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隅々
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すみずみ
ふりがな文庫
“
隅々
(
すみずみ
)” の例文
不残
(
のこらず
)
ずツと引込んで、座敷の
隅々
(
すみずみ
)
へ
片着
(
かたづ
)
いて、右も左も見通しに、
開放
(
あけはな
)
しの野原も急に広くなつたやうに思はれたと言ひます。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
こうして見ると旧劇と云うものはずいぶん田舎の
隅々
(
すみずみ
)
にまでも行きわたって、深い根底を据えていることが察せられる。———
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
で、よくよく座敷の中を
検
(
しら
)
べてみると、その座敷の
隅々
(
すみずみ
)
、
四隅
(
よすみ
)
の
処
(
ところ
)
に、
素麪
(
そうめん
)
とお茶が少しずつ、
雫
(
こぼ
)
したように置いてあった。
□本居士
(新字新仮名)
/
本田親二
(著)
山の上の春の空気はなごやかに静かに部屋に満ちて、
堂母
(
ドーモ
)
から二人が持って帰った月桂樹と花束の香を
隅々
(
すみずみ
)
まで
籠
(
こ
)
めていた。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と、
御叩頭
(
おじぎ
)
をして、二人の前へ、茶を置くと、
淑
(
しとや
)
かに出て行った。茶室好みの小部屋へは、もう夜が、
隅々
(
すみずみ
)
へ入っていて、
沁々
(
しみじみ
)
と冷たさが
沁
(
し
)
んだ。
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
▼ もっと見る
だから君は
駄目
(
だめ
)
だよ。世の中の
隅々
(
すみずみ
)
を知らないのだよ。そんなクラブなんかお
茶
(
ちゃ
)
の
子
(
こ
)
さ。この東京には、まだまだもっとひどいものだってあるよ。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
玄関をはいると古びた家の匂いがプンと鼻を
衝
(
つ
)
く。だだっ広い家の真中に掛かる
燈火
(
ともしび
)
の光の薄らぐ
隅々
(
すみずみ
)
には壁虫が死に絶えるような低い声で啼く。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
一旦名前が消えればその結末を問うこともできぬが、しかも彼らでなければ運べなかった歌や物語が、永い記念となって全国の
隅々
(
すみずみ
)
に
遺
(
のこ
)
っている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
空気のいささかな動揺にも、対比、
均斉
(
きんせい
)
、調和、平衡等の美的方則を破らないよう、注意が
隅々
(
すみずみ
)
まで行き渡っていた。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その夢想は、彼の魂のあらゆる
隅々
(
すみずみ
)
から、彼の進路のあらゆる石ころから、泉のようにほとばしり出ていた。彼は幻覚者のような状態に生きていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
女
(
おんな
)
ならでは
夜
(
よ
)
のあけぬ、その
大江戸
(
おおえど
)
の
隅々
(
すみずみ
)
まで、
子供
(
こども
)
が
唄
(
うた
)
う
毬唄
(
まりうた
)
といえば、
近頃
(
ちかごろ
)
「おせんの
茶屋
(
ちゃや
)
」にきまっていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
『日本百科辞典』巻七、
追儺
(
ついな
)
の条にも明示された通り、当夜方相は戈で盾をたたき
隅々
(
すみずみ
)
より疫鬼を駈り出し、さて十二獣を従えて鬼輩を逐い出すのだ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
落ちぶれたと言っても、さすがに、きちんとした二部屋のアパートにいたが、いつも
隅々
(
すみずみ
)
まで
拭
(
ふ
)
き
掃除
(
そうじ
)
が行きとどき、殊にも台所の器具は清潔であった。
メリイクリスマス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
城の
隅々
(
すみずみ
)
はもちろんのこと、近くの野原や街に至るまで、
家来
(
けらい
)
達が四方八方に手分けして、王子を探し廻りましたが、どうしても見つかりませんでした。
夢の卵
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
我々青年を
囲繞
(
いぎょう
)
する空気は、今やもうすこしも流動しなくなった。強権の勢力は
普
(
あまね
)
く国内に行わたっている。現代社会組織はその
隅々
(
すみずみ
)
まで発達している。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
源氏は「
胡角一声霜後夢
(
こかくいっせいそうごのゆめ
)
」と
王昭君
(
おうしょうくん
)
を歌った詩の句が口に上った。月光が明るくて、狭い家は奥の
隅々
(
すみずみ
)
まで
顕
(
あら
)
わに見えた。深夜の空が縁側の上にあった。
源氏物語:12 須磨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ところが、事実はもう立派な若者だし、ものいえば、戦国の策士、三国の謀士なども、
三舎
(
さんしゃ
)
を避けるばかり、ことばの
隅々
(
すみずみ
)
