“蕭条:しょうじょう” の例文
“蕭条:しょうじょう”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治14
岡本綺堂4
高浜虚子3
岡本かの子3
佐々木味津三3
“蕭条:しょうじょう”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.1%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.7%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
船番所が近いので、案外に早かった。蕭条しょうじょうたるあしのあいだを、捕手の灯が、いっさんに岸へ廻りはじめている。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木枯しの朝、枝葉を残らず吹き落された漆の木が、蕭条しょうじょうとして自然の中で、ただ独り、骨のように立っているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
訪う人も来る人もなく、ただ一基……折しも雲にかくれて晩春の気蕭条しょうじょう! ここに数奇すうきの運命の人眠る。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
雨の日とて、霧の日とて、じっと一万三千余人の心が、ひとつかたまりになったまま、蕭条しょうじょうたる中に、煙っていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都の駅に着いた時、もう降り始めていた小雨が、暗くなると本降りになって夜を通して蕭条しょうじょうと降りそそぐ。
雨の宿 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
戸棚の声がとぎれると、雨の音が、耳につく。雨は、日暮れに近づくほど、いとど蕭条しょうじょうのわびしさを加えていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されど今はこれ等の精も森の奥の何処かの洞穴に隠れて、蕭条しょうじょうたる原は空しく冷い風が吹いている許りである。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
あたりの蕭条しょうじょうとほのぐらい伽藍がらんのこと、なにかそれはあやしの物と見えなくもない対照だった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて蕭条しょうじょうたる曠野の中の野陣へ帰ってきて、関羽に、ありのままを告げると、関羽は長嘆久しゅうして、
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冬至近くに成れば、雲ともつかぬ水蒸気の群が細線の集合の如く寒い空に懸り、その蕭条しょうじょうとした趣は日没などに殊に私の心を引く。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
天地皆暗ク満目冥冥めいめいタラバ眼ナキト別ツベキナク、万物ことごとく静ニシテ千里蕭条しょうじょうタラバ耳ナキト別ツベキナシ。
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
長い木橋の、灰ばんでよこたわっている姿は、枯れた川原の草の上に蕭条しょうじょうとしてかかっていた。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
全軍の将士は黙りこくったまま、夜来の雨とこの道をおかして、蕭条しょうじょうといま坂本までたどりついた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついそこの、つい今通ってきた仲見世の賑わいが夢のような感じのする、そこは蕭条しょうじょうとした場所だった。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
丘も馬もしばしを眠っている、明日あしたはどこに陣をすることか、水かさの増した大河を蕭条しょうじょうと打って、雨はいよいよ暗い。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔も相当に繁昌したのではあろうが、所詮しょせん蕭条しょうじょうたる山上の孤駅、その繁昌は今日の十分の一にも及ばなかったに相違ない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蕭条しょうじょうたる秋風の音は、それみずから芭蕉の心霊の声であり、よるべもなく救いもない、虚無の寂しさを引き裂くところの叫である。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ながやかな黒髪とその姿を、匂いの糸がゆるく巻いてくるにつれ、蕭条しょうじょうと、遠い夜雨やうの声も几帳とばりの内に沁み入ってくる。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
満眸まんぼうの秋色蕭条しょうじょうとして却々なかなか春のきおいに似るべくも無いが、シカシさびた眺望ながめで、また一種の趣味が有る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
すでに人間のあぶらぎった殻から脱けて、蕭条しょうじょうの野へかかっている晩鐘の人生に、お座なりな慰めはいえるものではないからである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宣城せんじょうは兵乱の後、人民は四方へ離散して、郊外の所々に蕭条しょうじょうたる草原が多かった。
泗水しすいの流れはまだ凍るほどにも至らないが、草木は枯れつくし、満目蕭条しょうじょうとして、寒烈かんれつ肌身はだみみてくる。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蕭条しょうじょうたる秋風しゅうふうに鎗を立てて微笑ほほえむ鹿之助の顔が眼に泛ぶのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
