“這入:はい” の例文
“這入:はい”を含む作品の著者(上位)作品数
夢野久作48
夏目漱石42
高村光雲30
寺田寅彦23
森鴎外22
“這入:はい”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 彫刻 > 彫刻史 各国の彫刻42.0%
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸35.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語10.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
二人は柴又しばまた帝釈天たいしゃくてんそばまで来て、川甚かわじんといううち這入はいって飯を食った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
詰襟服つめえりふくの弦三が、のっそり這入はいってきた。なんだか、新聞紙で包んだ大きなものを、小脇にかかえていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかもこの八尺の怪物が入口から這入はいってきたのでないとすると、まるで煙のようにこの部屋に忍びこんだということになる。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ベルを押すと、美しい十四五の小間使が出て、名刺を受け取って這入はいって、間もなく出て来て「どうぞこちらへ」と案内した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「それだけ皆な残さずに使ってもえいぜ。また二月にでもなれゃ、なんとか金が這入はいんこともあるまい。」と云った。
窃む女 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
戸を開けて這入はいって来たのは、ユダヤ教徒かと思われるような、褐色かっしょくの髪の濃い、三十代のせた男である。
花子 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
土手からすぐに這入はいられるようになっていても、土手下から普請の時の足場のようにして、高く高く掛出しになっていました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
そうして他の多くの人々が、『人民の中に』這入はいつた例にならつて、彼女も或るコルセツト製造の工場の女工として這入つた。
乞食の名誉 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
灰色の鉄門を這入はいると、古い木造建ての建物があるのですけれど、正面の広い部屋には教誨師の方が沢山いられるようでした。
裏口うらぐちから飛込とびこんで、二ぢう建仁寺垣けんねんじがき這入はいり、外庭そとにはとほりまして
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
玄関へ外套がいとうけて廊下伝いに書斎へ這入はいるつもりで例の縁側へ出て見ると、鳥籠が箱の上に出してあった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
出るようで這入はいるようなものをさがしあてさえすれば、比較的狭い範囲内で、この問題を解決する事ができる訳になって
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大入で這入はいれないからガレリーで立見をしていると傍のものが、あすこにいる二人は葡萄耳ポルトガル人だろうと評していた。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると爺さんも中折なかおれも急に消えて、その代り肥った吉川夫人の影法師が頭のたつを排してつかつか這入はいって来た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
南が玄関でふさがれているので、突き当りの障子が、日向ひなたから急に這入はいって来たひとみには、うそ寒く映った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
例の通り兄には挨拶あいさつもしないで、自分の部屋へ這入はいろうとするのを、宗助はおい小六とはげしく呼び止めた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それでは、ここから這入はいって寝室の方へ廻ったんですな。あなた方は睡眠中で一向いっこう気がつかなかったのですな」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
道也の兄は会社の役員である。その会社の社長は中野君のおやじである。長い二重廻しを玄関へ脱いで座敷へ這入はいってくる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
或時サローンに這入はいったら派手はで衣裳いしょうを着た若い女が向うむきになって、洋琴ピアノいていた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俗士族は脇差わきざしを一本して頬冠ほほかむりをして颯々さっさつと芝居の矢来やらいやぶっ這入はいる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
女はガードをくぐって水道橋を渡って築土八幡つくどはちまんの近くのとある横路地を這入はいった。三平も続いて這入った。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
二十七日の晩に、電車で数寄屋橋すきやばしまで行って、有楽座に這入はいると、パルケットの四列目あたりに案内せられた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
障子の内へ這入はいるかと思えば又出て来る、出たり引込ひっこんだり引込んだり出たり、もじ/\しているのを志丈は見つけ
這入はいるときに置いた吸いさしが、出るときにその持主の手に返る確率が少なくも一九一〇年頃のベルリンよりは少ないであろう。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三好達治が僕を評して、坂口は堂々たる建築だけれども、中へ這入はいってみると畳が敷かれていない感じだ、と言ったそうだ。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
Aはまだどうも学校へ講義をききに這入はいれなかったことが気になって、すっかり、散歩する気持になれないでいるのでした。
保険に這入はいる人は一時に沢山払ひ込んでも僅かづつ払ひ込んでも、或は都合上支払ひを途中で中止してもそれは自由である。
結婚と恋愛 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
小六は妻になってから、二、三人子供が出来たらしく、後年私の子供が大学に這入はいった時、小六の子供もいるように聞きました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それから左から脇を這入はいって行くのが外から見え、段々と顔面へ掛かり、口、目、耳へ抜けるように竹をねじって取り附けます。
停車場の傍には粗末な竹垣などが結ってあって、汽車のひびきに馴れている鶏が平気で垣をくぐって出たり這入はいったりしている。
薬前薬後 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それにもかまわずまたしても通りすがりのカッフェーへ這入はいろうとするので、村岡は清岡が羽織のそでとらえながら、
