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ふりがな文庫
“
迅
(
はや
)” の例文
鯨の屍骸は、狂おしく
迅
(
はや
)
い潮流に乗って、矢のように走り出したのだ。しかも、その方向は、はるか
彼方
(
かなた
)
に浮ぶ氷山を目指している。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
智深は
洒落
(
しゃれ
)
のつもりらしい。だが彼はがっかりした。気がついてみると、あたりのチンピラは、烏の群れより
迅
(
はや
)
く、逃げ散っていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
迅
(
はや
)
きようにても女の足の
後
(
おく
)
れがちにて、途中は左右の
腰縄
(
こしなわ
)
に引き
摺
(
ず
)
られつつ、
辛
(
かろ
)
うじて
波止場
(
はとば
)
に到り、それより船に移し入れらる。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
下界に風が出ているわけでもないのに、いつ湧いたのか雲が時々月の面を掠め、雲が
迅
(
はや
)
いので月の方が動いて行くように見える。
杉垣
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
横ぎりて六時發横川行の滊車に乘らんと急ぎしに
冗口
(
むだぐち
)
といふ魔がさして
停車塲
(
ステーシヨン
)
へ着く此時おそく
彼時
(
かのとき
)
迅
(
はや
)
く滊笛一聲上野の森に
烟
(
けぶり
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
▼ もっと見る
急激に空気が抜けてゆく
迅
(
はや
)
い通風の中にいては、いまのあなたには荒い風当りになりますと、細かい注意までしてくれていたが
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
これはいけない。これは
最早
(
もはや
)
扶
(
たす
)
からない。しかし、
今日
(
こんにち
)
までの経過は、こう
迅
(
はや
)
く迫って来べきでないが、何か、どうかしたのではないか。
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その男の
身体
(
からだ
)
はまるで宙にあるので、竜之助はその
迅
(
はや
)
さにもまた気を抜かれて、追いかけることをも忘れてしまったほどでした。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
迅
(
はや
)
きこと風の如きものの後には動かざること巖の如きものを、靜なること林の如きものの後には波瀾幾千丈といつた風のものを配するとか
貝殻追放:007 愚者の鼻息
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
若者一人兎となってまず出立し道中諸処に何か落し置くを跡の数人猟犬となってこれを
追踪
(
ついそう
)
捕獲するので一同
短毛褐
(
ジャージー
)
を着
迅
(
はや
)
く走るに便にす
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
元はただ単に成長の
迅
(
はや
)
い植物、どこ迄伸びて行くか知れないものの興味が、偶然に空想の上に出現して、後久しく消え残っていたのである。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
『あれ、
向
(
むか
)
うの
峰
(
みね
)
を
掠
(
かす
)
めて、
白
(
しろ
)
い、
大
(
おお
)
きな
竜神
(
りゅうじん
)
さんが、
眼
(
め
)
にもとまらぬ
迅
(
はや
)
さで
横
(
よこ
)
に
飛
(
と
)
んで
行
(
ゆ
)
かれる……あの
凄
(
すご
)
い
眼
(
め
)
の
色
(
いろ
)
……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
お
母
(
っか
)
さんに
肖
(
に
)
てこれも
敏捷
(
すばや
)
い!……折から、店口の菊花の
周囲
(
まわり
)
へ七八人、人立ちのしたのをちらりと
透
(
すか
)
すとともに、雪代が
迅
(
はや
)
くも見てとった。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、かの橋下の瀬の
迅
(
はや
)
い事が話の
起因
(
おこり
)
で、吉野に
対
(
むか
)
つて
頻
(
しき
)
りに水泳に行く事を
慫慂
(
すす
)
めた。昌作の吉野に対する尊敬が此時からまた加つた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
◯わが日は
駅使
(
はゆまづかい
)
(
早馬使
(
はやうまづかい
)
、駅丁)よりも
迅
(
はや
)
く、いたずらに過ぎ去りて
福祉
(
さいわい
)
を見ず、その走ること
葦船
(
あしぶね
)
の如く、物を
攫
(
つか
)
まんとて飛びかける
鷲
(
わし
)
の如し
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
私は一冊の手帳を求め、
平生
(
へいせい
)
これを
懐中
(
かいちゅう
)
して居るようにした。そうすると霊気が
浸潤
(
しんじゅん
)
して、筆の運びが
迅
(
はや
)
いからである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
