方々かたがた)” の例文
「いや、そう云う訳ではございませんが、何かとあちらの方々かたがたに引とめられて、ついそのまま、話しこんでしまうのでございます。」
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
山伏やまぶし姿すがたにやつしてはおいでになりますが、あなたがたはきっと酒呑童子しゅてんどうじ退治たいじするために、京都きょうとからおくだりになった方々かたがたでしょう。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかしその梵語ぼんごの経文を訳した方々かたがたは決して嘘をつかれるような方でないからして、これには何か研究すべき事があるであろう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
方々かたがた拙者に存じよりがあります。ここに待ち受けて小枝という娘を、奪い取ることにいたしましょう。さあさあ木陰へおかくれなされ」
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『ああ、うちの人、』とボーシスは言いました、『お前さんが、何と言おうと、この方々かたがたは、どうして、普通の人じゃないよ。』
「お見舞みまい方々かたがたも、つぎにお引取ひきとりなすってはどうじゃの、御病人ごびょうにんは、出来できるだけ安静あんせいに、やすませてあげるとよいとおもうでの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「おおせ、ごもっともです。では方々かたがた呂宋兵衛るそんべえをこの三じゅうへひっ立てて、かならず妖術ようじゅつなどで逃げせぬように厳重なご用意あるよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、こまったことに、わたくしどもがこちらから人間にんげん世界せかいのぞきますと、つまらぬ野天狗のてんぐ捕虜とりこになっている方々かたがた随分ずいぶん沢山たくさんられますようで……。
「エエ町内のお方々かたがた、おさわがせ申してあいすいません。火事は遠うごぜえます。葛西領は渋江しぶえむら、渋江村……剣術大名司馬様の御寮——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「そんなに永くぐずぐずしていちゃいかん。私は一秒一秒自分の命もここにいられる方々かたがたの命も危険にさらしているのだ。」
あるところにぜいたくな人間にんげんんでいました。時節じせつをかまわずに、なんでもべたくなると、人々ひとびと方々かたがたはしらしてそれをもとめたのであります。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふるのは、余りにもみっともない。方々かたがたはどうあろうと、この景久だけは、平家にお仕えして最後の花を飾るつもりじゃ
「エイ、方々かたがたは何をうっかりとして居らるる。敵に下ぐる頭ではござらぬ、味方同士の、兄弟の中ではござらぬか。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ついては、それの日、あたかも黄道吉辰きっしんなれば、揃って方々かたがたを婿君にお迎え申すと云う。汗冷たくして独りずつ夢さむ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御親切にいろいろあたくしに教えて下さる方々かたがたが、あたくしがフランスへ参らなければならないとお考えになるのですし、それに、あたくしは孤児みなしご
まったくあの屋敷の方々かたがたはみんないい人で、若殿さまは優しいかたですし、お嬢さまもおとなしいかたですからね
日曜日に子供も一緒に夫婦連立って買物方々かたがた出歩こうと云う折など、「季ちゃん。一緒に行くかね。」と誘うこともあるが、是非にと云う程の様子は見せず
或夜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
平生へいぜい朋友等無之候えども、大徳寺清宕和尚せいとうおしょうは年来入懇じっこんに致しおり候えば、この遺書国許くにもと御遣おんつかわし下されそろ前に、御見せ下されたく、近郷きんごう方々かたがたへ頼入り候。
僕は手短てみじかに経過を報告して、憲兵隊の方々かたがた同道どうどうして来たことをセントー・ハヤオに物語りました。相手は大変嬉しいという意味の符号を打ち返して来ました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
どうもこの方々かたがたってはかないません、と云う風に云い、斯様かように突然押しかけて参るのは失礼だと思ったのですが、全く女ギャングに拉致らちされて来たのでありまして
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……これまでの方々かたがた様の御心づくし、何と御礼を申上げましょうやら。つたないこの身に余り過ぎました栄耀栄華えいようえいが。空恐ろしゅうて行く先が思い遣られまするばかりで御座います。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
方々かたがたは慰問の御挨拶あいさつをなされたのであるが、源氏は最後に残って、驚きと悲しみに言葉も心も失った気もしたが、人目が考えられ、やっと気を引き立てるようにしてお居間へ行った。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「しずかになさい。だまっていてくれ。高貴こうき方々かたがたの前だ、ご無礼ぶれいにあたるぞ。」