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、気負い込んで、敵地へふかく這入はいりこみ、将門の本陣との連絡も欠いてしまったので、やがて、孤軍のすがたとなった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんなに深く這入はいつたものでも固いものでも生命がなくなれば駄目ですし、相当の労力と時間を費せば掘り出すことも出来ます。
青山菊栄様へ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
その日は中食ちゅうじきを外でして、三時過ぎに帰って、自分の部屋へ這入はいると間もなく、茶を飲みに来いと云って呼びにきた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
布団ふとんは、あすこに這入はいってるから、ひとりで出して御掛けなさい。一枚三銭ずつだ。寒いから二枚はいるでしょう」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
きびきびしているなと、のっそり山門を這入はいって、見ると、広い庫裏くりも本堂も、がらんとして、人影はまるでない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして、普通なら玄関の前へ来て、郵便と大きな声を出すべきところを、無言のまますたすた敷台から教場の中へ這入はいって来た。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこにフランシスがこれも裸形のままで這入はいって来てレオに代って講壇に登った。クララはなお顔を上げなかった。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「そんなら済まんがお前、その薬を買って来てくれんか。そこに落ちているこの奥さんのバッグにぜに這入はいっているだろう」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうちに中学に這入はいって涙香ものに喰い付いた訳ですが、そのころ他に探偵小説めいたものは殆んどありませんでした。
涙香・ポー・それから (新字新仮名) / 夢野久作(著)
コンクリートの通路のうえを、コツコツと靴音をひびかせながらポイと講堂のドアをあけて、なかに這入はいっていった。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
次には、女人結界にょにんけっかいを犯して、境内深く這入はいった罪は、郎女いらつめ自身にあがなわさねばならなかった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
自分の部屋へ這入はいって、しばらくぼんやりしていると、今まで誰もいないと思っていた隣の部屋でマッチをる音がする。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
このうちにはまだこの頃はかおを出さず、『小日本』廃刊後になって初めて出席した人が誤って這入はいっているかも知れぬ。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
やがて裏手の一室に這入はいって、しんいたが、わたくしは旅のつかれを知りながらなかなか寐つかれなかった。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やれ/\まはやなか這入はいれ、さあ這入はいれ、うも不意ふいおどろかされたやうでまご/\するわな
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
――ばあやのいて呉れたとこ這入はいって、酔っていたからでしょう、いつになくすぐに眠入ねいって了いました。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
或日の事、書斎で例のごとくペンの音を立ててびしい事を書きつらねていると、ふと妙な音が耳に這入はいった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は火鉢のそばに竦んだまま、上眼遣うわめづかいをして、這入はいって来る長沢を見上げながら、寒くて動けないよと云った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
橋も舟もないから、ここで休んで箱の中の蛇を見せるだろうと思っていると、爺さんはざぶざぶ河の中へ這入はいり出した。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが私と一緒に働いているここの職人の軽部は私がこの家の仕事の秘密を盗みに這入はいって来たどこかの間者だと思い込んだのだ。
機械 (新字新仮名) / 横光利一(著)
這入はいるにしても相当の体裁をしたカフェーや飲食店で、アイスクリームや曹達ソーダ水位は平気でめたり吸ったりしている。
父にはしかられ、母にはなだめられて、おせきはしよんぼりと奥へ這入はいつたが、胸一杯の不安と恐怖とは決して納まらなかつた。
近づいて這入はいりでもするかと思われたのに、三人はそこの小蔭こかげたたずむと、遠くから客の在否を窺った。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
だが、電車を降りて彼の家の方へその露次を這入はいって行くと、疲労感とともに吻と何かよみがえる別のものがある。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
指から腕、腕から胸、胸から又心へ、みと深く、魂を育てる智慧の這入はいって行くのを、覚えたのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
車内へツカ/\と、這入はいって来て、彼女のぐ斜前へ腰を降ろしたのは、まぎれもない、墓地で見たの青年であった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼の大多数の知識は主として耳から這入はいった耳学問と、そうして、彼自身の眼からはいった観察のノートにるものと思われる。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのうち孫生は玄関の方へ出て行て何か呼ぶやうだと思ふと、すぐその渡辺のお嬢さんといふのを連れて這入はいつて来た。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その地位は、二重橋を這入はいった正面の御玄関からぐるりと廻って南面したところの御玄関先ということに決まりました。
「な」「な」「な」と「な」ばっかり。そこへノッソリ這入はいって来たのは、A新聞社の西警察係、太田君という敏腕家。
人を呪わば (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そうして花のにおいを嗅ぐかのように幾度も深呼吸をした後でやっと花園を背後うしろにして工場の中へ這入はいったのであった。
物凄き人喰い花の怪 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
有楽町駅の這入はいぐちにも小さい店のおでんやがある。そこにも又二、三人の人が暖かそうにおでんを食べている。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そう思い思い彼は依然として、躊躇するでもなく、しないでもないフラフラとした恰好で店の中へ這入はいったのであった。
私は鍛冶橋かじばしを渡って丸の内へ這入はいる時、いつでも東京府庁の前側にひろがっている閑地を眺めやるのである。
ハヽヽせまつこいとこ這入はいつてるな……おら手前てめえ禁厭まじなひをしへてやらうか。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが学校の門を這入はいる頃から、足が土地へつかぬようになって、自分の室に帰って来た時は最早酔がまわって苦しくてたまらぬ。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