汽車がレールの上を非常に
迅
(
はや
)
い速力で走つてゐる時には空気は激しい移動をしてゐる。けれどもそれは止つてゐる時よりは雷に打たれ易いと云ふ事はない。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
そして、厳しく自分を
叱責
(
しっせき
)
する眼付きで端座し、間髪を入れぬ
迅
(
はや
)
さで再び静まりを逆転させた。見ていて梶は、鮮かな高田の手腕に必死の作業があったと思った。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
成に子供があって九歳になっていた。父親のいないのを見て、そっと盆をのけた。虫はぴょんぴょんと飛びだした。子供は驚いて
捉
(
とら
)
えようとしたが
迅
(
はや
)
くて捉えられない。
促織
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
折柄風は
追手
(
おって
)
になり波は無し、舟は矢のように
迅
(
はや
)
く湖の上を
辷
(
すべ
)
りましたから、間もなく
陸
(
おか
)
は見えなくなって、
正午
(
ひる
)
頃には最早十七八
里
(
り
)
、丁度湖の真中程まで参りました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
その
下
(
しも
)
に飛び飛びの岩、岩もまた
幽
(
かす
)
けかりけり。冬はなほ幽けかりけり。あなあはれ、欅の枯木、行き行けば見る眼に聳え、滝落ちてかげり
陽
(
び
)
迅
(
はや
)
し。あなあはれ、山の端
薄陽
(
うすび
)
。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
おしだまつて、ものに
倦
(
う
)
んじた時のながれが、目にみえぬ
迅
(
はや
)
さで、
逭
(
に
)
げてゆくだけである。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
赤い
山躑躅
(
やまつつじ
)
などの咲いた、その
崖
(
がけ
)
の下には、
迅
(
はや
)
い水の瀬が、ごろごろ転がっている石や岩に砕けて、
水沫
(
しぶき
)
を
散
(
ちら
)
しながら流れていた。危い丸木橋が両側の
巌鼻
(
いわはな
)
に
架渡
(
かけわた
)
されてあった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
黄袗
(
くわうしん
)
は古びて
赭
(
あか
)
く、四合目辺にたなびく
一朶
(
いちだ
)
の雲は、
垂氷
(
たるひ
)
の如く
倒懸
(
たうけん
)
して満山を
冷
(
ひ
)
やす、別に風より
迅
(
はや
)
き雲あり、大虚を
亘
(
わた
)
りて、不二より高きこと百尺
許
(
ばかり
)
なるところより、
之
(
これ
)
を
翳
(
かざ
)
し
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
初めよりも更に
迅
(
はや
)
い速度でそこを駈け出して、自分の赤ランプでトンネルの入り口の赤い灯のまわりを見まわしたのち、その赤い灯の鉄梯子をつたって、頂上の展望台に登りました。
世界怪談名作集:06 信号手
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
日頃いだいていた成り上りの支配者に対する冷笑が、見えないほど
迅
(
はや
)
く通りぬけた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
希臘
(
ギリシア
)
商人が自転車で忙がしく商取引所方面に疾走し出すころ、マダム・レムブルグが
瀝青
(
れきせい
)
の浮いた
黒襦子
(
くろじゅす
)
の着物をつけて朝のミルクのなかで接吻をすると、海峡を船脚
迅
(
はや
)
く航行する汽艇
地図に出てくる男女
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
けれども
迅
(
はや
)
い。ここに消えたかと思ふと、思はぬ
軒先
(
のきさ
)
きに
閃
(
ひら
)
めいてゐる。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
一首の意は、妻の死を悲しんで、わが涙の未だ乾かぬうちに、妻が生前喜んで見た庭前の
楝
(
おうち
)
の花も散ることであろう、というので、
逝
(
ゆ
)
く歳月の
迅
(
はや
)
きを歎じ、亡妻をおもう情の切なことを
懐
(
おも
)
うのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
と
急
(
せ
)
きに急いてくるし、日は恐ろしいほど
迅
(
はや
)
くたっていく。
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
羽禽の中にいと
迅
(
はや
)
き翼をもてる若鷹の
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
「あ、
迅
(
はや
)
い、迅い、星……」
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
と、
迅
(
はや
)
い跫音がみだれた。逃げ廻るひとりの井戸掘り人足を追って、七、八人の大工たちが、喧騒の中を喧騒して突き抜けて行った。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
実は、脱出ぶりの
