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覿面
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てきめん
ふりがな文庫
“
覿面
(
てきめん
)” の例文
この場所ぎめの際の一喜一憂する表情は見ていて面白かった。くじ運のいいとわるいでは、その夜の商いに
覿面
(
てきめん
)
にひびくわけである。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「悪い方でもなかろうと思うけれど、一切秘密だから他の相場が分らない。兎に角
覿面
(
てきめん
)
だ。勉強すると上る。君は屹度上っているよ」
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
蛮僧の治療の効は、
覿面
(
てきめん
)
に現れた。劉大成は、その日から、ぱつたり酒が飲めなくなつたのである。今は、匂を嗅ぐのも、嫌だと云ふ。
酒虫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
だが、その
挑
(
いど
)
むやうな強い眼の色と全身に滲み出た一種圧迫的な怒気とはその表面の叮重さを明かに裏切つてゐた。効果は
覿面
(
てきめん
)
だつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
「よろしい、どっちが勝つかまあ見ていろ。小林に
啓発
(
けいはつ
)
されるよりも、事実その物に
戒飭
(
かいしょく
)
される方が、
遥
(
はる
)
かに
覿面
(
てきめん
)
で切実でいいだろう」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
郷里
(
くに
)
を出るのに、
夷人
(
いじん
)
の船などに乗せられて、よいことのあろう
筈
(
はず
)
はない、
覿面
(
てきめん
)
でしたのう、船は霧に包まれて坐礁しかけたり
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「天に口なし、鼻を以て云わしむる」という事を
覿面
(
てきめん
)
に証拠立てるものであるという事が、もし本当に人類全体にわかったらどうでしょう。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は自分の罪が、ヒシ/\と胸に
徹
(
こた
)
へて来るのを感じた。自分の野卑な、狡猾な行為が、子の上に
覿面
(
てきめん
)
に報いて来たことが、恐ろしかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
况
(
いは
)
んや
若
(
も
)
しも
歐米流
(
おうべいりう
)
に
姓名
(
せいめい
)
を
轉倒
(
てんたふ
)
するときは、こゝに
覿面
(
てきめん
)
に
起
(
おこ
)
る
難問
(
なんもん
)
がある。それは
過去
(
くわこ
)
の
歴史的人物
(
れきしてきじんぶつ
)
を
呼
(
よ
)
ぶ
時
(
とき
)
に
如何
(
いか
)
にするかといふ
事
(
こと
)
である。
誤まれる姓名の逆列
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
かれが痛感したにちがいないであろうことは、十年の快楽も、この一夜に
償
(
つぐな
)
いさせられたという
覿面
(
てきめん
)
な
報
(
むく
)
いであったろう。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は歯を
喰
(
く
)
ひしばつて
口惜
(
くや
)
しがつた。が、やつぱりどうすることも出来なかつた。
覿面
(
てきめん
)
なもので、林檎林はその後、日に増し生気を失つて行つた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
われは
覿面
(
てきめん
)
に死の天使を見たり。その翼は黒き灰と流るゝ
巖
(
いはほ
)
とにして、一たびこれを開張するときは、幾多の市村はこれがために埋めらるゝなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
この言葉は
覿面
(
てきめん
)
だつた。女優はそれを聞くと、胸に抱へた花束をそつくりそのまま買ひ取られでもしたやうに、顔中を明るくして満足さうに笑つた。
茶話:10 昭和三(一九二八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
立山サラサラ越えの黒百合の伝説は、昔物語として一笑にしていたが、黒百合の怨霊、其の山荒れ、今
覿面
(
てきめん
)
に、我らの頭上に降りかかって来たのだ。
登山は冒険なり
(新字新仮名)
/
河東碧梧桐
(著)
これはギリシア人などが極力驕慢を警戒したのと同じ考えで、ギリシアにおいても神々の罰が
覿面
(
てきめん
)
に下ったのである。
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
男子が自ら女子に欺かるるので、
而
(
し
)
かもそのここに至るは因果は廻る小車の如く、前に自ら女子を欺きたるその応報の
覿面
(
てきめん
)
に示現したのに外ならぬ。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
所詮
覿面
(
てきめん
)
に日常生活に
打
(
ぶ
)
っ附かって
行
(
い
)
かなくては行けない。この打っ附かって行く心持が
Dionysos
(
ジオニソス
)
的だ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その後カションはいかなる
病気
(
びょうき
)
に
罹
(
かか
