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颯
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さ
ふりがな文庫
“
颯
(
さ
)” の例文
颯
(
さ
)
っと短いマントに短剣を吊って、素早く胡瓜売りの手車の出ている角を曲ったのは、舞踊で世界的名声のあるカザークの若者だ。
五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
一陣の北風に
颯
(
さ
)
と音していっせいに南に
靡
(
なび
)
くこと、はるかあなたにぬっくと立てる電燈局の煙筒より
一縷
(
いちる
)
の煙の立ち
騰
(
のぼ
)
ること等
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
朝の黄金の光が
颯
(
さ
)
っと射し込み、庭園の桃花は、
繚乱
(
りょうらん
)
たり、
鶯
(
うぐいす
)
の
百囀
(
ひゃくてん
)
が
耳朶
(
じだ
)
をくすぐり、かなたには漢水の
小波
(
さざなみ
)
が朝日を受けて躍っている。
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と、いうやいな、紋太夫の手は、連判状をつかんで、
颯
(
さ
)
ッと、野獣の身をおどらすように、
跳
(
と
)
び
退
(
の
)
こうとした。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恋という字の耳に響くとき、ギニヴィアの胸は、
錐
(
きり
)
に刺されし
痛
(
いたみ
)
を受けて、すわやと躍り上る。耳の裏には
颯
(
さ
)
と音がして熱き血を
注
(
さ
)
す。アーサーは知らぬ顔である。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「飯を、飯を!」と
婢
(
をんな
)
を
叱
(
しつ
)
して、
颯
(
さ
)
と奥の間の
紙門
(
ふすま
)
を
排
(
ひら
)
けば、何ぞ図らん
燈火
(
ともしび
)
の前に人の影在り。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
窓を開くと、冷たい風が
颯
(
さ
)
っと流れ込んで、宗三郎の熱した頭を心持よく冷やしてくれます。
猟色の果
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
水刷毛を刷いただけでは上っ面ばかりで充分に水気が絹に滲まないので、水気をしっくりと滲み込ませるために刷毛で刷いた上を濡れ布巾で
颯
(
さ
)
っ颯っと擦ると具合がよくなります。
昔のことなど
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
自分は、人の眠を妨げぬやうに静かに起きて、柱に懸けてあつた手拭を取つて、サテ音させぬ様に障子を明けた。秋の朝風の冷たさが、
颯
(
さ
)
と心地よく全身に沁み渡る。庭へ下りた。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
疳高く
凛
(
りん
)
とした声だった。
颯
(
さ
)
っと
褥
(
しとね
)
を蹴って立ち上ると
苛立
(
いらだ
)
たしげに言った。
十万石の怪談
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「大丈夫で御座いますよ」と小虎は云いつつ
颯
(
さ
)
と紺蛇の目の雨傘を開いた。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
颯
(
さ
)
っと亭主の顔色が変りました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
けれども、あの「死んで下さい」というお便りに接して、胸の
障子
(
しょうじ
)
が一斉にからりと取り払われ、一陣の涼風が
颯
(
さ
)
っと吹き抜ける感じがした。
散華
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鋭
(
するど
)
き
山颪
(
やまおろし
)
が
颯
(
さ
)
と
来
(
く
)
ると、
舞下
(
まひさが
)
る
雲
(
くも
)
に
交
(
まじ
)
つて、
漂
(
たゞよ
)
ふ
如
(
ごと
)
く
菫
(
すみれ
)
の
薫
(
かほり
)
が
𤏋
(
ぱつ
)
としたが、
拭
(
ぬぐ
)
ひ
去
(
さ
)
つて、つゝと
消
(
き
)
えると、
電
(
いなづま
)
が
空
(
くう
)
を
切
(
き
)
つた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
省線の電車が、
颯
(
さ
)
っと風をきって通過したとき、あおりで堤に咲きつらなっていた萩の花房が瞬間大ゆれに揺れて乱れた。
風知草
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
武蔵がその雪風よりも鋭い声で斬るようにいうと、
逆手
(
さかて
)
に棒を握って、喰い付くような眼をすえていた権之助の髪の毛が、針ねずみのように、
颯
(
さ
)
っと立った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
研
(
と
)
ぎ澄したる
剣
(
つるぎ
)
よりも寒き光の、
例
(
いつも
)
ながらうぶ毛の末をも照すよと思ううちに——
底事
(
なにごと
)
ぞ!音なくて
颯
(
さ
)
と曇るは霧か、鏡の
面
(
おもて
)
は巨人の息をまともに浴びたる如く光を失う。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
