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長閑
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のどか
ふりがな文庫
“
長閑
(
のどか
)” の例文
何処からか飼い
鶯
(
うぐいす
)
の声も聞えてくると言った
長閑
(
のどか
)
さ、八五郎の哲学を空耳に聴いて、うつらうつらとやるには、申分の無い
日和
(
ひより
)
です。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
とにかく震災地とは思われない
長閑
(
のどか
)
な光景であるが、またしかし震災地でなければ見られない臨時応急の「託児所」の光景であった。
静岡地震被害見学記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼は公園のベンチに腰をかけ、子供達がブランコに乗って遊んでいるのを、如何にも
長閑
(
のどか
)
な顔をして眺めながら、長い時間を過した。
心理試験
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
菜の花畑では百姓たちが
長閑
(
のどか
)
そうに野良仕事をしているが、賑やかな車輪の響を耳にすると、仕事をやめて、いちように背のびする。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
馬琴の家庭は日記の上では一年中低気圧に脅かされ通しで、春風
駘蕩
(
たいとう
)
というような
長閑
(
のどか
)
なユックリとした日は一日もなかったようだ。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
寂
(
せき
)
として人影もない、また
足脂
(
あしあぶら
)
に磨かれた広い板敷にも、
塵
(
ちり
)
ひとつ見えず、ただ何処からか
映
(
さ
)
す春の陽が
長閑
(
のどか
)
に
斜影
(
しゃえい
)
をながしている。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「私たちの使命が片づいたら、さっそく江戸を引き払って、お前さんのすきな京都へ帰って、
長閑
(
のどか
)
なくらしをすることにしましょう」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
陽気な
長閑
(
のどか
)
な日和の時には、晴々と子供らしく、見る者の心まで和らげる彼等は、しんだ日に猶々心を沈ませるような姿を見せる。
小鳥
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
堂とは一町ばかり
間
(
あわい
)
をおいた、この樹の
許
(
もと
)
から、桜草、
菫
(
すみれ
)
、山吹、植木屋の
路
(
みち
)
を開き
初
(
そ
)
めて、
長閑
(
のどか
)
に春めく蝶々
簪
(
かんざし
)
、娘たちの
宵出
(
よいで
)
の姿。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
達磨
(
だるま
)
はそれぎり
話題
(
わだい
)
に
上
(
のぼ
)
らなかつたが、これが
緒
(
いとくち
)
になつて、三
人
(
にん
)
は
飯
(
めし
)
の
濟
(
す
)
む
迄
(
まで
)
無邪氣
(
むじやき
)
に
長閑
(
のどか
)
な
話
(
はなし
)
をつゞけた。
仕舞
(
しまひ
)
に
小六
(
ころく
)
が
氣
(
き
)
を
換
(
か
)
へて
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
あたりの森林帯もすつかり春めいて
彼方此方
(
あちこち
)
の炭焼小屋から立ち昇る煙りまでが見るからに
長閑
(
のどか
)
らしく梢の間を消えてゆきます。
舞踏会余話
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
蚕飼
(
こがい
)
する時節は
長閑
(
のどか
)
に感ぜらるる者なるに、この歌前半の長閑なるに似ず、後半は長閑に感ぜられず、これがために趣味少きにやと存候。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ステッキをついて
猩々
(
しやう/″\
)
のやうに髯を生やした馬鹿に鼻の高い「おろしや人」が虎よりは見物人の方を見乍ら
長閑
(
のどか
)
にパイプを
喫
(
ふ
)
かしてゐる。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
さながらに井戸の中へ落込んだような
長閑
(
のどか
)
な春の日が涯てしもなく続き初めたので、
流石
(
さすが
)
に無頓着の平馬も少々閉口したらしい。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして客間は、
爽
(
さわ
)
やかな春の日の青空と
長閑
(
のどか
)
な陽の光が、其處にゐる人々を戸外に呼び出す時だけ、
空虚
(
から
)
になつて靜かであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
御茶漬
後
(
すぎ
)
(昼飯後)は殊更
温暖
(
あたゝか
)
く、日の光が裏庭の
葱畠
(
ねぎばたけ
)
から
南瓜
(
かぼちや
)
を乾し並べた縁側へ射し込んで、いかにも
長閑
(
のどか
)
な思をさせる。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
