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置炬燵
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おきごたつ
ふりがな文庫
“
置炬燵
(
おきごたつ
)” の例文
その留守を狙つて曲者が入り、
置炬燵
(
おきごたつ
)
に
凭
(
もた
)
れてウトウトして居る家内の眼を、後ろから抱きつくやうに突いて逃げ出したさうで——
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
襦袢一重の女の
背
(
せな
)
へ、自分が脱いだ
絣
(
かすり
)
の綿入羽織を着せて、その肩に手を置きながら、俊吉は向い合いもせず、
置炬燵
(
おきごたつ
)
の同じ隅に
凭
(
もた
)
れていた。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
床を前に
置炬燵
(
おきごたつ
)
にあたっているのが房さんで、こっちからは、
黒天鵞絨
(
くろビロウド
)
の襟のかかっている八丈の
小掻巻
(
こがいまき
)
をひっかけた後姿が見えるばかりである。
老年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
先生は昔の事を考えながら、
夕飯時
(
ゆうめしどき
)
の
空腹
(
くうふく
)
をまぎらすためか、火の消えかかった
置炬燵
(
おきごたつ
)
に
頬杖
(
ほおづえ
)
をつき口から出まかせに
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
小綺麗
(
こぎれい
)
なメリンスの
掛蒲団
(
かけぶとん
)
をかけて
置炬燵
(
おきごたつ
)
にあたりながら気慰みに
絽刺
(
ろさ
)
しをしていたところと見えて、右手にそれを持っている。私は窓の横から
窺
(
のぞ
)
きながら
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
「
靴
(
くつ
)
ばかりぢやない。
家
(
うち
)
の
中
(
なか
)
迄
(
まで
)
濡
(
ぬ
)
れるんだね」と
云
(
い
)
つて
宗助
(
そうすけ
)
は
苦笑
(
くせう
)
した。
御米
(
およね
)
は
其晩
(
そのばん
)
夫
(
をつと
)
の
爲
(
ため
)
に
置炬燵
(
おきごたつ
)
へ
火
(
ひ
)
を
入
(
い
)
れて、スコツチの
靴下
(
くつした
)
と
縞羅紗
(
しまラシヤ
)
の
洋袴
(
ずぼん
)
を
乾
(
かわ
)
かした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
退紅色の粗い
形
(
かた
)
の布団を掛けた
置炬燵
(
おきごたつ
)
を脇へ押し遣って、
桐
(
きり
)
の円火鉢の火を掻き起して、座敷の真ん中に
鋪
(
し
)
いてある、お嬢様の据わりそうな、
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
の座布団の前に出した。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「こいつは工合がいい、お
太陽様
(
てんとさま
)
をふところに入れてるようだ。
置炬燵
(
おきごたつ
)
なら差し向いだが、差しならびの
日向
(
ひなた
)
ぼッこ。お蝶さん話があるんだから、ちよッとここへ坐ってくんな」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十六
日
(
にち
)
の
朝
(
あさ
)
ぼらけ
昨日
(
きのふ
)
の
掃除
(
そうぢ
)
のあと
清
(
きよ
)
き、
納戸
(
なんど
)
めきたる六
疊
(
でう
)
の
間
(
ま
)
に、
置炬燵
(
おきごたつ
)
して
旦那
(
だんな
)
さま
奧
(
おく
)
さま
差向
(
さしむか
)
ひ、
今朝
(
けさ
)
の
新聞
(
しんぶん
)
おし
開
(
ひら
)
きつゝ、
政界
(
せいくわい
)
の
事
(
こと
)
、
文界
(
ぶんくわい
)
の
事
(
こと
)
、
語
(
かた
)
るに
答
(
こた
)
へもつきなからず
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
おしゅんは伝兵衛おさんは茂兵衛小春は俊雄と相場が
極
(
き
)
まれば望みのごとく浮名は広まり
逢
(
あ
)
うだけが命の四畳半に差向いの
置炬燵
(
おきごたつ
)
トント
逆上
(
のぼせ
)
まするとからかわれてそのころは
嬉
(
うれ
)
しくたまたまかけちがえば互いの名を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
住みつかぬ旅の心や
置炬燵
(
おきごたつ
)
芭蕉
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
冬となりてここにまた何よりも嬉しき心地せらるるは桐の
