即興詩人 (旧字旧仮名) / ハンス・クリスチャン・アンデルセン(著)
この言葉は覿面だつた。女優はそれを聞くと、胸に抱へた花束をそつくりそのまま買ひ取られでもしたやうに、顔中を明るくして満足さうに笑つた。
茶話:10 昭和三(一九二八)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
これはギリシア人などが極力驕慢を警戒したのと同じ考えで、ギリシアにおいても神々の罰が覿面に下ったのである。
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況―― (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について (新字新仮名) / 石河幹明(著)
馬で峠を越そうなぞと強がった天罰覿面、谷へ落ちなかったのが何よりのめっけもの。元気は再び旧に倍す。
本州横断 痛快徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪、井沢衣水(著)
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
よってようやく取りおろしてやったが、覿面なものでその夜はさしもに荒れた鼠がガタとも云わない。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ええ、こんな人間は、死んでしまうのが当り前だわ、天罰だわ、天罰覿面だわ、自業自得だわ!」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
根岸お行の松 因果塚の由来 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その晩、早くねたわたしは、あくる朝、覿面に早く眼がさめた——勝手の知れないまま、しばらく床の中でもじもじしていたものの、辛抱し切れなくなってわたしは起きた。
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
天罰覿面はここの理窟だ。大慾のなんとか言ふ文句もあるね。いやはや智恵者も顔色なしだ
吹雪物語:――夢と知性―― (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
日本人には勿論のこと、いくら西洋人が明るみを好むからと云って、あの暑さには閉口するに違いなかろうが、何より彼より、一遍明りを減らしてみたら覿面に諒解するであろう。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
地主にとっても利益のことではなく、門閥の大木に根廻しをするようなもので、もしその売上金が紙数ばかり多いこのごろの株券にでも変わっておれば、あまりに覿面な結果であった。
渠の影響が覿面に來たのだと嘲るだらうが——早くからたゝき込まれて居た、耶蘇教の神が分らなくなつて、之を棄てゝしまつたし、また自分の愛して居た少女が理想のものでなかつたり
女房は覿面にかれに向つて、自分の夫を懶惰にする人だと責めました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
十二支考:08 鶏に関する伝説 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)