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ふりがな文庫
“
老婆
(
ろうば
)” の例文
やがて一人の
老婆
(
ろうば
)
が群衆のなかからよろよろと出てきて、片手を額にかざし、その下からリップの顔をちょっとのぞいて、叫んだ。
リップ・ヴァン・ウィンクル:ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
この
老婆
(
ろうば
)
は以前は
大塚
(
おおつか
)
の
坂下町辺
(
さかしたまちへん
)
、その前は
根岸
(
ねぎし
)
、または
高輪
(
たかなわ
)
あたりで、度々
私娼媒介
(
ししょうばいかい
)
の
廉
(
かど
)
で検挙せられたこの仲間の
古狸
(
ふるだぬき
)
である。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
マリーナ(ぶよぶよした、動きの少ない
老婆
(
ろうば
)
)が、サモワールの前に
坐
(
すわ
)
って靴下を編んでいる。アーストロフが、そばを歩き回っている。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
翌日日暮れに停車場へ急ぐとちゅうで、自分は
落
(
お
)
ち
稲
(
いね
)
を拾ってる、そぼろなひとりの
老婆
(
ろうば
)
を見かけた。見るとどうも新兵衛の女房らしい。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
討手の者がたまたまそこを通り合わせた村の
老婆
(
ろうば
)
に尋ねると、老婆は、「あの、口から白い息を
吐
(
は
)
いていらっしゃるのが王様だ」
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
子供
(
こども
)
と
老婆
(
ろうば
)
が、
二人
(
ふたり
)
とも
村
(
むら
)
からいなくなったので、
人々
(
ひとびと
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
方々
(
ほうぼう
)
を
探
(
さが
)
しまわりました。けれど、ついに
見当
(
みあ
)
たらずにしまったのです。
泣きんぼうの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
うすぐらい
灯
(
ともしび
)
のそばに、ひとりの男が、
朱
(
あけ
)
にそまった
老婆
(
ろうば
)
の
死骸
(
しがい
)
を抱きしめたまま、よよと、男泣きに泣いているのであった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
シャクは、美しく若い男女の物語や、
吝嗇
(
けち
)
で
嫉妬
(
しっと
)
深い
老婆
(
ろうば
)
の話や、他人には
威張
(
いば
)
っていても老妻にだけは頭の上がらぬ
酋長
(
しゅうちょう
)
の話をするようになった。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼らは窓を開いたかと思うとすぐに、
風邪
(
かぜ
)
にかかりはしないかと恐れてる
老婆
(
ろうば
)
のように、その
鎧戸
(
よろいど
)
を閉めてしまった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そして気味わるく
物凄
(
ものすご
)
い顔をした、雲助のような男たちに
脅
(
おび
)
やかされたり、
黒塚
(
くろづか
)
の
一軒家
(
いっけんや
)
のような家に
泊
(
とま
)
って、
白髪
(
しらが
)
の
恐
(
おそ
)
ろしい
老婆
(
ろうば
)
に
睨
(
にら
)
まれたりした。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼の胸はつねにお兼を
想
(
おも
)
うことで痛み、その
眼
(
め
)
にはお兼の姿、——工場の古びた建物の前で、大勢の女や
老婆
(
ろうば
)
たちと並んで、巧みに貝を剥いている姿が
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もとから取立てるほどのきりやうもなかつたが、それが
白髪
(
しらが
)
だらけになると、ただありきたりの
老婆
(
ろうば
)
だつた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
天皇は、お父上の
忍歯王
(
おしはのみこ
)
のご
遺骨
(
いこつ
)
をおさがし申そうとおぼしめして、いろいろ、ご苦心をなさいました。すると、
近江
(
おうみ
)
から一人の
卑
(
いや
)
しい
老婆
(
ろうば
)
がのぼって来て
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
そのねこは
階下
(
かいか
)
にすむ、ひとり
者
(
もの
)
の
老婆
(
ろうば
)
のかわいがっているねこなんだ。ぼくは
血
(
ち
)
のいろをうすめる
薬
(
くすり
)
やらそのほかの薬やらを、
苦心
(
くしん
)
してそのねこにのませたんだ。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
答えたのはあの快活な娘でなくて、彼等の中に
交
(
まじ
)
っていた、眼鼻も見えないような
老婆
(
ろうば
)
であった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ひとりの
老婆
(
ろうば
)
が小さい
孫娘
(
まごむすめ
)
といっしょにそこに住んでいて、いまこの皇帝宮を支配しています。そしてよそから来る人たちに、ここに
