四隅よすみ)” の例文
まづ四隅よすみの柱と横の桟とは黄金きんで作り、彫刻ほりものをして、紅宝石、碧玉へきぎよく、紫水晶などをはめそれに細い銀の格子が出来てをりました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
ところが、片足が凧のひもにひっかかっていました。凧の四隅よすみや中程についてる紐が一つにまとめてあるその真中に、足をふみこんだのです。
椎の木 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ぬすんだつちわけぢやねえが、ふたとつてところなんだよ」さういつてばあさん風呂敷ふろしき四隅よすみつかんで圍爐裏ゐろりそばつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しまいには、畳のへりの交叉したかどや、天井の四隅よすみまでが、丁度刃物はものを見つめている時のような切ない神経の緊張を、感じさせるようになった。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、よくよく座敷の中をしらべてみると、その座敷の隅々すみずみ四隅よすみところに、素麪そうめんとお茶が少しずつ、こぼしたように置いてあった。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
風呂敷ふろしきすこちひさいので、四隅よすみむか同志どうしつないで、眞中まんなかにこまむすびをふたこしらえた。宗助そうすけがそれをげたところは、まる進物しんもつ菓子折くわしをりやうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
理論的には三角形の頂点の三点でよいはずであるが、実際は四角形の四隅よすみの点、あるいはもう少し多い点になるであろう。
立春の卵 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
四隅よすみ花壇かだんがあって、ゆすらうめ、鉄線蓮てっせんれん、おんじ、あざみ、ルピナス、躑躅つつじ、いちはつ、などのようなものが植えてあった。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
と、そう云いながら河内介は、しーんとした、無気味な部屋の中を、———燈火の光のとゞかない暗い四隅よすみを、———探るように見廻し始めた。
なるほど一昼夜にち二ルーブリも払えば、旅客は静かな部屋をあてがわれるけれど、部屋の四隅よすみからはまるで杏子あんずのような油虫がぞろぞろと顔を覗け
緑いろの革で四角に出来てゐて、ふち蝶番てふつがひの処とは勿論、四隅よすみに附いてゐる鱗形うろこがたの装飾も、表の真中に附いてゐる名の頭字の A の字も、皆銀である。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かれは首をひねって、焼跡やけあと四隅よすみにあたるところをシャベルで掘った。下からは土台石どだいいしらしいものが出てきた。その角のところへ、かれは竹を一本たてた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
此事をはればきよめたる火を四隅よすみよりうつす、油滓あぶらかすなど火のうつりやすきやうになしおくゆゑ煓々たん/\熾々しゝもえあがる
黒塗の革で四隅よすみをとり、更に中央に帯をあてがいます。そこに金箔押きんぱくおしで屋号を入れます。行李の形は特別なもので、背負うのに丁度よい大きさに作られます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
平包みはただ物を平たく包むだけで、これならば支那からくる呉服商人ごふくしょうにんなども持ってあるいている。こちらの風呂敷包みは、四隅よすみひものかわりにして結ぶのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
膝摩ひざさすり」というのは、丑満うしみつ頃、人が四人で、床の間なしの八畳座敷の四隅よすみから、おのおの一人ずつ同時に中央まんなかへ出て来て、中央まんなかで四人出会ったところで、みんながひったり座る
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼の主な遊びは、小屋の四隅よすみへ、尻で、一つ一つ巣を掘ることだ。それから、手をこての代りにして、埃をかき寄せ、これで目塗めぬりをして、からだを植えつけてしまうのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「余が自慢の犬、天下無敵の雷霆らいていづくる犬を曳いて、あの勝負庭の四隅よすみの柱を三度廻ってまいれ。そしてもとの犬舎いぬやへつないで戻ったら、余の腹立ちもゆるしてやる」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四隅よすみに立っている四天王してんのうは簡素な刻み方で、清楚な趣があって、非常にいいものである。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
もっとも、このふたにはやはりいまはなしした突起とつき四隅よすみいてゐるのが普通ふつうであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
中央へんに小さな水たまり。四隅よすみは暗い。
胎内 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
腰掛や奇妙な寝椅子等、暗い四隅よすみ
ところがこの櫓は馬賊の来襲に備えるために、梨畑なしばたけの主人が、わざわざ家の四隅よすみに打ち建てたのだと聞いて、半分は驚いたが、半分はおかしかった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
死にかかった馬だのを描いた恐ろしく長い銅版画はもう黄ばんでしまっているが、それは細い青銅の筋金すじがねを入れ、四隅よすみにもやはり青銅の円い座金ざがねをつけた
此事をはればきよめたる火を四隅よすみよりうつす、油滓あぶらかすなど火のうつりやすきやうになしおくゆゑ煓々たん/\熾々しゝもえあがる
それは、四隅よすみの材木と材木との継ぎ目である。鎹付かすがいづけになっているが、その鎹の穴がやたらに見える。そして継ぎ目と、木の肌の新しい所とが一、二寸ずつ喰い違っている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その中心部に、何のあとかは考えたこともなかったが、三じゃく四方の四隅よすみに、四本の柱が立っているところがあった。林立する柱の中で、この四本の柱だけが何となく目に立った。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
大騒ぎになってこまをどかせるやら、濡れたところをくやら、新しい卓子布テーブル・クロースを持ってこさせて、四人が四隅よすみをひっぱって、びょうで卓子へとめるやら、うるさいことであった。一度は
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
風呂敷が少し小さいので、四隅よすみむこう同志つないで、真中にこま結びを二つこしらえた。宗助がそれをげたところは、まるで進物の菓子折のようであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水嵩みずかさはみるみるうちに増大して、水位すいい刻々こくこくあがって来た。床の四隅よすみから水は噴出ふきだすものと見え、その四隅のところは水柱が立って、白い泡の交った波がごぼんごぼんと鳴っていた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その足で彼は、番人どもがめいめい持場もちばについているかどうかと、倉庫を見まわりに出かけたが、番人どもはちゃんと四隅よすみに立って、木の杓子しゃくしで鉄板がわりの小さい空樽あきだるたたいていた。
後醍醐はそこにとらわれておいでだった。陽あたりの悪い冬木立のうちに寒々と見える板屋廂いたやびさしの古建物がそれである。——それをめぐッて、はるか遠くの四隅よすみに急ごしらえの仮屋建ての兵舎があった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鬼の国から吹き上げる風が石の壁のを通ってささやかなカンテラをあおるからたださえ暗いへやの天井も四隅よすみ煤色すすいろ油煙ゆえん渦巻うずまいて動いているように見える。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは、ほかでもない。図面の四隅よすみに、小さい穴があいているのを発見したのだ。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
びんつたまゝつてへや四隅よすみつて、そこに一二滴づゝりかけた。斯様かやうきようじたあと白地しろぢ浴衣ゆかた着換きかえて、あたらしい小掻巻かいまきしたやすらかな手足てあしよこたへた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
周囲まわりは鉄色に近いあいで、四隅よすみ唐草からくさの模様を飾った茶のを染め抜いてある。支那ではこれを座敷に用いたものか疑わしいが、こうやって布団に代用して見るとすこぶる面白い。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四隅よすみきんに立ち切ったはくの小口だけがあざやかに見える。間から紫のしおりの房が長く垂れている。栞を差し込んだページの上から七行目に「埃及エジプト御代みよしろし召す人の最後ぞ、かくありてこそ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)