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やかた
ふりがな文庫
“
館
(
やかた
)” の例文
甚五郎の行方は久しく知れずにて、とうとう蜂谷の
一週忌
(
いっしゅうき
)
も過ぎた。ある日甚五郎の
従兄
(
じゅうけい
)
佐橋
源太夫
(
げんだゆう
)
が浜松の
館
(
やかた
)
に出頭して
嘆願
(
たんがん
)
した。
佐橋甚五郎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
舌長姥 (時に、うしろ向きに乗出して、獅子頭を
視
(
なが
)
めつつあり)
老人
(
としより
)
じゃ、当
館
(
やかた
)
奥方様も御許され。見惚れるに無理はないわいの。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まあ今夜は、
邸
(
やしき
)
へお泊んなさい。そして何だな、明日、わしが紹介して進ぜるから、
王晋卿
(
おうしんけい
)
さまのお
館
(
やかた
)
へでも一つ伺ってみるんだな。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれこれと
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
っている
中
(
うち
)
にも、お
互
(
たがい
)
の
心
(
こころ
)
は
次第
(
しだい
)
次第
(
しだい
)
に
融
(
と
)
け
合
(
あ
)
って、さながらあの
思出
(
おもいで
)
多
(
おお
)
き
三浦
(
みうら
)
の
館
(
やかた
)
で、
主人
(
あるじ
)
と
呼
(
よ
)
び、
妻
(
つま
)
と
呼
(
よ
)
ばれて
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
こうして地主
館
(
やかた
)
から馬車を見られないようにして
発
(
た
)
ってしまう魂胆であった。彼はプリューシキンのところへ行こうと思ったのだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
▼ もっと見る
むろん長くは目をとめていなかった。ついと
外
(
そ
)
らしていた。いつの間にか、
館
(
やかた
)
の屋根裏や壁板もすっかり
煤
(
すす
)
けているのに気づいた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
館
(
やかた
)
は私たちの前にあつた。その鋸壁を見上げながら、彼は、その時限りで後にも
前
(
さき
)
にも見られなかつたほどの烈しい目付を投げつけた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
築地
(
ついじ
)
の
塀
(
へい
)
だけを
白穂色
(
しらほいろ
)
にうかべる橘の
館
(
やかた
)
に、彼女を呼ばう二人の男の声によって、夕雲は
錦
(
にしき
)
のボロのようにさんらんとして沈んで行った。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
あくる日の
午
(
うま
)
の刻すぎに、荏原権右衛門は高三河守
師冬
(
もろふゆ
)
の
館
(
やかた
)
をたずねた。師冬は師直の甥であるが幼い頃から叔父の養い子になっていた。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まず
軍
(
いくさ
)
の血祭りとして、土岐十郎頼兼と、多治見ノ四郎二郎国長とを、その
館
(
やかた
)
にこれより攻めて討ってとるということであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
京の円山を十倍したる
様
(
やう
)
にほのかに
輸廓
(
りんくわく
)
の思はるる山の傾斜の
木
(
こ
)
がくれに建てられし
館
(
やかた
)
どもに
点
(
とも
)
れる青き火、黄なる火、紫の火
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
建久
(
けんきゅう
)
九年十二月、
右大将家
(
うだいしょうけ
)
には、
相模川
(
さがみがわ
)
の橋供養の
結縁
(
けちえん
)
に
臨
(
のぞ
)
んだが、その帰途馬から落ちたので、供養の人びとに助け起されて
館
(
やかた
)
へ帰った。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし、彼らはすべて、この暗い名誉の
館
(
やかた
)
において一つでも多く栄誉を得ようとしたのだった。陰鬱な記念碑にむくいられようとしたのだ。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「
雉子
(
きじ
)
日記」のなかで、私は
屡々
(
しばしば
)
ミュゾオの
館
(
やかた
)
のことを持ち出したが、それについて富士川英郎君から非常に興味のあるお手紙を頂戴した。
雉子日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
この胆吹の上から
館
(
やかた
)
の屋根の上を飛び廻っておりましたが、やがてあの村へ飛び下りたのは、たった今のことでございました
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今少しずつ思い出しているのだが、………上はもう此の
館
(
やかた
)
におられないのだろうか。………あれは夢ではなかったのだろうか。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「当村の地主、陸軍中将、フォン=ラッベク閣下が、将校の方々にお茶を差上げたく、
