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無造作
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むぞうさ
ふりがな文庫
“
無造作
(
むぞうさ
)” の例文
食後の葉巻をくわえたゲエルはいかにも
無造作
(
むぞうさ
)
にこう言いました。しかし「食ってしまう」というのはなんのことだかわかりません。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
老刀自は裏山からかねて見つけておいた、すがれた秋草を取揃えて持って来て、李朝白磁の手頃なふっくりした花瓶に
無造作
(
むぞうさ
)
に挿す。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ふわりと宙に浮ぶような煙の状態は、「二階からたばこの煙」という
無造作
(
むぞうさ
)
な表現によって、かえってよく現し得るのかも知れない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
孫伍長はポケットの中で撃った
拳銃
(
ピストル
)
を
無造作
(
むぞうさ
)
にとり出して倒れかかる中尉へ更に数弾を浴せかけた。犬でも射殺するような態度だった。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
裸体を回想として近接の過去にもち、あっさりした
浴衣
(
ゆかた
)
を
無造作
(
むぞうさ
)
に着ているところに、媚態とその形相因とが表現を
完
(
まっと
)
うしている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
▼ もっと見る
月並宗匠がこういう場合に作る句は、かくの如く目前の景色を
無造作
(
むぞうさ
)
にいってのける事はせぬ。何とか此処へ一理窟を持って来る。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
... 極く
無造作
(
むぞうさ
)
ですから皆さん一つお試しなすって御覧なさい」客「ところで今あの料理人が
拵
(
こしら
)
えているのは何というお料理です」中川
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
予は姉には
無造作
(
むぞうさ
)
に答えたものの、奥の底にはなつかしい心持ちがないではない。お光さんは予には
従姉
(
いとこ
)
に当たる人の娘である。
紅黄録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
遊行上人はこういって、
座右
(
ざう
)
の箱に入れてあった名号の小札を
一掴
(
ひとつか
)
み
無造作
(
むぞうさ
)
に取っておしいただくと、
肩衣袴
(
かたぎぬばかま
)
を附けた世話人が
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すると、絹の焼け
布片
(
きれ
)
がでてきた。彼はそれを
無造作
(
むぞうさ
)
にひらいた。こんどは黄金メダルがでてきた。ぴかぴか光るので彼はびっくりした。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
私
(
わたし
)
には——認識した御本人でなくては」と団扇のふさを
繊
(
ほそ
)
い指に巻きつける。「夢にすれば、すぐに
活
(
い
)
きる」と例の髯が
無造作
(
むぞうさ
)
に答える。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
引摺り上げる時風呂敷の間から、その
結目
(
むすびめ
)
を解くにも及ばず、書物が五、六冊畳の上へくずれ出したので、わたしは
無造作
(
むぞうさ
)
に
梅雨晴
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と直次は姉を前に置いて、熊吉にその日の出来事を話して
無造作
(
むぞうさ
)
に笑った。そこへおさだは台所の方から手料理の皿に盛ったのを運んで来た。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
三人は、それから、そろって各室を
一巡
(
いちじゅん
)
した。朝倉先生は、室ごとに、入り口をはいると、立ったままで
無造作
(
むぞうさ
)
に言った。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
長持は座敷の真中に持ち出され、一警官の手によって、
無造作
(
むぞうさ
)
に蓋が開かれた。五十
燭光
(
しょっこう
)
の電燈が、醜く歪んだ、格太郎の苦悶の姿を照し出した。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
矢来の竹を一本抜いて来て、十介は、その先を刃物で
尖
(
とが
)
らせ、
無造作
(
むぞうさ
)
に丑蔵の首を突き刺して黙々と河原へ下りてゆく。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
某
(
なにがし
)
大名から領地へ送る、
莫大
(
ばくだい
)
もない黄金を、
無造作
(
むぞうさ
)
に積みこんでいるからで、こういう船を襲わなかったら、それこそ海賊としては新米であった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
義家
(
よしいえ
)
はそこらにある
弓
(
ゆみ
)
に
矢
(
や
)
をつがえて、
無造作
(
むぞうさ
)
に
放
(
はな
)
しますと、
鎧
(
よろい
)
を三
枚
(
まい
)
とおして、
後
(
うし
)
ろに五
寸
(
すん
)
も
鏃
(
やじり
)
が出ていました。
