ともがら)” の例文
が、私はさっきからナナヴァティやシャシカントらのともがらと話はしながらも、眼だけはすこぶる変った人の上に注いでいたのであった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
これをかのピューリタンのともがらが、人種の純潔を保ちつつその高尚なる理想を子孫に伝えたのに比すれば、もとより同日の談ではない。
(待てよ、そうして、自分の為体ていたらくを見、ひいては、源氏のともがらが、どんな士風か、どんな者の寄合か、試みておられるのかもしれない)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
... 企て候ともがらこれあるに於ては、たとへ有司の人たりとも、いささか用捨なく譴責仕りき一統の赤心せきしんに御座候」(朝廷への「浪士組」建白書)。
新撰組 (新字新仮名) / 服部之総(著)
官吏ともあろうものが夷狄いてきともがらを引いて皇帝陛下の謁見を許すごときは、そもそも国体を汚すの罪人だというような言葉を書きつらね
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
又はご当家の御代となって取り潰された加藤、福島の、遺臣のともがら、徳川家を怨んで乗ずべき隙もあれかしと虚を狙っているに相違ござらぬ。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
武具、馬具、金銀財宝まで蔵に満ち、こもるところの兵十万騎、いずれもすぐったる武勇絶倫のともがらなれば、何十万の大軍を以て
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なれど親の代から「ぜんちよ」(異教徒)のともがらであらなんだ事だけは、手くびにかけた青玉あをだまの「こんたつ」(念珠)を見ても、知れたと申す。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
このときねずみにくさは、近頃ちかごろ片腹痛かたはらいたく、苦笑くせうをさせられる、あの流言蜚語りうげんひごとかをたくましうして、女小兒をんなこどもおびやかすともがらにくさとおなじであつた。……
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ならびに是れ自ら詩人たる人にしあれば、いづれも阿堵中あとちゆうの味えも知らざるともがらとは、日を同うして論ずべからざるよしあらむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かのともがらは貧き人に逢ふときは物取らせてをしむことなし。かの輩は債あるときは期をあやまたず額をたがへずして拂ふなり。
銀行も有價證劵もなかつた時代は、打ち續く戰亂と、盜難から免れる爲には、金持長者といはれるともがらはその財産の保護と隱匿に畢生ひつせいの知識を絞つたものです。
この間に華美なる姿して金縁の眼鏡かけたる Blue-Stocking のともがら二人三人淡紅の梅花のもとをゆく。肉色のクリームの如き梅の花は厭ふべし。
春の暗示 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
表面はともあれ、故かつら侯などは正夫人なみにあつかわれたという、その余のともがらにいたってはいうまでもない事であろう。すれば事実は公爵夫人貞子なのである。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そこで世間無知のともがらは、早くもいっさい万事これ金なりと心得、義理も人情も打ち捨てて互いに金をつかみ合うさま、飢えたる獣の腐肉を争うがごときに至る。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
つぐのひ給ふ事初り今是過料金くわれうきんといふなり大にえきある御仁政ごじんせい然るに賢君けんくんの御心をしらず忠臣ちうしんの奉行をしらざるともがら此過料金このくわれうきんの御政事せいじなんしていはく人のつみを金銀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先生の疲労のことなどかまわずに、少しでもたくさんお話を聞き出そう、少しでもたくさん病を癒してもらおうという、身がってな乞食のような根性のともがらであります。
過去封建時代の遺物たる博徒顏役のともがらは已に現代に於ては無用の遊民であらうとは云へ、猶ほ犯罪者搜索の一便宜として、國家行政の機關が其の存在の意義を認めてゐる。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
銀のねこすてた所が西行さいぎょうなりと喜んでむるともがら是もかえって雪のふる日の寒いのに気がつか詮義せんぎならん。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
我々のような平和を喜ぶともがらはこの車に乗っているのがすでに苦痛である。御者はもちろんチャンチャンで、油にほこりの食い込んだ辮髪べんぱつを振り立てながら、時々満洲の声を出す。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてそのまま猟奇りょうきともがら口端くちはに上って、色々な臆説の種になっているばかりである……という事実を、先生は多分、何かの雑誌か、新聞で御覧になった事でしょう。ハハア。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さて当日新婚しんこんありつる家に、神使じんしたるべき人は百姓の内旧家きうか門地のともがら神使をつとむべき家定めあり、その中にて服忌ぶくきはさら也、やもめなるもの、家内に病人あるもの、縁類えんるゐ不祥ふしやうありしもの
あるいは武士大名と言われたものの中にも、このともがらから出たものがないとは言われません。その代りに新たにできた落伍者の、この群に流れ込んだものもむろんたくさんにあります。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
「然る処、氏直天道の正理にそむき、帝都に対して奸謀を企つ。いずくんぞ天罰を蒙らざらんや。古諺に曰く、巧詐は拙誠に如かずと。所詮普天の下勅命に逆ふともがらは、早く誅伐ちゅうばつを加へざるべからず云々」
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
尻軽娘はカインのともがらの中に鎖じ込められ、猶太人ジュウは難問の中にて嘲笑う。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
善人の住む習ひなりし僧院は惡人の巣となり、不徳のともがら身に法衣を纏ふ
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
意氣抛ちてよからむや? ほかの卑怯のともがら
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
われを、いざ、みて立て。烏許をこともがら
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
迷惑のともがら。目を覆うきんを去れ。2320
ママうこともないともがらのため!
