重量おもみ)” の例文
そこで辞し度いは山々だったろうが、両人の仲悪きは天下にも不為ふためであるという秀吉の言には、重量おもみが有って避けることが出来ぬ。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
男の方は、その重量おもみで、窓際へ推曲おしゆがめられて、身体からだ弓形ゆみなりえて納まっている。はじめは肩を抱込だきこんで、手を女の背中へまわしていました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうすると水分の重量おもみで胃袋を引下げるようになるから胃の下垂症かすいしょうやら胃拡張いかくちょうやらアトニー症という病気を起す。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
なんといったって死んだ人間の身体はひどく重量おもみのあるものだから、どうはずみをつけて放りだしたって、こんなところまで飛ばせるわけがねえ。もっと塀ぎわへ落ちるでしょう
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
踏み轟かす道人餡餅あんもち腹にりて重量おもみを増したるにや兎角にしりへさがる露伴子は昨年此道中を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
しな天秤てんびんなゝめよこけて、みぎまへ手桶てをけひだりうしろ手桶てをけけて注意ちういしつゝおりた。それでもほとんど手桶てをけぱいさう蒟蒻こんにやく重量おもみすこしふらつくあしあやうたもたしめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
両岸からは如何いかに高く藤蔓を張っても、其中心に当る点は、自然々々にたるみが出来て水面近く垂れているので有った。それに人の身の重量おもみが加わったので、危く水に漬りそうにまで成った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
苦しきを絞りて辛くも呼びたる男の声音こわねを、仙太は何とか聞きけん、お照は聞くとひとしく抱合いたる手をふり放ちて、思わずうしろを見返りたる時、取附きたる男のあせりて這上らんとする重量おもみ
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
うなじからかたおもふあたり、ビクツと手応てごたへがある、ふつと、やはらかかるく、つゝんで抱込かゝへこむねへ、たをやかさと重量おもみかゝるのに、アツとおもつて、こしをつく。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「……いや、まったく。頭はチンチン眼はモウモウ。こうして立っているのがやっとのところ。どんぶりへ入れた銭の重量おもみで前へのめくりそうでしょうがないから、こうやって駕籠につかまっているところなんです」
そのさきは水にくぐって、亀の子は、ばくりと紐をむ、ト袖口を軽くたもとを絞った、小腕こかいな白く雪を伸べた。が、重量おもみがかかるか、引く手にかすかに脈を打つ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船は十一分の重量おもみあれば、進行極めて遅緩ちかんにして、糸魚川いといがわに着きしは午後四時半、予定におくるることおよそ二時間なり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
申上まをしあげたて。……なれどもたゞ差置さしおいたばかりではさぎつばさひらかぬで、ひと一人ひとり重量おもみで、自然おのづからいでる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
重量おもみが、自然とつたわったろう、なびいた袖を、振返って、横顔で見ながら、女は力なげに、すっともとの座に返って
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姫様ひいさまから、御坊へお引出ものなさる。……あの、黄金こがね白銀しろがね、米、あわわきこぼれる、石臼いしうす重量おもみが響きますかい。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と立ったが、早急さっきゅうだったのと、抱いた重量おもみで、もすそを前に、よろよろと、お民は、よろけながら段階子だんばしご
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつかも客に連れられて中の植半うえはんへ行った時、お前、旦那がずッしり重量おもみのある紙入をこれ見よがしに預けるとな、かない気だから、こんな面倒臭いものは打棄うっちゃっちまうよ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だつて、眼鏡めがねかうとして、蝙蝠傘かうもりがさをとがひおさへて、うつむいたとおもふと、ほら/\、帽子ばうしかたむいて、重量おもみしづして、てるうちにすつぼり、あかはなうへかぶさるんだもの。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だって、目金を拭こうとして、蝙蝠傘をおとがいで押えて、うつむいたと思うと、ほら、ほら、帽子が傾いて、重量おもみで沈み出して、見てるうちにすっぽり、赤い鼻の上へかぶさるんだもの。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
は更けて、夏とはいえど、風冷々ひやひやと身に染みて、戦慄ぞっと寒気のさすほどに、えいさえめて茫然と金時は破垣やれがき依懸よりかかり、眠気つきたる身体からだ重量おもみに、竹はめっきと折れたりけり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中へ何を入れたか、だふりとして、ずしりと重量おもみあぶまして、筵の上に仇光あだびかりの陰気な光沢つやを持った鼠色のその革鞄には、以来、大海鼠おおなまこに手が生えて胸へのっかかる夢を見てうなされた。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
次第びくに、耐力たわいなく根を抜いて、すっと掻巻かいまきの上へ倒れたらしい心地がすると、ひしひしと重量おもみかかって、うむ、とされた同然に、息苦しくなったので、急いで、刎退はねのけにかかると
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おごつた、じまの郡内ぐんないである。通例つうれいわたしたちがもちゐるのは、四角しかくうすくて、ちよぼりとしてて、こしせるとその重量おもみで、すこあぶんで、ひざでぺたんとるのだが、そんなのではない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あをいのがえて、先刻さつきしろはな俤立おもかげだつ……撫肩なでがたをたゆげにおとして、すらりとながひざうへへ、和々やは/\重量おもみたして、うでしなやかにいたのが、それ嬰兒あかんぼで、仰向あをむけにかほ
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぐたりと左の肩へ寄凭よりかかる、……体の重量おもみが、他愛ない、暖簾のれんの相撲で、ふわりと外れて、ぐたりと膝の崩れる時、ぶるぶると震えて、堅くなったも道理こそ、半纏はんてんの上から触っても知れた。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、困った事は、重量おもみされて、板が引傾ひっかたむいたために、だふん、と潜る。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)