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譬
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たと
ふりがな文庫
“
譬
(
たと
)” の例文
花によって
荘厳
(
しょうごん
)
されているということで、仏陀への道を歩む人、すなわち「
菩薩
(
ぼさつ
)
」の修行をば、美しい花に
譬
(
たと
)
えて、いったものです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
「そう具体的に挙げろと言われちゃ、なんにも言えないがね。きみが偽映鏡の話をするから、ぼくもそれを
譬
(
たと
)
えに使っただけで……」
街頭の偽映鏡
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
既に決定せられたがように、
譬
(
たと
)
えこの頂きに療院が許されたとしても、それは同時に
尽
(
ことごと
)
くの麓の心臓が恐怖を忘れた故ではなかった。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
こうして猿小僧の御蔭で十三人の子供は皆無事で都に着いて、両親や兄弟に会う事が出来たが、皆の者の喜びは
譬
(
たと
)
えようもなかった。
猿小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
萠円山人
(著)
譬
(
たと
)
えば妻の処女時代、又私が不在時、或いは外出時、それらのものに科学以上の絶対の信頼の置けないことは、自明の理であります。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
▼ もっと見る
紫は
鳩
(
はと
)
の胸毛の如くに美しくも
色
(
いろ
)
褪
(
さ
)
めたるもの、また緑は流るる水の緑なるが如く、藍は藍
染
(
ぞ
)
めの布の裏地を見る
心地
(
ここち
)
にも
譬
(
たと
)
へんか。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし胴の
肥
(
ふと
)
り方の
可憐
(
かれん
)
で、貴重品の感じがするところは、
譬
(
たと
)
えば
蕗
(
ふき
)
の
薹
(
とう
)
といったような、草の芽株に属するたちの品かともおもえる。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
天王山を間違えたのかどうだか、天目山などと言う将軍も出て来た。天目山なら話にならない。実にそれは不可解な
譬
(
たと
)
えであった。
苦悩の年鑑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
〔譯〕
閑想
(
かんさう
)
客感
(
きやくかん
)
は、志の立たざるに由る。一志既に立てば、百邪退き
聽
(
き
)
く。之を
清泉
(
せいせん
)
湧出
(
ようしゆつ
)
せば、
旁水
(
ばうすゐ
)
渾入
(
こんにふ
)
することを得ざるに
譬
(
たと
)
ふべし。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
譬
(
たと
)
えていえば、玲瓏たる富士の峰が紫に
透
(
す
)
いて見えるような型の、貴女をといっている。これはだいぶ歌集『踏絵』に魅せられていた。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
床の上に起き上がつたお富、——青白い顏、大きい眼、恐怖と疑惑とになやまされて、
譬
(
たと
)
へやうもなく病的なそして美しい眼です。
銭形平次捕物控:208 青銭と鍵
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
まあね物の
譬
(
たと
)
えがですわ。それとも言葉ではなんといってもむだだから、実行的にわたしの潔白を立ててやろうとでもいうんでしょうか
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その姿が
譬
(
たと
)
えようもなく醜悪で、私にはまるで私自身の歩む姿としか思われず、面を背けたいほどに憎悪が込み上げて来たのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その時は早や、夜がものに
譬
(
たと
)
えると谷の底じゃ、
白痴
(
ばか
)
がだらしのない
寐息
(
ねいき
)
も聞えなくなると、たちまち戸の外にものの
気勢
(
けはい
)
がしてきた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
譬
(
たと
)
えば天下に乞食を禁ずるの法はもとより公明正大なるものなれども、人々の私において乞食に物を与えんとするの心は咎むべからず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
落し娘兩人は苦界へ
沈
(
しづ
)
み夫のみ成らで其身まで此世の
縁
(
えに
)
し淺草なる此
中田圃
(
なかたんぼ
)
の露と共に
消
(
きえ
)
て行身の
哀
(
あは
)
れさは
譬
(
たと
)
ふるものぞなかりける
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
瑠璃子
(
るりこ
)
夫人を、あの太陽に向って、豪然と咲き誇っている
向日葵
(
ひまわり
)
に
譬
(
たと
)
えたならば、それとは全く反対に、鉢の中の尺寸の地の上に
