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家
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や
ふりがな文庫
“
家
(
や
)” の例文
この
家
(
や
)
の窓にさす冬の日の暖なうちに、手先の冷える寒さの来ない中に、紙一枚でも多く胸にある事をかいて置きたいと思ふからだ。
冬日の窓
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
何も
彼
(
か
)
も忘れ果てて、狂気の如く、その
家
(
や
)
を
音信
(
おとず
)
れて聞くと、お柳は
丁
(
ちょう
)
ど
爾時
(
そのとき
)
……。あわれ、草木も、
婦人
(
おんな
)
も、
霊魂
(
たましい
)
に姿があるのか。
木精(三尺角拾遺)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
家
(
や
)
に、お通の乗っていた牛が繋がれているからには、お通の身も、共にここへ連れ込まれていることはもう疑う余地もあるまい。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松の間から見える
孤
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
が、秋の空の下で、燃え立つように赤かった。しかしそれが
唐辛子
(
とうがらし
)
であると云う事だけは一目ですぐ分った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分のような九尺二間のあばら
家
(
や
)
へ相応の家から来てくれてがあろうとも思わず、よしまた、あると仮定して
上
(
うわ
)
っ
冠
(
かぶ
)
りするのはなお
嫌
(
いや
)
。
幕末維新懐古談:23 家内を貰った頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
彼
(
かれ
)
は、おじいさんのあとについてゆきました。そして、なつかしい
我
(
わ
)
が
家
(
や
)
の
前
(
まえ
)
に
立
(
た
)
つと、だいぶんあたりのようすが
変
(
か
)
わっていました。
銀のつえ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「なアに、
私
(
あっし
)
はこうなることを見通していたんだ。お品さんが一年泊っていりゃア、三百六十六日目にこの
家
(
や
)
の旦那がやられるよ」
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
権頭のいわゆる「死っ損ないの老いぼれ」であろう、名を源兵衛と呼ぶこの
家
(
や
)
の老僕だ、——彼は急いで来たとみえて汗をかいている。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
初代の家は
巣鴨
(
すがも
)
宮仲
(
みやなか
)
の表通りとも裏通りとも判別のつかぬ、小規模な
商家
(
しょうか
)
としもうた
家
(
や
)
とが軒を並べている様な、細い町にあった。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この田崎は、武男が父の代より執事の役を務めて、今もほど近きわが
家
(
や
)
より日々川島家に通いては、何くれと
忠実
(
まめやか
)
に世話をなしつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
二人は
窃
(
そ
)
っと
藁苞
(
わらづと
)
の中から脇差を出して腰に差し、
慄
(
ふる
)
える足元を
踏〆
(
ふみし
)
めて此の
家
(
や
)
の表に立ちましたのは、丁度日の暮掛りまする時。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
知らず彦兵衞は金の
蔓
(
つる
)
に有り付たりと
悦
(
よろこ
)
び勇み望みの荷物を
請取
(
うけとり
)
是
(
これ
)
を
那
(
あゝ
)
して
斯
(
かう
)
してと心に
悦
(
よろこ
)
び我が
家
(
や
)
を指て
立歸
(
たちかへ
)
り淺草御門迄來懸る處を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
もともと
奴
(
やつこ
)
といふ名からして、大昔から
貶
(
いやし
)
められ、罵しられた卑稱で、あやつ、こやつ、やつ、やつこ、
家
(
いへ
)
の子、
家
(
や
)
ツ子だといふことだ。
凡愚姐御考
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
幾度も人の
尠
(
すく
)
ない時を見計らつてはお辻の死床に
名残
(
なごり
)
をおしみに来た二人の娘が、最後に
揃
(
そろ
)
つて庭を隔てた離れ
家
(
や
)
から出て来た。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
震災前では、先代の
文
(
ふみ
)
の
家
(
や
)
かしく、あの蟹のようにワイ雑な顔で、いつもきまって十年一日しゃっくりのまじる都々逸ばかりやりました。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
山の畑の段々道、山裾を切り拓いた赤土の道、柿や
蒟蒻芋
(
こんにゃくいも
)
を軒に吊した淋しい百姓
家
(
や
)
がちらほらと、冬枯れの
山家
(
やまが
)
