“空:くう” の例文
“空:くう”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花35
吉川英治29
夏目漱石17
岡本綺堂16
中里介山14
“空:くう”を含む作品のジャンル比率
文学 > ドイツ文学 > 小説 物語21.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語6.0%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
居士は一紙の墨符ぼくふを書いて、くうにむかってなげうつと、妻はひと声高く叫んで、屋根がわらの上に飛びあがった。
元より見事に、——と思ったのに、八人おそって、八人仕損じたことのない直人の剣が、どうしたことかゆらりとくうに泳いだ。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
が、町々辻々に、小児こどもという小児が、皆おもちゃを持って、振ったり、廻したり、くうはたいたりして飛廻った。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
待つというくうな時間を、こんな愉悦にみちて、恍惚こうこつと過ごすなんていうことは、一生のうちにそうめったにはない。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とのみで、莞爾かんじともなされなかったが、なんら逆鱗げきりんともみえなかった。幕府側は、くうを打った思いをして、
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
カラカラッと、くう木枯こがらしと聞こえたのは、逃げるはずみに、その男が竹の束につかッて鳴ったひびきで、
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
代助はせきいた儘、やすからぬくうに据ゑて、あたまなかで何かさがす様に見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それに応じてどこからか石が一つななめくうを切りながら、かちやりと音を立てて交番の窓硝子ガラスへ穴をあけた。
饒舌 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
我等ははげしき雨にうちふせらるゝ魂をわたりゆき、からだとみえてしかもくうなるそのかたちを踏みぬ 三四—三六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あわたゞしく擦上ずりあがらうとする、あしすなはなれてくうにかゝり、むね前屈まへかゞみになつて
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
れ我国たるや、現今戦勝後の隆盛を誇るも、然れども生産力の乏しきと国庫のくうなるとは、世評の最も唱うる処たり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
さては、あったら名人のこころづかいもくうに帰して、水火秘文の合符がっぷ、むなしく刀柄に朽ち果てる……のか。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けれどともすると、ふと言葉が途切れて長く黙ってる折など、彼女はぼんやりくうを見つめて、我を忘れたようになっていた。
溺るるもの (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
彼女はくうを見つめていたが、クリストフはその眼つきの中に、あの晩と同じ異様な熱情の輝きが過ぎるのを見たような気がした。
かひなが動き出した。片手は、まつくらなくうをさした。さうして、今一方は、そのまゝ、岩どこの上を掻き捜つて居る。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
とうとう老いた猟犬が地面に鼻面をむけ、狂ったようにくうを噛みながら、視界に跳びだし、一直線に岩の方に走って往った。
私はただかうして、その幻しのつづいてゐる間、このまなかひの、くうの空なるその空間スペースを眺めてゐればいいのである。
(旧字旧仮名) / 三好達治(著)
木綿ちゃんの行動は天馬てんまくうを行くがごとくで、四畳であろうが、百畳であろうが、木綿ちゃんにそんな差別はない。
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ひとりか、ふたりか、定めのつかぬあの顔が、白目をくうに見ひらいて、無言のなぞの下に、無言の死をとげているのです。
今まで大きな問題をくうえがいて、骨組みだけはほぼでき上っているくらいに考えていた私は、頭をおさえて悩み始めた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くうを泳いだ左膳、ヒトたまりもなくペタンと砂に尻餅をついたまま、行列の遠ざかるのを、しばらくじっと見送っている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
静かに流れて行く鳩の死んだのを見ていると、幸福だとか、不幸だとか、もう、あんなになってしまえばくうくうだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「うむ——色もあるにはある、しきすなわくう、空は即ち色なりといって、魂だって、色がえという理窟は無え」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しゅウッ! と異様な音を発して、くうをさいて峰丹波の手から、生あるごとく流れ出て源三郎の長剣に、捲きついたもの。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
右から左へいだ左腕の剣を、そのままくうあずけて、その八の字を平たく押しつぶしたような恰好のまま——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし、彼女が一口も返事をせず、ぢつとくうを見つめた眼にだんだん涙がにじんで来るのを見て、たうとう根気負けがしたらしく、
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
と、その椀を、うしろから投げつけたのが、くう足掻あがく馬のかかとに当ると、生ぬるい水がざぶりとかかった。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
助九郎の退いた足と、同時に、抜き打ちに払った尺度には、そこに誤算があったので、見事にくうなぐってしまった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英国王子に潔身の祓私が明治政府を攘夷政府と思たのは、決してくうに信じたのではない、おのずからうれうべき証拠がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その常の如く汝をくうにむかはしむ、そも/\汝の見るものは、誓ひを果さゞりしためこゝに逐はれしまことの靈なり 二八—三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
秀吉はくうを睨んで突っ立っていると、そこに一本咲き乱れている遅桜の梢かと思わるるあたりで、彼を嘲るような笑い声がきこえた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
不死身のやうなおやぢのわからずに苛々いら/\して、三田はぶかぶかの靴を穿いてゐる足に力を入れてくうを蹴つた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「わしなら掘り出してみせる所じゃがのう。だが鉄砲ではないぞ。からをだ。くうなる夢土むどから世の中の実相をだ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わッ……」こまかい血がもうとあがる……。九鬼弥助はくうをつかんで、ならの傾斜へ落ちこんで行った。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨は帆布をたたいて、滝のように白くあふれていた。さらに、くうへ、奈落ならくへ、ゆれかえるあいの動揺!
