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熾
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さか
ふりがな文庫
“
熾
(
さか
)” の例文
土地や金が、ただ「殖える」とか「広くなる」とかいう、そんなやにっこい言葉で彼女の快感は表わせないほど、
熾
(
さか
)
んなのであった。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
年はとっても意気の
熾
(
さか
)
んなお婆さんを始め、主人、細君は風通しの好い奥座敷に一緒に集っていて、例のように捨吉を迎えてくれた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この通り牝猴時として慾火
熾
(
さか
)
んに人前に醜を露わす事もあるべく、それらの事より山神女性で男子の自涜を好むといい出したものか。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
遠大の志望を抱けとか、国家的奉公の念を
熾
(
さか
)
んにせよとかいふ議論の一面は、兎も角も国民に向つて多大の犠牲を要求するの声である。
蘇峰先生の「大正の青年と帝国の前途」を読む
(新字旧仮名)
/
吉野作造
(著)
議論の火の手は又
熾
(
さか
)
んになる。純一は面白がって聞いている。熾んにはなる。しかしそれは花火
綫香
(
せんこう
)
が熾んに燃えるようなものである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
二人の手はしっかりと結ばれ合っていたが、浪路の目かおには、からみつくような執念が、ますます燃え
熾
(
さか
)
って来るばかりだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
実に威勢
熾
(
さか
)
んな時分には空飛ぶ鳥も落ちる位のもので誰も指一本差して見る者もなかったが、今日はああいう事になって誠に気の毒だ。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
が、もの
音
(
おと
)
、
人聲
(
ひとごゑ
)
さへ
定
(
さだ
)
かには
聞取
(
きゝと
)
れず、たまに
駈
(
かけ
)
る
自動車
(
じどうしや
)
の
響
(
ひゞき
)
も、
燃
(
も
)
え
熾
(
さか
)
る
火
(
ひ
)
の
音
(
おと
)
に
紛
(
まぎ
)
れつゝ、
日
(
ひ
)
も
雲
(
くも
)
も
次第々々
(
しだい/\
)
に
黄昏
(
たそが
)
れた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
庭の面が、うつさうたる熱帯植物の叢だちで、その
熾
(
さか
)
んな触手は、亞字欄を越えて、
濤
(
なみ
)
のやうに蔽ひかぶさつてゐたからである。
少年
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
成程、これなら小僧にでも出来る仕事だと思ったが、未だ退屈しない。同期卒業で安川という男が入っていた。これも
熾
(
さか
)
んに伝票を書く。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だによって、この五升五合が逆かさに上ると、上ったところだけは
熾
(
さか
)
んに活動するが、その他の局部は欠乏を感じて冷たくなる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
怪物の両眼はまるで青い
焔
(
ほのお
)
のように燃えているではないか。彼の
情慾
(
じょうよく
)
につれて、その
火焔
(
かえん
)
が刻一刻燃え
熾
(
さか
)
って行くではないか。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
燃え
熾
(
さか
)
る焔管に突込まれてゐる間に人間が經驗した限りでの最も慘苦な死の苦悶を嘗めたに違ひない恐るべき形迹があつた。
無法な火葬
(旧字旧仮名)
/
小泉八雲
(著)
ベンサム死して既に半世紀、余威
殷々
(
いんいん
)
、今に至って
漸
(
ようや
)
く
熾
(
さか
)
んである。偉人は死すとも死せず。我輩はベンサムにおいて法律界の大偉人を見る。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
しかしまた、彼方の空の黒煙と火を見ると、彼の
脳裡
(
のうり
)
も狂気せんばかり燃え
熾
(
さか
)
った。あの煙の下、あの火の下に、なお父やある。父や
亡
(
な
)
きかと。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
偕
(
とも
)
に
是
(
こ
)
れ文臣なりと
雖
(
いえど
)
も、今武事の日に当り、目前に官軍の
大
(
おおい
)
に敗れて、賊威の
熾
(
さか
)
んに張るを見る、感憤何ぞ極まらん。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それらがその光線を壁の影へ越えると、また後から後からと来る浴衣や、
女帽
(
おんなぼう
)
や桃色のスカートに明って揺れて
熾
(
さか
)
った。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
斯樣
(
かやう
)
にすれば
自分
(
じぶん
)
の
發明心
(
はつめいしん
)
を
養成
(
やうせい
