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予
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かね
ふりがな文庫
“
予
(
かね
)” の例文
旧字:
豫
するともう、
予
(
かね
)
て打合せてでもしてあったと見えて、裁判長が、黙って頷いたんです……いや、驚きましたよ……ところがどうです。
あやつり裁判
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
沈黙家
(
むつつりや
)
ではあつたが、世間並に
母親
(
おふくろ
)
が一人あつた。この
母親
(
おふくろ
)
がある時芝居へ
往
(
ゆ
)
くと、
隣桟敷
(
となりさじき
)
に
予
(
かね
)
て
知合
(
しりあひ
)
の
某
(
なにがし
)
といふ女が来合せてゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
『奥様、誠に御気の毒なことで御座ます。猪子先生の御名前は
予
(
かね
)
て承知いたして居りまして、
蔭乍
(
かげなが
)
ら御慕ひ申して居たのですが——』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
唯今田中君の御質問がございましたが、その御質問の初めに
予
(
かね
)
て質問書を出して居る、何故に返答が遅いかといふ御催促でありました。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
尤
(
もっと
)
も
上
(
のぼ
)
りは
大抵
(
たいてい
)
どのくらいと、そりゃ
予
(
かね
)
て聞いてはいるんですが、日一杯だのもう
直
(
じき
)
だの、そんなに
輒
(
たやす
)
く
行
(
ゆ
)
かれる処とは思わない。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
予
(
かね
)
て何となく用意した岩見銀山を三包、福三郎の持薬と
摺替
(
すりか
)
え、あっしの家へ来て、その間に福三郎に飲ませるように仕向けた——
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこで今度はいよいよ訪問の鉾先を市外に向けて、
予
(
かね
)
ての約束を果すために地主のマニーロフやソバケーヴィッチを訊ねることにした。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
そう幾つも手が有りませんと、強情ッ
張
(
ぱり
)
の
婆
(
ばゝあ
)
だ……さ此方へ………お変りもございませんで……御難渋の事で、
予
(
かね
)
て承わって居りますが
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
身嗜
(
みだしな
)
みよくキチンと頭髪を
梳
(
くしけず
)
って、鼻下にチョビ
髭
(
ひげ
)
を蓄えた、小肥りの身体は
予
(
かね
)
て写真で調べておいたとおりの伯爵に違いはない。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その日の二時過ぐる頃、美奈子の打つた急電に依つて、
予
(
かね
)
て美奈子の傷を治療したことのある外科の泰斗近藤博士が、馳け付けた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
予
(
かね
)
ての心願に任せて至極安穏に、時至って瓜が
蔕
(
へた
)
から離れるが如く俗世界からコロリと滑り出して後生願い一方の人となったのであろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そして、それが聞届けになるべき様子が知れたので、
予
(
かね
)
て朝廷と幕府のお召もあったから
旁
(
かたがた
)
、世子は上京せられることになった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
こんな
処
(
ところ
)
へ出てくれば多くの知り人が有り、また歌の上手なことが
予
(
かね
)
て知られているというのは、一体どういう境涯の女なのであろうか。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼女は、この時、祖母から
予
(
かね
)
て聞かされてゐた
可笑
(
をか
)
しな逸話を思ひ出した。それは、彼女が小さな時分、父に頬ずりをされて
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
それで丁度其の日は、夏休み中でもあり、
予
(
かね
)
て小田夫婦とは知己の仲だったので、日がえりか何かのつもりで、K町へ泳ぎに来たのでした。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
それから
町人
(
ちょうにん
)
の
家
(
いえ
)
よりの
帰途
(
かえり
)
、
郵便局
(
ゆうびんきょく
)
の
側
(
そば
)
で、
予
(
かね
)
て
懇意
(
こんい
)
な
一人
(
ひとり
)
の
警部
(
けいぶ
)
に
出遇
(
であ
)
ったが
警部
(
けいぶ
)
は
彼
(
かれ
)
に
握手
(
あくしゅ
)
して
数歩
(
すうほ
)
ばかり
共
(
とも
)
に
歩
(
ある
)
いた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「七瀬、
予
(
かね
)