迅
(
はや
)
いのを鼻にかけて、ここへ避難して来てはみたものの、何者に追われて来たかと聞かれると手持無沙汰です。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それは実にその伝播の
迅
(
はや
)
さといっては恐ろしい位のもの、一種の群衆心理と申すか、世間はこの
噂
(
うわさ
)
で持ち切り、人心
恟々
(
きょうきょう
)
の体でありました。
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
一つの
姿
(
すがた
)
から
他
(
た
)
の
姿
(
すがた
)
に
移
(
うつ
)
り
変
(
かわ
)
ることの
迅
(
はや
)
さは、
到底
(
とうてい
)
造
(
つく
)
り
附
(
つ
)
けの
肉体
(
にくたい
)
で
包
(
つつ
)
まれた、
地上
(
ちじょう
)
の
人間
(
にんげん
)
の
想像
(
そうぞう
)
の
限
(
かぎ
)
りではございませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
『
朝野僉載
(
ちょうやせんさい
)
』に、徳州刺史張訥之の馬、色白くて
練
(
ねりぎぬ
)
のごとし、年八十に余りて極めて肥健に、脚
迅
(
はや
)
く確かだったとある。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
変ることに
迅
(
はや
)
く、形を消すに早い夕雲は間もなく
鼠色
(
ねずみいろ
)
のひと色にとざされてしまった。だが、まだ筒井は気のせいか庭戸から離れようとしなかった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
すこし勢がついて足が
迅
(
はや
)
まると崖から屋根屋根をとび越してゆきそうな気がしたときのことを。不思議にこわくて、不思議にうれしかったときのことを。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
『何とハア、此処ア瀬が
迅
(
はや
)
えだで、
小供等
(
わらしやど
)
にや危ねえもんせえ。去年もハア……』と、暢気に喋り立てる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
降りしきったのが
小留
(
おやみ
)
をした、春の雪だから、それほどの気色でも、
霽
(
は
)
れると
迅
(
はや
)
い。西空の根津一帯、
藍染
(
あいそめ
)
川の上あたり、一筋の藍を引いた。池の水はまだ暗い。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
船が、
急湍
(
きゅうたん
)
のような、烈しい潮流に乗って、目まぐるしい
迅
(
はや
)
さで、一方向に急進しはじめたからだ。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
揃った肋骨の
迅
(
はや
)
い動きの中から一人を選ぶのは、
難
(
むずか
)
しかった。
殊
(
こと
)
に日本人の観賞の眼も共に選ばれていることも、この博学なヨハンの太った笑いの底にひそんでいた。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
且つ一方には
潮
(
しお
)
の
迅
(
はや
)
い海を渡航して、今も親島の地に毎年の稲作を営み続けているのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
賑
(
にぎ
)
やかなところばかりにいたお銀は、夜その下を通るたびに、歩を
迅
(
はや
)
める癖があったが、ある日暮れ方に、笹村に
逐
(
お
)
い出されるようにして、そこまで来て
彷徨
(
ぶらぶら
)
していたこともあった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
旱
(
ひでり
)
つづきの時は、水が
涸
(
か
)
れて、洲が
露
(
あらわ
)
れるし、冬になれば、半分ほども水が落ちるというのに、今までの雨つづきで、水は、
嵩
(
かさ
)
にかかって、
蜥蜴
(
とかげ
)
色に光りながら、
迅
(
はや
)
り切って流れている。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
はずみでがぶりと水に沈み、
迅
(
はや
)
い流れに押された。はるか川下でちらりと頭を見せた。そして、川づら一ぱいの凍氷がばりばりと
毀
(
こわ
)
れて行った。雪どけ水は八方からごうごうと流れ込んだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
けれども
迅
(
はや
)
い。ここに消えたかと思うと、思わぬ軒先きに
閃
(
ひら
)
めいている。
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうした魂には、汚染の分子が少いから、従って進歩が
迅
(
はや
)
い。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
にひばり筑波をくだりあはれあはれケーブルカーの索条
迅
(
はや
)
し
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
迅
常用漢字
中学
部首:⾡
6画
“迅”を含む語句
迅速
素迅
疾風迅雷
迅風耳
迅風
迅兵
迅雷
奮迅
獅子奮迅
迅足
疾風迅雷的
無常迅速
迅業
魯迅
迅衝隊
口迅
迅烈
迅火殺陣
迅来
迅眼
...