)
りけん、
盲目
(
もうもく
)
となりたりしを見てこれ等の内情を知れる人々は、
因果
(
いんが
)
覿面
(
てきめん
)
、
好
(
よ
)
き
気味
(
きみ
)
なりと
竊
(
ひそか
)
に
語
(
かた
)
り合いしという。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
黒船騒ぎ以来、諸大名の往来は激しく、
伊那
(
いな
)
あたりから入り込んで来る
助郷
(
すけごう
)
の数もおびただしく、その弊害は
覿面
(
てきめん
)
に飲酒
賭博
(
とばく
)
の流行にあらわれて来た。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
かくては如何なる
言
(
ことば
)
をもて夫はこれに答へんとすらん、我はこの
理
(
ことわり
)
の
覿面
(
てきめん
)
当然なるに口を開かんやうも無きにと、心
慌
(
あわ
)
てつつ夫の気色を
密
(
ひそか
)
に
窺
(
うかが
)
ひたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そのなかでも盗賊の多いというのが
覿面
(
てきめん
)
におそろしいので、この頃は
都大路
(
みやこおおじ
)
にも宵から往来が絶えてしまった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ちと人が悪いようなれども一切
只
(
ただ
)
にて拝見したる報いは
覿面
(
てきめん
)
、腹にわかに痛み出して一歩もあゆみ難くなれり。
半日ある記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
皆鶴姫
(
みなづるひめ
)
殿やら京の君様やら、ありとあらゆる女に手を出し、その後もずっと女狂い、怨めしや怨めしや! その天罰が
覿面
(
てきめん
)
にむくい、今は
落人
(
おちゅうど
)
のお身の上
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いや、
罰
(
ばち
)
は
覿面
(
てきめん
)
だ。境内へ
多時
(
しばらく
)
かかっていた、見世物師と
密通
(
くッつ
)
いて、有金を
攫
(
さら
)
って
遁
(
に
)
げたんです。しかも貴女、女房が
孕
(
はら
)
んでいたと云うじゃありませんか。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
馬で峠を越そうなぞと強がった天罰
覿面
(
てきめん
)
、谷へ落ちなかったのが何よりのめっけもの。元気は再び旧に倍す。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
短
(
みじか
)
い
夜
(
よ
)
の
頃
(
ころ
)
でも、
朝
(
あさ
)
の
眠
(
ねむ
)
たさが
覿面
(
てきめん
)
に
自分
(
じぶん
)
を
窘
(
たしな
)
めるにも
拘
(
かゝ
)
はらずうそ/\と
歩
(
ある
)
いて
見
(
み
)
ねば
臭
(
くさ
)
い
古
(
ふる
)
ぼけた
蚊帳
(
かや
)
の
中
(
なか
)
に
諦
(
あきら
)
めて
其
(
その
)
身
(
み
)
を
横
(
よこ
)
たへることが
出來
(
でき
)
ないのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そして百八十人の住民たちで、無事二匹の牛を片づけたそうである。効果は
覿面
(
てきめん
)
で、テスト用の巨大石像は、やすやすと、草原の上を曳いていかれたと書いてある。
牛の丸焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
下司
(
げす
)
な笑いは、お神楽の清吉の
歪
(
ゆが
)
んだ唇から、ガラッ八の開いた口へ、
覿面
(
てきめん
)
に叩きつけられたのです。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
よってようやく取りおろしてやったが、
覿面
(
てきめん
)
なものでその夜はさしもに荒れた鼠がガタとも云わない。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ええ、こんな人間は、死んでしまうのが当り前だわ、天罰だわ、天罰
覿面
(
てきめん
)
だわ、自業自得だわ!」
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
三日の間二尺に余る積雪中を辿り歩いた報いは
覿面
(
てきめん
)
で、今だに
痕
(
きずあと
)
が寒さに痛む程の凍傷を受けた。
冬の山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
超越した特別な世界のもののように考えているのかもしれないが、みたまえ! そんな愚かな考えの者は、
覿面
(
てきめん
)
に世の中から手ひどいしっぺ返しを喰うに極っているから
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
お店は素人故に何もわからないなどと思うと天罰
覿面
(
てきめん
)
、必ずその影響があらわれるものである。
私の小売商道
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
(著)
さア/\/\と
糶詰
(
せりつめ
)
た
後
(
のち
)
は男がそれまでに思召すのをなどと申して、いやらしい振になって騒ぎを起しまするが、女の子が男を
口説
(
くどく
)
秘法は死ぬというが何より
覿面
(
てきめん
)
でげす。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その晩、早くねたわたしは、あくる朝、
