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鴨居
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かもい
ふりがな文庫
“
鴨居
(
かもい
)” の例文
縁側なしに造った家の敷居、
鴨居
(
かもい
)
から柱、天井、壁、畳まで、
bitume
(
ビチュウム
)
の勝った画のように、濃淡種々の茶褐色に染まっている。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
頭の上の
鴨居
(
かもい
)
に取り付けてある瀬戸物の白い標札を読んでみると、小さなゴチック文字で「標本室」と書いてあることがわかった。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼方
(
かなた
)
の床の間の
鴨居
(
かもい
)
には
天津
(
てんしん
)
の
肋骨
(
ろっこつ
)
が万年傘に代へてところの
紳董
(
しんとう
)
どもより贈られたりといふ
樺色
(
かばいろ
)
の旗二流おくり来しを掛け
垂
(
たら
)
したる
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そこの
鴨居
(
かもい
)
のところへぶらりとつりさげながら、取りよせたすずりの筆をとって、さらさらと不思議な文句を懐紙に書きしたためました。
右門捕物帖:33 死人ぶろ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
やおら、
鴨居
(
かもい
)
に顔のつく程な巨躯を起した覚明は、常住の護剣、金剛杖に仕込んである四尺余寸の戒刀をとって庭先へ出向いた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
立ち上っても、頭が
鴨居
(
かもい
)
の下に来た。椅子に坐ってみても
丁度
(
ちょうど
)
腰の下ろし具合がいい。もうこれで元のようになったと感じた。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
脊がすらりとして、結上げた髪が
鴨居
(
かもい
)
にも
支
(
つか
)
えそうなのが、じっと
此方
(
こなた
)
を見詰めていたので、五助は小さくなって氷りついた。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
床の間の掛軸が、バラ/\と吹き
捲
(
まく
)
られて、
跳
(
は
)
ね落ちると、ガタ/\と
烈
(
はげ
)
しい音がして、
鴨居
(
かもい
)
の額が落ちる、六曲の
金屏風
(
きんびょうぶ
)
が吹き倒される。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「きのう行灯の出ていた二階に間違いはありませんよ。
鴨居
(
かもい
)
から赤い
扱帯
(
しごき
)
で、女草履が片っ方ブラ下がっているのは不思議じゃありませんか」
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その店さきのガラス戸や内の
鴨居
(
かもい
)
などには赤い
短冊
(
たんざく
)
のような
紙片
(
しへん
)
を貼ってあるのが見えた。それは謙作が見慣れている支那街の色彩であった。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
茂緒はその
鴨居
(
かもい
)
にとどきそうな倉島の後姿に歯をかんだ。そしてぷいと外に出た。それしか、もう意志表示ができなかった。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
... とてもかくてもこの外に、鼠を
探
(
さが
)
し
捕
(
と
)
らんに
如
(
し
)
かじ」ト、言葉いまだ
畢
(
おわ
)
らざるに、
忽
(
たちま
)
ち「
呀
(
あっ
)
」と叫ぶ声して、
鴨居
(
かもい
)
より
撲地
(
はた
)
ト
顛落
(
まろびおつ
)
るものあり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
表には、「永田清涼飲料水製造所」という看板が出ているが、入口の
鴨居
(
かもい
)
には、昔の「永田組」の提灯がかかげられてある。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
怪しい気配を
訝
(
いぶか
)
しがった城入道その他の人々が、廊を踏鳴らして近寄ると、天狗たちはばらばらと柱をよじ上り、
鴨居
(
かもい
)
を伝わって逃散ります。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
アンテナはわずかに二メートルくらいの線を
鴨居
(
かもい
)
の電話線に並行させただけで、地中線も何もなしに十分であったのが、捲線が次第に
黴
(
か
)
びたり
ラジオ雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
外出する時でも、孫の手を
鴨居
(
かもい
)
から並べてぶら下げて置くと、ネコはそれをおそれて僕の部屋には入ってこないようです。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
浦賀港から東へ約一里ばかり行つた
鴨居
(
かもい
)
といふ漁村に、丸茂英太郎君といふ四十二三歳の漁師がゐるがこの人が二三年前素晴らしい大物を捕つた。
東京湾怪物譚
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そして
敷居
(
しきい
)
と
鴨居
(
かもい
)
とを無理に取り附けて、障子を入れ、所々はがれている漆喰の壁には、妙な形の柱を添えて軸物が掛けてあるという風であった。
