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敲
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たた
ふりがな文庫
“
敲
(
たた
)” の例文
薛老人はひどく恐れて、崑を
敲
(
たた
)
いて神にあやまったが、幸いに禍をくだしもしなければ、またひっそりとして何の音さたもなかった。
青蛙神
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「お京さん、いきなり内の
祖母
(
ばあ
)
さんの背中を一つトンと
敲
(
たた
)
いたと思うと、
鉄鍋
(
てつなべ
)
の
蓋
(
ふた
)
を取って
覗
(
のぞ
)
いたっけ、
勢
(
いきおい
)
のよくない湯気が上る。」
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もとは健ちゃんも知ってる通りの始末で、随分
烈
(
はげ
)
しかったもんだがね。
蹴
(
け
)
ったり、
敲
(
たた
)
いたり、髪の毛を持って座敷中
引摺
(
ひっずり
)
廻したり……
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
煙管
(
きせる
)
を二、三度、火鉢の縁に
敲
(
たた
)
きつけると、
疎
(
うと
)
ましそうに女の姿を見やって、スパスパと莨を
喫
(
す
)
った。するうちお国は目を覚ました。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それからまたそれを
敲
(
たた
)
く。そしてもう一度揉んで、塊にしてしまふ。同時に、それに唾を含ませる。それはその塊を柔かくするのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
▼ もっと見る
夜中に酔ってかえってきた多吉に
敲
(
たた
)
き起されることも前にはたびたびあったが、こんなに大びらに唄をうたってくることはめずらしい。
菎蒻
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
驢馬をつれて邑内を逃げ出した時には、お前を売りとばさんでよかった、と道々男泣きに泣きながら、伴侶の背中を
敲
(
たた
)
いたものだった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
「なんだえ! あんな禿頭に祈られたからって、俺んとこの犬を殺しやがって。糞垂稲荷め! お宮も何も
敲
(
たた
)
き
壊
(
こわ
)
してやるから。」
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
天
(
そら
)
を仰ぎ、地を
敲
(
たた
)
きて
哭悲
(
なきかな
)
しみ、
九三
ともにもと物狂はしきを、さまざまといひ
和
(
なぐさ
)
めて、かくてはとて
遂
(
つひ
)
に
九四
曠野
(
あらの
)
の
烟
(
けぶり
)
となしはてぬ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「
不埒
(
ふらち
)
な奴……すぐに与九郎
奴
(
め
)
の家禄を取上げて追放せい。薩州の家来になれと言うて国境から
敲
(
たた
)
き放せ。よいか。申付けたぞ」
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
売品窓からソファに背広のまま仰向けに寝ころんだ売子を
敲
(
たた
)
き起すと、タヴラ・スゴ六のように、七分の運と三分の医術に身を委託する。
大阪万華鏡
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
喜三郎はその
夜
(
よ
)
、近くにある
祥光院
(
しょうこういん
)
の門を
敲
(
たた
)
いて
和尚
(
おしょう
)
に仏事を修して貰った。が、万一を
慮
(
おもんぱか
)
って、左近の
俗名
(
ぞくみょう
)
は
洩
(
も
)
らさずにいた。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
父は黙ってまじまじと
癇癪玉
(
かんしゃくだま
)
を一時に
敲
(
たた
)
きつけたような言葉を聞いていたが、父にしては存外穏やかななだめるような調子になっていた。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
茂兵衛 あらまし
形
(
かた
)
がついたら、その時あ親子三人、
志
(
こころざ
)
す方へ飛んで行くのだ。(外から戸を
敲
(
たた
)
く。心張棒をとって振ってみる)
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
成善は
経史
(
けいし
)
を
兼松石居
(
かねまつせききょ
)
に学んだ。江戸で
海保竹逕
(
かいほちくけい
)
の塾を辞して、弘前で石居の門を
敲
(
たた
)
いたのである。石居は当時既に
蟄居
(
ちっきょ
)
を
免
(
ゆる
)
されていた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
寝入り
端
(
ばな
)
と見えて、門を
敲
(
たた
)
けど呼べど叫べど醒めてくれぬ。つい近所に
姪
(
めい
)
の家があるが、臨月近い彼女を驚かすのも面白くない。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その足で弥左衛門の手首を踏まへ、左手にて刀を押へ「とゝとつつあん/\、こうれ」と右の手にて下を
敲
(
たた
)