埋
(
う
)
もれている宝を見せているのです。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
居士
(
コジ
)
は、
人命犯
(
じんめいはん
)
には
必
(
かな
)
らず萬已むを得ざる原因ある
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ、
財主
(
ざいしゆ
)
の
老婆
(
ろうば
)
が、
貪慾
(
どんよく
)
を
憤
(
いきど
)
ふるのみの
一事
(
いちじ
)
にして
忽
(
たちま
)
ち
殺意
(
さつい
)
を
生
(
せう
)
ずるは殺人犯の原因としては甚だ淺薄なりと
言
(
い
)
ひ
「罪と罰」の殺人罪
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
わたしたちと一つ屋根の下に住んでいたある貧しい
老婆
(
ろうば
)
の、
臨終
(
りんじゅう
)
に立ち会ったことがあった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
その群れは、道をいっぱいに占領し、溝から溝へ波を打ち、
溢
(
あふ
)
れ出る。
或
(
あ
)
る時はまた、密集して一体となり、ぶよつき、
老婆
(
ろうば
)
のような小刻みな足どりで、地べたを踏みならす。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「ありますよ。ちょいと、乗りかえ。
本所
(
ほんじょ
)
は乗り換えじゃないんですか。」髪を切り下げにした隠居風の
老婆
(
ろうば
)
が
逸早
(
いちはや
)
く叫んだ。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
白髪
(
しらが
)
をさかだてたひとりの
老婆
(
ろうば
)
が
蜘蛛
(
くも
)
のように
岩肌
(
いわはだ
)
に身を
貼
(
は
)
りつけて、プップップッとたえまなく、ふたりの
面
(
おもて
)
へ吹きつけてくる針の息……
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただひとり、真のキリスト教信者らしい
敬虔
(
けいけん
)
な信仰にひたすら身をまかせていたのは、あわれなよぼよぼの
老婆
(
ろうば
)
であった。
寡婦とその子
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
かの
女
(
じょ
)
は、
老婆
(
ろうば
)
が、
自分
(
じぶん
)
を
美
(
うつく
)
しいといったのが、いつまでも
頭
(
あたま
)
にあって、けっして、わるい
気
(
き
)
がしませんでした。
だまされた娘とちょうの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
春
(
はる
)
になって
雪
(
ゆき
)
も
次第
(
しだい
)
に
解
(
と
)
けた
或日
(
あるひ
)
、
墓場
(
はかば
)
の
側
(
そば
)
の
崖
(
がけ
)
の
辺
(
あたり
)
に、
腐爛
(
ふらん
)
した二つの
死骸
(
しがい
)
が
見付
(
みつ
)
かった。それは
老婆
(
ろうば
)
と、
男
(
おとこ
)
の
子
(
こ
)
とで、
故殺
(
こさつ
)
の
形跡
(
けいせき
)
さえあるのであった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
老婆
(
ろうば
)
は多少おしゃべりで、長い沈黙に堪えることができなかった。そしてゴットフリートとの交わりを残らず語り出した。それはごく遠い昔のことだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「そちはなんという
老婆
(
ろうば
)
だ。どういうことでまいったのか」とおたずねになりました。
赤猪子
(
あかいのこ
)
は
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
男が九人、女が六人、五つ組が夫婦で、あとの男たちは独身だし、女一人は雑役の
老婆
(
ろうば
)
だった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
持主
(
もちぬし
)
の
老婆
(
ろうば
)
が、ねこを
探
(
さが
)
しにきて、『わたしのねこが、こちらにきているでしょう。たしかになき声がしていましたよ』と、がなりたて、
部屋
(
へや
)
の中をじろじろとのぞきこんだが
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
それとも眼病を
患
(
わずら
)
ってでもいるのか、
眼瞼
(
まぶた
)
が
脹
(
は
)
れて垂れ下っているために始終眼をつぶっているような顔つきをした、従って表情の鈍い、
呆
(
ぼ
)
けかかった
老婆
(
ろうば
)
のような
外貌
(
がいぼう
)
ではあるけれども
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すると、
老婆
(
ろうば
)
たちはおどろいて目をさまし、しばらく聞き耳を立て、騒ぎががたがたと通りすぎると大声をあげた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「いや、そんなはずはない。たしかにあやしい男と
老婆
(
ろうば
)
とが、
密談
(
みつだん
)
いたしていたのを、
間諜
(
かんちょう
)
の者が見とどけたとある。この上は自身であらためてくれる」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ある
