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いくばく
ふりがな文庫
“
幾何
(
いくばく
)” の例文
いよ/\城の運命が
幾何
(
いくばく
)
もないことを悟って、八歳になる嫡男と六歳になる姫君とを、
乳人
(
めのと
)
に預けて
密
(
ひそ
)
かに或る方面へ落してやった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
甲州小判大判取り
雑
(
ま
)
ぜ、数万両、他に、刀剣、名画等を
幾何
(
いくばく
)
ともなく強奪したのを最後に、世の中から姿を消してしまったそうじゃ
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さらば一時代の長さ
幾何
(
いくばく
)
かと云へば、これは時と処とにより、一概には何年と定め難し。まづ日本ならば一時代約十年とも申すべきか。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
かくして最早
幾何
(
いくばく
)
もなくなつてゐる生涯の
残余
(
ざんよ
)
を、見果てぬ夢の心持で、死を怖れず、死にあこがれずに、主人の
翁
(
おきな
)
は送つてゐる。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
似て非なる漢文の著述は時代と共に全く断滅してしまつた如く、吾々の時代の「新しき文章」も果して
幾何
(
いくばく
)
の生命を有するものであらう。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「
5
父母の年齢は忘れてはならない。一つには、長生を喜ぶために、二つには、餘命
幾何
(
いくばく
)
もなきを
懼
(
おそ
)
れて、孝養を励むために。」
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
たゞ美しいと思えば、それでいゝ、そして人間は、
幾何
(
いくばく
)
もない生を存分に享楽することが出来れば、それでいゝのであります。
草木の暗示から
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この世に生れた最も美しい工藝品を陶器なり織物なり各部門に亘って
幾何
(
いくばく
)
かを選ぶとしたら、その一切が無銘品なのに気附かれるでしょう。
日本民芸館について
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼がザビーネを愛してる時から、彼女はすでに苦しんでいた。その自分の崇拝者にたいする幻影を、すでに
幾何
(
いくばく
)
か失いかけた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
別
(
べつ
)
にそれを
氣
(
き
)
にも
留
(
と
)
めなかつた。
夫
(
それ
)
にも
拘
(
かゝ
)
はらず、
二人
(
ふたり
)
は
漸
(
やうや
)
く
接近
(
せつきん
)
した。
幾何
(
いくばく
)
ならずして
冗談
(
じようだん
)
を
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
の
親
(
したし
)
みが
出來
(
でき
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
柾木愛造は、
既
(
すで
)
に世を去った両親から、
幾何
(
いくばく
)
の財産を
受継
(
うけつ
)
いだ一人息子で、当時二十七歳の、私立大学中途退学者で、独身の無職者であった。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
然
(
しか
)
らばこの国際連盟に於ても、
抑々
(
そもそも
)
如何
(
いか
)
なる事を為すべきであるか。この問に対して米の大統領ウィルソン氏は果して
幾何
(
いくばく
)
の成案を有するか。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
幾何
(
いくばく
)
の作曲料が入ったりしたが、ボヘミアン生活にはなんの変りもなく、いつの間にやら、彼をめぐって「シューベルト組」なる仲間が出来
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
さればわが愛する
遠祖
(
とほつおや
)
よ、
請
(
こ
)
ふ我に告げよ、汝の先祖達は誰なりしや、汝
童
(
わらべ
)
なりし時、年は
幾何
(
いくばく
)
の數をか示せる 二二—二四
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
傷負
(
てお
)
いは数知れず、しかも重将ことごとく討たれ、
新附
(
しんぷ
)
の兵はみな離散し、この御本陣においてすら、今は
幾何
(
いくばく
)
の兵が残っていると思し召すか
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
攘夷の
冥加金
(
みょうがきん
)
を名として
斬奪群盗
(
きりとりぐんとう
)
が横行している始末に、大之進つくづく考えると徳川三百年の
余命
(
よめい
)
幾何
(
いくばく
)
とも思われない。
早耳三次捕物聞書:01 霙橋辻斬夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
量と質とに於て、實際長期に亙る補助食物としての資格が有るか。榮養價は果して
幾何
(
いくばく
)
。いまだ檢出せられざる微量の毒物を、含有してはゐないか。
すかんぽ
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
そして、ここに最も面白いのは、この家界の測定法、則ち家の周囲
幾何
(
いくばく
)