き「親父様」といひて体をのす。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
まずその死骸の布片を取って巌の上に置く。で坊さんがこちらで太鼓を
敲
(
たた
)
き
鉦
(
かね
)
を鳴らして御経を読みかけると一人の男が大いなる刀を持って
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
いふ者はなくて皆太鼓太鼓と呼ぶ位ぢや、坊さんなんぞは
敲
(
たた
)
きやうがうまいから徳をしたのだ、君らは敲かぬからわるいのだ
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
上方へゆく目的は、熊沢
蕃山
(
ばんざん
)
の門を
敲
(
たた
)
くためだという。蕃山といっても経学をきくためではない、笛をまなびたいのだ、などと
気焔
(
きえん
)
をあげた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
尾でもって鐘を
敲
(
たた
)
くと、
炎
(
ほのお
)
が燃え上る——寺の坊さんたちは頭をかかえて逃げ出したが、
程経
(
ほどへ
)
て帰って見ると、鐘はもとのままだが、蛇はいない
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところへ主人また非常の辛抱もて四年間仕込んだので、一問出るごとに馬が
狐狗狸
(
こっくり
)
然と蹄で土を
敲
(
たた
)
いてその数で答える。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
だから信州などでは是をオクラブチと称し、内弁慶を評してオクラブチを
敲
(
たた
)
くとも謂っている。オクラは御座であり、ホドの神の祭壇を意味する。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
戸を
敲
(
たた
)
くと下の人が、「お帰んなさい。」と上り口の電燈をひねって、わたしの顔を見、「あらお一人。」というから、「お君は。」と問い返すと
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
セリファンが門を
敲
(
たた
)
きだすと、間もなく
耳門
(
くぐり
)
があいて、上っ張りでも頭から被ったらしい人の姿がにゅっと現われて
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
その時ただそのドアを
敲
(
たた
)
くことをあえてしなかったため、そうした場合には深い深い交わりができたであろう人と、永久に無縁で終わることもある。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
唯
(
ただ
)
、全体が丈夫すぎるような硬いかんじがした。
敲
(
たた
)
いてみたら何か音がしそうに思われ、そしてその眼つきのきれいさも人並外れた澄み方をしていた。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
それがために佐竹の原はたちまちにまた
衰微
(
さび
)
れてしまって、これから一賑わいという出鼻を
敲
(
たた
)
かれて二度と
起
(
た
)
ち上がることの出来ないような有様になり
幕末維新懐古談:64 大仏の末路のあわれなはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
ぴしり、ぴしりと音を立てて、駒を
敲
(
たた
)
きつける人がおますけど、あらかなひまへん。音を立てるちふのは、その人の将棋がまだ本物になつてん証拠だす。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
傘をふりまわしたり、ゴム引マントを
敲
(
たた
)
きつけたり、——とにかく昇降口は彼らの叫喚に
震
(
ふる
)
えるのであった。子供たちはそうすることがなぜか嬉しいのだ。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
蛸はブリキのかんを
敲
(
たた
)
きながら走る。今一人の男はきりこのレンズの眼鏡を見物人へ貸付けてあるくのである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
夫人はどうすることもできないので、そこで元豊を杖で
敲
(
たた
)
いた。元豊は大声をあげて啼き叫んだ。すると小翠が始めて顔の色を変えて膝を折ってあやまった。
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
私も覚えていた。女芸人が懐中電灯を掌にして踊りのようなことをしたのを覚えている。しづやは木魚を
敲
(
たた
)
いて
阿呆陀羅経
(
あほだらきょう
)
の真似をするのが巧かったそうである。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
ところが御前で
敲
(
たた
)
き
毀
(
こわ
)
すようなものを作ってはなりませぬ、是非とも気の
済
(
す
)
むようなものを作ってご覧を
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
僕は七郎丸に肩を
敲
(
たた
)
かれてわれに返ったが、向方の仕事場の明るみのうちに見た幻が、なかなか幻と思い切れなかった。——七郎丸は、僕の肩を
敲
(
たた
)
きながら続けた。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
柳河のしをらしい藝妓や舞子が
頑
(
かた
)