満洲通信
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
おしょさんの
家
(
うち
)
には、そうした団扇に虫がつかないように、細い
磨竹
(
みがきだけ
)
に通して、
室
(
へや
)
の隅に三角に、
鴨居
(
かもい
)
へ渡してあった。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
家ごとに
羔羊
(
こひつじ
)
を屠ってその血を門口の柱と
鴨居
(
かもい
)
とに塗り、火に
炙
(
や
)
いてあまさず食い、また
酵
(
たね
)
入れぬパンに
苦菜
(
にがな
)
をそえて食うべきことを命ぜられた。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
何かの形と字を、木版摺りにした、気鎮めの禁厭の紙が、彼女の乱れた髪を見下すように、
鴨居
(
かもい
)
にヒラヒラしていた。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして、房枝は一週間目に、鈴木女教員が学校へ出ていったあとで、その下宿の二階の
鴨居
(
かもい
)
に自分の赤い帯をかけて、みずから
縊
(
くび
)
れて死んだのだった。
錯覚の拷問室
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
吉の作った仮面は、その後、彼の店の
鴨居
(
かもい
)
の上で絶えず笑っていた。無論何を笑っているのか誰も知らなかった。
笑われた子
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
年齢
(
とし
)
のころは四十あまり、
剃刀
(
かみそり
)
のような長い蒼白いあばた面、薄い一文字の口、
鴨居
(
かもい
)
をくぐりでもしそうな珍しい背高、これぞ饗庭亮三郎その人である。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一人は七尺の
鴨居
(
かもい
)
を頭を下げてくぐるほどの大男の異国人であり、一人はずんぐりとしたその供の下役であった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
愈々
(
いよいよ
)
、暗い運命の手は、更に一枚の
帷
(
とばり
)
を増して、私たちを包んだことになるではないか? こう思ってふと
鴨居
(
かもい
)
を見ると
其処
(
そこ
)
には「金毘羅大神」の文字が
犬神
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
薬屋の小店から、店員らしい男が
鴨居
(
かもい
)
に手をかけて身体を乗り出し、わたくしたちの様子を眺め始めました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
短刀をのせた三方は、つぶてとなってすッ飛んだ。ま横によぎった。
鴨居
(
かもい
)
に近い障子の桟をたたきつぶした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
襖
(
ふすま
)
の蔭で小夜子が
洟
(
はな
)
をかんだ。つつましき音ではあるが、
一重
(
ひとえ
)
隔ててすぐ
向
(
むこう
)
にいる人のそれと受け取れる。
鴨居
(
かもい
)
に近く聞えたのは、
襖越
(
ふすまごし
)
に立っているらしい。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると書斎の
鴨居
(
かもい
)
の上に
鳶口
(
とびぐち
)
が
一梃
(
いっちょう
)
かかっていた。鳶口は
柄
(
え
)
を黒と朱との
漆
(
うるし
)
に巻き立ててあるものだった。
死後
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
木の幹などはいうに及ばず窓の
縁
(
ふち
)
や
縁側
(
えんがわ
)
や時としては
鴨居
(
かもい
)
までにおる、なめくじりは雨を喜ぶあまりに自分の
栖家
(
すみか
)
もふりすてて
高歩
(
たかある
)
きをしておるというのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
一枚五厘ずつのオモチャ絵紙の、唐紅かなにかでひた赤く
染
(
そめ
)
たやつを二、三枚、唐紙の
鴨居
(
かもい
)
に張つけて眺めていられ、しきりと面白い理由を説明して聞かせられた
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そして銭湯から帰ると、一尺四方ばかりの板きれを捜しだし、勝手から
目笊
(
めざる
)
を持って来て、部屋の隅の
鴨居
(
かもい
)
のところへ板を渡し、その上へ目笊を伏せて、坐りこんだ。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
貧弱な下宿屋の
鴨居
(
かもい
)
に頭が
閊
(
つか
)
える。
風采
(
ふうさい
)
は
生地
(
きじ
)
の学生時代にロマンスがあったという丈けに
眉目秀麗
(
びもくしゅうれい
)
で通る。間瀬君ほど強度ではないが、矢張り近眼鏡をかけている。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そして戸口には、Kがさっき遠くから認めた男が立って、
丈
(
たけ
)
の低い
鴨居
(
かもい
)
にしっかりと身をささえて、気短かげな観客のように、
爪立
(
つまだ
)
ちながら少し身体を揺すっていた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
夜中に
鴨居
(
かもい
)
へ細帯を引掛け、あるいは
井戸端
(
いどばた
)
