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名残
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なごり
ふりがな文庫
“
名残
(
なごり
)” の例文
旧字:
名殘
「今日はいよいよお
暇
(
いとま
)
申さなければなりません、あまりお
名残
(
なごり
)
が惜しいと存じまして、お留守中に
一寸
(
ちょっと
)
ピアノを弾かして頂きました」
葬送行進曲
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
清吉も姪が可愛さに、若殿さまを二階に忍ばせて、十分に
名残
(
なごり
)
を惜しませた上で、二人を心中に出してやったんだろうと思われます。
半七捕物帳:53 新カチカチ山
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大空は
名残
(
なごり
)
なく晴れて朝日
麗
(
うらら
)
かに輝き、光る物には反射を与え、色あるものには光を添えて雑踏の光景をさらに
殷々
(
にぎにぎ
)
しくしていた。
忘れえぬ人々
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そうして
名残
(
なごり
)
の表に移らんとする二句前に花が現われて、それがまさにきたらんとするほがらかな活躍を予想させるようにも思われる。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
復た
何時
(
いつ
)
来られるものやら解らないから、と言って、達雄は
酷
(
ひど
)
く
名残
(
なごり
)
を惜んだ。三吉が表座敷で書いた物をも声を出して通読してみた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
弥左衛門町の横町に這入ると、急に街幅が狭く、日当りが悪くなって、二三日前の雨の
名残
(
なごり
)
が、まだ
処々
(
ところどころ
)
ぬかるみになって残っている。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
農家が各自の穀粉を
挽
(
ひ
)
くようになって、一旦起こりかけた
粉屋
(
こなや
)
という専門業が早く衰えてしまい、
名残
(
なごり
)
を粉屋の娘の民謡に
留
(
とど
)
めている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
作右衞門どんも
旧来
(
きゅうれえ
)
の馴染ではア
何
(
ど
)
うか止め
度
(
た
)
いと思うが、敵を討ちに行くてえのだから止められねえッて
名残
(
なごり
)
イ
惜
(
おし
)
がってるでがんす
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして、
真
(
ま
)
っ
赤
(
か
)
に、
入
(
い
)
り
日
(
ひ
)
の
名残
(
なごり
)
の
地平線
(
ちへいせん
)
を
染
(
そ
)
めていますのが、しだいしだいに、
波
(
なみ
)
に
洗
(
あら
)
われるように、うすれていったのでありました。
海のかなた
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
幾度も人の
尠
(
すく
)
ない時を見計らつてはお辻の死床に
名残
(
なごり
)
をおしみに来た二人の娘が、最後に
揃
(
そろ
)
つて庭を隔てた離れ
家
(
や
)
から出て来た。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
右側の
障子
(
しょうじ
)
をあけて、
昨夜
(
ゆうべ
)
の
名残
(
なごり
)
はどの
辺
(
へん
)
かなと眺める。
海棠
(
かいどう
)
と鑑定したのははたして、海棠であるが、思ったよりも庭は狭い。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
老爺が、
名残
(
なごり
)
惜しげに、小さい窓から見送っていると、武蔵は、十歩ほど往来をあるくと、
布緒
(
ぬのお
)
の
草鞋
(
わらじ
)
の緒を、ちょっと締め直していた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
源氏は夢とは思われないで、まだ
名残
(
なごり
)
がそこらに漂っているように思われた。空の雲が身にしむように動いてもいるのである。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
熱鬧
(
ねっとう
)
を
極
(
きわ
)
めたりし露店はことごとく形を
斂
(
おさ
)
めて、ただここかしこに見世物小屋の板囲いを
洩
(
も
)
るる
燈火
(
ともしび
)
は、かすかに宵のほどの
名残
(
なごり
)
を
留
(
とど
)
めつ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
上野寛永寺
(
うえのかんえいじ
)
の楼閣は早く兵火に
罹
(
かか
)
り
芝増上寺
(
しばぞうじょうじ
)
の本堂も
祝融
(
しゅくゆう
)
の
災
(
わざわい
)
に
遭
(
あ
)
う事再三。
谷中天王寺
(
やなかてんのうじ
)
は
僅
(
わずか
)
に傾ける五重塔に
往時
(
おうじ
)
の
名残
(
なごり
)
を
留
(
とど
)
むるばかり。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
月は段々高くなつて、水の如き光は既に夜の空に
名残
(
なごり
)
なく充ち渡つて、地上に置き余つた露は
煌々
(
きら/\
)
とさも美しく
閃
(
きら
)
めいて居る。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
さも、そのあたりに昼の
名残
(
なごり
)
