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佳
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い
ふりがな文庫
“
佳
(
い
)” の例文
など話しながら、足は
疲労
(
くたび
)
れても、
四方
(
あたり
)
の風景の
佳
(
い
)
いのに気も代って、
漸々
(
ようよう
)
発光路に着いたのがその日の午後三時過ぎでありました。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
私は津田氏と附合って、こんな
佳
(
い
)
い半面を見るにつれて、以前ほど都会人というものを、おそろしくも、また、いやでもなくなった。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
成程、おっしゃりました名の
通
(
とおり
)
、あなた相の山までいらっしゃいましたが、この
前方
(
さき
)
へおいでなさりましても、
佳
(
い
)
い宿はござりません。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女は
容貌
(
みめ
)
形ばかり
美
(
よ
)
くっても心掛が悪くっては何にもなりませんが、此のお花さんは海も山も備わった、実に
何
(
な
)
んとも云えない
佳
(
い
)
い娘で
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「どうせおれは薄情だ、こんな薄情者にいつまでもくっついてないで、
佳
(
い
)
い男でも持って、
親仁
(
おやじ
)
の讐を打ってもらうがいいよ」
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
茶がすんでから、康子が月が
佳
(
い
)
いから浜へ行こうと云い出した。麦酒でぼうとなっていた清三はすぐ応じた、青木も立った。
須磨寺附近
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
身分の貴い家の子供は、いばってていうにたりないですよ。もし
佳
(
い
)
い夫を得たいと思うなら、貧乏人とか金持ちとかいわないが好いでしょう。
封三娘
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
ロセッチは
或
(
あるい
)
はこれを縦に弾くものと誤解したのかもしれぬが、この物凄い魔の女に
取合
(
とりあ
)
わした対照は実に
佳
(
い
)
いと思った。
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
藤の花の匂い、ほのかであり、
十六夜
(
いざよい
)
の光、清らかである。こんな奇麗な
佳
(
い
)
い晩に、二人は斬り合おうとするのであった。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今宵は月が
佳
(
い
)
いからというので——大中寺とは背中合わせになっている
大平山
(
おおひらやま
)
の隠居から招かれて、碁打ちに参りました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「よく見たの。」長谷川夫人は自分も
処女
(
きむすめ
)
に
後
(
あと
)
がへりしたやうな若い気持で愛嬢の顔をさしのぞいた。「どつちが
佳
(
い
)
いと思つて。種子田さん?」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
けれどもただ念力だけでは
作物
(
さくぶつ
)
のできばえを左右する訳にはどうしたって行きっこない、いくら
佳
(
い
)
いものをと思っても
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
『心配しなさんな。
明日
(
あした
)
から
己
(
おれ
)
が書き出す。
此処
(
こゝ
)
へ来てから大分に気分も
佳
(
い
)
いのだから。
月末
(
げつまつ
)
には
何
(
ど
)
うにか成るさ。』
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
寛永前後の風俗画の中で、又兵衛は特に傑出もしているようですし、数はそう沢山あるのではないにしても、
佳
(
い
)
いものもなかなか多いように思います。
双語
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
おいらァ
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れ
見
(
み
)
とれてるんだ。
顔
(
かお
)
といい、
姿
(
すがた
)
といい、お
前
(
まえ
)
ほどの
佳
(
い
)
い
女
(
おんな
)
は
江戸中
(
えどじゅう
)
探
(
さが
)
してもなかろうッて、
師匠
(
ししょう
)
はいつも
口癖
(
くちぐせ
)
のようにいってなさるぜ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
佳
(
い
)
い女だぜ。俺が金は持ち合せていないッて云ったら、銀行の金庫にあるわよッて、あの女ピストルを突きつけやがった。好い度胸だぜ。自動車に乗せて俺を
黒猫十三
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
しかもそれがことごとく
佳
(
い
)