凡俗なる狐狸こりともがらを友と
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
「百姓たちはどうしたか。妻子従者のともがらも、一人も見えぬは如何にせしぞ。たとい木石の木偶でくなりと、これが悲しまずにおられようか」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人の医師くすしに任せて置いて、おのれはあちこちの建物へ行き、阿諛あゆともがらと一つになり、乱倫の真似するであろう、そこを狙って、そこを狙って……
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
されば一べいの菓子、一さん珈琲コオヒイに、一円、二円となげうちて、なおも冥加に余るとなし、我も我もと、入交いりかわり、立替る、随喜のともがら数うるにうべからず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
に類想、個想、小天地想の別だに知らで、批評の業に從ふともがらは、かく叱咜しつたせられむも可なるべし。然れども彼三派に優劣なしと見よといはばいかに。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ましてその前身は、「ぜんちよ」のともがらにはゑとりのやうにさげしまるる、天主の御教を奉ずるものぢや。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いや、これにも仔細しさいのあることだろう。例えば、山脇玄内は義賊といったともがらかも知れぬではないか」
藤原仲成なかなりを殺したり、又、左大臣頼長よりながの死骸を掘りおこしたりなどして評判を落した事を覚えておいででしょうが、昔からよく、「死罪を行なえば海内に謀叛のともがら絶えず」
この不信仰のともがらに対しては、さすがのイエス様も何の奇蹟をもなすことができませんでした。
悔悟憤発ふんぱつして国家に尽くす志あるのともがらは寛大の思し召しをもって御採用あらせらるべく、もしまた、この時節になっても大義をわきまえずに、賊徒とはかりごとを通ずるような者は
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「文藝春秋」できかれた「姐御あねごぶり」といふものは、勢ひさうした見方からいつて、およそ、わたしのきらひなものだ。姐御とは、さうしたともがらの細君を敬稱したものかと思ふ。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
公道を宮と鈴鹿の方面にとられてしまって、蜀山しょくさんや一九のともがらをしてすら、ふわふわの関と歌わしめたほどの荒涼たる廃道になっているから、この月夜を彷徨さまよ何人なんぴとといえども
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし現代日本の西洋式偽文明ぎぶんめいが森永の西洋菓子の如く女優のダンスの如く無味拙劣なるものと感じられるともがらに対しては、東京なる都会の興味はいきおい尚古的しょうこてき退歩的たらざるを得ない。
ところが、これらの長吏のともがらは、多くは自分の勢力にまかせて、その縄張り内にできた死牛馬を独占して、皮革その他の利益を壟断ろうだんし、他の落伍者仲間には触らせないようにしました。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
と上人が下したまふ鶴の一声の御言葉に群雀のともがら鳴りをとゞめて、振り上げし拳をかくすにところなく、禅僧の問答に有りや有りやと云ひかけしまゝ一喝されて腰のくだけたる如き風情なるもあり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
いづれにしても禁断の邪教、切支丹キリシタン婆天蓮バテレンともがらに相違あるまじと云ひ放つ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
相憎むともがらがうへに思ひいたりしみじみとあり日の照る庭に
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
面澁おもしぶおしひつじともがら
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ともがら
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)