館
(
やかた
)
まで即刻お越し下さるようお招きでござります……」
接吻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
野呂勘兵衛が小栗
美作
(
みまさか
)
を討つため、日雲閣へ
斬
(
き
)
りこんだのも、やはり月見の宴の折だったそうな。総じて
館
(
やかた
)
の討入りには、順法と逆法がある。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
五位は、利仁の
館
(
やかた
)
の
一間
(
ひとま
)
に、切燈台の灯を眺めるともなく、眺めながら、寝つかれない長の夜をまぢまぢして、
明
(
あか
)
してゐた。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
相隨ひし人々の、入道と共に還りし跡には、
館
(
やかた
)
の
中
(
うち
)
最
(
い
)
と靜にて、小松殿の側に
侍
(
はんべ
)
るものは御子
維盛
(
これもり
)
卿と足助二郎重景のみ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
かれ等は用水の
漲
(
みなぎ
)
つて流れる縁を通つて、この昔の
館
(
やかた
)
の
址
(
あと
)
の草藪に埋められてある傍を
掠
(
かす
)
めて、そしていつも揃つて野良の方へと出掛けて行つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
熊城君、算哲という人物は、実に偉大な
象徴派詩人
(
サムボリスト
)
じゃないか。この
尨大
(
ぼうだい
)
な
館
(
やかた
)
もあの男にとると、たかが『影と記号で出来た倉』にすぎないのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
畔柳元衛
(
くろやなぎもとえ
)
の娘
静緒
(
しずお
)
は
館
(
やかた
)
の腰元に通勤せるなれば、今日は特に女客の
執持
(
とりもち
)
に召れて、
高髷
(
たかわげ
)
、
変裏
(
かはりうら
)
に
粧
(
よそひ
)
を改め、お
傍不去
(
そばさらず
)
に
麁略
(
そりやく
)
あらせじと
冊
(
かしづ
)
くなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
植原
館
(
やかた
)
の大広間、信雄信孝等の正面近く、
角柱
(
かくばしら
)
にもたれて居るのは勝家である。勝家の甥三人も柱の近くに坐した。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
なかには目の覚めるようなりっぱな
館
(
やかた
)
がありその家の脇には、爺が押しこんだ柴がちゃんと積み重ねられてあった。
東奥異聞
(新字新仮名)
/
佐々木喜善
(著)
館
(
やかた
)
は鬼の高利貸の手に処分されるようになり、若くて
有為
(
ゆうい
)
の身を、笹屋の二階の老隠居と具張氏はなってしまった。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「そのときこそ、供養もしてもらい、成仏もしよう、それまでは魂となってとどまり、お
館
(
やかた
)
さまやお家を護り続ける覚悟である、と申しておりました」
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二重橋の外に
鳳輦
(
ほうれん
)
を拝みて万歳を三呼したる後余は
復
(
また
)
学校の行列に加はらず、芝の
某
(
なにがし
)
の
館
(
やかた
)
の園遊会に参らんとて行く途にて得たるは『日本』第一号なり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
百、二百、
簇
(
むら
)
がる騎士は数をつくして北の
方
(
かた
)
なる試合へと急げば、石に
古
(
ふ
)
りたるカメロットの
館
(
やかた
)
には、ただ王妃ギニヴィアの長く
牽
(
ひ
)
く
衣
(
ころも
)
の
裾
(
すそ
)
の
響
(
ひびき
)
のみ残る。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それ等にはそれぞれ「シャルルマーニュの体操場」「ラ・マンチアの図書室」「
P・R・B
(
プレ・ラファエレ・ブラザフッド
)
のアトリエ」「イデアの楯」「円卓の
館
(
やかた
)
」その他の名称の下に
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
鎌倉殿のお目に留まって以来、此の二、三年お
館
(
やかた
)
に仕えておりますが、
見目
(
みめ
)
形は申すに及ばず、心も気質も優しい女性でございます、名は
千手
(
せんじゅ
)
の
前
(
まえ
)
と申します
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
ただ平安朝時代の貴族の廣い
館
(
やかた
)
のやうで、裏には古い塚の傍にこれはまた清らかな水を滿々と湛へた泉があつた。雜草は
丈
(
せい
)
延
(
の
)
びて枯葉の中から生え上つてゐた。
草の中
(旧字旧仮名)
/
横光利一
(著)
その亡くなつた父も
略
(
ほゞ
)
同年位であつた。あれが
館
(
やかた
)
と己の館とは隣同士になつてゐて、二つの館が同じ運河の水に影をうつして、変つた壁の色を交ぜ合つてゐた。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
そして自身も姉を捨ててしまいました。お
館
(
やかた
)
でもよい侍を一人なくしておしまいになったのでございます。
