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ぞうき
ふりがな文庫
“
雑木
(
ぞうき
)” の例文
旧字:
雜木
右側の
雑木
(
ぞうき
)
の一団が月の陰をこしらえている処に、細ぼそとしたカンテラの
燈
(
ひ
)
が
点
(
つ
)
いて、女が一人
裁縫
(
さいほう
)
しながら外の方を見ていた。
草藪の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
見上げると両側の山は切り
削
(
そ
)
いだように突っ立って、それに
雑木
(
ぞうき
)
や
赭松
(
あかまつ
)
が暗く茂っていますから、下から
瞻
(
み
)
ると空は帯のようなのです。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そして
漸
(
ようや
)
く奈良の杉と
雑木
(
ぞうき
)
の
濃緑
(
こみどり
)
の一色で塗りつめられたる単調の下に、銀色のすすきが日に日に高く
高畑
(
たかばたけ
)
の社家町の跡を埋めて行く。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
〔この山は
流紋凝灰岩
(
りゅうもんぎょうかいがん
)
でできています。
石英粗面岩
(
せきえいそめんがん
)
の凝灰岩、大へん
地味
(
ちみ
)
が
悪
(
わる
)
いのです。
赤松
(
あかまつ
)
とちいさな
雑木
(
ぞうき
)
しか
生
(
は
)
えていないでしょう。
台川
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
松
(
まつ
)
にまじって
生
(
は
)
えている
雑木
(
ぞうき
)
をたずねて
歩
(
ある
)
いていると、一
本
(
ぽん
)
のかしわの
木
(
き
)
があって、そこにかぶと
虫
(
むし
)
の
止
(
と
)
まっている
黒
(
くろ
)
い
脊中
(
せなか
)
が
見
(
み
)
られました。
玉虫のおばさん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
駈け出してゆくと、
雑木
(
ぞうき
)
の崖際に行きあたる。下を見下ろすと、夕立にぬれた樹々の間に、狩野川の渓流が白く透いて見える
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
比較的
嶮
(
けわ
)
しい曲りくねった坂を一つ上った時、車はたちまちとまった。
停車場
(
ステーション
)
でもないそこに見えるものは、多少の
霜
(
しも
)
に
彩
(
いろ
)
どられた
雑木
(
ぞうき
)
だけであった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこの岸辺には、こんもりと茂った
常盤木
(
ときわぎ
)
の林があって、その青い中に、
雑木
(
ぞうき
)
の紅葉が美しい
朱
(
しゅ
)
を点じ、それが動かぬ水に、ハッキリと姿を
映
(
うつ
)
していた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
秋の木の実を見るまでは、それらはほとんど
雑木
(
ぞうき
)
に
等
(
ひと
)
しいもののように見なしていましたが、その
軽蔑
(
けいべつ
)
の眼は欧洲大陸へ渡ってから余ほど変って来ました。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
尤
(
もっと
)
も、
御堂
(
みどう
)
のうしろから、左右の
廻廊
(
かいろう
)
へ、山の幕を
引廻
(
ひきまわ
)
して、
雑木
(
ぞうき
)
の枝も
墨染
(
すみぞめ
)
に、
其処
(
そこ
)
とも
分
(
わ
)
かず
松風
(
まつかぜ
)
の声。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかしその山は松だの
欅
(
けやき
)
だのいろいろな
雑木
(
ぞうき
)
が生えている密林なんでして、その林のなかをぐる/\歩いているうちに、木に引っかかって、フンドシが解けた。
紀伊国狐憑漆掻語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それが情けなく、見すぼらしく、
雑木
(
ぞうき
)
がちょぼちょぼと
繁
(
しげ
)
っているばかりで、高くもない
社殿
(
しゃでん
)
の
棟
(
むね
)
が雑木の上に
露出
(
ろしゅつ
)
しているのだ。自分はまた気がおかしくなった。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そうして不動尊の画像は、木の枝にかけておき、それから
四辺
(
あたり
)
の山林へ分け入って、杉の落葉だの、
雑木
(
ぞうき
)
の枯枝だのというものを盛んに
掻
(
か
)
き集めて来ては山を築きました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
他の
雑木
(
ぞうき
)
を
交
(
まじ
)
えぬところにまた一層潔い心持がある、その中をちょろちょろ、春の水が流れておるというので、この句は春水の美くしさを現わしたのが主眼となっておる。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ひる少しすぎ、戸山が原の
雑木
(
ぞうき
)
の林の陰に、
外套
(
がいとう
)
の
襟
(
えり
)
を立て、無帽で、煙草をふかしながら、いらいら歩きまわっている男が在った。これは、どうやら、善光寺助七である。
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
これじゃ頼もしくないと思って、
雑木
(
ぞうき
)
の涼しい影が落ちている下へ、くたびれた
尻
(
しり
)
をすえたまま、ややしばらく見ていたが、やはりくだらないという心もちは取消しようがない。
樗牛の事
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
八九 山口より柏崎へ行くには
愛宕山
(
あたごやま
)
の
裾
(
すそ
)
を
廻
(
まわ
)
るなり。
田圃
(
たんぼ
)
に続ける松林にて、柏崎の人家見ゆる辺より
雑木
(
ぞうき
)
の林となる。愛宕山の
頂
(
いただき