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二本の指先で、頬にある奇妙な生毛の一つをつまんで、四半時ぐらいそれをひねり廻しながら、彼はくうを見つめて、一行も進まない。
トリスタン (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
戴宗は、彼にも呪符じゅふを持たせて、大きく腹中の気をくうへぷっと吐くやいな、楊林ようりんの腕をんで飛走しだした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いどみかかった彼の鉄鎗てっそうもまた、蝶になぶられているようで、いたずらな、くうを感じてきたからだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その都度に、華やかな洋傘パラソル尖端さきが、大きい、小さいまるや弧を、くうに描いて行くのであった。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あざな国瑞こくずいして、その身は地に入り、其しんくうに帰せんとするに臨みて
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自分にも明瞭はっきりとは分らない、ただ憎いと思う者をなぐる気で、頭の横のくうを打ち払い打ち払い歩いて来たのだが
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
他の者どももみな従って来て、楊の寝床の四脚をもたげて部屋じゅうをぐるぐる引きまわした末に、くうにむかって幾たびか投げあげた。
俺は俺だけのことをしたのであるけれどそれが全くくうに帰したとなると、俺の行為は結果をまない行為である。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
作者はくうりて想ひ得しなるべく、又まことに空に憑りて想ひ得たりとせんかた、藍本らんぽんありとせんよりめでたからん。
が、すぐ目を反らせて、くうを見ながら、そんな状態に置かれていることに少しも不平を見せずに、落着いて寝ている。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
信一郎は、いらいらしくなって来る心を、じっと抑え付けて、湯河原の湯宿に、自分を待っている若き愛妻の面影を、くうに描いて見た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
信一郎は、いらいらしくなつて来る心を、ぢつと抑へ付けて、湯河原の湯宿に、自分を待つてゐる若き愛妻の面影を、くうに描いて見た。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
パチリッ! 柄近く受けとめた武蔵太郎、つづいてジャアッと刀がかたなを滑って、ほの青い火花が一瞬、うすやみのくうをいろどった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それをばピンセットの尖に持ち上げられた腱を凝視しながら理解しようとしてる者もあれば、くうを睨んで理解しようとしてる者もある。
レンブラントの国 (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
怨靈をんりやう鍬形くはがた差覗さしのぞいてはえるやうな電光いなびかりやまくうつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と重左の気合が竹杖にかかって、太刀はガラリとくうからみ上げられ、八、九間も彼方あなたの大地へズーンと突き立っていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふとその鼻頭はなさきをねらいて手をふれしにくうひねりて、うつくしき人はひなのごとく顔の筋ひとつゆるみもせざりき。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三十分も歩いたと思って帰って見ると、お蝶は畳んだ蚊屋を前に置いて、目はくうを見てぼんやりしてすわっていた。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
瞬く間に水、焼酎、まだ何やらが口中こうちゅう注入そそぎいれられたようであったが、それぎりでまたくう
そしてあの天馬くうを行くような怪塔ロケットは、なぜあのようなおそろしい新科学兵器を持っているのでしょうか。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さて暫くくうにらみいて、忽ち激しき運動にて両手を顔に覆い、両肱りょうひじを机に突き、死人の如く動かずにすわりいる。
が、明はなんとも云わずに、唯、さっきからくうを見つめ続けているその眼つきを一瞬切なげに光らせただけだった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ただもう機械きかいのように動いて、しいて頭におしこまれたことばをくうにくり返しているというだけであった。
夜目にもさかんな月見草が微風そよかぜに揺れてゐる河堤で漸く私は馬車のうしろにぶらさがつた。鞭の昔が痛々しくくうに鳴つてゐた。
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
小兒こどもたちと一所いつしよに、あら/\と、またひまに、電柱でんちうくうつたつて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのとき、正吉しょうきちのからだも、いっしょにからはなれて、くうでもんどりち、地上ちじょうへとちました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見るべきものの何一つ置いてないのは、人の心をくうに直面させようための造庭者の深いはからいにちがいない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
振り顧って、彼は、数右衛門の刃を胸の前にくうを打たせた。数右衛門は、くびすをあげて台所口の竹雨樋たけどいをカッと斬った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余はその薄くて規則正しい花片と、くうに浮んだように超然と取り合わぬ咲き具合とを見て、コスモスは干菓子ひがしに似ていると評した。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふとその鼻頭はなさきをねらひて手をふれしにくうひねりて、うつくしき人はひなの如く顔のすじひとつゆるみもせざりき。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かいなが動き出した。片手は、まっくらなくうをさした。そうして、今一方は、そのまま、岩牀いわどこの上を掻きさぐって居る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
金色に光った小さな魚の形が幾つとなくくうなところに見えて、右からも左からも彼女の眼前めのまえに乱れた。
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、彼女はそんな私をと云うよりも、むしろ、そんな私の悲しみを見まいとするかのように、ぼんやりした目つきでくうを見入っていた。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
