まして宮中のことではなしさ、ほかからは結構なお身の上に見られておいでになっても、口惜しいこともあれでは多かろうじゃないか。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
武州公秘話:01 武州公秘話 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夢は呼び交す:――黙子覚書―― (新字新仮名) / 蒲原有明(著)
奇談クラブ〔戦後版〕:13 食魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
『ああ。あの花さえ無ければ、私はあんなにほかの国へ行かなくともよかったのに。そうしてこんなに恥かしい、口惜しい思いをせずともよかったのに』
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分) (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それが決して冗談に言っているのではなく、いかにも此の男の無事なのを口惜しがる、つまり自分が前から期待していたような惨劇の犠牲者にならなかったことを憤っているように響くのだ。
例えば、十一番目の「都会」の伴奏の如き、もう少し素直に弾いて、この歌の持っている絵画的な効果を出させたらどんなに良かったろうと口惜しいことに思っている。
吾らにとっては大敵ながら、花村甚五衛門殿のご器量には、恐れもし敬いもしておったるところ、その人の現在のご子息を、むざむざ殺した口惜しさ、まことに千秋の恨事でござる。
しかしこの時頭の中にたまった涙は、今が今でも、同じ羽目になれば、出かねまいと思う。苦しい、つらい、口惜しい、心細い涙は経験で消す事が出来る。ありがた涙もこぼさずに済む。