いので厄介だが、参考のために、とにもかくにも一通り書いておくとしよう。(バックハウスのレコードは全部ビクターに入っている)
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
或日の夕暮、一人の若い品の
佳
(
い
)
い洋服の紳士が富岡先生の家の前えに
停止
(
たちど
)
まって、
頻
(
しき
)
りと内の様子を
窺
(
うかが
)
ってはもじもじしていたが遂に門を
入
(
はい
)
って玄関先に
突立
(
つった
)
って
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
眺望が
佳
(
い
)
いからと言つてこの梅の坊を
擇
(
えら
)
んで
住居
(
すまひ
)
にした道臣も、此頃では、景色なぞはどうでも可い、といつた風で、毎日お駒やお時を相手にして酒ばかり飮んでゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
大橋流の書も
佳
(
い
)
いし、絵は
木挽
(
こびき
)
町の
狩野
(
かのう
)
の高弟で、
一僊
(
いっせん
)
といって、本丸炎上の時は、将軍の居間の画を描いたりしたほど出来たし、漢学も出来る、手をとって教えてもらった。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
身を入れるとまるで味が悪くなる。塩で味をつけるから鯛の
潮汁
(
うしお
)
に似て味は十倍も
佳
(
い
)
い。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
何分
(
なにぶん
)
月が
佳
(
い
)
い晩なので、ステッキを手にしながら、ぶらぶら帰って来て、表門へ廻るのも、面倒だから、
平常
(
ふだん
)
皆が
出入
(
でいり
)
している、前述の隣屋敷の裏門から入って、竹藪を
通抜
(
とおりぬ
)
けて
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
色の浅黒い、中高な、右の頬の
黒子
(
ほくろ
)
が目にたつ、お糸さんは
佳
(
い
)
い女の方ではなかつた。すぐれて愛想のよいと云ふ程でもなかつた。それでも私達は其夜からお糸さんが
好
(
す
)
きになつた。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
作兵衛は小屋の中から
藁筵
(
わらむしろ
)
を出して、見晴らしの
佳
(
い
)
い場所に、それを敷いた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北宗画と
云
(
い
)
うのは、南宗画とはまた違った、柔かい
佳
(
い
)
い味のあるものだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして、さっきとちがい
頭髪
(
かみ
)
の
容
(
かたち
)
もととのえ薄く化粧をしているのでずっと引き立って見えた。こうしてみると、たしかに
佳
(
い
)
い女である。この女に自分が全力を
挙
(
あ
)
げて
惚
(
ほ
)
れているのは無理はない。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
最初はあたかも楽劇の
首歌妓
(
プリマドンナ
)
も及ばぬような
佳
(
い
)
い音調で、それがだんだんに調子を上げて、ついにその頂点は苦痛の長い号泣と変わってしまった。これは死者の最期の絶叫であったかもしれない。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
実に
佳
(
い
)
い声であった。
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
得も言われぬ
佳
(
い
)
い
匂
(
におい
)
がしました。はてな、あの一軒家の戸口を
覗
(
のぞ
)
くと、ちらりと見えた——や、その
艶麗
(
あでやか
)
なことと申すものは。——
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ああ
佳
(
い
)
い気もちだ、人間どもは、
逢
(
あ
)
う者も逢う者も、首をすくめ、
水洟
(
みずばな
)
をたらして、不景気な顔をしているが、ぜんたい、どうしたと云うのだ」
火傷した神様
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
錦手
(
にしきで
)
の
佳
(
い
)
い葢物ですね、是は師匠が
大好
(
だいすき
)
でげす、
煎豆腐
(
いりどうふ
)
の中へ
鶏卵
(
たまご
)
が入って黄色くなったの、誠に有難う、師匠が大好
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一人の
女
(
むすめ
)
が
婢
(
じょちゅう
)
を
伴
(
つ
)
れて、枝に着いた梅の花をいじりながら歩いていた。それは珍らしい
佳
(
い
)
い
容色
(
きりょう
)
で、その笑うさまは手に
掬
(
すく
)
ってとりたいほどであった。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
夕方高梨で「
精進
(
しょうじん
)
あげ」を馳走してくれた。今は午前三時、もう寝る。
佳
(
い
)
い夢があるだろう。(四、一〇)
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
... あゝ
佳
(
い
)
い
心持
(