視線をくうに据え、下眼瞼と黒目の縁と、二つの円弧の間の、純白な一線から、大粒の涙を、ぼろぼろとこぼした。
傷痕の背景 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
——おもむろに、彼女の乗つたブランコは、巨大な時計の振子のやうに、砂を払つてゆるやかにくうを蹴つた。
海棠の家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
わたくしは息を呑んだとも、手にくうを掴んだとも形容し切れない気持で、たゞ追い眺めていますと、霧の中から先生の声が聞えて来ました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
くうを斬ると編笠の侍は、右手めての鉄扇に力をくれて、旅川周馬の顔をハタキつけた。こうなっては孫兵衛も、大事をとっていられない。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、相手の飛躍にくうを打たせるたびごとに身をらしつつ叫んだが、うんもすんも、二つの人影はもとより答えもしないのだ。
第八の娘は両臂りょうひじを自然の重みで垂れて、サントオレアの花のような目は只じいっとくうを見ている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
まなこいたずらにくうを眺めて動かざるはむつかしき問題ありてを解かんめ苦めるにや
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
義男も疲れてゐた。二人の神經はある悲しみの際に臨みながら、その悲しみを嘲笑のくうの中にお互に突つ放さうとする樣な昂奮を持つてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
然るに、一座のうちで真の独身者である宮崎は、中途から口を噤んで、くうに眼を据えて、酒ばかり飲んでいた。
別れの辞 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
早くいッて見れば空漠として広いくうの中に草の蔓は何故無法に自由自在に勝手に這い回らないのだろう。
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこで三人はにやにや笑って何事か囁き合い乍ら、今度は茶の間の畳の上を廓大鏡を出して、検査したが、やはり、彼等の努力はくうに帰した。
犬神 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
肘掛椅子の女は死んだように身体を横たえ、胸の子供を少しも見ようともしないで、漠然とくうをながめていた。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
と弦之丞が、その提灯をくうへ捨てたのが早かったか、轟然ごうぜんとゆすッた鉄砲の音が早かったか? ——ほとんど、けじめのない一瞬。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも一たび「因縁の原理」に目覚め真に「般若はんにゃくう」に徹したものは、生のはかなさを知ると同時にまた、生の尊さを知るのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
憲作はうしろによろめいた。短銃ピストルくうを撃った。警官の弾丸たまに撃たれて入口へ倒れ込んだ。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ここへ来ると、お銀様は手に持っていたところの杖で、その地点の上に、かなり大きな円をくうに描きました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
然るに帰国って考えてみると梅子さんの為めに老人の描いていた希望はほとんどくうになって了った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
又非 無楽復無憂 しきに非ず又くうに非ず、楽無くまたうれい無し
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
くうを望んで駿駆する日陽、虚にしたがつて警立する候節、天地の運流、いつを以て極みとはするならん。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
積まれ積まれる白紙は、所定の、高さにかさむと、目の廻る速度でまた除去して、くうにし、空へまた奔って来て乗る白紙へ備えねばならぬ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「半夜ぢかくも、二丈もある樹のくうるされていたなんて、まったく生れて初めてでございましたよ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、いら立てば立つほど、彼の打つ太刀は皆くうを切って、ややともすれば、足場を失わせようとする。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
王受け取ってこれを焼きその勇者に武士号を与え金また銀に金をかぶせたる環中かんなかくうにして小礫こいしまた種子を入れたるを賜う。
夢にも忘れないこけ猿の茶壺……主水正は、操り人形が糸につられるように踊るように、両手をくうに泳がせて、フワフワッとたちあがろうとした。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それから彼女の眼ざしはときどきひとりでに、何か気に入らないものを見咎みとがめでもするように、長いことくうを見つめたきりでいたりした。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そしてそのやうな底も知れないくうに浮いた人生は不可能であるといふ證明にのみ殆んど充てられたところの
つひあいちやんはふたゝ其手そのてばしてモ一くうつかみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ところが、突然、おかみは聞き耳を立て、耳を傾けることにすっかり没頭したまま、くうをじっと見つめた。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
宮は、大きくくうを打ったお眼である。張り充ちていた闘志も画策も音をたてて血の中からくずれてゆく。お顔には青白い惑いだけが残ってみえる。
考えて見るとくうと空とを孕んだ紙の層はいかに高くとも、実に軽々かるがるとしたものにはちがいない。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
造化ざうくわしゆに對するこの大歡喜、千萬の天軍が嚴守げんしゆするこの祕密はくうにあらず。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
と斬りすべって、くうを切って泳いだまま、体の取り返しもつかないところを、先の腕がその柄手つかでを抑えて、ムズと手元へ抱きこみました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)