西行さいぎょうも同じであり、或る充たされない人生の孤独感から、常に蕭条しょうじょうとした山家やまがをさまよい、何物かのイデヤを追い求めた。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
立ちぐされの案山子かかしに烏が群れさわいでいるけしき——蕭条しょうじょうとしてえり寒い。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
蕭条しょうじょうと荒れ果てた灰色の野の中を、真黒い外套と共に、あてもなく彷徨さまよっている中田の顔は、世にもすさみ切った廃人のそれであった。
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
汽車が白河の関を過ぎた頃から天地が何となく蕭条しょうじょうとして、我らは左遷されるのだというような一種の淋しい心持を禁ずることが出来なかった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この句意は、時候が秋になって、蕭条しょうじょうたる秋風の吹くころ、いでや白木で何の装飾もしていない弓に弦を張ってみよう、とこういうのであります。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
二条妙覚寺みょうかくじの大屋根は、初秋七月の長雨に、蕭条しょうじょうと打ちたたかれていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沈黙がつづくと、ふたりのあいだには、粗雑な陣中の仮普請かりぶしんのため、ひさしからあふれ落ちる五月雨の音のみが蕭条しょうじょうと耳につく。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「桑畑であろうと、牡丹畑であろうと、こう雪が降り積って、蕭条しょうじょうととした有様では同じことじゃ。吉野は麿まろたちに風邪かぜを引かせる趣向か」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飯盛おろしに吹き流される雲が、枯草が、蕭条しょうじょうとして彼等の網膜に写し出され、捉える事の出来ない絶望感が全身的にきついて来たのであろう。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
げ功成った一代の英雄や成功者が、老後に幾人のめかけを持っても、おそらくその心境には、常にちない蕭条しょうじょうたるものがあるであろう。
老年と人生 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「このこころつい蕭条しょうじょう」というくだりを繰り返し半蔵に読み聞かせるうちに、熱い涙がその男らしいほおを伝って止め度もなく流れ落ちた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蕭条しょうじょうたる屋敷跡に、思い出したようなチョビ安の唄声が、さびしくひびく。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
有明ありあけの月のうすい光に、蕭条しょうじょうとしたやぶが、かすかにこずえをそよめかせて、凌霄花のうぜんかずらのにおいが、いよいよ濃く、甘く漂っている。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蕭条しょうじょうたる寒村の秋のゆうべ、不幸なる我子の墓前に立って、一代の女将軍が月下に泣いた姿を想いやると、これもまた画くべく歌うべき悲劇であるように思われた。
秋の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
門巷蕭条夜色悲 〔門巷もんこう蕭条しょうじょうとして夜色やしょく悲しく
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蕭条しょうじょうたる寒村の秋のゆうべ、不幸なる我が子の墓前に立って、一代の女将軍が月下に泣いた姿を想いやると、これもまた画くべく歌うべき悲劇であるように思われた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蕭条しょうじょうたる草のいおかどには梅阿弥の標札が掛かっていた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
クリストフは蕭条しょうじょうたる野の中で、国境から数歩の所に立ち止まった。
満目蕭条しょうじょうたる平野に雑草の花が揺れて、雲の往来ゆききが早い。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
秋の末か何かのように、見渡すかぎり、陸や海は、蕭条しょうじょうたる色を帯びていた。が、信一郎は国府津だと知ると、よみがえったように、座席をって立ち上った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
窓々には灯がともり柳の糸が蕭条しょうじょうと冷雨のように垂れ注いでいた。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
蕭条しょうじょうとした秋雨が降ったりんだりしている夕ぐれだった。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「雲茫々、山茫々、蕭条しょうじょうとして秋深く、道また遙かなり……」
盛者必衰は免かれ難い因果とはいいながら、団菊左の諸名優を相手にして、「弁天おてる」や三千歳を演じていた青年美貌の俳優が、こうした蕭条しょうじょうの終りを取ろうとは——。
源之助の一生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
朽ち果てて惜しむべき建物ではないかもしれぬが、しかしこの置き忘れられたような蕭条しょうじょうたる風情ふぜいのゆえに、大和古寺のなかでも異彩を放っていると私は思うのだ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
するとその愛らしき眼、そのはなやかなそで忽然こつぜんと本来の面目を変じて蕭条しょうじょうたる周囲に流れ込んで、境内寂寞けいだいじゃくまくの感を一層深からしめた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