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
槍形に
尖
(
とが
)
った先が金色につらなっている鉄柵ごしに、窓々のかたく閉された
館
(
やかた
)
が見え、ぐるりに繁っている雑草とその雑草に埋もれて大きい車寄せの石段が見えた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
われは聖母の前に伏し沈みて、心の重荷をおろさんとしつ。忽ち我側にありて、我名を呼ぶ人あり。アントニオの君よ。
館
(
やかた
)
も御奧もフイレンツエより歸り來ませり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
古びた騎士の山城でもなく、新しい飾り立てた
館
(
やかた
)
でもなく、横にのびた構えで、少数の三階の建物と、ごちゃごちゃ立てこんだ低いたくさんの建物とからできていた。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
別當の
館
(
やかた
)
は、この六坊をば、たとへば
堵列
(
とれつ
)
した兵士のやうに見て、それに號令してゐる指揮官といつたやうな前面の地位にあつて、天滿宮の本殿、拜殿と並んでゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
いろはから出直して、もう一度とっくりと考え直してみなよ! 井上の金八
館
(
やかた
)
は、まるで化け物屋敷みてえじゃねえか! 貧乏長屋かと思や中は存外と金満家なんだ。
右門捕物帖:19 袈裟切り太夫
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
成経 野武士らはわしの
懇願
(
こんがん
)
を
下等
(
かとう
)
な
怒罵
(
どば
)
をもって拒絶した。そして扉を破って
闖入
(
ちんにゅう
)
し、
武者草鞋
(
むしゃわらじ
)
のままでわしの
館
(
やかた
)
を
蹂躪
(
じゅうりん
)
した。わしはすぐに飛び出て馬車に乗った。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
慙
(
は
)
じて蛇になった例は、陸前佐沼の城主平直信の妻、佐沼御前
館
(
やかた
)
で働く大工の美男を
見初
(
みそ
)
め、夜分
閨
(
ねや
)
を出てその小舎を尋ねしも見当らず、内へ帰れば戸が鎖されいた。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
教春の一人娘
早百合姫
(
さゆりひめ
)
は三年前、京都の戦禍がやや
鎮
(
しず
)
まっていたとき、京都
滞陣
(
たいじん
)
の父の
館
(
やかた
)
に呼び寄せられ、まだ十四
歳
(
さい
)
の少女であったが、以来日々、茶の湯、学問、
舞
(
まい
)
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
海に突き出して一つの城廓のやうに
館
(
やかた
)
が
右手
(
めて
)
に見える。点々たる星の空の下にクツキリと四角に浮き出すその家の広間の中は、
煌々
(
くわう/\
)
としてどの位明るいのかと想はれる。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
一橋慶喜はこの事を聞いて尾州公を語らい、会津、桑名の両侯をも同道して、伏見にある奉行の
館
(
やかた
)
に急いだ。将軍に面謁して、その決意をひるがえさせることを努めた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
バヌヴィルの
館
(
やかた
)
で狩猟が催されていた、その間のことである。その秋は雨が多くて陰気だった。
寡婦
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
大なる殿様として、彼は再びアルスタアの
館
(
やかた
)
に納まり、突如としてイギリス政府に新しい喧嘩を買って出た。さらにまた突如として、彼は逃亡した——風のごとく消えた。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
侯爵閣下のその
館
(
やかた
)
は、どっしりとした建物であって、その前面には石を敷いた広い庭があり、二条の彎曲した石の階段が、表玄関の
扉
(
ドア
)
の前にある石の
露台
(
テレス
)
で出会っていた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
暫
(
しばら
)
く待って居りますと司令長官はこの邸内にあるテントの事務所から
館
(
やかた
)
の方に帰って来られた。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
クレルモン・トンネールの
館
(
やかた
)
があったマダム街を夏の夕方などに通る者は、そこに立ち止まって、撞球の音を聞き、随行員でカリストの名義司教たるコトレー師に向かって
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
フェルナンデスが
館
(
やかた
)
に行って見ると、武士が溢れるほど詰めかけていて、どれが敵、どれが味方とも解らなかった。ただ謀叛人を討伐する軍隊の統率者数人だけが識別された。
鎖国:日本の悲劇
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
館
常用漢字
小3
部首:⾷
16画
“館”を含む語句
旅館
美術館
御館
博物館
茶館
城館
鹿鳴館
白堊館
居館
別館
飯館
大英博物館
会館
領事館
函館
古館
大館
紅葉館
博文館
高館
...