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籠
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こ
ふりがな文庫
“
籠
(
こ
)” の例文
臍下丹田に力を
籠
(
こ
)
めれば、放屁の音量を大にするばかりであり、丹田の力をぬけば、心気
顛倒
(
てんとう
)
して為すところを失うばかりであった。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もしか
敵役
(
かたきやく
)
でも出ようものなら熱誠を
籠
(
こ
)
めた
怒罵
(
どば
)
の声が場内に
充満
(
いっぱい
)
になる不秩序な
賑
(
にぎ
)
やかさが心も
躍
(
おど
)
るように思わせたのに違いない。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
汽車に連るる、野も、畑も、
畑
(
はた
)
の
薄
(
すすき
)
も、薄に
交
(
まじわ
)
る
紅
(
くれない
)
の木の葉も、紫
籠
(
こ
)
めた野末の霧も、霧を
刷
(
は
)
いた山々も、皆
嫁
(
ゆ
)
く人の背景であった。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それが
西八条
(
にしはちじょう
)
へ
籠
(
こ
)
められた
後
(
のち
)
、いきなり、この島へ流されたのじゃから、始はおれも
忌々
(
いまいま
)
しさの余り、飯を食う気さえ起らなかった。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
少しの魂をも
籠
(
こ
)
めることなくただ形式的に人を愛するがごとく振舞う人よりも私はむしろ本当に旺盛な魂をもって人を憎む人を好む。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
▼ もっと見る
「ほんとに商売を
廃
(
や
)
めてしもうてからにします」とばかりで、夜遅く近処の風呂にゆくほかは一日静かにして家にとじ
籠
(
こ
)
もっていた。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
山脈の
裾
(
すそ
)
は温泉宿の小さい町が白い煙を
籠
(
こ
)
めていた。停車場は町
端
(
はず
)
れの野原にあった。機関庫はそこから幾らか山裾の方へ寄っていた。
機関車
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
某人
(
あるひと
)
が「
安芸
(
あき
)
の
厳島
(
いつくしま
)
の
弁財天
(
べんざいてん
)
へ、火のものを絶って祈願を
籠
(
こ
)
めると、必ず覚えがよくなる」と云って教えた。尊は十二三であった。
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私達には何もお礼をすることが出来ませんから、せめて私達が真心を
籠
(
こ
)
めて作ったこのプレゼントを御受納下さい、というのです。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
濺
(
そゝ
)
ぐ涙に哀れを
籠
(
こ
)
めても、飽くまで世を背に見たる我子の決心、左衞門
今
(
いま
)
は夢とも上氣とも思はれず、
愛
(
いと
)
しと思ふほど
彌増
(
いやま
)
す
憎
(
にく
)
さ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
堂内は冷えびえした午後の薄ら明りでした。吹き降りの気配は忘れたやうに去つて、静寂がさむざむとあたりを
籠
(
こ
)
めてゐるだけでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
大きくはないが
喬木
(
きょうぼく
)
が立ち
籠
(
こ
)
めて
叢林
(
そうりん
)
を為した処もある。そしてその地には少しも人工が加わっていない。全く自然のままである。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
朝陽は靄を抜けて、光をじかに庭に当て始めたためでしょうか、木々の芽立ちの匂いがくん/\あたりに立ち
籠
(
こ
)
めてまいりました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だから人間一切の行動を支配する精神もしくは、生命意識なるものは、脳髄の中に立て
籠
(
こ
)
もっているのじゃないかしらんと考えられる。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
次の瞬間、ぼくは
夢中
(
むちゅう
)
であなたの肩を
叩
(
たた
)
き、出来る限りのやさしさを
籠
(
こ
)
め、「秋ッペさん泣くのはおよしよ。もう横浜が近いんだ」
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「ファウスト⁉ ああ、あのグレーテさんが断末魔に書かれたと云う紙片の文字のことですか」レヴェズ氏は力を
籠
(
こ
)
めて、乗り出した。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
母を喜ばしむ、
只
(
た
)
だ
前
(
ぜん
)
よりも一層真心を
籠
(
こ
)
めて
彼女
(
かれ
)
を慰め、彼女を
奨
(
はげ
)
まし、唯一の
楯
(
たて
)
となりて彼女を保護するものは剛一なりける