落莫らくばく蕭条しょうじょうの秋となったものが感ぜられました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ふたりは、孝高の顔を見まもった。そのおもてに、はや仄白ほのじろく、水明りがうごいていた。——蕭条しょうじょうとして、そよぐあし、瀬の水音も耳を打ってくる。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蕭条しょうじょうたる冬野の中に、たった一輪石竹の花が咲いている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
剣というものの絶対性が——また修行の道というものの荊棘けいきょくには、かかることも踏み越えてゆかねばならないのかと思うと、余りにも自分の行く手は蕭条しょうじょうとしている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冬になって天地が蕭条しょうじょうたる色彩にみたされる。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
夜見たよりも一段、蕭条しょうじょうたる海であった。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
冷たい秋の雨は、蕭条しょうじょうと夜中までつづいていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだその比の早稲田は、雑木林ぞうきばやしがあり、草原くさはらがあり、竹藪たけやぶがあり、水田があり、畑地はたちがあって、人煙じんえん蕭条しょうじょうとした郊外であった。
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ところで私自身は、他人から見たら蕭条しょうじょうたる落魄らくはく一老爺いちろうや、気の毒にも憐むべき失意不遇の逆境人と映じているだろうが、自分では必ずしもそう観念しては居ない。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
むろん旧暦ですから今の九月ですが、宵々よいよいごとにそろそろと虫が鳴きだして、一年十二カ月を通じ、この月ぐらい人の世が心細く、天地蕭条しょうじょうとして死にたくなる月というものはない。
金気蕭条しょうじょうとしてたちまち至る殺風景。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蕭条しょうじょうと雨の降る夕暮れである。
いのちの初夜 (新字新仮名) / 北条民雄(著)
朝の川波は蕭条しょうじょうたるいろだ。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
初めてあの傅育官の老人に逢って、伯爵邸と殿下の御動静に見張りをつけてから約二カ月半ばかりの後、北の国の夏はつかの間に過ぎて、蕭条しょうじょうたる秋がもうそのあたりまでやってきている頃であった。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
蕭条しょうじょうたる冬木立を眺めて溜息ためいきをつき、夜は早く寝て風が雨戸をゆり動かすのを、もしや家から親御さまのお迎えかなど、らちも無い空頼みしていそいで雨戸をあけると寒月皎々こうこうと中空にかか
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
蕭条しょうじょうたる漁村に相応ふさわしからぬ優雅な音をたてているのだが、コン吉はそれほどまでに深く自然の美観を鑑賞する教養がないためか、いたずらに、臭い、臭いといって顰蹙ひんしゅくし、この島における印象は
雨は朝になっていつのまにか本降りと変わり、まことに天地蕭条しょうじょう、はらりはらりと風のまにまに落ち散る柳葉が、いっそもう悲しくわびしく、ぬれて通る犬までがはかなく鳴いて、おのずから心気もめいるばかりでした。
また春が来ますと、今までは蕭条しょうじょうとして常磐木ときわぎのほかの万木千草はことごとく枯れ果てたかと思われていた中に、その一つの枯木の枝頭にこつとして芬香ふんこうを吐くところの白いものを見出みいだします。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
次に秋雨になりますと、蕭条しょうじょうとして降る秋のさびしさが主になりますからその陰気の感じは十分にありますが、同時にその壁を洩る煙までが何だか陰気臭くなってしまって、現在住まっているという人もやはり妖怪ではないかというような疑いさえ生じます。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
先のななめに減ったつえを振り廻しながら寂光院と大師流だいしりゅうに古い紺青こんじょうで彫りつけた額をながめて門を這入はいると、精舎しょうじゃは格別なもので門内は蕭条しょうじょうとして一塵のあとめぬほど掃除が行き届いている。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その途中、鯖江を除いては城下とてはなく、宿々駅々も、表日本の方に比べて蕭条しょうじょうたるものでありましたけれども、それでも、歴史に多少とも興味を持つ兵馬は、もよりもよりの名所古蹟に相当足をとどめて、もっぱら、北国大名と京都との往来交渉を考えたりなどして歩みました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
軽井沢も冬じゅう人気ひとけのないことは同様だが、それでも、いつも二三人は外人の患者のいるらしいサナトリウムのあたりまで来ると、何となく人気が漂っていて、万物蕭条しょうじょうとした中に暖炉のけむりらしいものの立ち昇っているのなんぞを遠くから見ただけでも、何か心のなぐさまるのを感じた。
木の十字架 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
山おろしに木の葉も峰のくずの葉も争って立てる音の中から、僧の念仏の声だけが聞こえる山荘の内には人げも少なく、蕭条しょうじょうとした庭のかきのすぐ外には鹿しかが出て来たりして、山の田に百姓の鳴らす鳴子なるこの音にも逃げずに、黄になった稲の中でく声にもうれいがあるようであった。
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)