は、荒涼としています。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
三廻りの神ならばどころでないね。しかし我々は百姓
家
(
や
)
に飛込んで、雨宿りは出来た様なものの船ではどうも仕様が無かったろう
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
ことに
此
(
こ
)
の
家
(
や
)
の老婦人も兄も、全く同じ「崩れる鬼影」という言葉を叫んだのですから、いよいよ
以
(
もっ
)
て出鱈目ではありますまい。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
榮子が
明日
(
あす
)
から居る処をみじめな田舎
家
(
や
)
とばかり想像されて、ねんねこの
掛襟
(
かけえり
)
を掛けながら泣いて居たのも鏡子だつたのである。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
奥州へ来て、広い原さえ見れば安達ヶ原だと思い、一つ
家
(
や
)
がありさえすれば鬼の
棲家
(
すみか
)
だと想像する自分の
頭脳
(
あたま
)
の御粗末さ加減に
呆
(
あき
)
れ返る。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私はむしろ、幼少の時から許嫁であつたといふ、この
家
(
や
)
の主人の次兄、当時の医学生であつた政二の方をよつぽど好きだつた。
念仏の家
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
さて、わたくしは或る夜ふしぎな
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
に立ち寄って見ましたが、それは何の不思議さもない、普通のお百姓家であったことを知りました。
玉章
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
神もおはしまさば
我
(
わ
)
が
家
(
や
)
の軒に
止
(
とゞ
)
まりて御覧ぜよ、仏もあらば我がこの手元に近よりても御覧ぜよ。我が心は清めるか濁れるか
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「横濱へ通ふ蒸氣は千枚張りの共車この
家
(
や
)
へ通ふは
人力車
(
りんりきしや
)
」の其頃は多少 exotiqeque であつた甚句の歌と共に
海郷風物記
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
と、一行は尻をたたいてこの
家
(
や
)
を出たが、婆さん
一向
(
いっこう
)
平気なもの、振向いてもみない。
食物
(
しょくもつ
)
本位の宿屋ではなかったと見える。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
生れて四十年、一
反
(
たん
)
五
畝
(
せ
)
の土と十五坪の草葺のあばら
家
(
や
)
の
主
(
ぬし
)
になり得た彼は、正に
帝王
(
ていおう
)
の気もちで、
楽々
(
らくらく
)
と足踏み伸ばして寝たのであった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
詩人ウオルズウオルスも、
亦
(
また
)
ライダルの
賤
(
しづ
)
が
家
(
や
)
に愛妹ドロセヤと共に見るかげもなき生活を営みて、
然
(
しか
)
も安らかに己が天職に奮進したりき。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
(自分をあざけるように)きょう、
松
(
まつ
)
の
家
(
や
)
のお
内儀
(
かみ
)
に、
泥棒猫
(
どろぼうねこ
)
だとののしられました。私の小指ほどの価もないあの鬼ばばに!
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
お蓮様づきとしてこの一つ
家
(
や
)
へ送られるまでは、兄や、手下の左官どもとともに、奉行所につづくお作事部屋にいたのですが。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「何だな、
吝臭
(
けちくさ
)
え。途中で
舎
(
よ
)
すようなら始めっから出ねえがいい。お前この節はいやに
緊
(
しま
)
り
家
(
や
)
になったな。」と
貶
(
けな
)
されると
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
それはすなわちあの
晩
(
ばん
)
気のどくな親方とわたしがこの
家
(
や
)
の
門口
(
かどぐち
)
にこごえてたおれたとき、寒気のために受けたものであった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
筑紫の、
櫨
(
はじ
)
の
木原
(
こばら
)
、木原には
夕光
(
ゆふかげ
)
満ち、夕光に
鷽鳥
(
うそどり
)
啼けり。宰府道、ここの木原に、
飼鳥
(
かひどり
)
の、よき
鷽鳥
(
うそどり
)
を、もつ
家
(
や
)
あらしも。
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
七夕祭の夜、
喜多
(
きた
)
の
家
(
や
)
の
茶荘
(
さそう
)
に招かれた時、平山君や僕から言い出した催しとて、趣向の事や人の寄りなどに就いては、人知れず苦労していた。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
