“隅々:すみずみ” の例文
“隅々:すみずみ”を含む作品の著者(上位)作品数
柳田国男4
堀辰雄4
吉川英治3
ロマン・ロラン3
国枝史郎3
“隅々:すみずみ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 音楽 > 音楽史 各国の音楽20.0%
文学 > フランス文学 > 小説 物語11.5%
社会科学 > 風俗習慣・民俗学・民族学 > 風俗史・民俗誌・民族誌8.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
どんな微細な症状もここではくまなく照らし出されるのだが、そのかわり細胞の隅々すみずみまで完膚なきまで治療されてゆく。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そしてなんの気もなく室の中を隅々すみずみまで見渡すと、戸棚とだなのそばの角のところに、ある物を見つけてはっとした。
初めて文字というものの存在を知った人々が、新たなる符号を通して異国の民の心の、隅々すみずみまでを窺うは容易のわざでない。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
空気のいささかな動揺にも、対比、均斉きんせい、調和、平衡等の美的方則を破らないよう、注意が隅々すみずみまで行き渡っていた。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
私は毎日のように、そのどんな隅々すみずみまでもよく知っているはずだった村のさまざまな方へ散歩をしに行った。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
水蒸気を適当に、かつ結晶の隅々すみずみまで行き渡らすには自然対流を用いるのが一番良いことは考えて見れば何でもないことであった。
雪を作る話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
喧嘩だという声が御長屋の隅々すみずみまですぐ鳴り渡った。藩邸なので、表役人や門側の番士なども駈けつけて来る。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それにちがいない。さあ、皆をよんで、そこらの隅々すみずみをさがしてみろ。きっとその悪者がみつかるだろう」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その夢想は、彼の魂のあらゆる隅々すみずみから、彼の進路のあらゆる石ころから、泉のようにほとばしり出ていた。
十歩に足らぬ庭先の小園ながら、小径こみちには秋草が生え茂り、まがきに近く隅々すみずみには、白い蓼の花がわびしく咲いてる。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
山の上の春の空気はなごやかに静かに部屋に満ちて、堂母ドーモから二人が持って帰った月桂樹と花束の香を隅々すみずみまでめていた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
だだっ広い家の真中に掛かる燈火ともしびの光の薄らぐ隅々すみずみには壁虫が死に絶えるような低い声で啼く。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
ルピック夫人は、敷布を引きずり出す。部屋の隅々すみずみいで廻る。見つけるのに造作ぞうさはない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
宿禰は憂慮に悩んだ顔をして、自ら美しい乙女を捜し出さんがため、奴国の宮の隅々すみずみを廻り始めた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
なるほど、小屋の隅々すみずみから、母親たちのき声が交錯こうさくし、授乳の時刻を告げている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
敷居に立って豆洋燈を高くかかげて真闇の隅々すみずみじっと見ていたが、かまどの横にかくれて黒い風呂敷包が半分出ているのに目が着いた。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
皆々総立ちになり、行燈を持ち廻って部屋の隅々すみずみまで捜したが、小判はどこにも落ちていない。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
冬中とざされてあったすすけた部屋の隅々すみずみまで、東風こちが吹流れて、町に陽炎かげろうの立つような日が、幾日いくかとなく続いた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しかしそれはまだ有機的な全体として、自分のうけた感動を隅々すみずみまで充たすことはできない。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
龕灯がんどうの光は益々白く、部屋の隅々すみずみ隈々くまぐままで、昼のように明るかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
床に掛けた軸は隅々すみずみも既に虫喰むしばんで、床花瓶とこばないけに投入れた二本三本ふたもとみもと蝦夷菊えぞぎくは、うら枯れて枯葉がち。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一旦名前が消えればその結末を問うこともできぬが、しかも彼らでなければ運べなかった歌や物語が、永い記念となって全国の隅々すみずみのこっている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「灯を、消し残すな。——屋敷うち、隅々すみずみ、消し忘れた灯はないか、よく見て、外へ出よ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あくあしたの食後、貫一はづこの狭き畑下戸はたおり隅々すみずみまで一遍ひとわたり見周みめぐりて、ぼその状況を知るとともに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「来たぞ」といって、清二は正三の眼の前に一枚の紙片を差出した。点呼令状であった。正三はじっとその紙に眼をおとし、印刷の隅々すみずみまで読みかえした。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
文麻呂 衛門、……それはきっと僕の心の隅々すみずみまですっかり晴れ渡った証拠なのだよ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
