
島崎藤村6
原民喜6
“展:ひろ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語2.2%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
雨はんだようだが、廊下の方に暮色がしのびよって来て、もうひろげた紙の上にあった微妙な美しい青も消え失せている。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
旗や馬幟うまじるしの激流は、雲が谿間たにまを出るように、銅鑼金鼓どらきんこに脚を早め、たちまち野へひろがった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸口では急にもついが始まり、板戸がコトリと鳴って月の出前の薄暗うすやみを五、六寸ばかりひろげられた。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
それを読んでいる笹村の目には、弱い子を持った母親の苦労の多かった自分の幼いおりのことなどが、長くひろがって浮んだ。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鶴見はそれをうらみとして、繰りひろげた回想の頁の上にかすかな光のさしている一点を、指さきでしっかり押えた。
いううちに、彼は、尼の方へ向けて、たずさえて来たというその下絵をひろげはじめた。そして静かに依頼者の感想をまった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うまく出たようだ。ここにある」湯河原中佐が、クルクルといてある細長い印画紙いんがしを机の上に、ひろげて見せた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてペンをくと、障子の硝子ガラスの向うに見える空が、いまどこまでも白く寒々と無限にひろがってゆくように想えた。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
朝はいつの間にか明け切って白銀色の光が家並みを一時に浮き出させると、人々は周章あわてて家々の戸を開けひろげた。
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
秀吉は、毛せんの上にひろげてあった一葉の花鳥画をのぞきこみ、於通おつうの筆と知ると、手ずから、くるくると巻いて持った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日も、三吉の書きかけた草稿を机の上にひろげて、すずしい、力のある父の達雄にく似た声で読聞かせた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
民助は弟の反省を促そうとするような調子で、今まで誰にも話したことの無いという父の生涯に隠れたものを岸本の前にひろげて見せた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、ぼんやりした意味の言葉を云い捨てて、雁金次席検事は沈黙した。新聞紙の他の面をひろげるらしい紙音が続いて僕の背後で起った。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
急いでその次をひろげて見ると、それは花のような姫君のおもてが、やはり無惨にも同じように針で無数の穴が明けられていました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「手帖をひろげるなら、こんなくだらんことを見せるのは止して、犯人の名を書いてあるところでも見せたがいいよ」
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お雪や子供と一緒に町の湯から帰って来たお種は、自分の柳行李やなぎごうりの置いてある部屋へ入って、身じまいする道具をひろげた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
密林は崖の下から再び始まり、斜面を下るにしたがってまばらになり、それが尽きるところから田がひろがっていた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
杜はバラックの中で、明るい電灯のもとに震災慰問袋の中に入っていた古雑誌をひろげて読みふけっていた。そのとき表の方にあたって、
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
熱風火塵は横ざまに吹きれているし、いたるところに敵味方のけじめもつかぬ血戦が繰りひろげられていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
フト見ると、「片岡鉄兵」や「葉山嘉樹よしき」などの巻頭の写真のところがひろげられたまゝになっていた。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
これまでひろげたことの無い自分の胸を展げて見せて、それを受け入れた節子と今まで合せたことの無いような顔を合せたのもその日であった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
決然と分岐する鋪装道路や高層ビルの一れんが、その上にひろがる茜色あかねいろの水々しい空が、突然、彼に壮烈な世界を投げかける。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ところが皺くちやな執事が、土蔵から取り出して観山氏の前にひろげたのはそんな小切こぎれでは無かつた。
淡墨の霧の底に、瀬音ばかりを響かせていた楢俣沢は、夜が明けると白い河原を渓の両側にひろげているのだ。
香熊 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
と吉野が、すずりを寄せて、墨をおろしている間に、禿かむろは次の部屋へ毛氈もうせんをのべ、そこへ唐紙とうしひろげて行った。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その隆運の気は、この六波羅の地相にも、まるで、絵屏風えびょうぶひろげたようにみなぎっていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
着物を洗う水の音がざぶざぶとのどかに聞こえて、隣の白蓮びゃくれんの美しく春の日に光るのが、なんとも言えぬ平和な趣をあたりにひろげる。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そこの大きな骨董屋こっとうやへはいってまず直入を出したが、奥から出てきた若主人らしい男はちょっとひろげて見たばかしで巻いてしまった。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
一方が、赤色手提灯あかいろてちょうちんの薄い光の下に、手帖をひろげて、読みにくい文字を書いた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
足許あしもとの川はすっかり暗くなっていたし、片方にひろがっている焼跡には灯一つも見えなかった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
少しでも多くの視野をひろげられるように、お銀様は、お雪ちゃんを自分の身に近く招き寄せましたから、お雪ちゃんはそのまま縁先ににじり寄ると、
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御客様はそで口を指で押えて、羽翅はがいのようにひろげて見せました。にわかに思直して、