の距離までを家界とするかの定め方である。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
だが結局後に述べるような突発事件のために、折角考えた散歩コースを行くこと
幾何
(
いくばく
)
もなくして、遂に前途を放棄しなければならなくなったのだった。……
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
もう齢も六十近くなり、あともう余命
幾何
(
いくばく
)
もない時になってから一つの新しい住いを造って住んだ事があった。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
余をして
幾何
(
いくばく
)
か獄窓に呻吟するにまさると思はしむる者は此十歩の地と数種の
芳葩
(
ほうは
)
とあるがために外ならず。
小園の記
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
我生活は今彼に殊なること
幾何
(
いくばく
)
ぞ。われは深くこれを思ふことを好まず。われは傍なる帽を取りて、
目深
(
まぶか
)
にかぶり、惡魔に逐はるゝ如く、學校の門を出でぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
私はまだ学界のために真剣に研究せねばならぬ植物を山のように持っているのに、歳月は流れわが
齢
(
よわい
)
余す所
幾何
(
いくばく
)
もない。感極って泣かんとすることが度々ある。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
俸給
幾何
(
いくばく
)
、家持手当、子供老人手当、夕食代、これは所帯持ちに、配当、ボーナス等々合計○○○何々殿、年月日、と一人一人異なる事情と計算を書き上げる。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
自分の眼で自分の頭で自然を観察するものが果して
幾何
(
いくばく
)
あるだろうかという事を考えざるを得なかった。
科学上における権威の価値と弊害
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
寛永の鎖国令こそ
千秋
(
せんしゅう
)
の遺憾なれ。もしこの事だになくは、我が国民は南洋群島より、
支那
(
シナ
)
、
印度
(
インド
)
洋に
迨
(
およ
)
び、太平洋の両岸に、その版図を開きしものそれ
幾何
(
いくばく
)
ぞ。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
幾何
(
いくばく
)
ならずして被害者の慘殺體は竈中に投入せられたことが推定され、それより現場に蝟集せる幾百の觀衆の手を藉りて竈の火に水をかけた上死體引出に着手した
無法な火葬
(旧字旧仮名)
/
小泉八雲
(著)
そして彼女は何時か、姉や母を偽はつて
幾何
(
いくばく
)
かづゝの金をねだる事さへしなければなりませんでした。
内気な娘とお転婆娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
もし土地からの粗生生産物の価値がこの価値を超過するならば、その額が
幾何
(
いくばく
)
であろうと、それは地代に属する。もし何ら超過がないならば、地代はないであろう。
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
甲馬乙馬に
幾何
(
いくばく
)
の投票あるゆえ丙馬を買って、これを獲得せんとするこそ、馬券買の本意ならずや。
我が馬券哲学
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分
(
じぶん
)
の
老衰者
(
らうすゐしや
)
であることを
知
(
し
)
つた
時
(
とき
)
諦
(
あきら
)
めのない
凡
(
すべ
)
ては、
動
(
と
)
もすれば
互
(
たがひ
)
に
餘命
(
よめい
)
の
幾何
(
いくばく
)
もない
果敢
(
はか
)
なさを
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
うて、それが
戲談
(
じようだん
)
いうて
笑語
(
さゞめ
)
く
時
(
とき
)
にさへ
絶
(
た
)
えず
反覆
(
くりかへ
)
されて
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その広々とした淵はいつも
黝
(
くろ
)
ずんだ青い水を
湛
(
たた
)
へて
幾何
(
いくばく
)
深いか分からぬやうな
面持
(
おももち
)
をして居つた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
十九世紀では平均七カ月であったから二十世紀に入って
幾何
(
いくばく
)
か長くなったのであろうけれども、しかし一九一三年二月現大統領ポアンカレーの就任以後のみを数うると
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
しかしながら私は今日これで
御免
(
ごめん
)
をこうむって山を
降
(
くだ
)
ろうと思います。それで来年またふたたびどこかでお目にかかるときまでには少くとも
幾何
(
いくばく
)
の遺物を貯えておきたい。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
そうした場合には、右の人物の悪癖の矯正に手間どれて、
剰
(
あま
)
すところが
幾何
(
いくばく
)
もないことになる。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
是と関係のある
幾何
(
いくばく
)
かの事実が、そのために記憶せられ、また伝説として言い継がれてもいた。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その間の苦悶そも