まで、智慧がゆき届いている。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寺男は両手を深くその中に差入れたり、両足の
爪先
(
つまさき
)
で穴の
隅々
(
すみずみ
)
を探ったりして、小さな
髑髏
(
どくろ
)
を三つと、離れ離れの骨と、腐った
棺桶
(
かんおけ
)
の
破片
(
こわれ
)
とを掘出した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
既に
薄暮
(
はくぼ
)
のこととて庭の
隅々
(
すみずみ
)
に
篝火
(
かがりび
)
が燃されている。それを指さしながら子路が、「火を! 火を!」と叫ぶ。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
冬中
閉
(
とざ
)
されてあった
煤
(
すす
)
けた部屋の
隅々
(
すみずみ
)
まで、
東風
(
こち
)
が吹流れて、町に
陽炎
(
かげろう
)
の立つような日が、
幾日
(
いくか
)
となく続いた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ここで私たちはこの仕事が最初から
如何
(
いか
)
に天与の恵みに頼っているかを知ることが出来る。自然の資材がこんなにも
隅々
(
すみずみ
)
まで、その力や美を示すものも少い。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
毎日のように
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
して、
隅々
(
すみずみ
)
まで案内を知っている家である。手槍を構えて台所の口から、つとはいった。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「それにちがいない。さあ、皆をよんで、そこらの
隅々
(
すみずみ
)
をさがしてみろ。きっとその悪者がみつかるだろう」
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
後
(
うしろ
)
の
隅々
(
すみずみ
)
についている
瓦斯
(
ガス
)
の
裸火
(
はだかび
)
の光は一ぱいに
詰
(
つま
)
っている見物人の頭に
遮
(
さえぎ
)
られて非常に暗く、狭苦しいので、猿のように人のつかまっている前側の鉄棒から
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ベートーヴェンの音楽は美しく強大ではあるが、世界の
隅々
(
すみずみ
)
には、いつの世にも、少なからざる「ベートーヴェン嫌い」のあることを無視するわけにはいかない。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
長い春の夜もやがて明けて華やかな
朝陽
(
あさひ
)
が谿谷の国の
隅々
(
すみずみ
)
隈々
(
くまぐま
)
にまで射し入って夜鳥のしめやかな啼き声に代わって暁の鳥の勇ましい声が空と地上に
満
(
み
)
ち満ちた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかしそれが活きて流れておれば、いつの間にか適当な自然淘汰が行われて、必要な知識の集積が、実験室の記憶となって、その室の
隅々
(
すみずみ
)
まで浸みて残るのである。
実験室の記憶
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
床に掛けた軸は
隅々
(
すみずみ
)
も既に
虫喰
(
むしば
)
んで、
床花瓶
(
とこばないけ
)
に投入れた
二本三本
(
ふたもとみもと
)
の
蝦夷菊
(
えぞぎく
)
は、うら枯れて枯葉がち。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
宿禰は憂慮に悩んだ顔をして、自ら美しい乙女を捜し出さんがため、奴国の宮の
隅々
(
すみずみ
)
を廻り始めた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
汝
(
なんじ
)
らの
地
(
ち
)
の
穀物
(
こくもつ
)
を
穫
(
かる
)
ときには
汝等
(
なんじら
)
その
田野
(
たはた
)
の
隅々
(
すみずみ
)
までを
尽
(
ことごと
)
く
穫
(
かる
)
べからず
亦
(
また
)
汝
(
なんじ
)
の
穀物
(
こくもつ
)
の
遺穂
(
おちぼ
)
を
拾
(
ひろ
)
うべからずまた
汝
(
なんじ
)
の
菓樹園
(
くだものばたけ
)
の
菓
(
くだもの
)
を
取尽
(
とりつく
)
すべからずまた
汝
(
なんじ
)
の
菓樹園
(
くだものばたけ
)
に
落
(
おち
)
たる
菓
(
くだもの
)
を
聖家族
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
なるほど、小屋の
隅々
(
すみずみ
)
から、母親たちの
啼
(
な
)
き声が
交錯
(
こうさく
)
し、授乳の時刻を告げている。それが、にんじんの耳には
一律単調
(
いちりつたんちょう
)
であるが、仔羊にとってはどこかに違いがあるのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
しかしそれはまだ有機的な全体として、自分のうけた感動を
隅々
(
すみずみ
)
まで充たすことはできない。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
で、外へ出るたんび、公園だの、貸自動車屋の車庫だの、しまいには、こわれた自動車たちが、雨や風に吹きさらしになっている、
汚
(
きた
)
ない裏町の
隅々
(
すみずみ
)
までも
探
(
さが
)
しまわりました。
やんちゃオートバイ
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
