今日きょう)” の例文
今日きょうは、かぜがおもしろくないと、つい、自分じぶんのことのようにかんがえるのです。仕事しごとをするようになって、もうなんねんかわへいきません。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
京にいる平家一族の耳に入るのは、今日きょうはどこの源氏が蜂起した、昨日きのうは誰それが源氏に味方したというような知らせばかりである。
しばらくぶりに風をきって走るこころよさが身にしみるようだったが、今日きょうからまた、自転車でかようことを思うと気が重くなった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
蘿月は六十に近いこの年まで今日きょうほど困った事、つらい感情にめられた事はないと思ったのである。妹お豊のたのみも無理ではない。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今日きょうしも砂村方面へ卵の買い出しに出かけたが、その帰途かえりみちに、亀井戸天神の境内けいだいにある掛茶屋に立ち寄って、ちょっと足を休めた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
若者はこの老人をみるのは今日きょうがはじめであったので、老人が自分の毎日ここにやってくることを知っているのに不審ふしんをいだいた。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ここに馬車の休憩所ありて、馬にみずかい、客に茶を売るを例とすれども、今日きょうばかりは素通りなるべし、と乗り合いは心々におもいぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(どうだ、今日きょうの空のあおいことは、お前がたの年は、丁度ちょうど今あのそらへびあがろうとして羽をばたばたわせているようなものだ。)
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その怪物が居ります限り、今日きょう私を狂人と嘲笑あざわらっている連中でさえ、明日あすはまた私と同様な狂人にならないものでもございません。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今日きょうはお嬢さんが上野の音楽会へ出かけて、一日お留守だった。お嬢さんが居ないと、己は非常にさびしい。まるで家のうち落寞らくばくとする。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今日きょうから冬の季にはいる日は、いかにもそれらしく、時雨しぐれがこぼれたりして、空の色も身にんだ。終日源氏は物思いをしていて
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そうしてその好きな所が、時候の変り目や、天気都合でいろいろに変化する。時によると昨日きのう今日きょうで両極へ引越しをする事さえある。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『いや今日こんにちは、おおきみ今日きょう顔色かおいろ昨日きのうよりもまたずッといいですよ。まず結構けっこうだ。』と、ミハイル、アウエリヤヌイチは挨拶あいさつする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
じつ今日きょうここでそなた雨降あめふりの実況じっきょうせるつもりなのじゃ。ともうしてべつわし直接じかにやるのではない。あめにはあめ受持かかりがある……。
従って、こうした秋晴の朝は、今日きょううちに何かよい事が自分を待っているような気がして、何となく心がときめくのを覚えるのであった。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「おまえのような乱暴者らんぼうものみやこくと、いまにどんなことをしでかすかわからない。今日きょうからどこへでもきなところへ行ってしまえ。」
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、いつでもは安井がボーイ長の職務として、食事の準備、あと片づけ等はするのであったが、今日きょうは、波田はだが引き受けた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「あいツ、お前の縫った着物を着たら体がれあがって来るだろうさ、——ところで、今日きょう墓の中でいい言葉をみつけて来たよ」
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
どれどれ今日きょうは三四日ぶりで家へ帰って、叔父さん叔父さんてあいつめが莞爾にこつく顔を見よう、さあ、もう一服やったら出掛けようぜ
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
らっぱの音はほがらかにひびいた、かれは例のたんぼ道から町へはいろうとしたとき、今日きょうも生蕃が待っているだろうと思った。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
今日きょうのあの検事側の証人の件じゃ、シドニー、君は実にしっかりしてたね。どの質問もどの質問も手応えがあったからねえ。」
「なるとも。愉快、愉快、実に愉快。——愉快といや、なあお隅、今日きょうちょっと千々岩ちぢわに会ったがの、例の一条も大分はかが行きそうだて」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「おれはお前たちに一番わるいことをしている。しかし今日きょうからは堀口改心だ。堀口英太郎じゃない。見てくれ。このとおりだ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今日きょうの日のためばっかりに、どんなことでも、こらえて来たとじゃないですか。これまで、堪えきれんようなことも、随分あった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
紋「うむ、今日きょうはお兄上様からお心入こゝろいれの物を下され、それを持参いたしたお使者で、平生つねの五郎治では無かった、誠に使者太儀たいぎ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
