トップ
>
滴
>
した
ふりがな文庫
“
滴
(
した
)” の例文
翠色
(
すいしょく
)
滴
(
した
)
たる草木の葉のみを望んでも、だれもその美と
爽快
(
そうかい
)
とに打たれないものはあるまい。これが一年中われらの周囲の
景致
(
けいち
)
である。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
青鬼のようになった三好の両眼が、
酸漿
(
ほおずき
)
のように真赤になった……と思ううちに鼻の穴と、唇の両端から血がポタポタと
滴
(
した
)
たり出した。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
後ろを振り向くと、下から
緑
(
みど
)
りの
滴
(
した
)
たる
束髪
(
そくはつ
)
の
脳巓
(
のうてん
)
が見える。コスメチックで
奇麗
(
きれい
)
な一直線を七分三分の割合に
錬
(
ね
)
り出した
頭蓋骨
(
ずがいこつ
)
が見える。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そればかりでなく青竜二郎のためにたった今鞭で打たれたと見え、頬の辺り手の甲などから生血がタラタラと
滴
(
した
)
たっている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
緑
滴
(
した
)
たる
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉かげに、若い男女が二人、
相擁
(
あいよう
)
しあって、愛を
囁
(
ささや
)
いているのです。それだけをみて、ぼくはくるりと引っ返し、競争を
廃棄
(
はいき
)
しました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
▼ もっと見る
大杉の生涯は革命家の
生血
(
なまち
)
の
滴
(
した
)
たる戦闘であったが、同時に二人の女に
縺
(
もつ
)
れ合う恋の
三
(
み
)
つ
巴
(
どもえ
)
の一代記でもあった。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
湿つた石壁に
凝
(
こ
)
つて
滴
(
した
)
たる水が流れて二つの水盤に入る。寂しい
妄想
(
まうざう
)
に耽りながら此中の道を歩く人に伴侶を与へるためか、
穹窿
(
きうりう
)
には銅で鋳た
種々
(
いろ/\
)
の
鳥獣
(
とりけもの
)
が据ゑ附けてある。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
話かわって飯島平左衞門は孝助を
門外
(
もんそと
)
に出し、急ぎ血潮
滴
(
した
)
たる槍を杖とし、蟹のように成ってよう/\に縁側に這い上がり、
蹌
(
よろ
)
めく足を踏みしめ踏みしめ、段々と廊下を伝い
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
じっと
湛
(
たた
)
えているのも淵だ。流れて来た水のしばらく
淀
(
よど
)
むところも淵だ。底から
湧
(
わ
)
いた水が豊かに
溜
(
たま
)
り、そしてまた流れ出るところも淵だ。
滴
(
した
)
たって落つる水を受け止めているのも淵だ——
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
扨
(
さて
)
は
園内
(
ゑんない
)
の
手入
(
てい
)
れを
賞
(
ほ
)
めなどして、
逍遙
(
そゞろあるき
)
の
端
(
はし
)
に
若
(
も
)
し
其人
(
そのひと
)
見
(
み
)
ゆるやと、
垣根
(
かきね
)
の
隣
(
となり
)
さしのぞけど、
園生
(
そのふ
)
廣
(
ひろ
)
くして
家
(
いへ
)
遠
(
とほ
)
く、
萱
(
かや
)
ぶきの
軒
(
のき
)
ば
半
(
なか
)
ば
掩
(
おほ
)
ふ
大樹
(
たいじゆ
)
の
松
(
まつ
)
の
滴
(
した
)
たる
如
(
ごと
)
き
緑
(
みどり
)
の
色
(
いろ
)
の
目
(
め
)
に
立
(
たち
)
て
見
(
み
)
ゆるばか
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
庭の
一隅
(
いちぐう
)
に
栽込
(
うえこ
)
んだ
十竿
(
ともと
)
ばかりの
繊竹
(
なよたけ
)
の、葉を分けて出る月のすずしさ。月夜見の神の力の測りなくて、断雲一片の
翳
(
かげ
)
だもない、
蒼空
(
あおぞら
)
一面にてりわたる清光素色、唯
亭々皎々
(
ていていきょうきょう
)
として
雫
(
しずく
)
も
滴
(
した
)
たるばかり。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
童べに母の乳
滴
(
した
)
る夜明がた蟋蟀の声は冷えてやみにし
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ぽんぽんと血が
滴
(
した
)
たっているようだ。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
木膚
(
こはだ
)
の
目
(
め
)
より
美脂
(
うまやに
)
をしぬに
滴
(
した
)
つれ。
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
ところが、その黒い水の
滴
(
した
)
たりを見ると福太郎は又、別の事を思い出させられて、
吾
(
われ
)
知らず身ぶるいをさせられたのであった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
紅
(
くれない
)
を
弥生
(
やよい
)
に包む昼
酣
(
たけなわ
)
なるに、春を
抽
(
ぬき
)
んずる
紫
(
むらさき
)
の濃き一点を、
天地
(
あめつち
)
の眠れるなかに、
鮮
(
あざ
)
やかに
滴
(
した
)
たらしたるがごとき女である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その時分はマダ今ほど夫婦連れ立って歩く習慣が
流行
(
はや
)
らなかったが、沼南はこの艶色
滴
(
した
)
たる夫人を出来るだけ極彩色させて、近所の
寄席
(
よせ
)
へ連れてったり縁日を冷かしたりした。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と云われて源次郎頬が
冷
(
ひ
)
やりとしたに
不図
(
ふと
)
目を
覚
(
さま
)
し、と見れば飯島が元結はじけて
散
(
ちら
)
し髪で、眼は血走り、顔色は
土気色
(
つちけいろ
)
になり、血の
滴
(
した
)
たる手槍をピタリッと付け立っている有様を見るより
