トップ
>
這入
>
はい
ふりがな文庫
“
這入
(
はい
)” の例文
ところが私と一緒に働いているここの職人の軽部は私がこの家の仕事の秘密を盗みに
這入
(
はい
)
って来たどこかの間者だと思い込んだのだ。
機械
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
大学を辞して朝日新聞に
這入
(
はい
)
ったら
逢
(
あ
)
う人が皆驚いた顔をして居る。中には
何故
(
なぜ
)
だと聞くものがある。大決断だと
褒
(
ほ
)
めるものがある。
入社の辞
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ところが学校の門を
這入
(
はい
)
る頃から、足が土地へつかぬようになって、自分の室に帰って来た時は最早酔がまわって苦しくてたまらぬ。
酒
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
其所
(
そこ
)
は栃木県下の
発光路
(
ほっこうじ
)
という処です。
鹿沼
(
かぬま
)
から三、四里奥へ
這入
(
はい
)
り込んだ処で、段々と
爪先
(
つまさき
)
上がりになった一つの山村であります。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
可笑
(
おかし
)
かったのは、
花時
(
はなどき
)
に
向島
(
むこうじま
)
に
高櫓
(
たかやぐら
)
を組んで、墨田の花を一目に見せようという計画でしたが、これは余り人が
這入
(
はい
)
りませんでした。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
▼ もっと見る
祖母は戸外から
這入
(
はい
)
ってきて、あまりにも口やかましい祖父に、不機嫌な視線を投げかけた。併し、祖父はそれどころではなかった。
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
見ている自分が「その絵の中に
這入
(
はい
)
って行ける」ような絵はあるまいか。こう思った時に私は「
上井草
(
かみいぐさ
)
附近」という絵を想い出した。
帝展を見ざるの記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
不図
(
ふと
)
そんなことを考えて硝子屋の前に立ったが、どの正札も高い。やけくそで、ぴょんぴょんと片脚で溝を飛んで煙草屋へ
這入
(
はい
)
ると
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
遙か下の方からは、うざうざするほど繁り合った
濶葉樹林
(
かつようじゅりん
)
に風の
這入
(
はい
)
る音の
外
(
ほか
)
に、シリベシ河のかすかな水の音だけが聞こえていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
先ず
彎曲
(
わんきょく
)
した屋根を戴き、装飾の多い扉の左右に
威嚇的
(
いかくてき
)
の偶像を安置した門を
這入
(
はい
)
ると真直な敷石道が第二の門の階段に達している。
霊廟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
八畳の間で、庭の新緑に眼を
遣
(
や
)
りながら四人が一と息入れているところへ、未亡人が
挨拶旁〻
(
あいさつかたがた
)
嫁や孫たちを引き合せに
這入
(
はい
)
って来た。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
……
暫
(
しば
)
らくしてから「次郎! 次郎!」と呼びながら、一人の、ずっと大きな、見知らない男の子が庭へ
這入
(
はい
)
って来るのを私は見た。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
お勢は
近属
(
ちかごろ
)
早朝より
駿河台辺
(
するがだいへん
)
へ英語の
稽古
(
けいこ
)
に参るようになッたことゆえ、さては今日ももう出かけたのかと
恐々
(
おそるおそる
)
座舗
(
ざしき
)
へ
這入
(
はい
)
ッて来る。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
政宗
謀叛
(
むほん
)
とは初めより覚悟してこそ若松を出たれ、と云った主人が、政宗に招かれて
躪
(
にじ
)
り上りから其茶室へ
這入
(
はい
)
ろうというのである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
が、私はよく勝手を知っていたので、庭の目隠しの下から手を差し込んで
木戸
(
きど
)
の
鍵
(
かぎ
)
を外し、便所の
手洗鉢
(
てあらいばち
)
の
傍
(
わき
)
から家の中に
這入
(
はい
)
った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
やがて往来に添って建ち並んで居るかやの家の土蔵の尽きた処から曲って
這入
(
はい
)
る横道へ、威勢よく人力車に隠れて仕舞うのである。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そしておもしろがりの人たちはとんでもない噂までたてゝ私たちの家庭の事に迄及んでゐることが私の耳にまで
這入
(
はい
)
つて来ました。
中村孤月様へ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
私達は
内