くななな主人の心まで浮々するやうに三味線を彈き、太皷を
敲
(
たた
)
いた。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ニキタはぱッと
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けるより、
阿修羅王
(
あしゅらおう
)
の
荒
(
あ
)
れたる
如
(
ごと
)
く、
両手
(
りょうて
)
と
膝
(
ひざ
)
でアンドレイ、エヒミチを
突飛
(
つきとば
)
し、
骨
(
ほね
)
も
砕
(
くだ
)
けよとその
鉄拳
(
てっけん
)
を
真向
(
まっこう
)
に、
健
(
したた
)
か
彼
(
かれ
)
の
顔
(
かお
)
を
敲
(
たた
)
き
据
(
す
)
えた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それから
寒詣
(
かんまゐ
)
りの人が
敲
(
たた
)
くやうな鐘の
微
(
かす
)
かな音が続いたこともあつた。オルガンの音は二三度しか聴かれなかつたけれども、楽隊は殆んど毎夜欠かさずに洩れ聞えた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
ほんとうに空のところどころマイナスの太陽ともいうように
暗
(
くら
)
く
藍
(
あい
)
や黄金や
緑
(
みどり
)
や
灰
(
はい
)
いろに光り空から
陥
(
お
)
ちこんだようになり
誰
(
だれ
)
も
敲
(
たた
)
かないのにちからいっぱい鳴っている
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
即ち貝を吹き鐘を
敲
(
たた
)
いて、徳政の令一度発せられるや、貸借はその瞬間に消滅するのであった。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
やがて、清姫の
怨
(
うらみ
)
の権化——大蛇の姿が現われた。大蛇は、鐘を静かに
蟠囲
(
ばんい
)
した。尾を挙げては、鐘を
敲
(
たた
)
いた。その度に火炎が物凄く散った。時が経った。大蛇は去った。
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
残暑
焔
(
も
)
ゆるがごとき炉の傍に、終日
屹坐
(
きつざ
)
して思いに沈みぬ、その日の夕、にわかに戸を
敲
(
たた
)
くものありき、彼は愕として飛び立ちしが気を静めておそるおそる戸を明けしに
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
そしてそれは禁断の扉でも
敲
(
たた
)
くかのように、一つの秘密の跡を
逐
(
お
)
い廻していることであろう。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
特に前髪に命じて俊雄の両の
膝
(
ひざ
)
へ
敲
(
たた
)
きつけお前は野々宮のと勝手馴れぬ俊雄の
狼狽
(
うろた
)
えるを
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
高見君はあれあ、鉛筆が削つても、削つても折れると言つて、小刀を
床
(
ゆか
)
に
敲
(
たた
)
き附ける癇癪持だから、爲樣がないが、逢坂のまあ彼の聲は何といふ聲だえ? それに
彼
(
あ
)
の格好よ。
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
だんだん
鬼
(
おに
)
のような
心
(
こころ
)
になって、いつもこの
子
(
こ
)
を
目
(
め
)
の
敵
(
かたき
)
にして、
打
(
ぶ
)
ったり、
敲
(
たた
)
いたり、
家中
(
うちじゅう
)
を
追廻
(
おいまわ
)
したりするので、かわいそうな
小児
(
こども
)
は、
始終
(
しょっちゅう
)
びくびくして、
学校
(
がっこう
)
から
帰
(
かえ
)
っても
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
不意に横丁から笛と太鼓と
鉦
(
しょう
)
との
騒々
(
そうぞう
)
しい破れかえるような音響が私の耳を
敲
(
たた
)
きました。
三角形の恐怖
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すると背後で、扉を
敲
(
たた
)
く音がした。とっさに、佃が来た知らせかと思い、彼女は困却した。十一時頃から彼らは、ハドソン河を
彼方
(
むこう
)
に渡って、ながい散歩をしようと約束していた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
天下諸国を
流浪
(
るろう
)
して、各流各派の剣士の門を
敲
(
たた
)
き、心肝を砕いて練磨を
遂
(
と
)
げているうちに、いつとはなしに、自得したのが、
所謂
(
いわゆる
)
、独創天心流なる、一種、独特な剣技だったのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
今から十一、二年前のことだが、私は偶然のことから気がついて
生薬屋
(
きぐすりや
)
からいぼたを買って来た。ちょうど刀の
打粉
(
うちこ
)
のように
金巾
(
かなきん
)
の袋に入れてレコード面に
敲
(
たた
)
きつけて拭いて見た。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
敲
漢検1級
部首:⽁
14画
“敲”を含む語句
打敲
推敲
敲込
羽敲
重敲
敲土
春敲門
御推敲
敲子
敲戸
敲立
敲音
枻敲
棒敲
舌敲
袋敲