『日本百科辞典』巻七、追儺ついなの条にも明示された通り、当夜方相は戈で盾をたたき隅々すみずみより疫鬼を駈り出し、さて十二獣を従えて鬼輩を逐い出すのだ。
そして時間つぶしに、それを隅々すみずみまでまた読み返してると、ある地名にはっとした。
城の隅々すみずみはもちろんのこと、近くの野原や街に至るまで、家来けらい達が四方八方に手分けして、王子を探し廻りましたが、どうしても見つかりませんでした。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ベートーヴェンの音楽は美しく強大ではあるが、世界の隅々すみずみには、いつの世にも、少なからざる「ベートーヴェン嫌い」のあることを無視するわけにはいかない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
しかしそれが活きて流れておれば、いつの間にか適当な自然淘汰が行われて、必要な知識の集積が、実験室の記憶となって、その室の隅々すみずみまで浸みて残るのである。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ところが、事実はもう立派な若者だし、ものいえば、戦国の策士、三国の謀士なども、三舎さんしゃを避けるばかり、ことばの隅々すみずみまで、智慧がゆき届いている。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
落ちぶれたと言っても、さすがに、きちんとした二部屋のアパートにいたが、いつも隅々すみずみまで掃除そうじが行きとどき、殊にも台所の器具は清潔であった。
メリイクリスマス (新字新仮名) / 太宰治(著)
で、よくよく座敷の中をしらべてみると、その座敷の隅々すみずみ四隅よすみところに、素麪そうめんとお茶が少しずつ、こぼしたように置いてあった。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
私は近年島の流人るにんの生活というものを考えてみているが、俳諧の方ではただ芭蕉翁のみが、二百何十年も以前に早くもこの問題の隠れたる隅々すみずみを知っていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三人のお医者がかわがわる、僕たちのからだの隅々すみずみまで調べた。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
毎日のようにして、隅々すみずみまで案内を知っている家である。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
既に薄暮はくぼのこととて庭の隅々すみずみ篝火かがりびが燃されている。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「実は僕はこんな事を探し歩いている男なんですよ。この世の中の隅々すみずみから、何か秘密な出来事、奇怪な事件を見つけ出しては、それを解いて行くのが僕の道楽なんです」
幽霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
楽劇「ジークフリート」から主題を採り、ドイツの古い子守唄こもりうたが織り込んであり、ワグナーにしてはこの上もなく美しい曲で、隅々すみずみまでも愛情が行きわたっている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「本叩き」というのは、これも同じく八畳の床の間なしの座敷を暗がりにして、二人がおのおの手に一冊ずつ本を持って向合むかいあいの隅々すみずみから一人ずつ出て来て
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、御叩頭おじぎをして、二人の前へ、茶を置くと、しとやかに出て行った。茶室好みの小部屋へは、もう夜が、隅々すみずみへ入っていて、沁々しみじみと冷たさがんだ。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
月光が明るくて、狭い家は奥の隅々すみずみまであらわに見えた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
Kは、レーニがこの部屋に隠れていまいかと思い、商人に隅々すみずみまで捜させたが、部屋はからっぽだった。裁判官の絵の前でKは、商人の後ろからズボンつりをつかんで押しとどめた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
ふすまだの、蒲団ふとんだの、ぜんだの、枕だのが、あの、所狭ところせまきまでといふ風であつたのが、不残のこらずずツと引込んで、座敷の隅々すみずみ片着かたづいて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兵営へいえい隅々すみずみまでこのビラをらせ!
私は、去年からそっくりそのままの、綺麗きれいな、小ぢんまりした村を、それからその村のどの隅々すみずみにも一ぱいに充満している、私たちの去年の夏遊びの思い出を、再び見いだした。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
おんなならではのあけぬ、その大江戸おおえど隅々すみずみまで、子供こどもうた毬唄まりうたといえば、近頃ちかごろ「おせんの茶屋ちゃや」にきまっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
長い春の夜もやがて明けて華やかな朝陽あさひが谿谷の国の隅々すみずみ隈々くまぐまにまで射し入って夜鳥のしめやかな啼き声に代わって暁の鳥の勇ましい声が空と地上にち満ちた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
婚礼の日は、朝早く実も起きて庭の隅々すみずみまで掃除した。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
で、外へ出るたんび、公園だの、貸自動車屋の車庫だの、しまいには、こわれた自動車たちが、雨や風に吹きさらしになっている、きたない裏町の隅々すみずみまでもさがしまわりました。
やんちゃオートバイ (新字新仮名) / 木内高音(著)
この連中にかかったら、どんなに隠しておきたいことでも、遠慮会釈えしゃくなくあかるみへひき出され、なん倍かに引きのばされ、拡声機にかけてホテルの隅々すみずみにまで吹聴されてしまう。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