覿面
(
てきめん
)
に早く眼がさめた——勝手の知れないまま、しばらく床の中でもじもじしていたものの、辛抱し切れなくなってわたしは起きた。
春深く
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
当行学院御院主、昨秋
来
(
らい
)
関東
御巡錫中
(
ごじゅんしゃくちゅう
)
の故を以て、その留守を預かる
院代
(
いんだい
)
玄長
(
げんちょう
)
と申す者じゃ。邪魔立て致すとは何を暴言申さるるか、霊地の庭先荒さば
仏罰
(
ぶつばつ
)
覿面
(
てきめん
)
に下り申すぞッ
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
天罰
覿面
(
てきめん
)
はここの理窟だ。大慾のなんとか言ふ文句もあるね。いやはや智恵者も顔色なしだ
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
今日まで知られているものでは、おそらく
天正
(
てんしょう
)
の銘記のあるのが一番古いであろうか。少しでも不敬なことをすればそのたたりは
覿面
(
てきめん
)
で激しいという。だから誰も恐れ
敬
(
うやま
)
っている。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
日本人には勿論のこと、いくら西洋人が明るみを好むからと云って、あの暑さには閉口するに違いなかろうが、何より彼より、一遍明りを減らしてみたら
覿面
(
てきめん
)
に諒解するであろう。
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
中には
覿面
(
てきめん
)
その狂いが
酬
(
むく
)
って来て、今さら後悔の
臍
(
ほぞ
)
を噛むようなことが沢山あります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
噂
(
うはさ
)
だけでも、
死刑
(
しけい
)
といふものには、
覿面
(
てきめん
)
の
效力
(
かうりよく
)
があると
思
(
おも
)
つて、
但馬守
(
たじまのかみ
)
は
微笑
(
びせう
)
した。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
アア養母殺しの輪田夏子、死刑終身刑の宣告を受け、首尾よく牢を脱け出だして松谷秀子と生まれ代わり今は又養父殺しの罪に捕わる、業か因果か、無実の罪か
抑
(
そもそ
)
も又
覿面
(
てきめん
)
の天罰か。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
そして男の上へ身を
屈
(
かが
)
めて微笑んだ。男は
溜息
(
ためいき
)
を衝いた。それから何か言おうとした。何か非常な侮辱を
覿面
(
てきめん
)
に与えて遣りたいのである。そうするのが当然だと考えられるのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
地主にとっても利益のことではなく、門閥の大木に根廻しをするようなもので、もしその売上金が紙数ばかり多いこのごろの株券にでも変わっておれば、あまりに
覿面
(
てきめん
)
な結果であった。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
渠の影響が
覿面
(
てきめん
)
に來たのだと嘲るだらうが——早くからたゝき込まれて居た、耶蘇教の神が分らなくなつて、之を棄てゝしまつたし、また自分の愛して居た少女が理想のものでなかつたり
神秘的半獣主義
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
古風作者
(
こふうさくしゃ
)
の
書
(
かき
)
そうな話し、
味噌越
(
みそこし
)
提げて買物あるきせしあのお
辰
(
たつ
)
が雲の
上人
(
うえびと
)
岩沼
(
いわぬま
)
子爵
(
ししゃく
)
様
(
さま
)
の
愛娘
(
まなむすめ
)
と
聞
(
きい
)
て吉兵衛仰天し、
扨
(
さて
)
こそ神も仏も御座る世じゃ、因果
覿面
(
てきめん
)
地ならしのよい所に
蘿蔔
(
だいこ
)
は太りて
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
背に腹は
換
(
か
)
えられず、つい道ならぬ欲に迷いしために、
忽
(
たちま
)
ち
覿面
(
てきめん
)
の
天罰
(
てんばつ
)
受けて、かくも見苦しき有様となり、
御目
(
おんめ
)
にかかりしことの恥かしさよと、
生体
(
しょうたい
)
なきまで泣き沈み、
御恵
(
おんめぐ
)
みに
与
(
あずか
)
りし時は
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
予期したことながら、余りにも
覿面
(
てきめん
)
な効果に、わしは思わず声をかけた。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
女房は
覿面
(
てきめん
)
にかれに向つて、自分の夫を懶惰にする人だと責めました。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
一廉
(
ひとかど
)
労働者の先覚顔して、煽動した因果
覿面
(
てきめん
)
、ちょっとした窓の修繕や半里足らずの人力車を頼んでも、不道理極まる高い賃を要求されて始めて驚き、自ら修繕し、自ら牽き走ろうにも力足らず
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
覿
漢検1級
部首:⾒
22画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“覿”で始まる語句
覿
覿切