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潜
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くぐ
ふりがな文庫
“
潜
(
くぐ
)” の例文
旧字:
潛
鮎子が右に左に通せんぼうをするのを、
巧
(
たくみ
)
にかい
潜
(
くぐ
)
って、
尻尾
(
しっぽ
)
の二郎美少年を
捕
(
つか
)
まえる遊戯だ。陸上の「子を取ろ、子取ろ」である。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ここだ!」といって桂は先に立って、
縄暖簾
(
なわのれん
)
を
潜
(
くぐ
)
った。僕はびっくりして、しばしためらっていると中から「オイ君!」と呼んだ。
非凡なる凡人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
さて、聞かっしゃい、
私
(
わし
)
はそれから
檜
(
ひのき
)
の裏を抜けた、岩の下から岩の上へ出た、
樹
(
き
)
の中を
潜
(
くぐ
)
って草深い
径
(
こみち
)
をどこまでも、どこまでも。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
眼
(
め
)
を
潜
(
くぐ
)
って甲府へ出ることはそれほど難しいことでは無いが、元は優しいので弱虫弱虫と
他
(
ほか
)
の
児童等
(
こどもたち
)
に云われたほどの源三には
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あるときは階段をガタガタ駈けのぼっているようだし、あるときは狭いトンネルのような中をすれすれに
潜
(
くぐ
)
りぬけていたようだった。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
千恵は自分の胸が大きく波を打つてゐるやうな気がしてなりませんでしたが、Hさんは一向気づかない様子で、
潜
(
くぐ
)
り
戸
(
ど
)
の外へ出ると
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
暖簾
(
のれん
)
を
潜
(
くぐ
)
ると、茶室のように静かな家の内には
読経
(
どきょう
)
する若主人の声が聞える。それを聞きながら、二人は表二階の方へ上って行った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
法華堂、
常行堂
(
じょうぎょうどう
)
が左右にあって中央は通路を
跨
(
また
)
いで橋が掛かり、これを
潜
(
くぐ
)
って中堂がありました。
此所
(
ここ
)
が山中景色第一の所でした。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
成る
可
(
べ
)
く人目にかからぬように毎晩服装を取り換えて公園の
雑沓
(
ざっとう
)
の中を
潜
(
くぐ
)
って歩いたり、古道具屋や古本屋の店先を
漁
(
あさ
)
り
廻
(
まわ
)
ったりした。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「まず拙者が」と云いながら、北条右門様が土塀を乗り越し、内側から
潜
(
くぐ
)
り戸をあけましたので、わたしたちは構内へ入り込みました。
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
娘は門前で馬を降りて、出て来た農夫
体
(
てい
)
の五十ぐらいのオヤジに手綱を渡すと、そのまま右手のアーチを
潜
(
くぐ
)
って、私を導き入れました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その時に、たしかに「味岡」という標札を見届けておいたので、今日は、なんの不安もなく、その家の門を
潜
(
くぐ
)
ることかできたのである。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
この
素裸
(
すはだか
)
なクーリーの体格を眺めたとき、余はふと
漢楚軍談
(
かんそぐんだん
)
を思い出した。昔
韓信
(
かんしん
)
に股を
潜
(
くぐ
)
らした豪傑はきっとこんな連中に違いない。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小学校の門を
潜
(
くぐ
)
ってからというものは、一しょう懸命にこの学校時代を駈け抜けようとする。その先きには生活があると思うのである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
これはどこか、物見の目もとどかぬ至近距離にまで、敵の兵がすでに
潜
(
くぐ
)
り込んできた証拠と、誰の肌にも突き刺さるような感があった。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妾
(
わたくし
)
は、法律の網を
潜
(
くぐ
)
るばかりでなく、法律を道具に使って、善人を
陥
(
おとしい
)
れようとする悪魔を、法律に代って、罰してやろうと思うのです。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
若旦那も孫太郎も、わたくしも心配して、混雑のなかを抜けつ
潜
(
くぐ
)
りつ、そこらを頻りに探して歩きましたが、どうしても姿が見えません。