火桶
(
ひおけ
)
、
炉
(
ろ
)
、
置炬燵
(
おきごたつ
)
、
枕屏風
(
まくらびょうぶ
)
なぞ春より冬にかけて久しく見ざりし家具に再び遇ふ事なり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
身辺の寒さ寂しさよ。……霜月末の風の
夜
(
よ
)
や……
破蒲団
(
やぶれぶとん
)
の
置炬燵
(
おきごたつ
)
に、歯の抜けた
頤
(
あご
)
を
埋
(
うず
)
め、この奥に目あり
霞
(
かす
)
めり。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「靴ばかりじゃない。
家
(
うち
)
の中まで
濡
(
ぬ
)
れるんだね」と云って宗助は苦笑した。御米はその晩夫のために
置炬燵
(
おきごたつ
)
へ火を入れて、スコッチの靴下と
縞羅紗
(
しまらしゃ
)
の
洋袴
(
ズボン
)
を乾かした。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ぼんやり
置炬燵
(
おきごたつ
)
に当りをれば、気違ひになる前の心もちはかかるものかとさへ思ふことあり。
病中雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私たちは門を閉めて今日は
打寛
(
うちくつろ
)
いで、
置炬燵
(
おきごたつ
)
に差向かった。そうしてこういう話をした。
雪の日
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
一
間
(
ま
)
どころをこぎれいに掃除して、
納戸
(
なんど
)
の隅から見つけてきた
置炬燵
(
おきごたつ
)
、赤い友禅の
蒲団
(
ふとん
)
をかけてその中にうずくまり、側には持ち出した草双紙を、より取り勝手に見散らかしていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんな晩には
置炬燵
(
おきごたつ
)
をする人もあろう。しかし実はそれ程寒くはない。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
待つ身につらき
夜半
(
よは
)
の
置炬燵
(
おきごたつ
)
、それは恋ぞかし、
吹風
(
ふくかぜ
)
すずしき夏の夕ぐれ、ひるの暑さを風呂に流して、身じまいの姿見、母親が手づからそそけ髪つくろひて、我が子ながら美くしきを立ちて見
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
書
(
ふみ
)
読むは無為の一つや
置炬燵
(
おきごたつ
)
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
と、一年おいて
如月
(
きさらぎ
)
の雪の夜更けにお染は、俊吉の矢来の奥の二階の
置炬燵
(
おきごたつ
)
に弱々と
凭
(
もた
)
れて語った。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
片寄せてあった
置炬燵
(
おきごたつ
)
を引出し火鉢の炭火を直しはじめると、重吉は
懐中
(
ふところ
)
から
蟇口
(
がまぐち
)
を出しながら
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
苫舟
(
とまぶね
)
の中の
置炬燵
(
おきごたつ
)
は、辛く当る風もなく、ぴちゃりぴちゃりと船底をうつ川波の音を聞きながら、手足を蒲団に
埋
(
うず
)
めていると、ほんとに呑気で、いつまでもここを出たくない気がする。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
古人を待つ身につらき
置炬燵
(
おきごたつ
)
と云われた事があるからね、また待たるる身より待つ身はつらいともあって軒に吊られたヴァイオリンもつらかったろうが、あてのない探偵のようにうろうろ
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
待
(
ま
)
つ
身
(
み
)
につらき
夜半
(
よは
)
の
置炬燵
(
おきごたつ
)
、それは
戀
(
こひ
)
ぞかし、
吹風
(
ふくかぜ
)
すゞしき
夏
(
なつ
)
の
夕
(
ゆふ
)
ぐれ、ひるの
暑
(
あつ
)
さを
風呂
(
ふろ
)
に
流
(
なが
)
して、
身
(
み
)
じまいの
姿見
(
すがたみ
)
、
母親
(
はゝおや
)
が
手
(
て
)
づからそゝけ
髮
(
がみ
)
つくろひて、
我
(
わ
)
が
子
(
こ
)
ながら
美
(
うつ
)
くしきを
立
(
た
)
ちて
見
(
み
)
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
行つて見ると、やはり机の側に
置炬燵
(
おきごたつ
)
を据ゑて、「カラマゾフ兄弟」か何か読んでゐた。あたれと云ふから、我々もその置炬燵へはいつたら、掛蒲団の
脂臭
(