て、申しつけておいた通り、勤め方の後始末を取急いで片付け、すぐ、国へ戻れ。許しのあるまで、二度と、この敷居を跨ぐな」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
王
予
(
かね
)
て
悪
(
にく
)
みいた奴が招かざるに推参と聞いて大いに怒り、宮宰をして内官一同を召集せしめ、アをしてアを呼んだ者を指摘せしめんとした。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
自分達
母子
(
おやこ
)
が
予
(
かね
)
て疑っている如く、お葉という女は市郎と
情交
(
わけ
)
があるに相違ない。
左
(
さ
)
もなければ自分に対して、あんな乱暴を働く筈がない。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
狼狽
(
ろうばい
)
の
極
(
きょく
)
、
逆上
(
ぎゃくじょう
)
したようになっている音松を案内して、若侍は、
予
(
かね
)
て
命令
(
いいつ
)
けられていたものらしく、ドンドン奥へ通って行く。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
襞
(
ひだ
)
と云ふ
襞
(
ひだ
)
を白く
曵
(
ひ
)
いたアルプス連山の姿は
予
(
かね
)
て想像して居た様な雄大な
趣
(
おもむき
)
で無く、白い盛装をした欧洲婦人の
群
(
むれ
)
を望む様に優美であつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「ワタクシハ
予
(
かね
)
テ世間ニ於テ人間ノ美ト醜トニヨル差別待遇ノ
甚
(
はなは
)
ダシイノニ大ナル軽蔑ヲ抱イテイタ」とヒルミ夫人はその論文に
記
(
しる
)
している。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
いよいよ
予
(
かね
)
ての事を断行するときが来たのである。松田用人は長い巻紙に書いたるものをそこへ置き、「これをよくみろ」と若さまに云った。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私を賞めて遠州を引き合いに出すのは、私を正しく見てのことであろうか。遠州程度では全くこまるというのが、私の
予
(
かね
)
ての気持なのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
人間は百二十五歳までの寿命をもっておるというのが我輩
予
(
かね
)
ての説である。しかしこれにはあえて深い論のある訳でない。
我輩は何故いつまでもすべてに於て衰えぬか
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それに勝次郎という人の仕事の上手であることをも
予
(
かね
)
てから知っており、この人と一緒に仕事することは、いろいろ智識を開くことにもなろう。
幕末維新懐古談:37 鋳物の仕事をしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
経たりしに突然福地家の執事
榎本破笠
(
えのもとはりゅう
)
子より
予
(
かね
)
て先生への御用談一応小生より
承
(
うけたまわ
)
り
置
(
おく
)
べしとの事につき御来車ありたしとの書面に接し即刻番地を
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
と云うのは、彼が
予
(
かね
)
て知っていた、アサクサ・ストリート・ボーイズのことだ。猟奇家の彼が、そういうものの存在を知らぬ筈はないのだから。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
居室南側裏窓の硝子戸
框
(
かまち
)
(高さ床上より約一丈)に麻縄約一尺(作業用紙袋材料を括りたるものを
予
(
かね
)
て貯え、居室内に包蔵しいたるものゝ如し)
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
然るに同年五月二十四日、
予
(
かね
)
てから不快であった能静氏が、重態となったので、
態々
(
わざわざ
)
翁を呼寄せて書置を与えたという。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
時刻は
予
(
かね
)
て打ちあわせてあるから、
女
(
セニョリタ
)
は厚化粧をして待っていて、古城の姫君にでもなった気ですっかり片づけている。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
私は
予
(
かね
)
て申す通り一体の性質が
花柳
(
かりゅう
)
に
戯
(
たわぶ
)
れるなどゝ云うことは
仮初
(
かりそめ
)
にも身に犯した事のないのみならず、口でもそんな
如何
(
いかが
)
わしい話をした事もない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それから
馬
(
うま
)
の
呼名
(
よびな
)
でございますが、
私
(
わたくし
)
は
予
(
かね
)
ての
念願
(
ねんがん
)
どおり、
若月
(
わかつき
)
を
改
(
あらた
)
めて、こちらでは
鈴懸
(
すずかけ
)
と
呼
(
よ
)
ぶことに
致
(
いた
)
しました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その時には
予
(
かね
)
てこの学校でお読みになッた書物あるいはさッきからお話するところの日々に二十分なり三十分なりお読みなさる書物で学んだところの