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
りました。小屋の中には上品な
老
(
とし
)
寄りの土人が居りましたが、私達を見ると立ち上り、機嫌よく迎えてくれました。
沙漠の歌:スタンレー探検日記
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
又
金子
(
かね
)
を沢山
懐中
(
ふところ
)
に入れて芝居を観ようと思って行っても、爪も立たないほどの
大入
(
おおいり
)
で、
這入
(
はい
)
り
所
(
どころ
)
がなければ観る事は出来ませぬ。
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
小学校を卒業すれば引続いて中学校へ
這入
(
はい
)
るのだから、むしろ十銭どころではない、なお学費を要する。マイナスくらいなものである。
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
あの少し前、彼女は土蔵へ行って荷物を整理しようかと思っていたのだが、もし土蔵に
這入
(
はい
)
っていたら、恐らく助からなかっただろう。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
これから本論に
這入
(
はい
)
って向象賢や蔡温や宜湾朝保がこの間に処していかに考えまたはたらいたかということをお話いたそうと存じます。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
人工蜃気楼の障壁を
這入
(
はい
)
ると、其処に、忽然と
繰展
(
くりひろ
)
げられたのは、言葉通り百花繚乱と咲き乱れた花園のような『日章島』だった。
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「お父さんな、まだ帰らんのか。」と浅七は外から
這入
(
はい
)
って来た。家の中は暗かった。
囲炉裏
(
いろり
)
の中には
蚊遣
(
かやり
)
の青葉松が
燻
(
いぶ
)
って居た。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
屹
(
きっ
)
となりてばたばたと内に
這入
(
はい
)
り、金包みを官左衛門に打ち附けんとして心附き、坐り直して
叮寧
(
ていねい
)
に返す処いづれも
尤
(
もっとも
)
の仕打なり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
町はずれの町長のうちでは、まだ
門火
(
かどび
)
を燃していませんでした。その
水松樹
(
いちい
)
の
垣
(
かき
)
に
囲
(
かこ
)
まれた、
暗
(
くら
)
い
庭
(
にわ
)
さきにみんな
這入
(
はい
)
って行きました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
戸を叩くと、直ぐに中から開いて、黄色い光が雪の上に流れた。みんながはいったので、私も低い入口から背をこごめて
這入
(
はい
)
った。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
併しやっぱりボヤッとした無表情な顔で、クルリと
後
(
うしろ
)
向きになると、そのまま大急ぎで向うの路地へ
這入
(
はい
)
って行ってしまいました。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
誰の部屋へでも
這入
(
はい
)
り込んで行く。この部屋まで這入って来る。何か食べる物でも置いてやらないと、そこいら中あの犬が狩りからかす
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
御用部屋へ
這入
(
はい
)
って、内匠頭は、すぐ式服を着替えた。もし、大紋の用意をして来なかったら——と思うと、冷たい汗が
滲
(
にじ
)
み出る。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なぞ、なかなか面白いが、
今朝
(
けさ
)
も何か、そんなニュースが
這入
(
はい
)
ったらしい。吾輩は頭のフケを
狂人
(
きちがい
)
のように掻きまわしながら起上った。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
遅い朝を、もう余程、今日の
為事
(
しごと
)
に
這入
(
はい
)
ったらしい木の道の者たちが、骨組みばかりの家の中で、立ちはたらいて居るのが見える。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
かう思つて、わたしはすぐ
傍
(
そば
)
にある小さい
珈琲店
(
カフェー
)
の
硝子戸
(
がらすど
)
をあけて
這入
(
はい
)
つた。場合が場合であるから、どんな
家
(
うち
)
でもかまはない。
赤い杭
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こんどは格子戸に隠れるようにしている妹の人にも、「お
這入
(
はい
)
りなすって——。」と、初めて会った妻は、くれぐれも乳のことを頼んだ。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
隊長、小頭の四人と配下の十六人とは、まだ夜の明けるに間があるから、
一寐入
(
ひとねいり
)
して起きようと云うので、快よく別れて寝床に
這入
(
はい
)