幾何
(
いくばく
)
なりしぞや。面白からぬ月日を重ねて翌廿三年三月上旬一男子を挙ぐ。
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
彼のその姿を度々見かける村の者は、長年、彼の豪勢へ持つてゐた反感を、この頃、
幾何
(
いくばく
)
の同情に変へて来た。泰松寺から家へ帰つて行く彼の心は暗かつた。恐ろしかつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
手前
(
てまへ
)
が
存
(
ぞん
)
じをりまするは
是限
(
これぎ
)
り。
内祝言
(
ないしうげん
)
の
儀
(
ぎ
)
は
乳母
(
うば
)
が
善
(
よ
)
う
承知
(
しょうち
)
の
筈
(
はず
)
。
何事
(
なにごと
)
にまれ、
予
(
われら
)
が
不埓
(
ふらち
)
と
御檢斷
(
ごけんだん
)
遊
(
あそ
)
ばれうならば、
餘命
(
よめい
)
幾何
(
いくばく
)
もなき
老骨
(
らうこつ
)
、
如何
(
いか
)
な
御嚴刑
(
ごげんけい
)
にも
處
(
しょ
)
せられませう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
上述のわが畏くも高貴にして顕赫なる云々の陛下が
幾何
(
いくばく
)
の軍隊をカナダ及び北アメリカに送る準備をしておられるかを、邪悪にも、不忠にも、叛逆的にも、その他種々奸悪にも
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
身は学舎にあり、中宵枕を排して、燈を
剪
(
き
)
りて亡友の為に哀詞を綴る。筆動くこと極めて遅く、涕
零
(
お
)
つること甚だ多し。
相距
(
あひへだゝ
)
ること二十余日、天と地の間に於てこの距離は
幾何
(
いくばく
)
ぞ。
哀詞序
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
從
(
したがつ
)
て
何
(
なに
)
ゆゑとなく
睦
(
むつ
)
ましく
離
(
はな
)
れがたく
思
(
おも
)
はれたが、
其後
(
そのゝち
)
彼
(
かれ
)
は
學校
(
がくかう
)
を
卒業
(
そつぎやう
)
して、
元來
(
ぐわんらい
)
ならば
大學
(
だいがく
)
に
入
(
い
)
る
可
(
べ
)
きを、
他
(
た
)
に
大望
(
たいもう
)
ありと
稱
(
しよう
)
して、
幾何
(
いくばく
)
もなく
日本
(
ほんごく
)
を
去
(
さ
)
り、はじめは
支那
(
シナ
)
に
遊
(
あそ
)
び
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
幾何
(
いくばく
)
かの余裕を保ちつつ、恋の心理を解剖しあるいは恋の情調を描くというこの『古今』の傾向は、必然に歌人の注意を「瞬間の情緒」よりもその「情緒の過程」の方に移させる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
君を指してマンチェスター派と曰ひたるは君が自由貿易を主張し、保険事業を以て政府に属すべからずとなし、国を建つるの価は
幾何
(
いくばく
)
ぞと論じ、個人主義世界主義を唱へられしが為也。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
あわれこの
溢
(
あふれ
)
出ずる涙を思うままに溢出さしめ、思うままに声を挙げて泣き叫ばしめたらんには、
幾何
(
いくばく
)
かわがこの悲しみを洗い去ることを得しなるべけれど、人に聞かるるの恐れあれば
一夜のうれい
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
いつ
何時
(
なんどき
)
私が重態に陥りましても差支えないように、調べる
片端
(
かたっぱし
)
から不眠不休でノートに致して参りましたのですが……おかげで持病の
喘息
(
ぜんそく
)
が急に悪化しまして、
幾何
(
いくばく
)
もない私の余命が
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
銘々の婦人に
幾何
(
いくばく
)
の共通な方向があって、制作を規定したり、撰択したりするのかは知りませんが、こうも現代の女流画家のように誰も彼も同じような美人画が出来ようとは思われません。
雷同性に富む現代女流画家
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
何ぞと見るに
雉子
(
きじ
)
の
雌鳥
(
めんどり
)
なれば、あわれ狩する時ならばといいつつそのままやみしが、大路を去る
幾何
(
いくばく
)
もあらぬところに雉子などの遊べるをもておもえば、
土地
(
ところ
)
のさまも測り知るべきなり。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
学問の進歩が極点に達した時なら知らず、何も彼も多くは疑問として存して
唯
(
ほん
)
の理窟の
言現
(
いひあら
)
はし方を少し
宛
(
づゝ
)
違へた位で総て研究に属してゐる今日では学者と無学者とは相去る事
幾何
(
いくばく
)
も無い。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
正則英語学校予備校に入ったこの時の有三は
幾何
(
きか
)
というものを知らなかった。それを
幾何
(
いくばく
)
と読んで友達に笑われた。だが、翌年の秋には、東京中学の五年の二学期の補欠試験に合格している。
山本有三氏の境地
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
幾
常用漢字
中学
部首:⼳
12画
何
常用漢字
小2
部首:⼈
7画
“幾何”で始まる語句
幾何学
幾何人
幾何金
幾何々々
幾何学的
幾何學的
幾何學者
幾何模型