をうろついて見せる女、いづれも人の来つて留めるを待つこと、これまた袂を振つて帰る帰るとわめく
甚助親爺
(
じんすけおやじ
)
と同様なり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「電気は不経済なばかりじゃない、柱や
鴨居
(
かもい
)
へ穴を明けて家を台なしにするから考え物じゃ。今夜のようなことがあるとすると保険はつけといた方がええかもしれんが」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
家じゅうで、いちばん高い、あの子の頭はもう一寸四
分
(
ぶ
)
ぐらいで
鴨居
(
かもい
)
にまで届きそうに見える。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
鴨居
(
かもい
)
につかえそうに背の高い吉田さんを見ていると、私は何か圧されそうなものを感じている。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
森村は見向きもせずに前どおりな無表情な顔を眼の前の窓の
鴨居
(
かもい
)
あたりに向けたままで
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まだ四十を
越
(
こ
)
していくつにもならないというのが、一
見
(
けん
)
五十四五に
見
(
み
)
える。
髷
(
まげ
)
も
白髪
(
しらが
)
もおかまいなし、
床屋
(
とこや
)
の
鴨居
(
かもい
)
は、もう二
月
(
つき
)
も
潜
(
くぐ
)
ったことがない
程
(
ほど
)
の、
垢
(
あか
)
にまみれたうす
汚
(
ぎた
)
なさ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
越後の中部ではこの日の行事に、米の粉を練って
小狗
(
こいぬ
)
の形をこしらえて戸の
棧
(
さん
)
に飾り、または十二支の形を作り
鴨居
(
かもい
)
長押
(
なげし
)
に引掛ける習わしがあり、犬の子正月の名はこれに基づいている。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それで電燈は、出居と
囲炉裏
(
いろり
)
の
間
(
ま
)
との仕切の
鴨居
(
かもい
)
に
釘
(
くぎ
)
を打ちつけて、その釘にコオドを引き掛けてあるのを、夕食のおりだけはずして来て、食卓を側面から照らすように仕向けるのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
それは二階にあったのですが——安っぽい
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の傍に、一間の押入がついていて、その内部は、
鴨居
(
かもい
)
と敷居との丁度中程に、押入れ一杯の
巌丈
(
がんじょう
)
な棚があって、上下二段に分れているのです。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
総桐
(
そうぎり
)
の
箪笥
(
たんす
)
が三
棹
(
さお
)
も
箝
(
は
)
め込みになっており、押入の
鴨居
(
かもい
)
の上にも余地のないまでに
袋戸棚
(
ふくろとだな
)
が
設
(
しつら
)
われ、
階下
(
した
)
の抱えたちの寝起きする狭苦しさとは打って変わって住み
心地
(
ごこち
)
よく工夫されてあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それをひょろひょろとさけながら庭へ下りると
瓦
(
かわら
)
が落ちてくる、私は父を思いだして寝室へはいると、
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の
鴨居
(
かもい
)
が落ちており、そこで父の枕元の
長押
(
なげし
)
を両手で支えていたことを覚えている。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
あお向けに寝て
覚
(
さ
)
めている室の
周囲
(
まわり
)
の
鴨居
(
かもい
)
のあたりをめぐって
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
稽古場の
鴨居
(
かもい
)
に貼りつける。
半七捕物帳:35 半七先生
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ほうしょの黒の五つ紋(借りもの)を
鴨居
(
かもい
)
の釘に
剥取
(
はぎと
)
られて、大名縞とて、笑わせる、よれよれ
銘仙
(
めいせん
)
の口綿一枚。素肌の寒さ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして
鴨居
(
かもい
)
から二つ
鋏
(
はさみ
)
を取りおろして積もった
塵
(
ちり
)
を口で吹き落としながら両ひじを動かしてぐあいをためして見せた。
芝刈り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“鴨居”の解説
鴨居(かもい)は、柱間の上下に水平に取り付けて襖や障子などの建具をはめ込む枠のうち上部にあたる部材。枠の下部にあたる敷居とは対になっており、通常、建具を滑らせて開閉できる構造になっている。敷居、鴨居、長押を総称して内法物(うちのりもの)という。
一般的には溝を掘った横木である。ただし筋溝のない無目鴨居もあり、開き戸や開き障子を用いる箇所に施される。
なお鉄道車両においては、客用扉上部のスペースのことを指すことがある。
(出典:Wikipedia)
鴨
漢検準1級
部首:⿃
16画
居
常用漢字
小5
部首:⼫
8画
“鴨”で始まる語句
鴨
鴨川
鴨緑江
鴨跖草
鴨頭草
鴨下
鴨緑
鴨東
鴨猟
鴨長明