八幡太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
それを聞くと「そうでございますか」と
無造作
(
むぞうさ
)
にいいながら、ヴァイオリンを窓の外にほうりなげて、そのまま学校を退学してしまったのも彼女である。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
次々と
無造作
(
むぞうさ
)
に屈曲して来たということが、いわゆる固有宗教の弱味といえば弱味だが、同時にまた懐古の学問の、測り知れざる魅力ともなっているのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
暴食の
癖
(
くせ
)
なども
殆
(
ほとん
)
ど
失
(
う
)
せたせいか、健康もずっと増し、二十
貫目
(
かんめ
)
近い体に
米琉
(
よねりゅう
)
の
昼丹前
(
ひるたんぜん
)
を
無造作
(
むぞうさ
)
に着て
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
平次は
無造作
(
むぞうさ
)
に笑い飛ばして、縁側に後ろ手を突いたまま、空の
碧
(
あお
)
さに見入るのでした。
七夕
(
たなばた
)
も近く天気が定まって、毎日毎日クラクラするようなお天気続きです。
銭形平次捕物控:124 唖娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
男
(
おとこ
)
は、
無造作
(
むぞうさ
)
に、
毎日
(
まいにち
)
、ぼろくずや、
古鉄
(
ふるてつ
)
などをいじっている
荒
(
あら
)
くれた
手
(
て
)
で、
彼
(
かれ
)
の
出
(
だ
)
した、
金銀細工
(
きんぎんざいく
)
の
飾
(
かざ
)
りとさかずきとを、かわるがわる
取
(
と
)
ってながめていました。
さかずきの輪廻
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そいつを
無造作
(
むぞうさ
)
に
掴
(
つか
)
んで、そこらをふいている可愛い男の顔を、お絃は、食べてしまいたそうに、うっとり
見惚
(
みと
)
れていようという、まことに
春風駘蕩
(
しゅんぷうたいとう
)
たるシインだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
無造作
(
むぞうさ
)
に突っ立った、相手の体構えに、不思議な、圧力が
漲
(
みなぎ
)
っていたのだ。何十何百の、捕り方に囲まれても、一度も
周章
(
うろ
)
たえたことのないような、不敵者の彼だった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
わが
輩
(
はい
)
は決して道徳問題は、みなみな
無造作
(
むぞうさ
)
に解するものと言うのではない。一生の間には一回二回もしくは数回
腸
(
はらわた
)
を
断
(
た
)
ち、胸を
焦
(
こが
)
すような
争
(
あらそい
)
が心の中に起こることもある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その時、うしろに立っていた岸本監督は、一男が
無造作
(
むぞうさ
)
に歩き出したのを見て、はっとした。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
春重
(
はるしげ
)
の
手
(
て
)
から、
無造作
(
むぞうさ
)
に
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
された
真
(
ま
)
ッ
黒
(
くろ
)
な一
束
(
たば
)
は、
松
(
まつ
)
五
郎
(
ろう
)
の
膝
(
ひざ
)
の
下
(
した
)
で、
蛇
(
へび
)
のようにひとうねりうねると、ぐさりとそのまま
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うえ
)
へ、とぐろを
巻
(
ま
)
いて
納
(
おさ
)
まってしまった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
昔
(
むかし
)
、洋服も自転車も人にさきがけた彼女も、今では
白髪
(
しらが
)
まじりの
髪
(
かみ
)
の毛を
無造作
(
むぞうさ
)
にひっつめ、夫の着物の
紺
(
こん
)
がすりで作ったモンペをつけ、小さな息子に舟でおくられている。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
その淡墨と濃墨との接する処は極めて
無造作
(
むぞうさ
)
であつて、近よつてこれを見ると何とも
合点
(
がてん
)
のゆかぬほどであるが、少し遠ざかつて見ると背中の
淡白
(
うすじろ
)
い処が
朦朧
(
もうろう
)
として面白く見える。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
袖口の切れたやうな
長襦袢
(
ながじゆばん
)
に古いお召の部屋着をきてゐたその上に
袿
(
うちかけ
)
を
無造作
(
むぞうさ
)
に引つかけて、その部屋へ顔を出して行つたのであつたが、鳩のやうな其の目はよくその男のうへに働いた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
(おいおい、
松本
(
まつもと
)
へ出る路はこっちだよ、)といって
無造作
(
むぞうさ
)
にまた五六歩。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無造作
(
むぞうさ
)
な手つきで死人の体をまさぐっていられましたが、やがてふと、卒塔婆の前のもう既に燃えつきようとする線香の束の横から、白い手紙のようなものを取りあげると、そいつをひろげて
幽霊妻
