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悶絶
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もんぜつ
ふりがな文庫
“
悶絶
(
もんぜつ
)” の例文
稚児輪
(
ちごわ
)
姿
(
すがた
)
の牛若丸が笛にしめりを与えると同時に、突然
苦悶
(
くもん
)
のさまを現わして、水あわを吹きながら、その場に
悶絶
(
もんぜつ
)
いたしました。
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
伊那丸
(
いなまる
)
の馬は、
蹄
(
ひづめ
)
を
蹴
(
け
)
って横飛びにぶったおれた。
咲耶子
(
さくやこ
)
は、
竿立
(
さおだ
)
ちとなった
駒
(
こま
)
のたてがみにしがみついて、
焔
(
ほのお
)
のまえに
悶絶
(
もんぜつ
)
した。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忠作が
武者振
(
むしゃぶ
)
りつくのを
一堪
(
ひとたま
)
りもなく
蹴倒
(
けたお
)
す、蹴られて忠作は
悶絶
(
もんぜつ
)
する、大の男二人は
悠々
(
ゆうゆう
)
としてその葛籠を背負って裏手から姿を消す。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あの男は唯のペングイン鳥になり、
氷山
(
ひようざん
)
の
間
(
あひだ
)
を歩いてゐた。そのうちに烈しい暑さの為にとうとう
悶絶
(
もんぜつ
)
して死んでしまつた。
貝殻
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
銀町の大工の棟梁伊兵衛、暗い路の片側に仰向けに倒れて、足を溝へおとしたまま、手に小砂利をつかんで
悶絶
(
もんぜつ
)
していた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
落ちかけた時調子の取りようが悪かったので、棒が倒れるように深いみぞにころげこんだ。そのため
後脳
(
こうのう
)
をひどく打ち
肋骨
(
ろっこつ
)
を折って親父は
悶絶
(
もんぜつ
)
した。
窮死
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ほのぼのとした生の感覚や、少年の日の夢想が、まだその部屋には残っているような
心地
(
ここち
)
もした。だが彼は
悶絶
(
もんぜつ
)
するばかりに身を
硬
(
こわ
)
ばらせて考えつづけた。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
いしの躯が
痙攣
(
けいれん
)
を起し、すぐに
嘔吐
(
おうと
)
が始まった。形容しようのない不快な(それが毒物なのだろう)匂いがあたりにひろがり、いしは
悶絶
(
もんぜつ
)
するかのように
呻
(
うめ
)
いた。
いしが奢る
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは、その真赤な硬い藻を両手ですくいあげたその所員は、急に両手をふるわせ、
悶絶
(
もんぜつ
)
してしまった。
宇宙戦隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
麻油は驚いた。が
非力
(
ひりき
)
な伊豆をいっぺんに
跳
(
は
)
ね返すと、あべこべに伊豆の首筋を
執
(
とら
)
えて有無を云わせずに
絞
(
し
)
めつけた。伊豆はばたばた
踠
(
もが
)
いて危く
悶絶
(
もんぜつ
)
するところまでいった。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
そうしてひらひらと女房の眼のさきへ舞って来ると、女房は声も立てずに其の場に
悶絶
(
もんぜつ
)
した。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私の赤黒い変な顔を見ると、あまりの事に
悶絶
(
もんぜつ
)
するかも知れない。悶絶しないまでも、病勢が
亢進
(
こうしん
)
するのは、わかり切った事だ。できれば私は、マスクでも掛けて逢いたかった。
誰
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
聞いてたけり立ち
悶絶
(
もんぜつ
)
して場外にかつぎ出されるクサンチッペ
英
(
はなぶさ
)
太郎君のあとを追うて
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
物言わぬ夫の
遺筐
(
いきょう
)
を、余人の衣類のごとくしばらく折目をさすりておりしが、やがて正気に
復
(
かえ
)
りし時は、早や包みを
懐
(
いだ
)
きしめて
悶絶
(
もんぜつ
)
したり、げに勇蔵は
田原坂
(
たばるざか
)
の戦官軍大敗の日に
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
打けるにウンと言て其
儘
(
まゝ
)
悶絶
(
もんぜつ
)
なせしかば茂助は驚き
先生
(
せんせい
)
苛酷
(
ひどい
)
ことをされたり夫では爰には居ぬに
違
(
ちが
)
ひも有めへ
敵
(
かたき
)
は
幸手
(
さつて
)
の三五郎と知れて
居
(
ゐる
)
からは先々親分の死骸を葬り相手に油斷を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
物を言はず
悶絶
(
もんぜつ
)
する千之助を、三人の荒くれた男が、引攫つて肩に引つ擔ぎました。
銭形平次捕物控:056 地獄から来た男
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私はそれらの器から
悶絶
(
もんぜつ
)
の声を聞いている。なぜかくも病むかを訴えているのだ。そこにはこの世への
呪
(
のろ
)
いが含まれ、救いへの求めが響いているのだ。私は聞き流すわけにはゆかない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
