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苛酷
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かこく
ふりがな文庫
“
苛酷
(
かこく
)” の例文
高張提灯の薄暗い灯の下に、五六十人も押し重つた町内の人達も、あまりの
苛酷
(
かこく
)
な
情景
(
シーン
)
に眼を反けて、非難の囁やきを波打たせます。
銭形平次捕物控:003 大盗懺悔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
苛酷
(
かこく
)
な冬が来る、恐しい日は始ったのだ。——彼は身に降りかかるものに対して身構えるように、じっと
頑
(
かたくな
)
な気持で畳の上に蹲っていた。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
しかしそう考えてもなんだかキリストは厳酷にすぎる人のように思われた。その宗門はあまりに窮屈な、
苛酷
(
かこく
)
なものに思われた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
殊に、他藩に預けになっている若い人々と、子息の主税の身を案じた。どんな
苛酷
(
かこく
)
な扱いを受けているかという心配ではない。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに師匠とたのむ馬翁というのは、学問はあるに違いないが、ひどく癖のある老僧で、美濃の荒れ馬と
綽名
(
あだな
)
されるほど人当りが
苛酷
(
かこく
)
だった。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
おそらくもっと困難な
苛酷
(
かこく
)
な条件と彼らは闘ってきたのだ。あのゲルシュニを思え。そうだ、女でさえ単身、やってのけているのではないか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
ことにフランスの音楽家らは、ドイツの音楽に関するクリストフの
苛酷
(
かこく
)
な批判を、自分らになされた敬意ででもあるかのように感謝していた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
とりわけ自己を批判するに極めて
苛酷
(
かこく
)
な人の癖として十目の見る処『浮雲』が文章としてもまた当時の諸作に
一頭
(
いっとう
)
地
(
ち
)
を
挺
(
ぬき
)
んずるにもかかわらず
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そして、若し運命がその政治家に
苛酷
(
かこく
)
でなかったならば、彼は
尨然
(
ぼうぜん
)
たる国家的若しくは世界的大事業なるものを完成する。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「つくづく年は取りたくないものだと思います。私はお婆さんに成りましても、
苛酷
(
かこく
)
な心だけは持ちたくないと思います」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私
(
わたくし
)
は
父
(
ちち
)
には
酷
(
ひど
)
く
仕置
(
しおき
)
をされました。
私
(
わたくし
)
の
父
(
ちち
)
は
極
(
ご
)
く
苛酷
(
かこく
)
な
官員
(
かんいん
)
であったのです。が、
貴方
(
あなた
)
のことを
申
(
もう
)
して
見
(
み
)
ましょうかな。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
一個の
木偶
(
でく
)
にすぎなかった私は、危険な人物となった。そして
苛酷
(
かこく
)
が私を破滅さしたと同じく、その後寛容と親切とは私を救ってくれたのである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
浜役人は白並とは言わない。白浪といっているくらいだが、いくら厳しく取締ってもやめないので、いきおい法令も
苛酷
(
かこく
)
にならざるをえなくなった。
奥の海
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
私を厭がらせた皮肉も、嘗て私を
吃驚
(
びつくり
)
させた
苛酷
(
かこく
)
さも、たゞもう美味な料理についた
辛
(
から
)
い
藥味
(
やくみ
)
のやうなものであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
仕事の上にます/\のしかぶさってくる
苛酷
(
かこく
)
さというものが、みんな戦争から来ているということは知らなかった。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
ああはたして仁なりや、しかも一人の
渠
(
かれ
)
が残忍
苛酷
(
かこく
)
にして、
恕
(
じょ
)
すべき老車夫を懲罰し、
憐
(
あわれ
)
むべき母と子を厳責したりし
尽瘁
(
じんすい
)
を、
讃歎
(
さんたん
)
するもの無きはいかん。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分は母の批評が
満更
(
まんざら
)
当っていないとも思わなかった。けれども我肉身の子を
可愛
(
かわい
)
がり過ぎるせいで、少し彼女の欠点を
苛酷
(
かこく
)
に見ていはしまいかと疑った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
更にシェストフはこの「敵意ある屈従」を
独鈷
(
とっこ
)
にとって、さもチェーホフが唯物論の
苛酷
(
かこく
)
な脅迫のうちに新型の「歯痛の快感」を見出していたかの如き印象を
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
乱を避けて山に入りあるいは地頭の
苛酷
(
かこく
)
を
遁
(
のが
)