)
し、
事物
(
じぶつ
)
に
向
(
むか
)
つて
注意力
(
ちゆういりよく
)
を
熾
(
さか
)
んにするやうになりませう。
即
(
すなは
)
ち
學生
(
がくせい
)
の
自營心
(
じえいしん
)
を
養
(
やしな
)
ひ
獨立心
(
どくりつしん
)
を
養
(
やしな
)
ふ
所以
(
ゆゑん
)
でありませう。
女教邇言
(旧字旧仮名)
/
津田梅子
(著)
段々年を経て右の両種の桜の木が生長し繁茂し
熾
(
さか
)
んに花を着くる様になった後日を想像して見ると、どうでしょう、一方の林には赤色の桜が満開し
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
あわぬ
詮索
(
せんさく
)
に日を消すより極楽は
瞼
(
まぶた
)
の合うた一時とその能とするところは呑むなり酔うなり
眠
(
ねぶ
)
るなり自堕落は馴れるに早くいつまでも血気
熾
(
さか
)
んとわれから信用を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
收めたれば
酒肴
(
しゆかう
)
見立掛り膳部申付役となる火の
熾
(
さか
)
んなる
圍爐裏
(
ゐろり
)
に足踏伸し鉛筆の
後
(
しり
)
にて
寶丹
(
ほうたん
)
と烟草の
吹壳
(
ふきがら
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
いなり山の客室では宇野夫妻とかな女と主人の紋太夫が待ち
草臥
(
くたび
)
れていた、否そんな生ぬるいことではない、待ち勢い待ち挑み待ち
熾
(
さか
)
っていたと云うべきだろう。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その演芸矯風会も自然消滅になって、一時は
熾
(
さか
)
んに火の手をあげた改良熱もいつとはなしに冷却してしまった。局外者で戯曲を発表する人もあらわれなくなった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
聞き及びますれば、ご貴殿には兵も多く武具も備わり、掻い撫での大名地頭などより、かえって威勢
熾
(
さか
)
んとのこと、さすればご同盟くだされた上、その熾んなる軍勢を
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
炭に火種を添えて火を
熾
(
さか
)
んにすることは、炭の常用よりも後に始まった作業で、すなわちその時期に入ってから、始めてこの地方ではその効用を名にしているのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「港内に
碇泊
(
ていはく
)
している例のエンプレス号が突然火を出したのです。原因不明ですが、火の手はますます
熾
(
さか
)
んです。この上は、あの百万
弗
(
ドル
)
の金貨をおろさにゃなりますまい」
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
が、この藤十郎も、人妻に恋をしかけるような非道な事は、なすまじいと、明暮燃え
熾
(
さか
)
る心をじっと抑えて来たのじゃが、われらも今年四十五じゃ、人間の
定命
(
じょうみょう
)
はもう近い。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
目元
(
めもと
)
に
宿
(
やど
)
れる
露
(
つゆ
)
もなく、
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
りたる
決心
(
けつしん
)
の
色
(
いろ
)
もなく、
微笑
(
びせう
)
の
面
(
おもて
)
の
手
(
て
)
もふるへで、
一通
(
いつゝう
)
二通
(
につう
)
八九通
(
はつくつう
)
、
殘
(
のこ
)
りなく
寸斷
(
すんだん
)
に
爲
(
な
)
し
了
(
をは
)
りて、
熾
(
さか
)
んにもえ
立
(
た
)
つ
炭火
(
すみび
)
の
中
(
なか
)
へ
打込
(
うちこ
)
みつ
打込
(
うちこ
)
みつ
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
わたしは
起
(
た
)
ちあがって、かの手紙をテーブルの上に置いて、まだ
熾
(
さか
)
んに輝いている火をかきおこして、それにむかってマコーレーの論文集をひらいて、十一時半頃まで読んだ。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
あまり趣味のよくない大規模のカフエが
熾
(
さか
)
んに進出しはじめて、あの辺一帯の空気をあくどい色に塗りあげ、弱い神経の庸三などは、その強烈な刺戟に目が
眩
(
くら
)
むほどだったが
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
我みずから我が王たらんとし、我がいっさいの能力を我みずから使用せんとする慾望である。人によりて強弱あり、大小はあるが、この慾望の最も
熾
(
さか
)
んな者はすなわち天才である。
初めて見たる小樽
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
二ツの七輪から火の粉がさかんに
弾
(
は
)
ぜている。
熾
(
さか
)
んな火勢だ。熱い茶を何杯も貰う。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
これがために勤労を励まし、製造を
熾
(
さか
)