彼女の言うことなすこと、彼女の身ぶり物ごしのはしはしにも、
微妙
(
びみょう
)
な、ふわふわした魅力が
漂
(
ただよ
)
って、その
隅々
(
すみずみ
)
にまで、他人には
真似
(
まね
)
のできぬ、ぴちぴちした力が
溢
(
あふ
)
れていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
私は、去年からそっくりそのままの、
綺麗
(
きれい
)
な、小ぢんまりした村を、それからその村のどの
隅々
(
すみずみ
)
にも一ぱいに充満している、私たちの去年の夏遊びの思い出を、再び見いだした。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
この連中にかかったら、どんなに隠しておきたいことでも、遠慮
会釈
(
えしゃく
)
なくあかるみへひき出され、なん倍かに引きのばされ、拡声機にかけてホテルの
隅々
(
すみずみ
)
にまで吹聴されてしまう。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
明
(
あく
)
る
朝
(
あした
)
の食後、貫一は
先
(
ま
)
づこの狭き
畑下戸
(
はたおり
)
の
隅々
(
すみずみ
)
まで
一遍
(
ひとわたり
)
見周
(
みめぐ
)
りて、
略
(
ほ
)
ぼその状況を知るとともに、清琴楼の
家格
(
いへがら
)
を考へなどして、
磧
(
かはら
)
に出づれば、浅瀬に
架
(
かか
)
れる板橋の
風情
(
ふぜい
)
面白く
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
Kは、レーニがこの部屋に隠れていまいかと思い、商人に
隅々
(
すみずみ
)
まで捜させたが、部屋はからっぽだった。裁判官の絵の前でKは、商人の後ろからズボンつりをつかんで押しとどめた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
文麻呂 衛門、……それはきっと僕の心の
隅々
(
すみずみ
)
まですっかり晴れ渡った証拠なのだよ。……僕がまた新しい僕自身を取戻した証拠なのだよ。……僕はこの日のためにすべてに
耐
(
た
)
えて来た。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
敷居に立って豆洋燈を高くかかげて真闇の
隅々
(
すみずみ
)
を
熟
(
じっ
)
と見ていたが、
竈
(
かまど
)
の横にかくれて黒い風呂敷包が半分出ているのに目が着いた。不審に思い、中を開けて見ると現われたのが一筋の女帯。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこでは、すべての物の象ががっちりとして
懐
(
なつか
)
しく人間の眼に映ってくる。どんな微細な症状もここでは
隈
(
くま
)
なく照らし出されるのだが、そのかわり細胞の
隅々
(
すみずみ
)
まで完膚なきまで治療されてゆく。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
隅々
(
すみずみ
)
を調べてみて当惑の色はいよいよ深く
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
兵営
(
へいえい
)
の
隅々
(
すみずみ
)
までこのビラを
蒔
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らせ!
一九三二・二・二六:―白テロに斃た××聯隊の革命的兵士に―
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
奈良の建物は白木と云っても年代が古く、うす汚れしていて、暗く
陰鬱
(
いんうつ
)
な感じがしたが、ここは壁や柱の
隅々
(
すみずみ
)
までが真新しく、
清々
(
すがすが
)
しかった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
不思議に
斯邦
(
このくに
)
ではあちらからの消息が絶えず、それも現世の果報に結びついて、墓とも寺とも縁のない一種の東方仏教が、国の
隅々
(
すみずみ
)
には成長している。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そして時間つぶしに、それを
隅々
(
すみずみ
)
までまた読み返してると、ある地名にはっとした。どうも覚えがあるようだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
喧嘩だという声が御長屋の
隅々
(
すみずみ
)
まですぐ鳴り渡った。藩邸なので、表役人や門側の番士なども駈けつけて来る。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ヘルンは常に散歩を好み、学校の
帰途
(
きと
)
などには、まだ知らない町の
隅々
(
すみずみ
)
を
徘徊
(
はいかい
)
したが、新しい興味の対象を見出すごとに、必ず妻を連れてそこへ再度案内した。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
広い広い纐纈城の
隅々
(
すみずみ
)
隈々
(
くまぐま
)
にまで鳴り渡るような鋭い女の叫び声が、大廊下の外れから聞こえて来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
楽劇「ジークフリート」から主題を採り、ドイツの古い
子守唄
(
こもりうた
)
が織り込んであり、ワグナーにしてはこの上もなく美しい曲で、
隅々
(
すみずみ
)
までも愛情が行きわたっている。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
隅
常用漢字
中学
部首:⾩
12画
々
3画
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