柱
(
はしら
)
はかたむいて、
家
(
うち
)
というのも
名
(
な
)
ばかりのひどいあばら
家
(
や
)
でしたから、
坊
(
ぼう
)
さんは二
度
(
ど
)
びっくりして、さすがにすぐとは中へ
入
(
はい
)
りかねていました。
安達が原
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
ひとりは絲を
紡
(
つむ
)
ぎつゝ、わが
家
(
や
)
の人々と、トロイア
人
(
びと
)
、フィエソレ、ローマの物語などなしき、チアンゲルラや 一二四—
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
そうして落書の筆者の知れぬところに興味があった。この方こそ或いは
市振
(
いちぶり
)
の
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
などでの経験であったかも知れない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その欅の木の
側
(
そば
)
を通つて、右に曲つて、私はよく此処に遣つて来た。其頃、私の此
家
(
や
)
は丁度半分出来上つて、瓦師が書斎の屋根に瓦を載せて居た。
晩秋の頃
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
その将校には、前もってこの
家
(
や
)
の主婦が病気で隣室に寝ていることが耳に入れてあったので、彼のほうでも、そのことは別に気にもとめなかった。
狂女
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
少女
(
おとめ
)
あり、友が宅にて梅の実をたべしにあまりにうまかりしかば、そのたねを持ち帰り、わが
家
(
や
)
の
垣根
(
かきね
)
に埋めおきたり。
詩想
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それに引きかえて姉のわたしは、
二十歳
(
はたち
)
という今日の今まで、夫もさだめずに過したは、あたら一生を草の
家
(
や
)
に、住み果つまいと思えばこそじゃ。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
無事に此の
家
(
や
)
にゐてくれたのは有難いが、虐待されて、痩せ衰へてゐなければいゝが、………まさか一と月半の間に忘れる筈はないだらうけれど
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
やはり
家
(
や
)
ッ
子
(
こ
)
にほかならぬもので、国造、伴造をクニノミヤツコ、トモノミヤツコと訓むのは、「国の御奴」、「伴の御奴」の義でなければならぬ。
賤民概説
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
百姓達は冬圍ひが終つてしまふと、草
家
(
や
)
の中にもぐりこんで、土間にむしろを敷いて、繩を編んだり、草鞋を造つた。
防雪林
(旧字旧仮名)
/
小林多喜二
(著)
まったくその家はすぐそばまで行ってもそれと知らずにはちょっと気がつかないほど闇の中にあって闇にとけ込んで見える不思議な一軒
家
(
や
)
であった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
そこでその人の官舎へ来るようにとのことだったので、蘇州のしげの
家
(
や
)
という日本宿に落着いてから、やがてその官舎の方へお訪ねしたわけであった。
余齢初旅:――中支遊記――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
誰にしても好き嫌ひはあるもので、ゲエテは無駄話
家
(
や
)
が嫌ひだつた。シヨペンハウエルは女が嫌ひだつた。スウイフトは戸を閉めない人が嫌ひだつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ガタッ、ピシャッ、と、
家
(
や
)
鳴り震動するほどのはげしさで開けられた襖、そのわざとらしさ、おどけ好きの金五郎。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
それは、——さきほど私は、私たちの家のじき近くに離れ
家
(
や
)
が一つあると申しましたね。——その離れ家と私たちの
家
(
うち
)
との間には、広っ場があるんです。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
此
(
この
)
地には一切営業上の課税が無く、
唯
(
た
)
だ家屋税を
家主
(
いへぬし
)
より徴収せられる
丈
(
だけ
)
である割に家賃は
廉
(
やす
)
い。間口七
間
(
げん
)
奥行十五
間
(
けん
)
の二階
家
(
や
)
が一箇月八九十円である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
よろしくこの
家
(
や
)
にとどまってこの家運を守り給えば
長
(
とこしな
)
えに
龍王
(
ルー
)
の
享
(
う
)
け給うべき幸福は尽きることはございますまい
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
家
常用漢字
小2
部首:⼧
10画
“家”を含む語句
此家
家内
家中
家人
大家
自家
家庭
主家
商家
実家
住家
家主
彼家
好事家
家族
何家
家屋
当家
我家
吾家
...