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わた
ふりがな文庫
“
亙
(
わた
)” の例文
いや、お袖、お燕の始末に限らず、楽翁と藪八のあいだには、今度の越前守をめぐる問題のすべてに
亙
(
わた
)
って、ある関与をもっていた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは余事に
亙
(
わた
)
るが、日本の歴史小説も、史実の
詮索
(
せんさく
)
に溺れるよりも、シェクスピーアの偉大さと深さを学ぶべきではあるまいか。
随筆銭形平次:13 平次身の上話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
未来完了、過去完了といろいろなテンスに
亙
(
わた
)
って“going”の変化をやらせて見ると、
呆
(
あき
)
れた事にはそれがやっぱり分っていない。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
去年の暮から小柴君の披露会までに
亙
(
わた
)
って、可なりの長講だった。文子夫人にも残らず聴いて貰って、悉皆見識を落してしまった。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
とは言え彼は又あらゆる科学の分野に
亙
(
わた
)
って、周到な洞察力と異状に明晰な分析的智力を振い宏大な価値深い学識を貯えていた。
デパートの絞刑吏
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
▼ もっと見る
わしはこれから、親切な教誨師の勧めによって、毎日少しずつ、数日に
亙
(
わた
)
って、わしの不思議な身の上話を始めようとするのだ。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
越中沢岳と木挽山とを連ねている山稜からは、両岸に峙つ赤黒い岩壁と其間を貫流する河身とが相当の距離に
亙
(
わた
)
って下瞰される。
黒部峡谷
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
岩田京四郎を除いて
外
(
ほか
)
の誰もが出来そうにないことから当然、二回に
亙
(
わた
)
る電気殺人の犯人として彼が
睨
(
にら
)
まれたのも
致方
(
いたしかた
)
ないことであった。
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蟲の
音
(
ね
)
亙
(
わた
)
りて月高く、いづれも哀れは秋の夕、
憂
(
う
)
しとても
逃
(
のが
)
れん
術
(
すべ
)
なき
己
(
おの
)
が影を踏みながら、
腕
(
うで
)
叉
(
こまぬ
)
きて小松殿の
門
(
かど
)
を立ち出でし瀧口時頼。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
人心は千状万態殆ど定法なきが如くに見ゆるも、これを達観する時は古今に通じ東西に
亙
(
わた
)
りて偉大なる統一力が支配しているようである。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
約
(
つづ
)
めていえば、稲日野は加古川の東方にも西方にも
亙
(
わた
)
っていた平野と解釈していい。可古島は現在の
高砂
(
たかさご
)
町あたりだろうと云われている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
即ちこれがいわゆる帝国主義なるものであって、十九世紀末より全世界に
亙
(
わた
)
り、植民地獲得の運動の旺盛を極めたのはこの結果に
外
(
ほか
)
ならぬ。
文明史上の一新紀元
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
そうして釣竿を右と左と
八
(
はち
)
の字のように
振込
(
ふりこ
)
んで、
舟首
(
みよし
)
近く、
甲板
(
かっぱ
)
のさきの方に
亙
(
わた
)
っている
簪
(
かんこ
)
の右の方へ右の竿、左の方へ左の竿をもたせ
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
同じ一つのアユまたはアイという風の名でも、永い歳月に
亙
(
わた
)
った経済事情の変化によって、眼に見えぬ重点の推移があった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
天台は
固
(
もと
)
よりのこと他宗の総てに
亙
(
わた
)
って一代の宗となる程の学力を有していた。禅の宗旨を論じた自筆の書物も存していたということである。
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それから一般的に新しい色彩が行き
亙
(
わた
)
っているため、本質的な思想家や芸術家は
既成
(
きせい
)
の人を除いてはぼかされ
易
(
やす
)
い
様
(
よう
)
です。
新時代女性問答
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
仏教では、三世に
亙
(
わた
)
り、十方に
遍
(
あまね
)
く、たくさんの仏さまが、おられると説いているのです。けだし、これは果たしてどんな意味なのでしょうか。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
その行ないにおいてはなおかつ滝の白糸たる活気をば
有
(
たも
)
ちつつ、その精神は全く村越友として経営苦労しつ。その間は実に
三年
(
みとせ
)
の長きに
亙
(
わた
)
れり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その附近一帯に
亙
(