隣に養へる
薔薇
(
ばら
)
の
香
(
か
)
の
烈
(
はげし
)
く
薫
(
くん
)
じて、
颯
(
さ
)
と座に
入
(
い
)
る風の、この
読尽
(
よみつく
)
されし長き
文
(
ふみ
)
の上に落つると見れば、紙は
冉々
(
せんせん
)
と舞延びて貫一の身を
縈
(
めぐ
)
り、
猶
(
なほ
)
も
跳
(
をど
)
らんとするを、彼は
徐
(
しづか
)
に敷据ゑて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
颯
(
さ
)
っと税関吏の顔色が変った。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一団の旅人と
颯
(
さ
)
っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」
走れメロス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かく謂いつつ立上りて、するりと帯を解き、三枚
襲
(
がさね
)
を
颯
(
さ
)
と脱ぎて、
顎
(
あご
)
で押えて
袖畳
(
そでだたみ
)
、一つに
纏
(
まと
)
めてぽいと投出し
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
誰か? と
楊雄
(
ようゆう
)
と
石秀
(
せきしゅう
)
はぎょっとして、後ろの木蔭を振りむいた——。が、その目の前へ、
颯
(
さ
)
ッと、泳ぐがごとく出て来た男の魔性めいたお辞儀振りを見ると
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
途端に裸ながらの
手燭
(
てしょく
)
は、風に打たれて
颯
(
さ
)
と消えた。外は
片破月
(
かたわれづき
)
の空に
更
(
ふ
)
けたり。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
朝子は凝っと聴いていて、やがて
颯
(
さ
)
っと顔を赤らめいきなり涙をあふらした。
広場
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
宮は
猶脱
(
なほのが
)
るるほどに、帯は
忽
(
たちま
)
ち
颯
(
さ
)
と
釈
(
と
)
けて
脚
(
あし
)
に
絡
(
まと
)
ふを、右に左に
踢払
(
けはら
)
ひつつ、
跌
(
つまづ
)
きては進み、行きては
踉
(
よろめ
)
き、彼もはや力は
竭
(
つ
)
きたりと見えながら、
如何
(
いか
)
に
為
(
せ
)
ん、
其処
(
そこ
)
に伏して
復
(
また
)
起きざる時
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
僕は、この事は、一高のドロップを知った直後に、
颯
(
さ
)
っときめてしまっていたのだ。最後はそれだと決意していた。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
三吉は腕を叩きて、「
確
(
たしか
)
に、請合いました。」「よくせい。」とひらりと召す。
梶棒
(
かじぼう
)
を挙げて一町ばかり
馳出
(
はせい
)
だせる
前面
(
むかい
)
より、
颯
(
さ
)
と
駈来
(
かけきた
)
る一頭の犬あり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もう
一言
(
ひとこと
)
と思ったことばを、彼は云いそびれてしまったのだろう。
颯
(
さ
)
っと身をひるがえすと、
先刻
(
さっき
)
、主税と岡右衛門の出て行った裏口の雪明りへ、彼のすがたも躍り出ていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
外套の
襟
(
えり
)
を三寸ばかり
颯
(
さ
)
と返したら、左の
袖
(
そで
)
がするりと抜けた、右の袖を抜くとき、
領
(
えり
)
のあたりをつまんだと思ったら、裏を
表
(
おも
)
てに、外套ははや畳まれて、
椅子
(
いす
)
の
背中
(
せなか
)
を早くも隠した。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
家の近所のダラダラ坂に人通りの少いのを見はからって、
颯
(
さ
)
っと乗り出したはよいが、進むにつれて速度が加って、どうにも始末がつかなくなり、あわやという間に交通巡査に抱きついてしまった。
写真に添えて
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
颯
(
さ
)
っと帰って来ればよかった、しまった、と後悔ほぞを
噛
(
か
)
む思いに眠れず
転輾
(
てんてん
)
している有様なのだから、偉いどころか、最劣敗者とでもいうようなところだ。
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
婦人は
毀誉
(
きよ
)
を耳にも懸けず、いまだ売買の約も整わざる、襯衣を着けて、
膚
(
はだえ
)
を蔽い、肩を納め、帯を
占
(
し
)
め、
肩掛
(
ショオル
)
を取りて
颯
(
さ
)
と羽織り、悠々として去らんとせり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
聞くとすぐ、宋江ならぬ一丈青のほうが、
颯
(
さ
)
ッと、駒の背に身を沈めて横道へ馳け出した。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
呼吸して生きていることに疲れて、窓から顔を出すと、隣りの宿の娘さんは、部屋のカアテンを
颯
(
さ
)
っと
癇癖
(
かんぺき
)