が落ちているような、そして、それを捜しまわるように、ただ訳もなく家を出、あてどない道を歩いて行くのだ。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
送って来た本家と分寿々廼家のお神と愛子に
名残
(
なごり
)
を惜しむ間もなく、汽車はI—町を離れ、銀子も何となし目が
潤
(
うる
)
んで来た。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その面上にははや不快の雲は
名残
(
なごり
)
無く吹き
掃
(
はら
)
われて、その
眼
(
まなこ
)
は晴やかに
澄
(
す
)
んで見えた。この
僅少
(
わずか
)
の間に主人はその心の
傾
(
かたむ
)
きを一転したと見えた。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
自分で洗って自分で
拭
(
ふ
)
いて、それで一切の
後片附
(
あとかたづけ
)
を終って、その膳を拭いたという事を最後の
名残
(
なごり
)
として——いよいよ出て行くというのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そこには木材を積んだりセメントの
樽
(
たる
)
のような大樽を置いたりしてあるのが見える。彼は二三年前の事業熱の盛んであった
名残
(
なごり
)
であろうと思った。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ある人はそういうものは時代に
後
(
おく
)
れたもので、単に昔の
名残
(
なごり
)
に過ぎなく、未来の日本を切り開いてゆくには役に立たないと考えるかも知れません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
果して、この総踊りを
名残
(
なごり
)
に、その翌日になると、泊り客のほとんど総てが別れ別れになって、帰国の途につきました。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
粕谷で其子を中学二年までやった家は
此家
(
ここ
)
ばかりと云う程万事
派手
(
はで
)
であった故人が
名残
(
なごり
)
は、
斯様
(
こん
)
な事にまであらわれた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それが前年に七十七の賀宴を
両国
(
りょうごく
)
の
万八楼
(
まんはちろう
)
で催したのを
名残
(
なごり
)
にして、今年
亡人
(
なきひと
)
の数に
入
(
い
)
ったのである。跡は文化九年
生
(
うまれ
)
で二十九歳になる
文二
(
ぶんじ
)
が
嗣
(
つ
)
いだ。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お登和嬢に心の
名残
(
なごり
)
を惜しみつつ
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
りて中川の家を出でたるが下宿屋へは足の進まずしてとかく心は
後方
(
うしろ
)
へ戻る
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
自分は
良人
(
をつと
)
と相談をして夫人への
土産
(
みやげ
)
だけを出し、その弟子に托して
名残
(
なごり
)
惜しい
製作室
(
アトリエ
)
を出て引き返さうとした。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
青年探偵小説家は、二月余り通り慣れた村の細道を、一本の樹、一
莖
(
けい
)
の草にも
名残
(
なごり
)
を
惜
(
おし
)
みながら歩いていた。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この間も船は
帆駛
(
ほばし
)
って行った。
名残
(
なごり
)
の
夕筒
(
ゆうづつ
)
も次第にさめ、海は
漸次
(
だんだん
)
暗くなった。帆にぶつかる風の音も、夜に入るにしたがって、次第にその音を高めて来た。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
明
(
あけ
)
ぬれば月は空に
還
(
かへ
)
りて
名残
(
なごり
)
もとゞめぬを、
硯
(
すずり
)
はいかさまに
成
(
なり
)
ぬらん、
夜
(
よ
)
な/\影や
待
(
まち
)
とるらんと
憐
(
あはれ
)
なり。
月の夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それから二十年
経
(
た
)
っているから、お前さんは、ことし三十九だ。十代もくそもない、来年は四十代だ。四十まで振袖を着ていたら、もう振袖に
名残
(
なごり
)
も無かろう。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
『
喪
(
も
)
の
名残
(
なごり
)
』という俳書が暮秋の句の中に一括して入れているのを見ると、余計そういう風に考えられる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
一白庵の「
名残
(
なごり
)
」の茶会へひっぱりだして、逃げ場のないお茶室で、だしぬけに木津さんに逢わせてやろうと思っただけ……なによゥ、そんな大きな声をだして。
姦(かしまし)
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
注
(
つ
)
げば又
呷
(
あふ
)
りて、その余せるを男に差せば、受けて納めて、手を
把
(
と
)
りて、顔見合せて、
抱緊
(
だきし
)
めて、惜めばいよいよ尽せぬ
名残
(
なごり
)
を、いかにせばやと
思惑
(
おもひまど
)
へる互の心は
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
或る畠のまん中には、白い骨が乾草堆よりもずっと高く、山のようになっていました。あのおそろしいカイミアラの
名残
(
なごり
)
は、そのほかにはなんにもありませんでした!