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
草山の出鼻を曲ると、やや曇った西の空に、蝙蝠傘こうもりがさひろげたような雪の山が現われた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
と、たずさえて来たつかねの物を解かせ、おびただしいのぼりや小旗をひろげだした。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
細君はそれをひろげて見ても意味をさとることができなかったが、しかし促織が見えたので、胸の中に思っていることとぴったり合ったように思った。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
持って出たまままだ開いてみなかった新聞をひろげると、こんな見出しが、ふと彼女の眼にとまった。
初雪 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
手拭てぬぐいぽん裸絵巻はだかえまきひろげていたが、こんな場合ばあいだれくちからもおなじようにかれるのは
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
老人が夕刊紙に目を注ぐのは偶然夕刊紙がその手に触れて、その目の前にひろげられたが故であろう。
百花園 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これに至って私達は雲の領を脱したのであろう、眼の前がパッと開けて、脚の下に椈倉峠の頂上が草原らしい緑をひろげる、雪田も間近に光っている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
朝比奈主計あさひなかずえは、携えて来た書類をひろげて、評議に先立って、一応の説明を加えた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、清吉は暇を告げて帰ろうとする娘の手を取って、大川の水に臨む二階座敷へ案内した後、巻物を二本とり出して、先ず其の一つを娘の前に繰りひろげた。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その前に、アルバムをひろげて、紫色にせた自分の嬰児の写真からいちいち説明するのだ。
現代詩 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
ある朝、雨があがると、一点の雲もない青空が低い山の上にひろがっていたが、長雨に悩まされ通したものの眼には、その青空はまるで虚偽のように思われた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
全く見当のつかない品物だった。巻を下へ置いて、端の方から徐々に繰りひろげて見てゆくと——
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうした注視を知っているのか知らないのか、がさがさとひろげて、彼は誰にともなく云った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
やがて風が出て霧がちぎれ初めると紫色に染みながら、団々として飛んで行き、麓にひろがる三次平野や、めぐり流れる川々のパノラマがひろがって行く。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そして、その日の質問はそれで止めて、「第十八章、節倹の必要」という章をひろげさせた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
思ひも懸けぬ細いみちが、更に思ひもかけぬ汚い狭いおとろへた町を前にひろげた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
自由自在にさし入って来て、至るところにその静けさとさびしさとをひろげているのだった。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼は彼女の先々に涯知れずひろがるかもしれない、さびしく此土地に過ごされる不安を愚しく取越して、激しい動搖の沈まらない現在を、何うにも拭ひ去れなかつた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
祖師像をひろげてみせると、M翁は、老眼鏡をかけ、顔を画にくっつけて見入っていたが、
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自身の武者羽織を脱いで、草のうえにひろげ、その上へ共に手を添えて、静かに寝かした。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま広間の中ほどに、一面の大きな絵図が、小姓たちの手でひろげられた。それは畳二枚ほどもあった。——江州ごうしゅう蒲生郡安土あづち一帯の絵図である。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は机の上から原書をつき落とすようにして、紙をひろげると何事か一心不乱に書いた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
蒼白あおじろまぶたかげには、いろいろな場面がひろげられた。
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
強盗紳士の手際にりているので、たちまち厳重な警戒の網がひろげられた。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
庭の表面にただよう月光の照り返えしが、不意に室内に銀扇をひろげた形に反映した。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
村の下にひろがっている沼を見ると、女房とは反対に、いい按配風もないようである。
おびとき (新字新仮名) / 犬田卯(著)
要するに、ここまでは「古典平家」にはない話が多く、いわゆる平家物語の平家的諧調と色彩にとむ人間哀詩の絵巻はこれからくりひろげられるものとおふくみください。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山の中のことで、亭主は牛肉を包んだ新聞紙をもめずらしそうにひろげて、読んだ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
河の流れへ顔を向けて貝の片殻のやうにひろげたてのひらほおを乗せる。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
磯村は、ひろげられた原稿紙に向ひさうにしては、また煙草を手に取りあげてゐた。
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
樹と樹と重り合つた黒い影がところ/″\にかすりのやうなさまをひろげた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
充分に腹を養ったため、とみに正次は精気づき、心ものびのびとひろがって来た。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは洋服のボタンを外して両方へひろげるのと、なんの異るところもない。
人体解剖を看るの記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「周文ですかな……」ちょっとひろげて見たばかしで、おやおやと言った顔して、傍にかしこまっている弟子の方へ押してやる。弟子は叮嚀ていねいに巻いて紐を結ぶ。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