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
折から
初秋
(
はつあき
)
の日は暮るるになんなんとして流しの上は天井まで一面の湯気が立て
籠
(
こ
)
める。かの化物の
犇
(
ひしめ
)
く
様
(
さま
)
がその間から
朦朧
(
もうろう
)
と見える。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この夜は別して身を
浄
(
きよ
)
め、
御燈
(
みあかし
)
の数を
献
(
ささ
)
げて、災難即滅、
怨敵退散
(
おんてきたいさん
)
の祈願を
籠
(
こ
)
めたりしが、
翌日
(
あくるひ
)
の
点燈頃
(
ひともしごろ
)
ともなれば、又来にけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
小網
(
こあみ
)
町二丁目の袋物問屋丸屋六兵衛は、とうとう嫁のお絹を追い出した上、
倅
(
せがれ
)
の染五郎を土蔵の二階に
閉
(
と
)
じ
籠
(
こ
)
めてしまいました。
銭形平次捕物控:137 紅い扱帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
捨吉は右の足を
後方
(
うしろ
)
へ引き、下唇を
噛
(
か
)
みしめ、両腕に力を
籠
(
こ
)
めながら、友達の拳の骨も折れよとばかり突撃して行った。菅も突き返した。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
にんじんは、そこで、なんとか愛情を
籠
(
こ
)
めた返事をしたいと思った。が、何ひとつ頭に浮かばない。それほど、一方に気を取られている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
彼女の
頬
(
ほお
)
に付いていた白い羽毛の一端が、反絵の呼吸のために揺れていた。反絵はなおも腕に力を
籠
(
こ
)
めて彼女の上に身を蹲めた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
後ろから、葉子の頭から
爪先
(
つまさき
)
までを小さなものででもあるように、一目に
籠
(
こ
)
めて見やりながら、その船員はこう尋ねた。葉子は
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
伏見には家臣
池田織部
(
いけだおりべ
)
を。宇治には奥田庄太夫を。淀には
番頭
(
ばんがしら
)
大炊助
(
おおいのすけ
)
を。また勝龍寺の城には、
三宅綱朝
(
みやけつなとも
)
をそれぞれ
籠
(
こ
)
めてある。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紅の上衣を頂より被りて、一人の
穉兒
(
をさなご
)
には乳房を
啣
(
ふく
)
ませ、一人の稍〻年たけたる子をば、腰の
邊
(
あたり
)
なる
籠
(
こ
)
の中に睡らせたる女あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
僕はたびたび見たが、
雛
(
ひな
)
を
養
(
やしな
)
っている
雌鶏
(
めんどり
)
の
傍
(
かたわら
)
に、
犬猫
(
いぬねこ
)
がゆくと、その時の
見幕
(
けんまく
)
、全身の筋肉に
籠
(
こ
)
める力はほとんど
羽衣
(
はごろも
)
を
徹
(
てっ
)
して現れる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
皇孫命様
(
こうそんのみことさま
)
、
竜神様
(
りゅうじんさま
)
、
又
(
また
)
産土神様
(
うぶすなかみさま
)
を
礼拝
(
らいはい
)
し、
今日
(
きょう
)
一
日
(
にち
)
の
任務
(
つとめ
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
勤
(
つと
)
めさせて
下
(
くだ
)
さいますようにと
祈願
(
きがん
)
を
籠
(
こ
)
めることにしました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
『違ひます。その人もだいぶん前にお亡くなりになりました。』奥さんの言葉には何故か思ひを
籠
(
こ
)
めたやうな響がありました。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
正吉は無言で受取り、千万の言葉を
籠
(
こ
)
めた会釈を……たった一度。よろめく足を踏みしめ踏みしめ、
凩
(
こがらし
)
の中を両国の方へ——。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
例えば学校の女生徒が少しく字を知り又洋書など解し得ると同時に、所謂詠歌国文に力を
籠
(
こ
)
め、又は小説戯作など読んで余念なきものあり。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
僕はやはり二三日うちに、荷物はこのまま預けておいて、ホテルを引き上げよう。しかし、いかるがの宿に
籠
(
こ
)
もるのではない。東京へ帰る。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「そう心配したものでもないのよ。結婚してしまえば、
旦那
(
だんな
)
さまや奥さまに愛せられて、自分々々の生活に立て
籠
(
こ
)
もるのよ。」
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