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
つい近頃まではすっかり
淋
(
さび
)
れ切っていたそうで、部屋などもひどく
傷
(
いた
)
んではいたが、調度や立て付けの端々に、昔のこの町の繁栄の
名残
(
なごり
)
がしのばれるような家であった。
ツンドラへの旅
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
私は、磁石砲を入口に
据付
(
すえつ
)
けるために、貴重な三十分ばかりの時間を
費
(
ついや
)
し、それが終ると、久慈にくわしく注意をして、
名残
(
なごり
)
惜しくもクロクロ島を出掛けたのであった。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
もうちょっと……もうちょっと……ほんのそこまでと、
名残
(
なごり
)
惜しそうに送って来てくれるのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
爺さんは自分が何よりも手品が好きだつたので、お
名残
(
なごり
)
に媼さんと一緒にそれが見たかつたのだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
いつか向島にも五、六年
住馴
(
すみな
)
れて、今さら変った土地、それも宿場跡などへ行くのは誰も彼も気が進まず、たとえ
辺鄙
(
へんぴ
)
でも不自由でも、向島に
名残
(
なごり
)
が惜しまれるのでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
あれは昔の
名残
(
なごり
)
で、明治の初年には、あの辺一帯茶畠で、今活動写真のある六区は田でした。
寺内の奇人団
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
一時剣術に凝つたり、砲術を習つたりした
名残
(
なごり
)
で、どちらかといへば、さういふ時に槍など持つことを好んでゐた。父はさういふとき『
得手
(
えて
)
まへ』といふ言葉を
好
(
よ
)
く使つた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
予四十分ばかり見ていたが、大分腹も日も北山に傾いて来たから、
名残
(
なごり
)
惜しげに立ち去った。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
幸いに、メーツらは、明朝出帆の
名残
(
なごり
)
を惜しむために、皆、どこかへ行ってしまっていた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
昼の
名残
(
なごり
)
の光がだんだん淡くなってまったく消えてしまうと、真の
暗闇
(
くらやみ
)
が宝島を包んだ。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
と
言
(
い
)
って、
名残
(
なごり
)
惜
(
お
)
しそうに
帰
(
かえ
)
っていきました。
金太郎
(
きんたろう
)
はおかあさんの
前
(
まえ
)
に
手
(
て
)
をついて
金太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「
従妹
(
いとこ
)
」のような気持で
名残
(
なごり
)
を惜しんでいることは、なんとしても自分にわかり、それが、またそら恐ろしく、彼は、ずっと離れて、不安げに、ほとんど顔もあげ得ずに立っている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
若人はたすきりりしくあやどりて踊り屋台を引けば上にはまだうら若き里のおとめの舞いつ踊りつ扇などひらめかす手の黒きは日頃田草を取り稲を刈るわざの
名残
(
なごり
)
にやといとおしく覚ゆ。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
三輪山と云って人里離れた山中にホコラがあり、三輪神社と称し、奈良朝頃からの
由緒
(
ゆいしょ
)
ある氏神の
由
(
よし
)
だが、
名残
(
なごり
)
をとどめているのは大木の密林ばかり、ホコラはオモチャのように小さい。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
池の周囲には
繍線菊
(
しもつけ
)
が多く、いまだに
名残
(
なごり
)
の花をつけている。ここからうつぎやくましでの林を分け、数町下ると、そこに
明暦
(
めいれき
)
三年の爆裂孔で、熔岩トンネルを形作っている
鳩穴
(
はとあな
)
がある。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
名
常用漢字
小1
部首:⼝
6画
残
常用漢字
小4
部首:⽍
10画
“名残”で始まる語句
名残惜
名残惜敷