あとは、いくら繰りひろげても、何も描いてなかった。余白のほうが遥かに多い。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは一本の傘のひろげたのを車のように廻して皆が哄笑あざわらったのだ。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
ひざうへうたひろげ、片眼かためながら
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
山と海とせまったところに細長くひろがった神戸の町を私はふたたび見た。
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
屋敷町——畑道——丘——田や野や森や、晩秋の風物が見るまに駒のうしろになって行く。——そしてやがて、銀いろに光る武蔵野のすすきの海が眼の前にひろがってくる。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左右一面に氷の面が地平の遙か彼方かなたまで果てしなくひろがっている。
眼の前にひろげているのは、アナトール・フランスの短篇集だった。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
明るい紫紺のひろがりが、円くふたをなしてかれのうえにある。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
将軍は目をぱちくり。膝の上に青写真をひろげて、二度びっくり。
で、巴里から持って来た社交界雑誌ブウルヴァルジエをひろげた。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
都会の上にひろがる夏空はうそのように明るい光線だった。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
青々と晴れた大空の下に、この新年の絵巻がひろげられている。
正月の思い出 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
頭は犬で身體からだは蛇の物小屋ものごやに入らうか入るまいかと相談したり、食物や手遊品おもちやの店を見て𢌞はつたりした光景を、小池は頭の中で繪のやうにひろげながら
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その側から、兵は、幕をひろげて、附近の松の木や合歓ねむの木の幹へ張りめぐらし、それのない所には、幕杭まくくいを打ち込んで、またたくうちに一囲ひとかこいの幕屋を作った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひるすぎても、秀吉の前にはなお、新たな賀客がたえず、その間に秀吉は、祐筆ゆうひつ三人ばかりを側において、何か雑然と藩の扶持帳ふちちょう庫帳くらちょうなどをひろげさせ、
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
好奇心、眼に見えぬ自然の理法を学ぼうとするじつに熱心な研究、それが眼の前にひろげられた時の、有頂天に似た歓び、こういうものが、私の憶い出すことのできるもっとも幼いころの気もちなのだ。
眼前にひろがる蒼茫そうぼうたる平原、かすれたようなコバルト色の空、懸垂直下けんすいちょっか、何百米かの切りたったがけの真下は、牧場とみえて、何百頭もの牛馬が草をんでいる。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
紙はひろげられていても、そのような精神状態で、伸子は現在の入り組んだ感情を、どう整理する手段も見出せなかった。現在は、実生活の上で彼女の手に余っていると同じに、伸子の力量以上の素材だ。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
思いがけない方角から、辻永の声がした。オヤオヤと思って、声のする方に近づいてゆくと一つの古ぼけた建物があった。それをひょいとまがると、イキナリ眼前がんぜんひろげられた異常な風景!
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
丑松は其葉蔭を選んで、時々私語さゝやくやうに枝を渡る微風の音にも胸を踊らせ乍ら、懐中ふところから例の新聞を取出してひろげて見ると——蓮太郎の容体は余程あやふいやうに書いてあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
身のまわりの品と仕事道具は、ミシンを据えた六畳の間に置かれたが、部屋一杯、仕かかりの仕事をひろげて、その中でのぼせ気味に働くのが好きな彼女は、そこが乱雑になることは一向気にならなかった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
『相乗り幌かけほっぺた押付おっつけてけれつのぱあ』そうしたお浦山吹とからかわれそうなその後家さんと自分との上に繰りひろげられるだろう光景を考えてはゴクリ、ごくりと生唾を飲み込んだ。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
と、二人の膝のまえに、その絵巻を繰りひろげた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
店では一人の兵士がタオルをひろげて見ていた。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
内蔵助利三は、その前へ一巻の画軸をひろげて、
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絢爛けんらんたる花園が、未知の将来に明るく優麗な風景をひろげているような希望を抱いていたのであるけれど、この一両年このかた私の前途には、なにも待っていないのを、はっきり見きわめたのである。
利根川の鮎 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
回想はもちろんこれ以上にはひろがらない。
「あれ踏みつぶせ」と、麹義は、手兵をひいて、その陣へかかったところ、突如、五百の兵は、あたかも蓮花はちすの開くように、さっと、陣形をひろげたかと見るまに、に物を握るごとく、敵をつつんで
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目録を手に、現品をひろげて見較べながら、
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その手紙は、お増の前にもひろげられた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
手に取る様に二人が眼下にひろげられた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼は、いそいで、それを出してひろげた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
錦子がひろげると、孝子が首をのばして、
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お俊やお延は中の部屋に机を持出した。「お雪叔母さん」のところへ手紙を書くと言って、互に紙をひろげた。別に、お俊は男や女の友達へ宛てて送るつもりで、自分で画いた絵葉書を取出した。それをお延に見せた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)