寺男は両手を深くその中に差入れたり、両足の爪先つまさきで穴の隅々すみずみを探ったりして、小さな髑髏どくろを三つと、離れ離れの骨と、腐った棺桶かんおけ破片こわれとを掘出した。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「黄金の甲冑を取り戻すまでは俺達はここへは帰って来まい」——「黄金の甲冑を探しに行こう。日本の国の隅々すみずみ隈々くまぐまを、幾年かかろうとかまわない。探して探して探して廻ろう」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
現代社会組織はその隅々すみずみまで発達している。
隅々すみずみを調べてみて当惑の色はいよいよ深く、
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……そのうちにどうしてだか突然、私には、この食堂の隅々すみずみにまで漂っていそうな、陰惨というほどのものではないけれど、何かしら重苦しい、よどんだ空気が呼吸苦いきぐるしく覚えられだした。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
逸早いちはやく帝都の諸新聞紙はこの発表をデカデカの活字で報道したものだから、知るとらざるとを問わず、どこからどこの隅々すみずみまで、一大センセイションが颶風ぐふうの如くきあがった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女の言うことなすこと、彼女の身ぶり物ごしのはしはしにも、微妙びみょうな、ふわふわした魅力がただよって、その隅々すみずみにまで、他人には真似まねのできぬ、ぴちぴちした力があふれていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
国の隅々すみずみには成長している。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「お雪、房ちゃんの玩具おもちゃは一緒に入れて遣ろうじゃないか」と三吉が言えば、「そうです、有るとかえって思出して不可いけない」と正太も言って、まりだの巾着きんちゃくだのを棺の隅々すみずみへ入れた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある日、それは甚太郎が、纐纈城へ入り込んでから、約十日ほど経った日の、大変輝かしい午後のことであったが、広い広い纐纈城の隅々すみずみ隈々くまぐまにまで鳴り渡るような鋭い女の叫び声が、大廊下の外れから聞こえて来た。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それでもさすがに春は植込みの花の木が思いがけない庭の隅々すみずみにも咲いたけれど、やがて五月雨さみだれのころにでもなろうものなら絶え間なく降る雨はしとしと苔に沁みて一日や二日からりと晴れてもかわくことではなく
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
とくに、室の隅々すみずみまで方々に、将校やテナー歌手や楽長や友だちなどの写真がごっちゃにかかっていた——捧呈ほうていの文句がついていて、ほとんどどれにも、詩が、少なくともドイツで詩と称せられてる句が、書き入れてあった。
だから君は駄目だめだよ。世の中の隅々すみずみを知らないのだよ。そんなクラブなんかおちゃさ。この東京には、まだまだもっとひどいものだってあるよ。世の中というものは、君達君子くんしが考えている程単純ではないのさ。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
——そんなに足場の悪い、貧弱な村も、その地震の直後は、避難民たちで一ぱいになり、そのひっそりした隅々すみずみまで引っくり返されたように見えたが、二週間たち、三週間たちしているうちに、それらの人々も、或るものは焼跡へ帰って行ったり、又
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
昔物の長持は堅い板の隅々すみずみ鉄板てついたをうちつけた、いやという程巖乗がんじょう代物しろものだし、金具も同様に堅牢けんろうに出来ているのだから、病身の格太郎には、とて打破うちやぶることなど出来そうもなかった。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もちろんある大財閥の血統の一人のこれは隠宅なので、構えが宏壮こうそうという種類のものではなく、隅々すみずみまで数寄すきを凝らしたお茶趣味のものだったが、でっぷり肥った婦人の三年にわたった建築の苦心談をくだけでも、容易なものではなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
はほのかにまたたいて、中央の室との仕切りの所に立てた屏風びょうぶの上とか、室の中の隅々すみずみとか、暗いところの見えるここへ、後ろからひしひしと足音をさせて何かが寄って来る気がしてならない、惟光が早く来てくれればよいとばかり源氏は思った。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大和の三輪みわ緒環おだまきの糸、それから遠く運ばれたらしい豊後の大神おおみわ氏の花の本の少女の話は、土地とわずかな固有名詞とをかえて、今でも全国の隅々すみずみまで行われているが終始一貫した発見の糸口は、衣裳いしょうの端に刺した一本の針であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「なァにいいやな。笠森かさもりのおせんは、江戸えどばん縹緻佳きりょうよしだ。おいらがまずなんぞにかないでも、きゃく御府内ごふない隅々すみずみから、ありのようにってくるわな。——いいたくなけりゃ、かずにいようよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
うしろ隅々すみずみについている瓦斯ガス裸火はだかびの光は一ぱいにつまっている見物人の頭にさえぎられて非常に暗く、狭苦しいので、猿のように人のつかまっている前側の鉄棒から、向うに見える劇場の内部は天井ばかりがいかにも広々と見え、舞台は色づき濁った空気のためにかえって小さくはなはだ遠く見えた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私の部屋のかぎをつくらせて、互いに貸し合っているんですよ。いやわずらわしいったら、人様にはほとんど想像もつきますまい。たとえば、私が描くことになっているご婦人と帰ってきて、鍵で戸をあけると、筆でくちびるを真っ赤に塗った佝僂の子がそこの机のところに立ち、その子がおりをしなきゃならない小さな妹たちはあばれまわって、部屋の隅々すみずみまでよごしているというような有様なんです。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)