れようとする者の、最も不便とするところはこの点にあった。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
自分らの解放せられた喜びを忘れて婦人の解放を押え、
剰
(
あまつさ
)
え昔の
五障三従
(
ごしょうさんしょう
)
や
七去説
(
しちきょせつ
)
の
縄目
(
なわめ
)
よりも更に
苛酷
(
かこく
)
な百種の
勿
(
なか
)
れ主義を以て取締ろうというのは笑うべき事である。
婦人と思想
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
苛酷
(
かこく
)
な現実の前に
闘
(
たたか
)
いの意力をさえ失い、へなへなと崩折れてしまい——自分が今までその上に立っていた知識なり信念なりが、少しも自分の血肉と溶け合っていない
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
雨が降らうとも、風が吹かうとも、神の意のまゝである。
苛酷
(
かこく
)
なこの雨のなかに、この島の人達は素朴に生きて闘つてゐるのだ。雨に敗れては生きてはゐられないのだ。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
婆
(
ばあ
)
やだけ残して抱え全部を懇意な待合の一室に外泊させ、お神も寝ずの番で看護を手伝うのだったが、
苛酷
(
かこく
)
な一面には、派手で
大業
(
おおぎょう
)
な
見栄
(
みえ
)
っぱりもあり、
箱丁
(
はこや
)
を八方へ走らせ
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
同じような勤王事件に際して、これも将監武元に策して
苛酷
(
かこく
)
な
辛辣
(
しんらつ
)
な処置をとらせた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
顔には一種の
苦笑
(
にがわら
)
いのような表情が現われている。この男は山椒大夫
一家
(
いっけ
)
のものの言いつけを、神の託宣を聴くように聴く。そこで随分情けない、
苛酷
(
かこく
)
なことをもためらわずにする。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この
苛酷
(
かこく
)
なる判決を
避
(
さ
)
けるために、
言
(
げん
)
を
巧
(
たくみ
)
にし
色
(
いろ
)
を
令
(
よ
)
くせんとする者も、つとめて
荒
(
あら
)
あらしくする
風
(
ふう
)
がある。心の内と外の
風采
(
ふうさい
)
と一致せぬことは、西洋よりも日本において最も
烈
(
はげ
)
しい。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
それが間もなく僕を
苛酷
(
かこく
)
に扱い、精神病院に入れたり、
揚句
(
あげく
)
の果は、僕を射殺しろとまで
薦
(
すす
)
めている。……なんという恐ろしい変り方だ。……僕にはサッパリ理解ができないことだった。
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この
苛酷
(
かこく
)
きわまる重税の表面を快楽みたいなものでくるんで人間を誘惑する。
最も早熟な一例
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
若
(
も
)
しも、
建築
(
けんちく
)
の
根本義
(
こんぽんぎ
)
が
解決
(
かいけつ
)
されなければ、
眞正
(
しんせい
)
の
建築
(
けんちく
)
が
出來
(
でき
)
ないならば、
世間
(
せけん
)
の
殆
(
ほと
)
んど
總
(
すべ
)
ての
建築
(
けんちく
)
は
悉
(
こと/″\
)
く
眞正
(
しんせい
)
の
建築
(
けんちく
)
でないことになるが、
實際
(
じつさい
)
に
於
(
おい
)
ては
必
(
かならず
)
しも
爾
(
しか
)
く
苛酷
(
かこく
)
なるものではない。
建築の本義
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
背倫
(
はいりん
)
の行為とし、
唾棄
(
だき
)
すべき事として
秋毫
(
しゅうごう
)
寛
(
ゆる
)
すなき従来の道徳を、無理であり、
苛酷
(
かこく
)
であり、自然に
背
(
そむ
)
くものと感じ、本来男女の関係は全く自由なものであるという原始的事実に論拠して
性急な思想
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
謹
(
つつし
)
んで
筆鋒
(
ひっぽう
)
を
寛
(
かん
)
にして
苛酷
(
かこく
)
の文字を用いず、
以
(
もっ
)
てその人の名誉を保護するのみか、実際においてもその
智謀
(
ちぼう
)
忠勇
(
ちゅうゆう
)
の
功名
(
こうみょう
)
をば
飽
(
あ
)
くまでも
認
(
みとむ
)
る者なれども、
凡
(
およ
)
そ人生の
行路
(
こうろ
)
に
富貴
(
ふうき
)
を取れば功名を失い
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
私は自分の小さい時から失わずにいる甘美な人生へのかぎりない夢を、そういう人のこわがるような
苛酷
(
かこく
)
なくらいの自然の中に、それをそっくりそのまま少しも
害
(
そこな
)
わずに生かして見たかったのだ。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
男を
懊
(
じ
)
らすことに特別な興味を抱く侍従の君が、再び前と同じような、或は前よりも何層倍か
苛酷
(
かこく
)
な試練を平中に課したであろうことを、そして平中が、今度は実に辛抱強く一つ/\の試練に堪えて
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
與吉
(
よきち
)
は
例
(
いつも
)
にない
苛酷
(
かこく
)
な
扱
(
あつか
)
ひに
驚
(
おどろ
)
いてまだ
眠
(
ねむ
)
い
目
(
め
)
を