悶絶
(
もんぜつ
)
するような苦しみの中から、葉子はただ
一言
(
ひとこと
)
これだけを夢中になって叫んだ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
便
(
すなは
)
ち宮の夫の愛を受くるを
難堪
(
たへがた
)
く苦しと思知りたるは、彼の写真の
鏡面
(
レンズ
)
の前に
悶絶
(
もんぜつ
)
せし日よりにて、その恋しさに
取迫
(
とりつ
)
めては、いでや、この富めるに饜き、
裕
(
ゆたか
)
なるに
倦
(
う
)
める家を棄つべきか
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
事実は菅公のたゝりを気に病む餘り病気に取り
憑
(
つ
)
かれ、
枕許
(
まくらもと
)
に験者を招いて薬師経を読み上げさせていたところ、経の中に
宮毘羅
(
くびら
)
大将と云う文句があったのを、「汝を
縊
(
くび
)
る」と聞き違えて
悶絶
(
もんぜつ
)
し
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
葛木はなお
縋
(
すが
)
る袖をお孝に預けたまま、
跪
(
つまず
)
いて
悶絶
(
もんぜつ
)
した小児を抱いた。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
看
(
み
)
よ、松島はヒシと左眼を押へて
悶絶
(
もんぜつ
)
す、手を漏れて流血
淋漓
(
りんり
)
たり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
奇怪な
悶絶
(
もんぜつ
)
しそうな生きかた! そして一文の金もないのだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
あまりに神気を
凝
(
こ
)
らし過ぎどうやらこれは
悶絶
(
もんぜつ
)
しそうだ。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
爛
(
ただ
)
れたる
眩暈
(
くるめき
)
三度
(
みたび
)
、くわつとして
悶絶
(
もんぜつ
)
すれば
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
悶絶
(
もんぜつ
)
するような声を私は出した。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
その場に
悶絶
(
もんぜつ
)
してしまった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
呻吟
(
しんぎん
)
と、叫びと、
悶絶
(
もんぜつ
)
と
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
たちまち水あわを吹いてその場に
悶絶
(
もんぜつ
)
してしまいましたものでしたから、同時に右門の口から裁断の命令が発せられました。
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
よく神降りをやる巫女が、いちど
悶絶
(
もんぜつ
)
して、それから、うわ言のように、神のことばをしゃべり出す——あのときの
凄味
(
すごみ
)
をもった顔なのである。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
娘はまもなく
悶絶
(
もんぜつ
)
した。すると、娘の片方の足を押えていた女が、突然、悲鳴をあげて暴れだした。行者はその女を指さして、「狐はこの女に移った」と云った。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
寂静ではあるけれども、弁信の面の上には、苦痛のあとと
悶絶
(
もんぜつ
)
の色は現われてはいないのです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
もし彼女が、ひとめその笛の音の主の姿を見たならば、きゃっと叫んで
悶絶
(
もんぜつ
)
するに違いない。芸術家はそれゆえ、自分のからだをひた隠しに隠して、ただその笛の音だけを吹き送る。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
二度目に蹴上げたとき、ハルクは、うんとうなって、その場に
悶絶
(
もんぜつ
)
してしまった。
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
はたや、
太皷
(
たいこ
)
の
悶絶
(
もんぜつ
)
に
列
(
つら
)
なり
走
(
はし
)
る
槍尖
(
やりさき
)
よ
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
忽ちに
警固
(
けいご
)
の者に
引据
(
ひきすゑ
)
られ
悶絶
(
もんぜつ
)
なさぬ計りなり
稍
(
やゝ
)
有
(
あ
)
つて
泣聲
(
なきごゑ
)
出し是申長庵殿
御死
(
おしに
)
なされし其後にて私し
宅
(
たく
)
へ
禮
(
れい
)
などに
御出
(
おいで
)
成
(
なさ
)
るには及びませぬ私しとても
御前
(
おまへ
)
には何の
恨
(
うら
)
みも
無
(
なけ
)
れども八ヶ年の其
昔
(
むか
)
し天神樣の裏門前で
逢
(
あひ
)
たる事を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ひとりが
腰縄
(
こしなわ
)
をさぐるすきに、ふいに、忍剣の片足がどんと彼の
脾腹
(
ひばら
)
をけとばした。アッと、うしろへたおれて、
悶絶
(
もんぜつ
)
したのを見た、べつな
侍
(
さむらい
)
は
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぐうう——と長い音を立てながら、六尺入道玄長法師がもろくも
悶絶
(
もんぜつ
)
しながら、長いうえにも長く伸びたのを見ますと、荷物にしていた女にはこぶし当ての一撃!