)
には小さき
祠
(
ほこら
)
ありて、
参詣
(
さんけい
)
の路は林の中にあり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
茶屋は少し山蔭の平地に
在
(
あ
)
って、ただ一軒の
穢
(
きた
)
ない小屋にすぎない、家の前には、近所の山から採って来た
雑木
(
ぞうき
)
が盆栽的に並んでいる。真暗な家の中には、夫婦に小供二、三人住んでいる。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
名もない
雑木
(
ぞうき
)
までが美しかった。
蛙
(
かわず
)
の声が眠く
田圃
(
たんぼ
)
のほうから聞こえて来た。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
あれた町が一つ、そこには古いおほりもあり、岩屋もあり、
塔
(
とう
)
もあった。
修道院
(
しゅうどういん
)
のあれたへいの中には、せみが
雑木
(
ぞうき
)
の中で、そこここに止まって鳴いていた——これはセンテミリオン寺であった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
与右衛門さんに
自慢話
(
じまんばなし
)
がある。東京者が杉山か何か買って木を
伐
(
き
)
らした時、其木が倒れて
誤
(
あやま
)
って
隣合
(
となりあ
)
って居る彼与右衛門が
所有林
(
しょゆうりん
)
の
雑木
(
ぞうき
)
の一本を折った。最初
無断
(
むだん
)
で杉を伐りはじめたのであった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
古川をさしはさむ町々を
見下
(
みおろ
)
し、
雑木
(
ぞうき
)
の多い
麻布台
(
あざぶだい
)
と向あっていた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
彼は銃を持ちなおして
雑木
(
ぞうき
)
にかくれて松の下の方へ往った。そして、
覘
(
ねら
)
いを定めて火縄を差した。強い音がして
弾
(
たま
)
の命中した
手応
(
てごた
)
えがあった。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ある
大
(
おお
)
きな
屋敷
(
やしき
)
のまわりは、
雑木
(
ぞうき
)
の
林
(
はやし
)
になっていました。ここには、すずめがたくさん
枝
(
えだ
)
に
止
(
と
)
まって、ふくらんでいます。
山へ帰ったやまがら
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その岸は
雑木
(
ぞうき
)
が茂って水の上に差し出ているのが暗い影を映しまた月の光が落ちているところは鏡のよう。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
池をめぐりては
雑木
(
ぞうき
)
が多い。何百本あるか
勘定
(
かんじょう
)
がし切れぬ。中には、まだ春の芽を吹いておらんのがある。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
濡れた眼を、
肱
(
ひじ
)
でこすりながら、露八は、八十三郎の手を引っぱった。街の松並木を、横切って、何かの堂閣が透いてみえる冬木立の
雑木
(
ぞうき
)
落葉を敷いて坐った。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを右へ切れて更に半町ほども行くと、元八の云った通り、路端に小さい
雑木
(
ぞうき
)
の森が見いだされた。
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この山と
地質
(
ちしつ
)
は同じです。ただ北側なため
雑木
(
ぞうき
)
が少しはよく
育
(
そだ
)
ってます。〕いいや
駄目
(
だめ
)
だ。おしまいのことを
云
(
い
)
ったのは
結局
(
けっきょく
)
混雑
(
こんざつ
)
させただけだ。云わないでおけばよかった。
台川
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
水田
(
すいでん
)
のかぎりなく広い、
耕地
(
こうち
)
の奥に、ちょぼちょぼと青い小さなひと村。二十五六戸の農家が、
雑木
(
ぞうき
)
の森の中にほどよく
安配
(
あんばい
)
されて、いかにもつつましげな静かな
小村
(
こむら
)
である。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そう「庭整はず」というほどの
不恰好
(
ぶかっこう
)
さは示さないのであるけれども、まだろくろく庭師を入れたというでもなく、手当り次第に
雑木
(
ぞうき
)
を植えたというに過ぎない庭であるから
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その
外
(
ほか
)
には一本の
雑木
(
ぞうき
)
も、一茎の雑草も見当らぬ点、樹木の間隔配置に人知れぬ注意が行届いて、異様の美を
醸
(
かも
)
し出している点、その下を通ずる細道の曲線が、世にも不思議なうねりを見せて
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ちょうど
雑木
(
ぞうき
)
の蔭になったところで、いくらか雨は避けられるようになっているが、葉末から落ちる時雨の
雫
(
しずく
)
がポタリポタリと
面
(
かお
)
を打つので竜之助が、うつらうつらと気がついたのは、あれから
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
例えば岩や松は
看者
(
みるもの
)
に一番近い手前のガラスへ描かれ、中景に当る茶店とか人家、中景の
雑木
(
ぞうき
)
などは、中間のガラスへ、遠景の空と山と滝といったものは一番奥のガラスへ描いてあります、なるほど
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
先頃も
雑木
(
ぞうき
)
を売払って、あとには杉か
檜苗
(
ひのきなえ
)
を植えることに決し、雑木を切ったあとを望の者に
開墾
(
かいこん
)
させ、一時豌豆や里芋を作らして置いたら、神社の林地なら