半七捕物帳:68 二人女房
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「違うよ、親分、あれは、おらじゃねえ、先を
潜
(
くぐ
)
って二人も殺されちゃ、町内の十七娘が種切れになるから、大急ぎでお袖を絞めたんだ」
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
許宣はこんな大きな家に住んでいた人が
何故
(
なぜ
)
判
(
わか
)
らなかったろうと思って不審した。彼はそのまま小婢に
随
(
つ
)
いてそこの門を
潜
(
くぐ
)
った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その物凄い叫びを聞くと、どこにいたか知れない無数の猿が、谷から谷、樹から樹を
潜
(
くぐ
)
って、続々として
走
(
は
)
せ集まって来ました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かの女は、
潜
(
くぐ
)
り門に近い洋館のポーチに
片肘
(
かたひじ
)
を
凭
(
もた
)
せて、そのままむす子にかかわる問題を
反芻
(
はんすう
)
する切ない楽しみに浸り込んだ。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
賭博場を飛び出した僕はやがて餓えに
斃
(
たお
)
れるだろう。もう一度あの門を
潜
(
くぐ
)
ろうか。それとも、まじめな仕事がどこかにあるとでもいうのか。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
そのままじっとしてないで、縁先の下駄を
突
(
つっ
)
かけて、飛石づたいに菖蒲畑の傍まで来ましたら、
生垣
(
いけがき
)
を
潜
(
くぐ
)
って大きい犬が近寄って来ました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
それはイナでも鰡でも活きているようなのを三枚に
卸
(
おろ
)
して小さく切ってグラグラ
沸立
(
にた
)
っている湯の中へ
潜
(
くぐ
)
らせて直ぐ揚げます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
やがて、完全な
溺
(
でき
)
死を待って静かに浴槽中にもどすと、
屍
(
し
)
体は、頭の方を先に湯の底を
潜
(
くぐ
)
って、逆に浴槽の細い部分へつくというのである。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
項
(
えり
)
には銀の輪を掛け、手には鋼鉄の
叉棒
(
さすぼう
)
を握って一
疋
(
ぴき
)
の
土竜
(
もぐら
)
に向って力任せに突き刺すと、土竜は身をひねって彼の
跨
(
また
)
ぐらを
潜
(
くぐ
)
って逃げ出す。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
六十五 恐ろしとも凄まじとも形容に
詞
(
ことば
)
の無いこの場合に迫っては、人たる者は唯何ものかの下に
潜
(
くぐ
)
り込んで隠れるのみだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
若者が覗きこんだとき、少女は舟を
潜
(
くぐ
)
りぬけて、反対がわに浮きあがり、ひゅうっ、と息を吹きながら舟ばたへ手をかけた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二人はいつの間にか制帽を
懐
(
ふとこ
)
ろの中にたくしこんでいた。昼間見たら
垢光
(
あかびか
)
りがしているだろうと思われるような、厚織りの紺の
暖簾
(
のれん
)
を
潜
(
くぐ
)
った。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
また按ずるにホワイトの『セルボルン博物志』に牛が沢中に草食う際、鶺鴒その身辺を飛び廻り、鼻に接し腹下を
潜
(
くぐ
)
って牛に著いた蠅を食う。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
源吉は、常連らしく、
何気
(
なにげ
)
なさそうな顔をして、松喜亭のドアーを
潜
(
くぐ
)
ると、昼でも薄暗いボックスの中に、京子のピチピチとくねる四肢を捕えた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
洪水のような
西班牙人
(
スパニヤアド
)
の混雑に押されて、ドン・ホルヘの私も
闘牛楽
(
パサ・ドブレ
)
に合わせて踊りながら、いよいよ入口を
潜
(
くぐ
)
った。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
土けむりをあげて、駈け出した竹造を見送ると、伝七はそのまま表通りへ曲がって、古びた小さい屋敷の門を
潜
(
くぐ
)
った。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
私はまた雑草をわけ木立の中を犬のように
潜
(
くぐ
)
って崖端へ出て見はるかす町々の賑わいにはかなく
憧憬
(
あこが
)
れる子となった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
正吉
(
しょうきち
)
は、くさむらの
中
(
なか