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そう気づいたおどろきは
譬
(
たと
)
えようもなかった。かれはわれを忘れて窪地をとびだし、「斬り込め」と絶叫しながら敵塁へ迫った。
石ころ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お前は、
譬
(
たと
)
えどんなことがあろうとも、兄としての私が、どこまでもお前を愛し憐れんでいるのだということを、よく知っていて欲しい。
偽悪病患者
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
暗夜の海にも
譬
(
たと
)
へようず
煩悩心
(
ぼんなうしん
)
の空に一波をあげて、
未
(
いまだ
)
出ぬ月の光を、
水沫
(
みなわ
)
の中に捕へてこそ、生きて甲斐ある命とも申さうず。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
譬
(
たと
)
へば敵の毛羽艶やかに
峨冠
(
がくわん
)
紅に
聳
(
そび
)
えたる鶏の如く、
此方
(
こなた
)
は見苦しき羽抜鳥の肩そぼろに胸
露
(
あら
)
はに貧しげなるが如くであつたが
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
すべて
獲
(
う
)
べからず、
譬
(
たと
)
えば沙を圧して油を
覓
(
もと
)
め、水を
鑽
(
き
)
って酥を求むるがごとく、既に得べからずいたずらに自ら労苦すとある。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
薬罐
(
やかん
)
のくらくら煮立っているのが、吉弥のむしゃくしゃしているらしい胸の中をすッかり
譬
(
たと
)
えているように、僕の妻には見えた。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
譬
(
たと
)
ヘバ、読書手習ヲ終リ、遊ビテモヨシト、親ヨリ子供ヘ許シ、公用終リ、役所ヨリ退キテモヨシト、上役ヨリ支配向ヘ許ス等、是ナリ。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
譬
(
たと
)
え木綿たりとも花美高価のものを取扱い致すまじく、相背く者これ有るにおいては
不便
(
ふびん
)
ながら政事には替え難く、
急度
(
きっと
)
申渡す。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
我存在の中心を古手の思想に託して、
夫
(
それ
)
で
自
(
みずか
)
ら高しとしていたのだ。が、私の別天地は
譬
(
たと
)
えば
塗盆
(
ぬりぼん
)
へ
吹懸
(
ふきか
)
けた
息気
(
いき
)
のような物だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
これを草木に
譬
(
たと
)
うれば、
緑
(
みどり
)
の
柳
(
やなぎ
)
、
紅
(
くれない
)
の花と現れる世の変化も思想なる根より起こるものであるから、なにはさておき根の
培養
(
ばいよう
)
は
怠
(
おこた
)
れない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
竹はまた「暮春には春服已に成る」と云った様に
譬
(
たと
)
え様もない
鮮
(
あざ
)
やかな明るい緑の
簑
(
みの
)
をふっさりとかぶって、何れを見ても眼の
喜
(
よろこび
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
大和心
(
やまとごころ
)
にそれを
譬
(
たと
)
えた和歌は子供ですら知っている。画家はまたどんなにそれを画題として好んだであろう。模様にも広く取り容れられた。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
コスモはもう
譬
(
たと
)
えようのない嬉しさであった。たいていの人間は秘密な宝をかくし持っているものである。
吝嗇
(
りんしょく
)
の人間は金をかくしている。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
譬
(
たと
)
えて申しましょうなら、御本宅や御親類は
蜂
(
はち
)
の巣です。其処へ旦那様が石を投げたのですから、奉公人の私まで痛い
噂
(
うわ
)
さに刺されました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
色雪を欺いて、乱れて居れど髪つややかに、紅梅の唇愛らしく、眉細くして、第一眼は玉とも露とも秋の水とも
譬
(
たと
)
えかたなく澄んで美しい。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
しかし間もなく、心臓をギュッと握られたときの
駭
(
おどろ
)
きに
譬
(
たと
)
えたいものが彼を待っていようなどとは、気がつかなかった。ああ、突然の駭き。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いずれにせよ、
彫梁
(
ちょうりょう
)
の美、
華棟
(
かとう
)
の
妍
(
けん
)
、
碧瓦
(
へきが
)
の
燦
(
さん
)
、
金磚
(
きんせん
)
の麗、目も
綾
(
あや
)
なすばかりである。豪奢雄大、この世に
譬
(
たと
)
えるものもない。
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さて