町家ちやうか内儀ないぎらしい丸髷まるまげの女が七八なゝやつツになる娘の手を引いて門のなか這入はいつて行つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ゆき子は、さうした顔に行きあたると、思ひがけない旅路の長さを思ひ、他人の家へ這入はいるやうな気兼な気持ちで小舎の鍵を開けた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「しかし、たとえば、留置場か、棺桶のふたのような気がする。いや、待てよ。留置場や棺桶は、自分で這入はいるものではないが」
記憶 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
と、主人は茶を入れてくれたりして、ぼんに盛ったかきの実に、灰の這入はいっていないからの火入れをえて出した。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから部屋に這入はいって、洗面たくそばへ行って、雪が取って置いた湯を使って、背広の服を引っ掛けた。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「そうかそうか。銭と金とザクザクと持って参ったか。そりゃあ目出たいことだ。這入はいれ這入れ。お祝いするから、こっちさ這入れ。」
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「海賊らしくもないぜ。さっき温泉這入はいりに来る時、のぞいて見たら、二人共木枕きまくらをして、ぐうぐう寝ていたよ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まるで眼中にない訳でもあるまいが、さっき長蔵さんが一人で談判に這入はいった時に、残らず聞いてしまったんだろう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と云うと大層だが、車の輪が五六度回転すると、もう公園で、公園に這入はいったかと思うと、もう突き抜けてしまった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一人が「高慢ちきな唐変木とうへんぼくだ」と云うと一人が「もっと大きなうち這入はいりてえだろう」と云う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
珍らしくだいぶ這入はいって来るつもりであるから、余は早く思い出して、早く書いて、そうして今の新らしい人々と今の苦しい人々と共に
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
喰い物でもそうで、彼等が這入はいっている処は、どちらかと云えば顔の通った、価格の知れた、比較的上等の処が多い。
殺そうか殺すまいかと躊躇ちゅうちょして見て居る内に、彼は直ぐ其処そこにあるけい一寸ばかりのあな這入はいりかけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
代助はわざと、書斎と座敷ざしき仕切しきりつて、一人ひとりへやのうちへ這入はいつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あの少し前、彼女は土蔵へ行って荷物を整理しようかと思っていたのだが、もし土蔵に這入はいっていたら、恐らく助からなかっただろう。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
「ここへ来る人間は、みなあの部屋へ這入はいりたいのだろうが、今夜のあの灯の下には哀愁があるね。前にはソビエットが見ているし。」
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
二人は顔を見あはせました。いくら汽車の旅にしても、雨はうれしくありません。風呂に這入はいつてから継子さんは考へてゐました。
花房はなぶさという、今年卒業して製造所に這入はいった理学士に、児髷ちごまげに結った娘が酌をすると、花房が顧みながら云った。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
先づ、其処そこ這入はいつて行くと、灰白色の化粧煉瓦の如きもので腰を巻かれた、暗い水色の壁が私の眼を打つた。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
「しゃれてるわけじゃねえが、ずに仕事しごとをしてたんで、へでも這入はいらねえことにゃ、はっきりしねえからよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
何回目かに、通りの方から玉島の家のある薄暗い横丁に這入はいって来た時に、友木の足にポーンと当ったものがあった。
罠に掛った人 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それでは早川君に頼んでなんとかしてもらいたいと、清原君が名刺を出して頼むと、女は承知して奥に這入はいりました。
米国の松王劇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
出入ではいりする客の野趣を帯びた様子などに、どうやら『膝栗毛』の世界に這入はいったような、いかにも現代らしくない心持になる。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これから湯に這入はいる、御膳ごぜんが出る、おしる向附むかうづけみな茗荷尽目めうがづくめ
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それは大方門違い、わしの代になってから福の神は這入はいっても狂人きちがいなどいう者は、門端かどばたへも寄り附きません。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されば長吉ちやうきちはその母親がいかほど望んだところで今になつては高等学校へ這入はいらうとふ気はまつたくない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
じみな焦茶こげちゃの日傘をつぼめて、年の頃は三十近い奥様らしい品のいい婦人が門の戸を明けて内に這入はいった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これは普通に難解という部類には這入はいらないが、しかしせんじつめればやはりその部類に入るといってよかろう。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
他国の人間や隠密おんみつ這入はいり込まないための、島津藩の言語政策だという説を聞いたが、それはうそだろう。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
一時いちじがやがやとやかましかった生徒達はみんな教場きょうじょう這入はいって、急にしんとするほどあたりが静かになりました。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あまり食卓の空気が冷やかな折は、お重が自分の後をしたって、追いかけるように、自分の室へ這入はいって来た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
医者と懇意な彼は先刻さっき診察所へ這入はいった時、物珍らしさに、それをのぞかせてもらったのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まだこんなものが這入はいっていたよ。これも君にゃ関係のないものだ。さっき見て僕もちょいと驚ろいたが、こら」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)