人格の養成
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
予
(
かね
)
てから猫の
産月
(
うみづき
)
が近づいたので、書斎の
戸棚
(
とだな
)
に
行李
(
こうり
)
を
準備
(
ようい
)
し、小さい座蒲団を敷いて産所に
充
(
あ
)
てていたところ
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それから、
予
(
かね
)
て行きつけの今から二時間ばかり前に一寸
覗
(
のぞ
)
いただけで入らなかつた其のバーに再び立ち寄つて熱いのを
喉
(
のど
)
に通はせてから家へ帰つて寝た。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
固
(
もと
)
より今
遇
(
あ
)
はうとは少しも予期しなかつたので、その
風采
(
ふうさい
)
なども一目見ると
予
(
かね
)
て想像して居つたよりは遥かに品の善い、それで何となく気の利いて居る
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その人たちは北の方に行くのもございましたがまた後へ引き返す者もありました。
予
(
かね
)
て私は道は東南に取らずにずっと東へ取れということを聞いて居った。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
彼が立ち去るなり、私は手早く、友江さんを下し、人工呼吸を施しますと、間もなく息を吹き返しましたので、
予
(
かね
)
て妻と打合せてあった室に運びこみました。
暴風雨の夜
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
といろいろ工夫をする場合に、誰か
余所
(
よそ
)
で会った人とか、自分の
予
(
かね
)
て知ってる者とかの
中
(
うち
)
で、
稍々
(
やや
)
自分の
有
(
も
)
ってる抽象的観念に脈の通うような人があるものだ。
予が半生の懺悔
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
確かにこれは駒井能登守が窮地に陥ったなと、
予
(
かね
)
ての噂を聞いている者は、ひとごとながら見てはいられない気の毒の感じを起したものも少なくはありません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昼はもとより夜も暑いのと蚊が多いのとで、
予
(
かね
)
て計画して居た勉強などは少しも出来ない。話相手になる友達は一人もなし毎日毎日単調無味な生活に苦しんで居た。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
其処に
予
(
かね
)
てそういう考を抱いていた岸田劉生や木村荘八の諸君が合体して、フューザン会が成立した訳だ。フューザン会という名は斎藤与里さんがつけたのである。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
その狩野氏は妻君を持たないで独身生活をつづけているという事を私は
予
(
かね
)
て漱石氏から聞いていたが
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そのような訳で、坂口は
予
(
かね
)
てからの希望通り倫敦へ来て、伯父と一緒に住む事を許されたのである。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
といふのは友情的な心懐を全く別にして
予
(
かね
)
々僕はこれらの作品については、その厭世の偏奇境から沸然として発酵し奇天烈無比なる滑稽演説家「風博士」との会合以来
坂口安吾君の『黒谷村』を読む
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
予
(
かね
)
てよりリチャード・バートン輩と交わりて注目を
惹
(
ひ
)
ける折柄、エクセター教区監督を誹謗し、目下狂否の論争中なる、法術士ロナルド・クインシイと
懇
(
ねんご
)
ろにせしため
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その彫像を
予
(
かね
)
てから欲しがっていた
胡買者
(
けいすがい
)
のシモン・スヌッドはスパイダーに話を持ち掛けた。
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
温泉の下の湯川の河原では、人夫達が
荷拵
(
にごしらえ
)
して待っていた。殿下は
予
(
かね
)
て御用意の登山靴をお穿きになり、写真機もお弁当もリュックサックに入れて、御自身お背負になる。
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
その薬法は
予
(
かね
)
て記して置いたが、それよりも、眠り薬を巧みに用いれば、
宿直
(
とのい
)
の者も
熟睡
(
うまい
)
して、その前を大手を振って通っても見出されぬ。つまり姿を消したも同然じゃ。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
“予”の意味
《代名詞》
(ヨ)(context、dated)一人称代名詞。われ。余。
(出典:Wiktionary)
予
常用漢字
小3
部首:⼅
4画
“予”を含む語句
猶予
予想
予期
予譲
予言
予々
御猶予
予定
伊予簾
予言者
予等
予告
予備黌
予知
予報
予算
予且
伊予
予測
予感
...