日
(
ひ
)
のこと、
古
(
ふる
)
くから、この
病院
(
びょういん
)
へ
出入
(
でい
)
りして、
炊事婦
(
すいじふ
)
や
看護婦
(
かんごふ
)
と、
顔見知
(
かおみし
)
りという
老婆
(
ろうば
)
が、ふいに、お
竹
(
たけ
)
のもとへやってきて、
前
(
まえ
)
に
約束
(
やくそく
)
があるのだから
だまされた娘とちょうの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
また一ツは松岡という
老婆
(
ろうば
)
と女たちの大勢拘留せられた警察署へ
往
(
い
)
って、深沢という女が果してお千代の娘であるか否かを確めた後
貰下
(
もらいさ
)
げの手続をする事である。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
天皇はさっそく
近江
(
おうみ
)
の
蚊屋野
(
かやの
)
へおくだりになって、土地の人民におおせつけになって、
老婆
(
ろうば
)
の
指
(
さ
)
す場所をお
掘
(
ほ
)
らせになり、たしかにお父上のご遺骨をお見出しになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
この働き者の
老婆
(
ろうば
)
は、どうして自分の力がにわかに折れくじけてしまったか、それを理解することができなかった。そしてただ恥ずかしい思いをした。彼はそれに気づかないふりを装った。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
もう若い者はセルを着出した
頃
(
ころ
)
だのに、
袷
(
あわせ
)
の上に薄綿の
這入
(
はい
)
ったジンベエを着て、メリヤスの足袋を
穿
(
は
)
いている彼女は、
小柄
(
こがら
)
で、
痩
(
や
)
せていて、生活力の衰えきった
老婆
(
ろうば
)
のように見えるけれども
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
洋服の先生はかつて磨いた事もないゴム靴を
脱捨
(
ぬぎすて
)
て障子を開けて
這入
(
はい
)
ると、三畳敷の窓の下で、
身体
(
からだ
)
のきかない
老婆
(
ろうば
)
が
咳
(
せき
)
をしている。
赤児
(
あかご
)
がギャアギャア泣いている。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
町
(
まち
)
に、
燈火
(
あかり
)
のつくころでした。みすぼらしいようすをした
老婆
(
ろうば
)
が、
石油屋
(
せきゆや
)
の
入
(
い
)
り
口
(
ぐち
)
に
立
(
た
)
って
火を点ず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかし、田舎の
老婆
(
ろうば
)
たちは、こういうことについては最上の審判官であるのだが、彼女らは今でも、イカバッドは超自然的な方法でふしぎにも運び去られたのだと言っている。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
翌朝麻布の
娼家
(
しょうか
)
を立出で、
渋谷村
(
しぶやむら
)
羽根沢
(
はねざわ
)
の
在所
(
ざいしょ
)
に、以前愚僧が
乳母
(
うば
)
にて有之候お
蔦
(
つた
)
と申す
老婆
(
ろうば
)
。
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お
竹
(
たけ
)
は、
少年
(
しょうねん
)
がなんというだろうかと、その
方
(
ほう
)
を
見
(
み
)
ましたが、
老婆
(
ろうば
)
とは、かねて
知
(
し
)
り
合
(
あ
)
いとみえて、だまっていたので、いまさらこの
病院
(
びょういん
)
に
未練
(
みれん
)
のあるはずがなし、その
日
(
ひ
)
のうちに
だまされた娘とちょうの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
哀
(
あわ
)
れな
老婆
(
ろうば
)
は、しわの
寄
(
よ
)
るほおを
流
(
なが
)
れる、
涙
(
なみだ
)
を
手
(
て
)
でふいていました。
雲と子守歌
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
白髪
(
しらが
)
を振乱して
俯伏
(
うつぶ
)
しになった
老婆
(
ろうば
)
の姿が見えた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「あの
老婆
(
ろうば
)
も
花
(
はな
)
にしてやれ。」と、
太陽
(
たいよう
)
はいいました。
泣きんぼうの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と、
老婆
(
ろうば
)
は、
目
(
め
)
をしばたたきながら、
主人
(
しゅじん
)
にいった。
火を点ず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
“老婆”の意味
《名詞》
老婆(ろうば)
年を取った婦人。
(出典:Wiktionary)
“老婆(おばあさん)”の解説
おばあさん(お婆さん/お祖母さん)は、日本語において、直系尊属2親等に当たる女性(祖母)、もしくは高齢の女性を指す一般語(老婆、媼)として使用される。対義語はおじいさん、または孫、孫娘。
(出典:Wikipedia)
老
常用漢字
小4
部首:⽼
6画
婆
常用漢字
中学
部首:⼥
11画
“老婆”で始まる語句
老婆心
老婆子
老婆様
老婆樣
老婆然
老婆心切