いなづま)” の例文
不図したら今日締切後に宣告するかも知れぬ、と云ふ疑ひがいなづまの様に心を刺した。其顔面には例の痙攣ひきつけが起つてピクピク顫へて居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その脊はくつがへりたる舟の如し。忽ち彼雛鷲はいなづまの撃つ勢もて、さとおろし來つ。やいばの如き利爪とづめは魚の背をつかみき。母鳥は喜、色にあらはれたり。
さけんで、大音だいおん呵々から/\わらふとひとしく、そらしたゆびさきへ、法衣ころもすそあがつた、黒雲くろくもそでいて、虚空こくういなづまいてぶ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かうしてレコードをるときは、きつと彼がそばにゐたからなのであらう。が、その弘の幻が、突然、いなづまのやうに頭をかすめた。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
がたおそろしさはいなづまごとこころうちひらめわたって、二十有余年ゆうよねんあいだ、どうして自分じぶんはこれをらざりしか、らんとはせざりしか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いままで五時五十分を指してゐた長い針がにはかにいなづまのやうに飛んで、一ぺんに六時十五分の所まで来てぴたっととまりました。
耕耘部の時計 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
それと同時に、いなづまのやうに、彼の心にある悪魔的な考へが思ひ浮かんだ。その考へは、電のやうに消えないで、徐々に彼の頭に喰ひ入つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
御眉のあたりにはびく/\といなづまが走つて居りますし、まるで良秀のもの狂ひに御染みなすつたのかと思ふ程、唯ならなかつたのでございます。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
としちゃんは、おかあさんや、いもうとのたつさんと汽車きしゃまどから、青々あおあおとしたそと景色けしきをながめていますと、とお白雲はくうんなかで、ぽかぽかといなづまがしていました。
古いてさげかご (新字新仮名) / 小川未明(著)
丁度道ばたに藁小屋わらごやがありましたので、みなその中へけこみました。雷は鳴りひゞく、いなづまはピカリ/\とひらめく、大へんな空もやうになりました。
狐に化された話 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
そのとき船が急に取柁とりかぢの方へ半分ほど廻つて、いなづまのやうに早く、今までと変つた方角へ走り出しました。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
はてしなき今昔こんじやくの感慨に、瀧口は柱にりしまゝしばし茫然たりしが、不圖ふといなづまの如く胸に感じて、想ひ起したる小松殿の言葉に、ひそみし眉動き、沈みたる眼閃ひらめき
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
きらめくはいなづまか、とゞろくはいかづちか。 砲火ほうくわ閃々せん/\砲聲ほうせい殷々いん/\
いなづま槃荼婆山はんだばせんの岩に墜つ我も坐らむその電を
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
青玉せいぎよくいなづまたき
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いなづまを閃めかす
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
がたおそろしさはいなづまごとこゝろうちひらめわたつて、二十有餘年いうよねんあひだ奈何どうして自分じぶんこれらざりしか、らんとはざりしか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
黒雲くろくもいて、んでき、いなづまのやうに、てつもんいし唐戸からとにも、さへぎらせず、眞赤まつかむねほのほつゝんで、よわをんなひました。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御眉のあたりにはびく/\といなづまが走つて居りますし、まるで良秀のもの狂ひに御染みなすつたのかと思ふ程、唯ならなかつたのでございます。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼女は、ふと気が付いて、窓から入らうと、いなづまのやうに、ヴェランダへ走つて出た。が、ヴェランダに面した窓には、丈夫な鎧戸が掩はれてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
不意に打出した胸太鼓、若き生命の轟きはいなづまの如く全身の血に波動を送る。震ふ指先で引き出したのは一枚の半紙、字が大きいので、文句は無論極めて短かい。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それもまるきりいなづまのやうな計算だ。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
するど山颪やまおろしると、舞下まひさがくもまじつて、たゞよごとすみれかほり𤏋ぱつとしたが、ぬぐつて、つゝとえると、いなづまくうつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時として、いなづまのほとばしるごと
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「やあ、やあ、かしが、」とつぶやきざまともを左へぎ開くと、二条ふたすじ糸を引いてななめに描かれたのはいなづますそに似たるあやである。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いし其處そこたれましたら、どんなでせう。いなづまでも投附なげつけられるやうでせう。……わたし此處こゝ兵隊へいたいさんの行列ぎやうれつて、背後うしろからまゐるのだつて可厭いやことでございます——かへりますわ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はしらのやうにつたとおもふと、ちやうどおほきさにえました、つめいなづまのやうなてのひらひらいて、をんなたちのかみうへ仙人せんにんあし釣上つりあげた、とますと、天井てんじやうが、ぱつと飛散とびちつて、あとはたゞ黒雲くろくもなか
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)