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「それじゃ我々われわれえら方々かたがたなにかものをときでも意見いけんしちゃいけないぜ。」
「藩論が決った今、狂瀾を既倒きとうにかえすは、非常手段に出るほかは、ござらぬ。明日の出兵を差し止める道は、今夜中に成田頼母を倒すよりほか、道はないと存ずるが、方々かたがたの御意見は?」
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「この方々かたがたは、ぼくが二十面相のかくれがから救いだしてきたのですよ。」
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
後におあとをおぎになった若帯日子命わかたらしひこのみことと、小碓命おうすのみこととおっしゃる皇子おうじと、ほかにもう一方ひとかたとだけをおそばにお止めになり、あとの七十七人の方々かたがたをことごとく、地方地方の国造くにのみやつこ別稲置わけいなぎ県主あがたぬしという
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
この方々かたがたも皆お獨で御出現になつて形をお隱しになりました。
「私は組合の方々かたがたの御命令どおりに何でもいたします。」
それでももう難有い方々かたがたに似ておいでになりました。
男の方々かたがたは! 愛情こまやかな女といふものが
「お出合であいなさい! お出合いなされ! 大久保家おおくぼけのご家中かちゅう方々かたがた、あやしいものがげまするぞ、早く、早く、早くここへ!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
方々かたがたにもの申そう。これは天上皇帝の神勅を賜わって、わが日の本に摩利の教をこうずる摩利信乃法師と申すものじゃ。」
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
参拝者さんぱいしゃなかで一ばんにかずおおく、また一ばんにうつくしいのは、矢張やはなん註文ちゅうもんもなしに、御礼おれいらるる方々かたがたでございましょう。
「気が弱くもなろうじゃアありませんか。あなたのようなお強い方々かたがたが、女一人を取り巻いて、いじめるんですもの」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いやしずかに。——ただいまみゃくちからたようじゃと申上もうしあげたが、じつ方々かたがた手前てまえをかねたまでのこと。心臓しんぞうも、かすかにぬくみをたもっているだけのことじゃ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
これまで御番衆ごばんしゅう方々かたがたからいくらも出世をなすった方はあろうけれど遠山様のような話はありますまい。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この美しさを方々かたがたは何んと形容なさるかな、宝玉の名でも花の名でも、色の名でも形容は出来ますまい。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『おう、ポリデクティーズ王様、』と彼は叫びました、『そして大勢おおぜい方々かたがた、私はあなた方にゴーゴンの首をお見せすることは、ひどく気がすすまないのです!』
方々かたがたも褒めておやりなされ、この高山も褒めてやるぞと、飛んだ陣屋の盛綱を気取って、扇をあげて褒めそやすと、ほかの連中も偉い偉いと扇をひらいて煽ぎ立てる。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
時に、後月あとつきのその舞台は、ちょっと清書にいたし、方々かたがたの御内見に入れますので、世間晴れての勤めは、あらためてきたる霜月の初旬はじめ、さるその日本の舞台に立つはずでござる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
は、承知いたしました。手前どもでは、あなたさまのところの方々かたがたがロンドンとパリーの間を
ふくろの物を探るが如くになり居れど、ただ兵粮其他の支えの足らぬため、勝っても勝を保ち難く、奪ってもまた奪わるべきをおもんぱかり、それ故に老巧の方々かたがた、事を挙ぐるに挙げかね
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
御用心ごようじんあそばさないといけません。あの童子どうじ詐欺師さぎしでございます。おそれながら、陛下へいかのおやまい侍医じい方々かたがたや、わたくしども丹誠たんせいで、もうそろそろ御平癒ごへいゆになるときになっておりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その他の方々かたがたが、私に、宝島についての顛末を、初めから終りまで、ただまだ掘り出してない宝もあることだから島の方位だけは秘して、すっかり書き留めてくれと言われるので、私は
「放送局の方々かたがたよ」彼は団長らしい落付を見せて、だが鋭く、呼びかけた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
当庵は斯様かように見苦しく候えば、年末に相迫り相果て候を見られ候方々かたがた、借財等のため自殺候様御推量なされ候事も可有之これあるべくそうらえども、借財等は一切無き某、厘毛たりとも他人に迷惑相掛け申さず
グワッ、グワッ、さあみんなわたしいておで。これからえら方々かたがたのお仲間なかまりをさせなくちゃ。だからお百姓ひゃくしょうさんの裏庭にわ方々かたがた紹介しょうかいするからね。でもよくをつけてわたしそばはなれちゃいけないよ。
「ところで、小松殿の方々かたがたは如何いたした?」
この方々かたがたがどんな暴風雨をも相手に闘って