あぶらくさ
)
い
匂
(
にほひ
)
が、火臭い匂と一しよに鼻を打つた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし奥さんの
傍
(
そば
)
にある
置炬燵
(
おきごたつ
)
は、又純一に不快な感じを起させた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
年久しく十四五年を経た
牝
(
めす
)
が、
置炬燵
(
おきごたつ
)
の上で長々と寝て、
密
(
そっ
)
と薄目を
睜
(
みひら
)
くと、そこにうとうとしていた
老人
(
としより
)
の顔を伺った、と思えば、張裂けるような
大欠伸
(
おおあくび
)
を一つして
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
されば貴人の馬車富豪の自動車の
地響
(
じひびき
)
に
午睡
(
ごすい
)
の夢を驚かさるる恐れなく、夏の
夕
(
ゆうべ
)
は
格子戸
(
こうしど
)
の外に裸体で凉む自由があり、冬の
夜
(
よ
)
は
置炬燵
(
おきごたつ
)
に隣家の三味線を聞く面白さがある。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
芸妓
(
げいこ
)
の酌で
置炬燵
(
おきごたつ
)
も遊びの味なら、みぞれ雲に撥の
冴
(
さ
)
えを響かせて、
名利
(
みょうり
)
や殺刃や術策や、
修羅
(
しゅら
)
風雲の
流相
(
るそう
)
をよそに、こうして磧の夜霜から、およそ人間のすること、いたされることを
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其日
(
そのひ
)
は
風
(
かぜ
)
もなく
一仕切
(
ひとしきり
)
日
(
ひ
)
も
照
(
て
)
つたが、
家
(
うち
)
にゐると
底冷
(
そこびえ
)
のする
寒
(
さむ
)
さに
襲
(
おそ
)
はれるとか
云
(
い
)
つて、
御米
(
およね
)
はわざ/\
置炬燵
(
おきごたつ
)
に
宗助
(
そうすけ
)
の
着物
(
きもの
)
を
掛
(
か
)
けて、それを
座敷
(
ざしき
)
の
眞中
(
まんなか
)
に
据
(
す
)
ゑて、
夫
(
をつと
)
の
歸
(
かへ
)
りを
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
けてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
片隅には「
命
(
いのち
)
」という字を
傘
(
かさ
)
の形のように
繋
(
つな
)
いだ赤い
友禅
(
ゆうぜん
)
の
蒲団
(
ふとん
)
をかけた
置炬燵
(
おきごたつ
)
。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二階の
欄干
(
てすり
)
、小窓などから、下界を
覗
(
のぞ
)
いて——野郎めが、「ああ降ったる雪かな、あの二人のもの、
簑
(
みの
)
を着れば景色になるのに。」——
婦
(
おんな
)
めが、「なぜまた
蜆
(
しじみ
)
を売らないだろう。」と
置炬燵
(
おきごたつ
)
で
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その日は風もなくひとしきり日も照ったが、
家
(
うち
)
にいると
底冷
(
そこびえ
)
のする寒さに
襲
(
おそ
)
われるとか云って、御米はわざわざ
置炬燵
(
おきごたつ
)
に宗助の着物を掛けて、それを座敷の真中に
据
(
す
)
えて、夫の帰りを待ち受けていた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
乳母
(
うば
)
に抱かれ、
久松座
(
ひさまつざ
)
、
新富座
(
しんとみざ
)
、
千歳座
(
ちとせざ
)
なぞの
桟敷
(
さじき
)
で、
鰻飯
(
うなぎめし
)
の
重詰
(
じゅうづめ
)
を物珍しく食べた事、冬の日の
置炬燵
(
おきごたつ
)
で、母が買集めた
彦三
(
ひこさ
)
や
田之助
(
たのすけ
)
の
錦絵
(
にしきえ
)
を繰り広げ、過ぎ去った時代の芸術談を聞いた事。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
雪の
夜路
(
よみち
)
の、人影もない
真白
(
まっしろ
)
な中を、矢来の奥の男世帯へ出先から帰った目に、狭い二階の六畳敷、机の
傍
(
わき
)
なる
置炬燵
(
おきごたつ
)
に、肩まで入って待っていたのが、するりと起直った、逢いに来た
婦
(
おんな
)
の
一重々々
(
ひとえひとえ
)
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
置
常用漢字
小4
部首:⽹
13画
炬
漢検1級
部首:⽕
9画
燵
漢検1級
部首:⽕
17画
“置”で始まる語句
置
置去
置土産
置床
置文
置物
置屋
置処
置毒
置目