気ままに寝ッころがらしておいて、寄ってたかって世話を焼き、ぽってりと長い顎を撫でて、うへえと悦に入る
長閑
(
のどか
)
な顔が見たいのだという。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
此
(
こゝ
)
に於てわれ
自
(
みづか
)
ら名づくるに
来青花
(
らいせいか
)
の三字を以てしたり。五月薫風簾を
動
(
うごか
)
し、門外しきりに苗売の声も
長閑
(
のどか
)
によび行くあり。
来青花
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
自分が幾年かの前に初めて秩父の地に足を入れたのは、丁度朝の露が枯葉に結ぶ霜と変って、小春日和の
長閑
(
のどか
)
な空に柿の実が赤い頃であった。
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
太陽の光が湯ぶねに落ちている昼ごろ、誰一人客のない、がらんとした風呂で一人、ちゃぶちゃぶと湯を楽しんでいるのは
長閑
(
のどか
)
なことである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
すると池上は、人の事でもそういう無邪気で
長閑
(
のどか
)
な話を聞くと何だか
癪
(
しゃく
)
に触ると言って、その理由を苦渋そうに話しました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
暢気
(
のんき
)
な調子が、あのいかつい山岳に、睨みつけられている山奥の小屋と、何のかけかまいもない
長閑
(
のどか
)
なリズムをなしておる。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
そのとき母親と娘との眼路の
果
(
はて
)
に、まだ春浅い茜いろに
燻
(
いぶ
)
されたような桃花村が静かすぎる空につづいて
長閑
(
のどか
)
げに見えた。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
人気俳優の家庭を知っていることに
聴手
(
ききて
)
が興味をもつであろうと思って、そのくせ自分はキョトンとして
居睡
(
いねむ
)
りの出そうな
長閑
(
のどか
)
な顔をしていた。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
板谷との
長閑
(
のどか
)
な間柄が恋いしくなって来る。きんは、がっかりした気持ちで、しゅんしゅんと沸きたっているあられの
鉄瓶
(
てつびん
)
を取って茶を
淹
(
い
)
れた。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
莊惠觀魚
(
さうけいくわんぎよ
)
の談このかた、魚を觀るのは
長閑
(
のどか
)
な好い情趣のものに定つてゐるが、やがて割愛して、今度は艇を捨て、自動車で
龍頭
(
りゆうづ
)
の瀧へと向つた。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
町家の
内儀
(
ないぎ
)
や娘らしいのがそれぞれに着飾って、
萠黄
(
もえぎ
)
の風呂敷包などを首から下げた
丁稚
(
でっち
)
を供に
伴
(
つ
)
れて三々伍々町を歩いている。
長閑
(
のどか
)
な景色だ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
長閑
(
のどか
)
な響きではあっても、やはり生き生きとした華やかな心持ちではなかろうか。奈良の昔の鐘は諸行無常の響きを持っていたとは考えにくい。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
若い詩人仲間の
保護者
(
パトロン
)
を
以
(
もつ
)
て任じ、
偶
(
たま
)
には詩の一つも作ると云つた風の貴婦人も
其
(
その
)
若い仲間に取巻かれ
乍
(
なが
)
ら
長閑
(
のどか
)
に話して居る。(一月二十三日)
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
鄙
(
ひな
)
びた、ささやかな、むしろ可憐な感じのものながら、
流石
(
さすが
)
に初夏の宵の縁日らしい
長閑
(
のどか
)
な行楽的な気分が漂っていた。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
この頃は正月になっても、人の心を高い空の果へ引揚げて行くような、
長閑
(
のどか
)
な
凧
(
たこ
)
のうなりは
全然
(
まるで
)
聞かれなくなりました。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
見て吉兵衞は杢右衞門に向ひ
兵庫
(
ひやうご
)
の
沖
(
おき
)
を今日
出帆
(
しゆつぱん
)
せんは如何といふ杢右衞門は
最早
(
もはや
)
三が日の
規式
(
ぎしき
)
も
相濟
(
あひすみ
)
殊に
長閑
(
のどか
)
なる
空
(
そら
)
なれば
御道理
(
ごもつとも
)
なりとて
水差
(
みづさし
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
この
仇無
(
あどな
)
き
娧
(
いと
)
しらしき、美き娘の
柔
(
やはらか
)
き手を携へて、人無き野道の
長閑
(
のどか
)
なるを
語
(
かたら
)
ひつつ行かば、
如何
(
いか
)
ばかり楽からんよと、彼ははや心も
空
(
そら
)
になりて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