早々
(
そうそう
)
木を植えろ、畑にすれば税を取るぞ
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
さびしい
山
(
やま
)
の
間
(
あいだ
)
で、
両方
(
りょうほう
)
には
松
(
まつ
)
の
木
(
き
)
や、いろいろな
雑木
(
ぞうき
)
のしげった
山
(
やま
)
が
重
(
かさ
)
なり
合
(
あ
)
っていました。そして、ただ
一筋
(
ひとすじ
)
の
細
(
ほそ
)
い
路
(
みち
)
が
谷
(
たに
)
の
間
(
あいだ
)
についていました。
子供の時分の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そう云う場所へ来ると、馬車の上から低い
雑木
(
ぞうき
)
を
一目
(
ひとめ
)
に二丁も眺められる。向うに細長い石碑が立っていた。模様だけが薄く見えるが、
刻字
(
こくじ
)
は無論分らなかった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
晩秋の夕陽が
芒
(
すすき
)
の穂や
雑木
(
ぞうき
)
の枝に動いていた。そこには
菊芋
(
きくいも
)
の
丈
(
た
)
け高い麻のような茎も見えていた。
草藪の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「君も知っているだろう。僕の庭の隅に、大きい
欅
(
けやき
)
が二本立っていて、その周りにはいろいろの
雑木
(
ぞうき
)
が藪のように生い茂っている。その欅の下に小さい稲荷の
社
(
やしろ
)
がある。」
月の夜がたり
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もちろん千年の色を誇っているのである。ほかはことごとく
雑木
(
ぞうき
)
でいっせいに黄葉しているが、上のほう高いところに
楓樹
(
ふうじゅ
)
があるらしい。
木
(
こ
)
ずえの部分だけまっかに赤く見える。
河口湖
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
急にけわしい
段
(
だん
)
がある。木につかまれ木は光る。
雑木
(
ぞうき
)
は二本雑木が光る。
台川
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
伊那丸は
雑木
(
ぞうき
)
をわけて、まっ暗な
淵
(
ふち
)
をのぞきながら指さした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寝返
(
ねがえ
)
りをして、声の響いた方を見ると、山の出鼻を回って、
雑木
(
ぞうき
)
の間から、一人の男があらわれた。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
桂橋を渡り、旅館のあいだを過ぎ、
的場
(
まとば
)
の前などをぬけて、塔の峰の麓に出た。ところどころに石段はあるが、路は極めて平坦で、
雑木
(
ぞうき
)
が茂っているあいだに高い竹藪がある。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
秋風が山の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
を吹いていた。丹治は岩と
雑木
(
ぞうき
)
に挟まった
径
(
みち
)
を登って、
聳
(
そび
)
え立った大岩の上へ出たところで、ふと見ると、
直
(
す
)
ぐ上の方の高い黒松の
梢
(
こずえ
)
に一羽の大
鶴
(
つる
)
がとまっていた。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
こう口のうちで我を叱りながら、荒々しく、ガラス窓をおして外を眺めて見たが、薄黒く曇った空の下にどれもどれも同じように
雑木
(
ぞうき
)
の繁った山ばかり、これもなんとなく悲しく見えてしまった。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
高
(
たか
)
い
木
(
き
)
や、やぶの
雑木
(
ぞうき
)
などの
枝
(
えだ
)
が、ふるえています。
花と少女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「よしよし。気随気ままにさせて貰おう。——ところで、その方ども、商売のはなしは一向にせんが、察するところ、遠慮しておるとみえる。では、この方から切り出すが、きょう歩いた山の
雑木
(
ぞうき
)
台帳、これへ見せてくれい」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
杉の林は尽きて、さらに
雑木
(
ぞうき
)
の林となりました。路のはたには秋の花が咲き乱れて、
芒
(
すすき
)
の青い葉は
旅人
(
たびびと
)
の袖にからんで引き止めようとします。どこやらでは
鶯
(
うぐいす
)
が鳴いています。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そこは草や
雑木
(
ぞうき
)
の生えた
小藪
(
こやぶ
)
になっていて、すぐ右手に箱根八里の街道へ
脱
(
ぬ
)
ける
間道
(
ぬけみち
)
があって、それがだらだらとおりて
土橋
(
どばし
)
を渡り、
前岸
(
ぜんがん
)
の
山裾
(
やますそ
)
を上流に向ってうねうねと通じていた。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“雑木”の意味
《名詞》
木材として使われることの少ない(あるいはない)様々な樹木。主に薪として使われる。
(出典:Wiktionary)
“雑木”の解説
雑木(ぞうき、ざつぼく)とは、人の手によって植林、管理されたヒノキやスギといった建築材料としての利用機会や利用価値の高い針葉樹を中心とした樹木に対して、それ以外の経済的価値の低い広葉樹を主とした雑多な樹木をさす。雑木により構成された林を雑木林と呼ぶ。
(出典:Wikipedia)
雑
常用漢字
小5
部首:⾫
14画
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
“雑木”で始まる語句
雑木林
雑木山
雑木々
雑木原
雑木帯
雑木端山
雑木藪