茲
(
こゝ
)
に到りてわが記憶才に勝つ、そはかの十字架の上にクリスト
煌
(
かゞや
)
き給ひしかど我は
適
(
ふさ
)
はしき
譬
(
たと
)
へを得るをえざればなり 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
譬
(
たと
)
へば、
吝嗇者
(
りんしょくもの
)
のやうに
貨
(
たから
)
は
夥
(
おびたゞ
)
しう
有
(
も
)
ってをっても、
正
(
たゞ
)
しう
用
(
もち
)
ふることを
知
(
し
)
らぬ、
姿
(
すがた
)
をも、
戀
(
こひ
)
をも、
分別
(
ふんべつ
)
をも、
其身
(
そのみ
)
の
盛飾
(
かざり
)
となるやうには。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
譬
(
たと
)
えば一家の主人が黙って物を考えて何か浮かない顔をしていたら妻君が心配して
貴郎
(
あなた
)
どうかなさいましたかと尋ねるだろう。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「じゃ何かお考えがあって、特に目をかけていらしたというようなことはございませんか、
譬
(
たと
)
えばあなたとご結婚でもおさせしようとか——」
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
譬
(
たと
)
えて見れば、
誰
(
た
)
れかお前の
処
(
ところ
)
へ来て云うのだな。あなたは千九百七十年五月一
日
(
じつ
)
にお亡くなりなさいますよというのだな。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
これは
子規
(
しき
)
が、
説明
(
せつめい
)
のわかり
易
(
やす
)
いように
作
(
つく
)
つて
見
(
み
)
たゞけで、
固
(
もと
)
より
譬
(
たと
)
へにすぎません。
子規
(
しき
)
のは
三十一字
(
さんじゆういちじ
)
のたゞの
文章
(
ぶんしよう
)
で、
歌
(
うた
)
ではありません。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
我らがこの句を
咏
(
えい
)
じて感動するのは、その景色に感動するばかりでなく、芭蕉の心に感動するのである。
譬
(
たと
)
えてみれば
此処
(
ここ
)
に一本の木がある。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
譬
(
たと
)
へば見も知らぬゆひなづけの夫に幼少の時死に別れたればとて、それが為に鼻を
殺
(
そ
)
ぎ耳を切りて
弐心
(
ふたごころ
)
なきを示せしとか。
こわれ指環
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
たるむとは一句の聞え
自
(
おのずか
)
ら
緩
(
ゆる
)
みてしまらぬ心地するをいふ。
譬
(
たと
)
へば琴の糸のしまりをるとしまりをらぬとは
素人
(
しろうと
)
が聞きても自ら差違あるが如し。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
太閤殿下の御恩を蒙り給うことは海山にも
譬
(
たと
)
え
難
(
がと
)
う存じますけれども、先年若君が御誕生になりましてからは、我等のひがみかは存じませぬが
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
無縁の墓は幾らも有るから、
能
(
よ
)
く掃除をして水を上げ、香花を手向けるのはよい功徳になると仏の教えにもある、昔から
譬
(
たと
)
えにも、千本の石塔を
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
棒ほど願って針ほど叶う、という
譬
(
たと
)
えもありますから、なるべく古く逆行して、調子の高きに就くが賢明だと思います。
習書要訣:――美の認識について――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
そして持前の根強い力で一人ぼつちの寂しい道を
鑿
(
き
)
り
拓
(
ひら
)
いて
往
(
ゆ
)
かうとはしたが、女の身にとつて掛替のない愛人の死は
譬
(
たと
)
へがたない重荷であつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
木に竹をつぐと世の
譬
(
たと
)
へにも申すのは、ほんにこの事でござります。どなたか書く人を大阪からお呼びなされては……。
近松半二の死
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「では、一度お
伴
(
とも
)
を致しましょう、ナニ、一度は見てお置きにならなければ、出世ができないという
譬
(
たと
)
えがございます」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
黒がねの
額
(
ぬか
)
はありとも、帰りてエリスに何とかいはん。「ホテル」を出でしときの我心の錯乱は、
譬
(
たと
)
へんに物なかりき。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
譬
漢検1級
部首:⾔
20画
“譬”を含む語句
譬喩
譬話
譬噺
譬喩的
譬喩品
彼譬諭
法句譬喩経
譬喩歌
譬喩経
譬喩談
譬如北辰
譬諭
譬諭経
雑譬喩