こゝろもち
)
ぢや』と
老人
(
らうじん
)
は
言
(
い
)
つて
更
(
さら
)
に
若者
(
わかもの
)
に
向
(
むか
)
ひ『お
前
(
まへ
)
さんは
何處
(
どこ
)
の
者
(
もの
)
ぢや』と
問
(
と
)
ひました。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
『
姐
(
ねえ
)
さん
此家
(
こゝ
)
は景色が
佳
(
い
)
いね。』と、小池はお光の
注
(
つ
)
いだサイダーを冷たさうにして飮んだ。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
すれ違いました時、『オオ、
佳
(
い
)
い匂だ!』と思わず心で叫んで、私は深い息を吸いました。
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
新しい家は二階
造
(
づくり
)
で
引
(
ひき
)
越した当分の気持が実に
佳
(
い
)
い。此の二階の明るい書斎でならば保雄が計画して居る長篇小説も古事記を材料にした戯曲も
何
(
ど
)
うやら手が附けられ
相
(
さう
)
に思はれた。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
... 今日
拵
(
こしら
)
えたら今夜一晩地の上へ置いて明日再び温めて食べるのが一番
佳
(
い
)
い味になるね」と
込入
(
こみい
)
りたる手続に客は失望し「そんな面倒な事はとても出来ん。先ず略式から試してみよう」
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「これは何んでもボヘミヤ彫りだ。
頗
(
すこぶ
)
る珍らしい
彫刻
(
ほりもの
)
だ。音色も大方
佳
(
い
)
いだろう」
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「湖上の美人——あれは
何
(
ど
)
うです、
佳
(
い
)
い詩だとはお思ひになりませんか。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「名は不気味ですが、ながめは
佳
(
い
)
い。洛内はひと目ですから」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あるかも知れない。
佳
(
い
)
いのを周旋して
遣
(
や
)
り玉へ」
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
実に
佳
(
い
)
い声であった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
待遇
(
もてな
)
すやうなものではない、
銚子
(
ちょうし
)
杯
(
さかずき
)
が出る始末、
少
(
わか
)
い女中が二人まで給仕について、寝るにも
紅裏
(
べにうら
)
の
絹布
(
けんぷ
)
の
夜具
(
やぐ
)
、
枕頭
(
まくらもと
)
で
佳
(
い
)
い
薫
(
かおり
)
の
香
(
こう
)
を
焚
(
た
)
く。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「子供がどうして
佳
(
い
)
い悪いがわかるものかね。たとえよかったにしても、秦には及ばないよ。秦の方がだめになったら、その時にしても
晩
(
おそ
)
くはないよ。」
阿英
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
年増の
佳
(
い
)
い姿がはっきり道夫の眼に見えた。それは勝浦の旅館で知りあった
婢
(
じょちゅう
)
にそっくりの好ましい姿であった。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
エー
何
(
なん
)
とも重々恐れ入りやした、田舎者で始めて江戸へ
参
(
めえ
)
りやして、
亀井戸
(
かめいど
)
へ参詣して巴屋で一
杯
(
ぺい
)
傾けやした処が、料理が
佳
(
い
)
いので飲過ぎて
大酩酊
(
おおめいてい
)
を致し
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
秋の
初
(
はじめ
)
の空は一片の雲もなく
晴
(
はれ
)
て、
佳
(
い
)
い
景色
(
けしき
)
である。
青年
(
わかもの
)
二人は日光の直射を松の大木の蔭によけて、山芝の上に寝転んで、一人は遠く相模灘を眺め、一人は読書している。
恋を恋する人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「アア詰まらんな、実に詰まらん。家へ入ったところがドウセ今夜は寝られない。月が
佳
(
い
)
いから少しその
辺
(
へん
)
でも散歩しようか」と心の
憂
(
うれい
)
に
堪
(
たえ
)
ざる
如
(
ごと
)
く歩を移して中川家の門前へ来れり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
江州は
米所
(
こめどころ
)
であるうえ、水も
佳
(
い
)
い地方のせいでしょうか
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
佳
常用漢字
中学
部首:⼈
8画
“佳”を含む語句
佳味
佳人
絶佳
佳肴
佳什
佳境
佳節
佳人意漸疎
佳婿
佳香
佳水
佳麗
佳酒
西湖佳話
佳句
佳否
佳饌
美酒佳肴
佳吟
佳耦
...