んにして海外の通商を突飛せしめ、各人民、各王国、もしくは各小種族をばたがいに相接せしめ、たがいに相交際せしめ、もって知音とならしめたり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ストーブの
熾
(
さか
)
んに燃える父伯爵の居間に集り、いろいろ面白い
談話
(
だんわ
)
に
耽
(
ふけ
)
って
居
(
お
)
る、その面白い談話と云うのは、
好奇
(
ものずき
)
な娘達が
頻
(
しき
)
りに聴きたがる、
妖怪
(
ようかい
)
談や幽霊物語の類で、
談話
(
はなし
)
上手の伯爵が
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
街の方はまだ
熾
(
さか
)
んに燃えているらしく、
茫
(
ぼう
)
とした明りが川下の方に見える。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
妬
(
ねた
)
みと惜しみと
悔恨
(
くやみ
)
との念が一緒になって旋風のように
頭脳
(
あたま
)
の中を回転した。師としての道義の念もこれに交って、
益〻
(
ますます
)
炎を
熾
(
さか
)
んにした。わが愛する女の幸福の為めという犠牲の念も加わった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
また火の玉のように
熾
(
さか
)
んに燃え立って、作者の魂魄を観る者の骨身に伝えるような気魄を示す書、あるいは静かに古池の水を想わす静寂の秘密そのもののような幽書、書者の高き全人格が映って
美術芸術としての生命の書道
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
この猿楽町には子規居士も来るし
飄亭
(
ひょうてい
)
、碧梧桐、
露月
(
ろげつ
)
、
四方太
(
しほうだ
)
などの諸君も
熾
(
さか
)
んに出入するし、その『ホトトギス』が漸く俳句界の一勢力になって来たので、私の仕事も相当に多忙になって来た。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
粗末な草小屋の中で、厳しい冬の間、そうしなければ耐えられぬ凍寒を防ぐため、
熾
(
さか
)
んに燃しつづけた。煙が、棟の雪だけを融け去らしていた。
煤
(
すす
)
ぼけた家の頭が点々としていた。にじみ出した。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
が、漸く
帝国主義
(
インペリアリズム
)
の熱が醒めて、文学熱のみ独り
熾
(
さか
)
んになって来た。
予が半生の懺悔
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
目白押しに並んだ七人が、一斉にお代りを出す光景は
熾
(
さか
)
んであつた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
遂に自ら根本的研究を加えてみたいとの野心が
熾
(
さか
)
んに燃え出した。
法隆寺再建非再建論の回顧
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
ただ何となしに気が合うて、死生を共にしようというだけでそこに
生命
(
いのち
)
知らずの連中が、黙って集まり合うたというだけで、そこに燃え
熾
(
さか
)
っている火のような精神は文句にも云えず、筆にも書けない。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
獰猛の
眼
(
まなこ
)
は炎と燃え
熾
(
さか
)
り、角は突つ立ち風を切り
ランボオ詩集≪学校時代の詩≫
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
「人間には、生きようという意志と一緒に、滅亡に
赴
(
おもむ
)
こうという意志があるような気がするんですよ。どうもそんな気がする。此のような
熾
(
さか
)
んな自然の中で、人間が
蛾
(
が
)
のようにもろく
亡
(
ほろ
)
んで行く。奇体に美しいですね」
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
に向って
熾
(
さか
)
んに
捲
(
まく
)
し立てて居るのであります。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
どれ、ちょいとそれを
熾
(
さか
)
んな火に入れよう。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
熾
(
さか
)
りぬ
照
(
て
)
りぬ
草わかば
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
『想山著聞奇集』五に、野猪
熾
(
さか
)
り出す時は牝一疋に牡三、四十疋も付き
纏
(
まと
)
うて噛み合い、互いに血を流し朱になっても平気で群れ歩く。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そこへただ一点、精気を凝して花弁としたような
熾
(
さか
)
んな牡丹の風情は、石川の心にさえ一種の驚きと感嘆をまき起した。
牡丹
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
熾
漢検1級
部首:⽕
16画
“熾”を含む語句
熾烈
熾盛
熾火
煩悩熾盛
熾熱
熾熱燈
熾々
有栖川宮熾仁
熱熾
熾仁
熾仁親王
熾然
盛熾
薬師熾盛光
逆焔仍熾
高熾