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
木膚
(
こはだ
)
の目より
美脂
(
うまやに
)
をしとど
滴
(
した
)
つれ。
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
濡れ
滴
(
した
)
る
柑子
(
かうじ
)
の色のひとつらね
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
云い知れぬ恐怖から
滴
(
した
)
たり落つる冷汗を、左右の腋の下ににじませつつ、眼の前の蒼白長大な顔面に全神経を集中していた……ように思う。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
二人
(
ふたり
)
の
精神
(
せいしん
)
を
組
(
く
)
み
立
(
た
)
てる
神經系
(
しんけいけい
)
は、
最後
(
さいご
)
の
纖維
(
せんゐ
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
互
(
たがひ
)
に
抱
(
だ
)
き
合
(
あ
)
つて
出來
(
でき
)
上
(
あが
)
つてゐた。
彼等
(
かれら
)
は
大
(
おほ
)
きな
水盤
(
すゐばん
)
の
表
(
おもて
)
に
滴
(
した
)
たつた二
點
(
てん
)
の
油
(
あぶら
)
の
樣
(
やう
)
なものであつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
『色懺悔』というような濃艶な元禄情味を
滴
(
した
)
たらした書名が第一に人気に投じて、内容はさして
勝
(
すぐ
)
れたものではなかったが、
味淋
(
みりん
)
と
鰹節
(
かつおぶし
)
のコッテリした元禄
張
(
ばり
)
の文章味が読書界を沸騰さした。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
汗
(
あせ
)
滴
(
した
)
るしとどの
熱
(
ねつ
)
に
薄曇
(
うすくも
)
り
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
同時に、その真白い頬から大粒の涙の球が、キラリキラリと月の光りを帯びて、土の上に
滴
(
した
)
たり落ちるのが見えた。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
二人の精神を組み立てる神経系は、最後の繊維に至るまで、互に抱き合ってでき上っていた。彼らは大きな水盤の表に
滴
(
した
)
たった二点の油のようなものであった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
真黒
(
まくろ
)
に
滴
(
した
)
る音ささと
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
焼き
千切
(
ちぎ
)
られている泥土と氷の荒野原……それが突然に大空から
滴
(
した
)
たり流れるマグネシューム光の下で
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
どうしようと迷っていると女はすっくら立ち上がった。後ろは隣りの寺の
孟宗藪
(
もうそうやぶ
)
で寒いほど緑りの色が茂っている。その
滴
(
した
)
たるばかり深い竹の前にすっくりと立った。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
被
(
かつ
)
ぐは
滴
(
した
)
る蜜の音
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
向うの窓際に在る
石造
(
いしづくり
)
の
浴槽
(
ゆぶね
)
から湧出す水蒸気が三方の
硝子
(
ガラス
)
窓一面にキラキラと
滴
(
した
)
たり流れていた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
古き五年は夢である。ただ
滴
(
した
)
たる絵筆の勢に、うやむやを貫いて
赫
(
かっ
)
と染めつけられた昔の夢は、深く記憶の底に
透
(
とお
)
って、
当時
(
そのかみ
)
を裏返す折々にさえ
鮮
(
あざや
)
かに
煮染
(
にじ
)
んで見える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
足音
(
あしおと
)
す、
生血
(
なまち
)
の
滴
(
した
)
り
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
曇る
鑑
(
かがみ
)
の霧を含みて、
芙蓉
(
ふよう
)
に
滴
(
した
)
たる音を
聴
(
き
)
くとき、
対
(
むか
)
える人の身の上に危うき事あり。
砉然
(
けきぜん
)
と
故
(
ゆえ
)
なきに響を起して、白き筋の横縦に鏡に浮くとき、その人
末期
(
まつご
)
の覚悟せよ。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
やがてドタリと椅子の上に腰をかけるトタンに、両方の腋の下からタラタラと冷汗が
滴
(
した
)
たった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
櫂
(
かい
)
がしわる時、
雫
(
しずく
)
が
舟縁
(
ふなべり
)
に
滴
(
した
)
たる時、
漕
(
こ
)
ぐ人の手の動く時ごとに吾が命を刻まるるように思ったであろう。白き
髯
(
ひげ
)
を胸まで垂れて
寛
(
ゆる
)
やかに黒の
法衣
(
ほうえ
)
を
纏
(
まと
)
える人がよろめきながら舟から上る。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その上から涙がポトポトと
滴
(
した
)
たりかかる——
涙のアリバイ:――手先表情映画――
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
処女としては水の
滴
(
した
)
たるばかりの、この
従妹
(
いとこ
)
を軽い
嫉妬
(
しっと
)
の眼で
視
(
み
)
た。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“滴”の意味
《名詞》
(しずく)空中や物の表面にある球状となった少量の液体。
(出典:Wiktionary)
滴
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“滴”を含む語句
点滴
一滴
雨滴
滴々
涓滴
水滴
滴水
墨汁一滴
余滴
點滴
滴点
滴垂
二滴
下滴
散滴
油滴
滴水和尚
滴血
滴雫
血一滴
...