わた
)
っていたから、停電が起ってから、犯人が外部から侵入したものとは考え難く、犯人は変装して客となってはいりこんでいたか
外務大臣の死
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
然
(
しか
)
しこの
噴火
(
ふんか
)
に
就
(
つ
)
いて
最
(
もつと
)
も
權威
(
けんい
)
ある
調査
(
ちようさ
)
を
遂
(
と
)
げたラクロア
教授
(
きようじゆ
)
は、
同年
(
どうねん
)
十二月十六日以來
(
じゆうにがつじゆうろくにちいらい
)
數回
(
すうかい
)
に
亙
(
わた
)
り
同現象
(
どうげんしよう
)
を
目撃
(
もくげき
)
した。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
なおまた、敬語を抜きにした記録体に致しましたために、無作法に
亙
(
わた
)
るような個所が出来るかも知れませんが、
何卒
(
なにとぞ
)
、悪しからず
御諒読
(
ごりょうどく
)
を願います。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「現世のみならず、永劫の争いじゃぞ。共に、
無間
(
むげん
)
地獄に墜ちて、悪鬼と化しても、争うぞ。一旦の勝を、勝と思うな。三界、三世に
亙
(
わた
)
って争うぞ」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
四五年前に死んだ
越後小千谷
(
えちごおじや
)
産まれの彼の父は、庸三の下宿時代から家庭生活時代へかけての幾年かに
亙
(
わた
)
って、越後の織物を売りに来たものだった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
うらうらと晴れ
亙
(
わた
)
った、暖かい日だった。冬とは思われない陽ざしの降り
濺
(
そそ
)
ぐ、なまあたたかい小春日和である。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
また奥深き深山でも極めて広範囲に
亙
(
わた
)
って何処でも到る処に生い茂っていて趣のあるものであるから、昔の歌よみが常識的にもこれを見逃すはずはなく
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
一刻も早く人通りのある往来へ出て了おうと焦りながら、針金を
亙
(
わた
)
した低い柵を越えて、ようやく池の
傍
(
わき
)
へ出た。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
屍体を検案するに、致命傷は前額部の一創にして、約拳大に
亙
(
わた
)
って、頭蓋骨粉砕し、
脳漿
(
のうしょう
)
露出す。他殺と確定。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
この引込線は全線に
亙
(
わた
)
って深い切通しの底を走っているのだ。そして何人かが切通しの縁に立っていない限りは列車の姿の眼に留まるはずがないからだと。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
その結果として、理想主義を予想する「意気地」が、媚態をその全延長に
亙
(
わた
)
って霊化して、特殊の存在様態を構成する場合はほとんど見ることができない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
何よりもすばらしかったのは、まるで空に大
篝火
(
かがりび
)
を焚いたように、俄に輝き出して、百マイルばかりに
亙
(
わた
)
って月も光を失ったほどの、隕石落下の光景でした。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
戦闘は九時間に
亙
(
わた
)
って継続し、
瑞典
(
スウェーデン
)
軍の死傷は三千、
聯盟軍
(
イムペリアリスツ
)
は七千を残して敗走せしも、夜の闇は追撃を阻み、その夜、傷兵どもは徹宵地に横たわりて眠る。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それから今日まで彼の名声は、ひとりイギリスばかりではなく、世界中のどこにもゆき
亙
(
わた
)
っているのを見ても、その一生涯の仕事の大きさが想われるわけです。
ニュートン
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
今や世界全土に
亙
(
わた
)
りて普及しつつある神霊運動の前には何物も抵抗すべくもない。世界で一番後一番後𢌞しになった日本国でも、
最早
(
もはや
)
その傾向が顕著になった。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
アヌンチヤタを見るべからざること五週に
亙
(
わた
)
るべし。彼君はフイレンツエの芝居に
傭
(
やと
)
はれ、斷食日の初にこゝを立つなりとぞ。ベルナルドオは語を繼ぎていはく。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
居士の俳論俳話のうち、最も広範囲に
亙
(
わた
)
り、首尾一貫したものとしては先ずこれを挙ぐべきであろう。
「俳諧大要」解説
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
此の一事だけでも半生に
亙
(
わた
)
る彼女の表現し得ない不断のせつなさは想像以上のものであつたであらう。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
(
第三十一圖
(
だいさんじゆういちず
)
1)、(
第三十二圖
(
だいさんじゆうにず
)
1)このどるめんは
石器時代
(
せつきじだい
)
から、