睜
(
みは
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
哀れた忠義者は、
苛酷
(
かこく
)
な運命と強い意志とに
引摺
(
ひきず
)
られ乍ら、こんな異常な樂しみに、僅か自分の生活を見出して居たのでせう。
銭形平次捕物控:161 酒屋忠僕
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この頃ではこの議を
随分
(
ずいぶん
)
自分から
提唱
(
ていしょう
)
して、乱れぬ程度でこの女のみに
強
(
し
)
いられた
苛酷
(
かこく
)
な
起居
(
ききょ
)
から解放されて居るには居ます。思い出しました。
女性の不平とよろこび
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
僕の言うことを馬鹿にするのか。なあに、金持ちに人生がわかってるものか。
苛酷
(
かこく
)
な現実に密接な交渉をもってるものか。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その比例でゆけば、堺にいい渡された二万貫は、その富力から見ても、決して
苛酷
(
かこく
)
でも、難題でもなかったのである。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼のは——「我の後に來らん者は何人なりとも、己れを否みてその十字架を取り、我につゞけ」と云つた
基督
(
キリスト
)
の爲めにのみ
説
(
と
)
く使徒の
苛酷
(
かこく
)
さである。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
私
(
わたくし
)
は
父
(
ちゝ
)
には
酷
(
ひど
)
く
仕置
(
しおき
)
をされました。
私
(
わたくし
)
の
父
(
ちゝ
)
は
極
(
ご
)
く
苛酷
(
かこく
)
な
官員
(
くわんゐん
)
で
有
(
あ
)
つたのです。が、
貴方
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
して
見
(
み
)
ませうかな。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
とくに父からはむしろ
苛酷
(
かこく
)
に取扱かわれたという記憶がまだ私の頭に残っている。それだのに浅草から牛込へ移された当時の私は、なぜか非常に
嬉
(
うれ
)
しかった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
軍隊の後方における略奪者の
多寡
(
たか
)
はその司令官の
苛酷
(
かこく
)
に反比例することは、人の見たところである。オーシュおよびマルソー両将軍には少しも遅留兵がなかった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そこへ行けば更にもっと、きびしい
鞭
(
むち
)
や
苛酷
(
かこく
)
な運命が待ち構えているかもしれない。だが、殆ど受刑者のような気持で、これからは生きているばかりなのだろうと思った。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
叔父とか姪とかの普通の人情、普通の道徳の見地から、ややもすれば冷い
苛酷
(
かこく
)
な眼を向けようとするものに対して、彼の執ろうとする道は小さな反抗心を捨てるにあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
或会社の技師をしている工学士某氏の妻が自分に対する
苛酷
(
かこく
)
を極めた処置に堪えかねて姑を刺したという
故殺
(
こさつ
)
未遂犯が近頃公判に附せられたので、その事件の真相が諸新聞に現れた。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
立膝
(
たてひざ
)
で
煙管
(
きせる
)
を
喞
(
くわ
)
えながら盛り方が無作法だとか、三杯目にはもういい加減にしておきなさいとか、
慳貪
(
けんどん
)
に
辱
(
はずか
)
しめるのもいやだったが、病気した時の
苛酷
(
かこく
)
な扱い方はことに非人間的であり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あまり職掌を重んじて、
苛酷
(
かこく
)
だ、思い
遣
(
や
)
りがなさすぎると、評判の
悪
(
わろ
)
いのに
頓着
(
とんじゃく
)
なく、すべ一本でも
見免
(
みのが
)
さない、アノ
邪慳
(
じゃけん
)
非道なところが、ばかにおれは気に入ってる。まず八円の
価値
(
ねうち
)
はあるな。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
苛酷
(
かこく
)
に過ぎるようでございますなあ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
まんじりともせずに聴いていてくれたのであるおよそかくのごとき
逸話
(
いつわ
)
は枚挙に
遑
(
いとま
)
なくあえて浄瑠璃の太夫や人形使いに限ったことではない
生田
(
いくた
)
流の琴や三味線の伝授においても同様であったそれにこの方の師匠は
大概
(
たいがい
)
盲人の検校であったから不具者の常として片意地な人が多く勢い
苛酷
(
かこく
)
に走った
傾
(
かたむ
)
きがないでもあるまい。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、母は
傷々
(
いたいた
)
しくながめたが、
生
(
なま
)
なか
庇
(
かば
)
い立てすると、かえって、筑阿弥の荒い手や言葉が、日吉へ
苛酷
(
かこく
)
に当るので、見て見ぬ振りをしているのだった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
苛
常用漢字
中学
部首:⾋
8画
酷
常用漢字
中学
部首:⾣
14画
“苛”で始まる語句
苛
苛立
苛々
苛責
苛烈
苛辣
苛斂誅求
苛苛
苛税
苛政