無理もない、この海浜都市が、溌剌はつらつたる生気の坩堝るつぼの中に、放り込まれようという、今日きょうがその心もうきたつ海岸開きの日なのだから——。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
燕も何かたいへんよい事をしたように思っていそいそと王子のお肩にもどって来て今日きょうの始末をちくいち言上ごんじょうにおよびました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
今日きょうも、ローズ・ブノワさんは読方よみかたならったところをちっとも間違まちがえずに諳誦あんしょうしました。それで、いいおてんをいただきました。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「そんなに心配しんぱいしないでもいいんですよ。わたしいようにしてあげるから——だれでもあることなんだから——今日きょう学校がっこうをおやすみなさいね。」
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夕食の席で、民やが斯様こんな話をした。今日きょう午後猫をさがして居ると、八幡下で鴫田しぎたの婆さんと辰さんとこの婆さんと話して居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『いつもご精が出ます』くらいのまり文句の挨拶あいさつをかけられ『どういたしまして』と軽く応えてすぐ鼻唄はなうたに移る、昨日きのう今日きょうもかくのごとく
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
見ると、ブル、今日きょうはまた一だんとすごい顔をしかめて、両手を前につき出しながら、ジリジリ、ジリジリとよってくる。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
「甚兵衛さん、今日きょうのようにこまったことはありません。たぬきき声を知らないのに、けとなんべんもいわれて、私はどうしようかと思いました」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
相手に愛せられまた相手を愛してるらしい女の心の中に生ずる、一徹な怨恨を、だれが説明し得よう! 今日きょう明日あすとの間にすべては一変する。
「かの荷物は天和堂テンホータンで荷造りをして居る時は薬舗やくほへ預けて置くような風であったが今日きょう運んで行くところを見るとおかしい」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
(はがき)今日きょう越後えちご新津にいつを立ち、阿賀野川あがのがわの渓谷を上りて会津あいづを経、猪苗代いなわしろ湖畔こはんの霜枯れを圧する磐梯山ばんだいさんのすさまじき雪の姿を仰ぎつつ郡山こおりやまへ。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
では、今日きょうこそは、あの金の窓の家へいって見ようと思って、お母さまから、パンを一きれもらって、それをポケットにおしこんで出ていきました。
岡の家 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
今日きょうの景色には静かという趣は少しもない。活動力の凋衰ちょうすいから起こる寂しい心細いというような趣を絵に書いて見たらこんなであろうなどと考える。
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わたし今日きょう例のおおかみどもがずっと向こうの方を歩いているのを見ましたが、白のブランカのやつが、ときどきロボの先になってゆくのですよ。」
今日きょうの不成績は、ひきょうないい方だが、じゅうがよくなかったというよりも、ぼくの使ったじゅうの研究がたりなかった。
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
今日きょうしも盆の十三日なれば、精霊棚しょうりょうだな支度したくなどを致して仕舞ひ、縁側えんがわ一寸ちょっと敷物を敷き、蚊遣かやりくゆらして新三郎は
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「さあ、わたしは 今日きょうから あなたがたの むすこです。どうぞ ゆうがたまで あそんで きて ください。」
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
今日きょう一日は山中に潜伏して、日の暮るるを待って里へ出る方が安全であろうと、ひもじい腹を抱えて当途あてども無しに彷徨さまようちに、彼はおおいなる谷川のほとりに出た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あんた、知りはれしまへんのんか。肺病に石油がよう効くということは、今日きょうび誰でも知ってることでんがな」
秋深き (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「まだお目にもかからんが、御隠家様の指図で、今日きょうから酒の量を増して下さるというのはどういうわけかな?」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は観音のためには、生まれて以来今日きょうまでいろいろの意味においてそのおたすけをこうむっているのであるがこの観音様はあぶないところをわたくしがお扶けしたのだ。
しかしそれはなお彼の病的な好奇心を戦慄せんりつさせ、刺激した。「今日きょうこそは見てやるぞ。参ってはやるまい。」
今日きょうはまだ一しづくもやらねえんでね。あの医者は馬鹿だよ、ほんとに。もしラムを少しも飲まなけれぁ、ジム、己は酒精アルコール中毒が起るよ。もう少しは起ってるのだ。
世の貴婦人達のうらやむ珍品である、れを三人の娘の内、この年の暮に最も勇ましい振舞をしたものに与えると云う、しかし年の暮と云えば、今日きょうは十二月三十一日の夜
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
ルピック氏——フェリックス、今日きょうはなかなか感心だ。そうならそうで、とうさんにも考えがあるぞ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)