青銅器時代
(
せいどうきじだい
)
に
亙
(
わた
)
つて
行
(
おこな
)
はれたもので、
後
(
のち
)
には、だん/\
石
(
いし
)
で
造
(
つく
)
つた
長
(
なが
)
い
廊下
(
ろうか
)
のような
室
(
しつ
)
が
出來
(
でき
)
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
これは父祖代々五代に
亙
(
わた
)
って受け継いで来た長い歴史のために破損したのであって、ここに彫り込まれた三人目の漁夫は、大祖父によく似ていると
皆
(
みんな
)
が評判すること。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
以上は雪華研究の歴史を大略述べたのであるが、かくて六世紀に
亙
(
わた
)
る長期間を経たのち、われわれに最も親しい
彼
(
か
)
のウイルソン・エー・ベントレーが現れるのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
身に染み込んだ
罪業
(
ざいごふ
)
から、又梟に生れるぢゃ。
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
くにして百
生
(
しゃう
)
、二百生、
乃至
(
ないし
)
劫
(
こふ
)
をも
亙
(
わた
)
るまで、この梟身を免れぬのぢゃ。
審
(
つまびらか
)
に諸の患難を
蒙
(
かうむ
)
りて又尽くることなし。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
自分の性情に適したものは、なるべく多方面に
亙
(
わた
)
って書きたい。
然
(
しか
)
し、私のような人間であるから、それは単に希望
丈
(
だ
)
けで、其希望通りに書くことは出来ないかも知れぬ。
予の描かんと欲する作品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ハルトマンがこと葉に、哲學の歴史は古今に
亙
(
わた
)
れる
對話
(
ヂアロオグ
)
なりとあるも同じこゝろなるべし。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
而も狂人の家の出なのです——三代に
亙
(
わた
)
る白痴と狂人の家です!
彼女
(
あれ
)
の母親の
黒人
(
クリオール
)
は狂人で而も飮んだくれでした!——その娘と結婚してしまつた後で分つたことでしたが。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
抑
(
そもそ
)
も塩原の地形たる、
塩谷郡
(
しほやごほり
)
の南より群峰の間を分けて深く西北に
入
(
い
)
り、綿々として
箒川
(
ははきがわ
)
の流に
沂
(
さかのぼ
)
る
片岨
(
かたそば
)
の、四里に
岐
(
わか
)
れ、十一里に
亙
(
わた
)
りて、到る処
巉巌
(
ざんがん
)
の水を
夾
(
はさ
)
まざる無きは
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私
(
わたし
)
の
話
(
はなし
)
は、
短歌
(
たんか
)
のみならず、
日本
(
につぽん
)
の
歌
(
うた
)
の
大凡
(
おほよそ
)
に
亙
(
わた
)
つて、
知識
(
ちしき
)
をお
附
(
つ
)
けしたいと
思
(
おも
)
ふのですから、こんなことから、
初
(
はじ
)
めたわけです。それで
一口
(
ひとくち
)
だけ、
旋頭歌
(
せどうか
)
について
申
(
まを
)
しませう。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
その後先生の名が知れ
亙
(
わた
)
るようになったのは、当時青年の間に流行した倉田百三氏の『愛と認識との出発』の中で先生のこの本が紹介されてからのことであったように記憶している。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
遂に文化三年(千八百六年)より四年に
亙
(
わた
)
り、露人来りて
樺太
(
からふと
)
及び
蝦夷
(
えぞ
)
を
椋
(
かす
)
めぬ。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
通計四号分に
亙
(
わた
)
って分載されたのを、単行本に纏めて、大正十一年に、紅玉堂書店(横山光太郎氏)から出版したのであったが、
此
(
この
)
本は、ジュネーヴ湖から、シャモニイ、ローンの谷々
「続スウィス日記」発掘の始末:附「スウィス日記」の由来
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
昨日
(
きのふ
)
仰ぎし
惠那岳
(
えなだけ
)
は右に、
美濃
(
みの
)
一國の山々は波濤の打寄するが如く
蜿蜒
(
ゑんえん
)
と
連
(
つらな
)
り
亙
(
わた
)
りて、低き處には高原を
披
(
ひら
)
き、
凹
(
くぼ
)
き處には溪流を
駛
(
はし
)
らせ、村舍の
炊烟
(
すゐえん
)
、
市邑
(
しいう
)
の
白堊
(
はくあ
)
、その眺望の
廣濶
(
くわうくわつ
)
なる
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
「
拈華微笑
(
ねんげみしょう
)
」の昔はもちろん、百数十行に
亙
(
わた
)
る新聞記事さえ他人の気もちと応じない時にはとうてい
合点
(
がてん
)
のできるものではない。「彼」の言葉を理解するものはいつも「第二の彼」であろう。
十本の針
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
亙
漢検準1級
部首:⼆
6画
“亙”を含む語句
行亙
連亙
見亙
二亙
亙廊下
聯亙