松立てぬ
家
(
うち
)
はあるとも、着物更えて
長閑
(
のどか
)
に遊ばぬ人は無い。甲州街道は木戸八銭、十銭の
芝居
(
しばい
)
が立つ。浪花節が入り込む。小学校で
幻燈会
(
げんとうかい
)
がある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
三
春
(
しゅん
)
の
長閑
(
のどか
)
なる、咲く花に
囀
(
さえず
)
る鳥は人工のとても及ばぬものばかりで、
富者
(
ふしゃ
)
も
貧者
(
ひんじゃ
)
も共に
享
(
う
)
けて共に喜ぶ権利は
異
(
ことな
)
らない
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
心
長閑
(
のどか
)
にこの春光に向かわば、詩人ならざるもしばらく世俗の
紛紜
(
ふんうん
)
を忘れうべきを、春愁堪え難き身のおとよは、とても春光を楽しむの人ではない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
一首の意は、今日は御所に仕え申す人達も、お
閑
(
ひま
)
であろうか、梅花を
揷頭
(
かざし
)
にして、此処の野に集っていられる、というので、
長閑
(
のどか
)
な光景の歌である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
うす雲の間から、
洩
(
も
)
れる弱い日影は、
藁葺屋根
(
わらぶきやね
)
の上に照って、静かな、
長閑
(
のどか
)
な天気でありました。やがて
大暴風雨
(
おおあらし
)
のする模様などは見えませんでした。
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
死の一歩手前まで、
逐
(
お
)
い詰められたような私の気持とは、およそ、似ても似つかぬ
長閑
(
のどか
)
さであった。
狐
(
きつね
)
につままれたような顔をして、家へ
辿
(
たど
)
りついて
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
やがて四人は、
卓
(
テーブル
)
の側へ集つて紅茶など飲んだ。そこに
先刻
(
さつき
)
の電報が、吾妻の目にもついた。
長閑
(
のどか
)
な天気であつた。
花が咲く
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
が、その人達を招いた彼
丈
(
だけ
)
は、たゞ一人怏々たる心を懐いて、
長閑
(
のどか
)
な春の日に、悪魔のやうな考へを、考へてゐる。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
併しコウした優しい環境の中に生活して、私は従来経験したことの無い
長閑
(
のどか
)
さと幸福とを享楽することが出来た。
馬鈴薯からトマト迄
(新字旧仮名)
/
石川三四郎
(著)
しづ心なく花の散るらむ——なぞと言へば余り莫迦げた
長閑
(
のどか
)
さすぎると思はれるかも知れないが、何んだかヂッと瞑目して明るい日向に項垂れてゐると
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
この句の咏嘆しているものは、時間の遠い
彼岸
(
ひがん
)
における、心の故郷に対する追懐であり、春の
長閑
(
のどか
)
な
日和
(
ひより
)
の中で、夢見心地に聴く
子守唄
(
こもりうた
)
の思い出である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
新暦の三月三日はまだ薄寒いが、旧暦の三月三日は、いわゆる桃の節句で、桜も咲けば、桃も咲き、蝶も飛び蜂も飛ぶ、一年中の最も
長閑
(
のどか
)
な季節である。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
いかさま「日本
娘の寵神
(
フラッパア・アイドル
)
——カブキの偶像」が
正
(
まさ
)
しく
鬚
(
ひげ
)
をそっているとみえて、水の音が
長閑
(
のどか
)
にきこえてくる。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
この場所のある記憶は、永遠に残るのであろう——静かな道路、深い蔭影、村の街路を
長閑
(
のどか
)
に歩き廻る森の鹿、住民もまた老幼を問わず同様に悪気が無い。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
そう云う
長閑
(
のどか
)
な春の日の午後、
天
(
あめ
)
の
安河
(
やすかわ
)
の河原には大勢の若者が集まって、余念もなく
力競
(
ちからくら
)
べに
耽
(
ふけ
)
っていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
周囲を取巻く岳樺の背から、残雪を帯びた奥不帰の連峯が、古びた
土器
(
かわらけ
)
色に、尖ったりふくらんだりして、この
長閑
(
のどか
)
な春めく光りの小天地をのぞきこんでいる。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
つまり、内角が外角に変ってしまうのですが、いまあの生物は引ん曲った溝を月の山のようにくねらせて、それは
長閑
(
のどか
)
な、憎たらしい
高鼾
(
たかいびき
)
をかいておりますの。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
長
常用漢字
小2
部首:⾧
8画
閑
常用漢字
中学
部首:⾨
12画
“長閑”で始まる語句
長閑気
長閑斎
長閑斎光廉