らしく閉めて、私の視線を切断することさえあった。
俗天使
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
とばかり答えたまう、この時格子の戸
颯
(
さ
)
と
開
(
あ
)
きぬ。すかし見る
框
(
かまち
)
の上に、片肌脱ぎて立ちたるは、よりより今はわが伯母上とも
行交
(
ゆきか
)
いたる、金魚養う女房なり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
颯
(
さ
)
っ、颯っ、颯っ、——と、榊が、風を鳴らした。彼の祝詞が、一だんと、声を高める。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やがて
遙
(
はるか
)
に
能生
(
のう
)
を認めたる
辺
(
あたり
)
にて、
天色
(
そら
)
は
俄
(
にわか
)
に一変せり。——
陸
(
おか
)
は
甚
(
はなは
)
だ黒く、沖は真白に。と見る間に血のごとき色は
颯
(
さ
)
と流れたり。日はまさに入らんとせるなり。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
左翼思想が、そのころの学生を興奮させ、学生たちの顔が
颯
(
さ
)
っと蒼白になるほど緊張していました。
おしゃれ童子
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
片方の耳はひどく冷たいが、今朝は
鮮
(
あき
)
らかに全姿を見せている駒の
頂
(
いただき
)
から落ちてくる風に、足元から払われて行くと、ゆうべからの疲れも
焦躁
(
しょうそう
)
も
颯
(
さ
)
っと遠方のものになってしまう。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふと
此方
(
こなた
)
を見返り、それと
頷
(
うなず
)
く
状
(
さま
)
にて、片手をふちにかけつつ片足を立てて盥のそとにいだせる時、
颯
(
さ
)
と音して、烏よりは小さき鳥の真白きがひらひらと舞いおりて
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
颯
(
さ
)
っと赤い表紙の可愛い辞典を投げてやったところなんかは、やっぱりあざやかなものだった。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
呂布は
颯
(
さ
)
ッと満面の髯も髪もさかだてて、
画桿
(
がかん
)
の
大戟
(
おおほこ
)
をふりかぶるやいな
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小坂家の玄関に於いて
颯
(
さ
)
っと羽織を着換え、
紺
(
こん
)
足袋をすらりと脱ぎ捨て白足袋をきちんと
履
(
は
)
いて
水際立
(
みずぎわだ
)
ったお使者振りを示そうという
魂胆
(
こんたん
)
であったが、これは完全に失敗した。
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
間
(
ま
)
広き旅店の客少なく、夜半の鐘声
森
(
しん
)
として、
凄風
(
せいふう
)
一陣身に染む時、長き廊下の最端に、
跫然
(
きょうぜん
)
たる足音あり
寂寞
(
せきばく
)
を破り近着き
来
(
きた
)
りて、黒きもの
颯
(
さ
)
とうつる障子の外なる幻影の
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
血とも見えて、
颯
(
さ
)
ッと、自分の刀の先から
刎
(
は
)
ね飛んだのであった。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
月
凍
(
い
)
てたり。
大路
(
おおじ
)
の人の
跫音
(
あしおと
)
冴えし、それも時過ぎぬ。坂下に犬の
吠
(
ほ
)
ゆるもやみたり。
一
(
ひと
)
しきり、一しきり、
檐
(
のき
)
に、棟に、背戸の
方
(
かた
)
に、
颯
(
さ
)
と来て、さらさらさらさらと鳴る風の音。
誓之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
凝
(
こ
)
ったグラスに葡萄酒をひとりで注いで
颯
(
さ
)
っと呑みほし、それから大急ぎでごはんをすまして、ごゆっくり、と真面目にお辞儀して、もう
掻
(
か
)
き消すように、いなくなってしまいます。
兄たち
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
颯
(
さ
)
ッと、一つの松明が、下を望んで焔を振ったと思うと
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上流の流れ
疾
(
と
)
く
白銀
(
しろがね
)
の光を浴び、
蜿
(
うね
)
りに
蒼
(
あお
)
みを帯びて、両側より枝
蔽
(
おお
)
える
木
(
こ
)
の葉の中より走り出でて、
颯
(
さ
)
と
橋杭
(
はしぐい
)
を
潜
(
くぐ
)
り抜け、
来
(
こ
)
し
方
(
かた
)
の
市
(
まち
)
のあたり、ごうごうと
夜
(
よ
)
深き瀬の音ぞ聞えたる。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
颯
(
さ
)
っと態度が鹿爪らしくなって、まるで、よそよそしくなってしまうものです。
誰も知らぬ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
颯
漢検1級
部首:⾵
14画
“颯”を含む語句
颯々
颯爽
颯然
一颯
英姿颯爽
颯急
松籟颯々
爽々颯々
青嵐颯々
颯々淙々
颯々爽々
颯光
颯地
颯爽味
颯秣建
颯血