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
ミチは疲れ切った男の為に、部屋に戻り、押入れから、
縞目
(
しまめ
)
もわからぬ木綿布団を
無造作
(
むぞうさ
)
に引き出して敷いた。勇は
仰向
(
あおむ
)
けに布団へ転がると大きな息を吐いた。
博奕
(
ばくち
)
が
甚
(
はなは
)
だしく悪かった時の癖だ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
奧
(
おく
)
さまは
例
(
れい
)
に
似合
(
にあは
)
ず
沈
(
しづ
)
みに
沈
(
しづ
)
んで、
私
(
わたし
)
は
貴君
(
あなた
)
に
捨
(
す
)
てられは
爲
(
せ
)
ぬかと
存
(
ぞん
)
じまして、
夫
(
そ
)
れで
此樣
(
このやう
)
に
淋
(
さび
)
しう
思
(
おも
)
ひますると
言
(
い
)
ひ
出
(
いづ
)
れば、
又
(
また
)
かと
且那
(
だんな
)
さま
無造作
(
むぞうさ
)
に
笑
(
わら
)
つて、
誰
(
た
)
れが
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふたか、
一人
(
ひとり
)
で
考
(
かんが
)
へたか
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
最も貧しい窯の一例でありますが、出来るものを見ますと誠に立派で活々した仕事であります。雑器のこと故、極めて
無造作
(
むぞうさ
)
に作りはしますが、中から選べば、名器と呼ばれてよいものに出会います。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼女にそう
無造作
(
むぞうさ
)
に言われたので、彼は
嫌
(
いや
)
な心地がした。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ただ白い紙へ
無造作
(
むぞうさ
)
に書いてあるのが非常に美しい。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
花のようなものをみつめて
無造作
(
むぞうさ
)
にすわっている
貧しき信徒
(新字新仮名)
/
八木重吉
(著)
と私は
無造作
(
むぞうさ
)
に尋ね返した。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼は俊助に声をかけられて、やっと相手の居場所に気がつくと、これは隣席の夫婦づれにも頓着なく、
無造作
(
むぞうさ
)
に椅子をひき寄せて
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女房はそれと見るとすぐ
納戸
(
なんど
)
から、どてらと枕を持ってきて、
無造作
(
むぞうさ
)
なとりなしにいかにも妻らしいところが見えた。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
竜之助は、やはり片手でさぐって、のたり廻る幸内の
襟髪
(
えりがみ
)
を
無造作
(
むぞうさ
)
に掴んで、部屋の隅へ突き飛ばしてしまいました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
煮るといってもシチューにするのとボイルドにするのと料理法が違いまして、ボイルドは
極
(
ご
)
く
無造作
(
むぞうさ
)
ですけれども雁や鴨のようなものは用いません。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「よくああ
無造作
(
むぞうさ
)
に鑿を使って、思うような
眉
(
まみえ
)
や鼻ができるものだな」と自分はあんまり感心したから
独言
(
ひとりごと
)
のように言った。するとさっきの若い男が
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そういうと、金博士は、
無造作
(
むぞうさ
)
に、人造人間の金博士をばらばらに解体し、それを例の三つのトランクに収めた。
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
唖は、眼をさました猛獣のように、
筵
(
むしろ
)
の上に眼を落すと、もっそりと、身を起して、
無造作
(
むぞうさ
)
に、筵をめくッた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
無造作
(
むぞうさ
)
な人物で、自分で自分の自動車を操縦して、よく玉村商店へ遊びに来たが、話し好きで、どことなく
愛嬌
(
あいきょう
)
があったので、主人の玉村氏ともじき懇意を結び
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
やや気軽に色々の動機を承認したのでもあろうが、互いに事態の想像しやすい陸続きの土地ですらも、
元
(
もと
)
は各自の
疆域
(
きょういき
)
を守って、そう
無造作
(
むぞうさ
)
には出て行かなかった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そして、彼がやっと引張り出した書面を
無造作
(
むぞうさ
)
に受取って読み始めたが急に緊張した様子で云った。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
“無造作”の意味
《名詞》
無造作(むぞうさ)
造作ないさま。容易いさま。気軽なさま。
(出典:Wiktionary)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
造
常用漢字
小5
部首:⾡
10画
作
常用漢字
小2
部首:⼈
7画
“無造作”で始まる語句
無造作裡