)
を
潜
(
くぐ
)
って、かけずりました。そして、
義雄
(
よしお
)
が、まだ一ぴきも
見
(
み
)
つけないうちに、
正吉
(
しょうきち
)
は、三びきも
見
(
み
)
つけて、
義雄
(
よしお
)
に
与
(
あた
)
えました。
眼鏡
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
説明——手をつないで通せまいとするのを、
潜
(
くぐ
)
つて通り抜ける遊戯があります。この『関所遊び』は、その遊戯に合せて、歌ふやうに作つた童謡です。
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
一時過ぎてから門を
潜
(
くぐ
)
って庭から廻り四畳半の
老母
(
ばあ
)
さんに聞えぬようにお前の
枕頭
(
まくらもと
)
と思う六畳の縁側の戸を叩くと
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
或日、牧柵を
潜
(
くぐ
)
り抜けて、かなり遠くまで芝草の上を歩いて行った菜穂子は、牧場の真ん中ほどに、ぽつんと一本、大きな樹が立っているのを認めた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼等二人は、上半身を斜に
捩
(
よじ
)
って、ようやく通れるぐらいの路地を
潜
(
くぐ
)
り抜け、余り広くもないその裏の広場へ出た。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
ようやくクールベから離れて来てみると、
裏店
(
うらだな
)
へでも
潜
(
くぐ
)
らない限り、その男とも一緒に行けないことも
解
(
わか
)
って来た。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
わたしが雨戸を蹴る音を聞きつけて、ひとりの老人が
潜
(
くぐ
)
り戸をあけて出て来ましたが、彼はここに立っている私の姿を見て非常におどろいた様子でした。
世界怪談名作集:15 幽霊
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
稍
(
やや
)
しばらく泳いでゐたが人の両手が水面から出たあたりに
行著
(
ゆきつ
)
くと、頭の方を下にして水中ふかく
潜
(
くぐ
)
つて行つた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
私は何度も水を
潜
(
くぐ
)
って
垢
(
あか
)
の
噴
(
ふ
)
き出たようなネルの
単衣
(
ひとえ
)
を着て、与一のバンド用の、三尺帯をぐるぐる締めていた。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
すぐまた反対の側から同様のを続けて
喰
(
くら
)
うと出かかった悲鳴も声にはならず、もう
不貞不貞
(
ふてぶて
)
しい覚悟でさらに飛び散る弾の中を踊り
潜
(
くぐ
)
ってゆくのだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
一郎はすばやく帯をしてそれから
下駄
(
げた
)
をはいて土間に下り馬屋の前を通って
潜
(
くぐ
)
りをあけましたら風がつめたい雨のつぶと
一緒
(
いっしょ
)
にどうっと入って来ました。
風野又三郎
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼は
藤蔓
(
ふじづる
)
の橋を渡るが早いか、
獣
(
けもの
)
のように熊笹を
潜
(
くぐ
)
って、木の葉一つ動かない森林を、奥へ奥へと分けて行った。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一寸
(
ちょっと
)
お尻を
撫
(
な
)
でてから、髪を
壊
(
こわ
)
すまいと、低く
屈
(
こご
)
んで
徐
(
そっ
)
と門を
潜
(
くぐ
)
って出て行くが、時とすると潜る前にヒョイと
後
(
うしろ
)
を振向いて私と顔を看合せる事がある。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
お茶番のいる広い土間の入口の
潜
(
くぐ
)
り戸をはいってゆくと、
平日
(
いつも
)
に増してお茶番の
銅壺
(
どうこ
)
は
煮
(
にえ
)
たち、二つの
茶釜
(
ちゃがま
)
からは湯気がたってどこもピカピカ光っていた。
旧聞日本橋:05 大丸呉服店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ブルジョアのお嬢さんや坊ちゃんが洋服を着、靴を履いてその上自動車に乗ってさえその門を
潜
(
くぐ
)
った。だがそれが何だ。それが私を少しでも幸福にしたか。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それから、片方引くと解ける方のを鍵穴から
潜
(
くぐ
)
らせて、それには幾分
弛
(
たる
)
みを持たせておくんだ。無論鍵の押金が上へ向いていればこそ、可能な話なんだよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
潜
常用漢字
中学
部首:⽔
15画
“潜”を含む語句
潜然
潜戸
潜門
潜伏
潜水夫
水潜
掻潜
潜々
潜行
潜入
先潜
潜込
潜望鏡
潜航艇
胎内潜
狆潜
潜抜
沈潜
犬潜
潜在
...