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
妻の顔は血のけを
喪
(
うし
)
なって硬ばり、固く歯をくいしばっていた。
悶絶
(
もんぜつ
)
したのであった。……高雄は茶碗に水を
汲
(
く
)
んで来て、妻を抱き起して、くいしばった歯の間から口の中へ注ぎ入れてやった。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こんなことを
繰
(
く
)
りかえしたものだから、博士はついに
悶絶
(
もんぜつ
)
してしまった。
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
見る見る
野辺
(
のべ
)
に渦巻きて
悶絶
(
もんぜつ
)
すれば
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
以て百
許
(
ばか
)
り
續
(
つゞ
)
け打に打せければ
憐
(
あは
)
れむべし傳吉は身の
皮
(
かは
)
破
(
やぶ
)
れ
肉
(
にく
)
裂
(
さけ
)
て血は流れて
身心
(
しんしん
)
惱亂
(
なうらん
)
し終に
悶絶
(
もんぜつ
)
したるゆゑ今日の
責
(
せめ
)
は是迄にて
入牢
(
じゆらう
)
となり之より日々に
責
(
せめ
)
られけるが數度の
拷問
(
がうもん
)
に肉落て最早
腰
(
こし
)
も立ず
纔
(
わづ
)
かに息の
通
(
かよ
)
ふのみにて今は命の
終
(
をは
)
らんとなす有樣なり爰に於て傳吉思ふやう
斯
(
かゝ
)
る
無體
(
むたい
)
の拷問は
偏
(
ひとへ
)
に上臺憑司が役人と
腹
(
はら
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と、お袖を
捉
(
とら
)
えて叩き伏せた。泣き狂い、泣きさけぶのを、わけも
糺
(
ただ
)
さず、二つ三つ、
足蹴
(
あしげ
)
をくれて、
悶絶
(
もんぜつ
)
させた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふとそこに横笛が——その息穴をなめたために牛若が
悶絶
(
もんぜつ
)
するにいたりましたその横笛がころがっているのを発見すると、突然伝六に向かって、いつもの右門がするごとく
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
元帥は、チューインガムを、くちゃくちゃ
噛
(
か
)
みつつ、女史の報告に耳を傾けていたが、それから間もなく、彼はどうしたものか、うんといって、両手で虚空をつかむと、その場に
悶絶
(
もんぜつ
)
してしまった。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
銀五郎の
浴衣
(
ゆかた
)
である、傷口から血の流るるに任せたため、あたりを血の池のように染めて
悶絶
(
もんぜつ
)
してしまったらしい。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
爽
(
さわ
)
やかな京弥の声が飛んだとき、すでに対手はタンポ槍をにぎりしめたまま、急所の
脾腹
(
ひばら
)
に当て身の一撃を見舞われて、ドタリ地ひびき立てながらそこに
悶絶
(
もんぜつ
)
したあとでした。
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
と彼が呻きながら、その場に
悶絶
(
もんぜつ
)
した。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「あッ」と、縄尻をほうりだして、逃げかけた捕手も、
脛
(
すね
)
を払われて前へのめった。残るひとりは、源次が夢中で蹴とばした足の先に、
脾腹
(
ひばら
)
をかかえて
悶絶
(
もんぜつ
)
した。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妻は
悶絶
(
もんぜつ
)
せんばかり、なお
良人
(
おっと
)
の膝にしがみついて
慟哭
(
どうこく
)
する。その間にも、護送の役人は、軒を叩いて
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“悶絶”の意味
《名詞》
悶え苦しみ、気を失うこと。
(出典:Wiktionary)
悶
漢検準1級
部首:⼼
12画
絶
常用漢字
小5
部首:⽷
12画
“悶”で始まる語句
悶
悶々
悶着
悶掻
悶死
悶躁
悶乱
悶踠
悶著
悶転