った。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その花の一つの中にぶんぶんうなりながら
這入
(
はい
)
って行った、その時、その椿の赤い花は、ぼたりと地上に落ちたというのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
程なく
彼誰時
(
かわたれとき
)
の薄明りが、忍びやかに部屋の窓から
這入
(
はい
)
って来た。この
暁
(
あかつき
)
の近づいて来る
微
(
かすか
)
なしるしが、女のためにはひどく
嬉
(
うれ
)
しかった。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
『それぢや、
話
(
はな
)
しにならないわ』と
愛
(
あい
)
ちやんは
自棄
(
やけ
)
になつて、『
何
(
なん
)
て、
愚物
(
ばか
)
なんだらう!』と
云
(
い
)
ひながら、
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けた
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
りました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
最初に兄が一家を構えたのは根岸
最寄
(
もより
)
で上野
御隠殿下
(
ごいんでんした
)
の線路のすぐそばの新築の家でした。上野の坂下の方から曲り曲って
這入
(
はい
)
るのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
例えば江戸市中の
何処
(
どこ
)
の所に
掘割
(
ほりわり
)
をして
通船
(
かよいせん
)
の
運上
(
うんじょう
)
を取るが
宜
(
よろ
)
しいと云う者もあり、又
或
(
あるい
)
は
新川
(
しんかわ
)
に
這入
(
はい
)
る酒に税を課したら
宜
(
よ
)
かろうとか
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
農村の青年たちは、鍬や鎌を捨て、窮乏と過労の底にある家に、老人と、幼い弟や妹を残して、兵営の中へ
這入
(
はい
)
って行かなければならない。
入営する青年たちは何をなすべきか
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「しかし、たとえば、留置場か、棺桶の
蓋
(
ふた
)
のような気がする。いや、待てよ。留置場や棺桶は、自分で
這入
(
はい
)
るものではないが」
記憶
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その時、
劇
(
はげ
)
しく扉が明け放たれた。そして濃い空色のショウルを
自暴
(
やけ
)
に手首に巻きつけたモデルのとみ子がつと
這入
(
はい
)
つて来た。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
あの村のマルタ
奴
(
め
)
の妹のマリヤが、ナルドの香油を一ぱい満たして在る
石膏
(
せっこう
)
の壺をかかえて饗宴の室にこっそり
這入
(
はい
)
って来て、だしぬけに
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
素通
(
すどほ
)
りもなるまいとてずつと
這入
(
はい
)
るに、
忽
(
たちま
)
ち
廊下
(
らうか
)
にばた/\といふ
足
(
あし
)
おと、
姉
(
ねへ
)
さんお
銚子
(
てうし
)
と
聲
(
こゑ
)
をかければ、お
肴
(
さかな
)
は
何
(
なに
)
をと
答
(
こた
)
ふ。
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
女の人は三郎次を連れて半町ばかりも歩いたかと思うと、立派な家の中に
這入
(
はい
)
りました。三郎次も
後
(
あと
)
から続いて這入りました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
薪が売れてしまえばそれで居酒屋へ
這入
(
はい
)
ってコップをぐっと引っかけておさまり込んでしまう、一日それ以上の仕事も以下の仕事もしない
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかもこの八尺の怪物が入口から
這入
(
はい
)
ってきたのでないとすると、まるで煙のようにこの部屋に忍びこんだということになる。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ハバトフはその
間
(
あいだ
)
何故
(
なにゆえ
)
か
黙
(
もく
)
したまま、さッさと六
号室
(
ごうしつ
)
へ
這入
(
はい
)
って
行
(
い
)
ったが、ニキタは
例
(
れい
)
の
通
(
とお
)
り
雑具
(
がらくた
)
の
塚
(
つか
)
の
上
(
うえ
)
から
起上
(
おきあが
)
って、
彼等
(
かれら
)
に
礼
(
れい
)
をする。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ところがこの法林道場の中へ
這入
(
はい
)
るとそれが一人一人みながやるんです。そうして上級下級に論なく老僧が小僧と問答するという有様です。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
這
漢検準1級
部首:⾡
11画
入
常用漢字
小1
部首:⼊
2画
“這入”で始まる語句
這入口
這入込
這入來
這入所