つまりは
契
(
ちぎ
)
りを
籠
(
こ
)
めた
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
の若者に
縋
(
すが
)
って、純なる夫婦のかたらいを持続する力の無い、あわれなる者という意味にほかならぬのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
お
幾婆
(
いくばあ
)
さんに何であらうと相談すればここでもわからず、そんな噂はなかりしが兼吉さんが
引
(
ひ
)
つ
籠
(
こ
)
むので浴衣の
誂
(
あつらえ
)
でもあるのか知らぬとのみ
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
これ深更なるに拘らず多数の人、戸口に集りゐて
籠
(
こ
)
み入らんとしたればなり。本人は彼異様に鋭き声を発せし人をイタリア人ならんと思へり。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
おきわは向島の寮に押し
籠
(
こ
)
められて、土蔵の二階に住んでいるに相違ない。お通が見たという幽霊のような女はそれである。
半七捕物帳:20 向島の寮
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まあこんな事にしておいてという
糊塗
(
こと
)
した気味もある。どこやらに押付けたものを
籠
(
こ
)
めていて不平がある句といってもよい。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私はこれより心のムシヤクシヤするのを追払らふ積りで一際精神
籠
(
こ
)
めて働らき、
昼頃
(
ひるごろ
)
までに美事立派な
亭
(
ちん
)
が出来あがり升た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
籠
(
こ
)
めたる妙音が我身を引寄せるように覚え「ではちょいとお邪魔をしようかね、広海さんにも先日のお礼を申さねばならん」
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
と一句に力を
籠
(
こ
)
めて制する母親、その声ももウこう成ッては耳には入らない。文三を
尻眼
(
しりめ
)
に懸けながらお勢は
切歯
(
はぎし
)
りをして
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
この一組は二枚の処も四枚の所もあって、なかなか大きく手の
籠
(
こ
)
んだもの。……これらはいずれも首尾よく納まりました。
幕末維新懐古談:52 皇居御造営の事、鏡縁、欄間を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
私は隅の方の席から、自分で「我が師」と
極
(
き
)
めている人を「ここにあなたの貧しい弟子が一人います。」という気持を
籠
(
こ
)
めて見つめていました。
聖アンデルセン
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
すると彼は、いかにもりっぱな親切とやさしさとを
籠
(
こ
)
めて彼女を眺めてやった。病気は
癒
(
なお
)
ると言いきかして、愛せられることを承諾してやった。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その
裡
(
うち
)
に五月が過ぎ六月が来た。政治季節の外は、何の用事もない父は、毎日のように書斎にばかり、閉じ
籠
(
こ
)
もっていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さあ米友が承知しない、両の腕に力を
籠
(
こ
)
めてうんと振りもぎると、押さえていた二三人がよろよろとよろけて手を放す。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さて又丹下、今一度ただ今のように真心
籠
(
こ
)
めて礼を致してノ、自分の申したる旨御用い下されと願え。それがしも共に願うて遣わす、
斯
(
か
)
くの通り。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
感情は内に
籠
(
こ
)
めて置いて
露
(
あら
)
わに出さずにその感情の上に立って客観写生をせよという意味であります。この方法で何十年間か過してまいりました。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
棒の先に、だんだんと力を
籠
(
こ
)
めていった。ギイギイギイと腕金の錘りが浮きだした。僕はここぞと思ってあらん限りの力を出して腕をつっぱった。……
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
始めは静かであつた声は次第に高くなつて行つた。その声の中にはまだけがれない無邪気な心が
籠
(
こ
)
められてあつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
“籠”の解説
籠(かご、en: basket バスケット)とは、(竹、、柳、針金 などを)編んで作った入れ物で、短冊状ないし細い「ヒゴ」状の素材を組み合わせた容器の総称である。
(出典:Wikipedia)
籠
常用漢字
中学
部首:⽵
22画
“籠”を含む語句
引籠
塗籠
燈籠
口籠
立籠
閉籠
旅籠
魚籠
籠居
籠中
尾籠
籠城
手籠
高燈籠
旅籠屋
蛇籠
妻籠
山籠
目籠
馬籠峠
...