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斷念
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だんねん
『
左樣、
殘念ながら、
西班牙や、
亞弗利加の
方は
今度は
斷念しました。』と、
私がキツパリと
答へると、
彼はポンと
膝を
叩いて
それ
故にかような
場合に
於ては、
屋外へ
出ることを
斷念し
屋内に
於て
比較的安全な
場所を
求めることが
寧ろ
得策であらう。
其れが一
度で
斷念すれば
其れ
迄であるけれど、
二度三度戸口に
立つて
足掻き
始めれば、
去つては
來り、
去つては
來り
一寸知れ
難い
處である。
遺跡は
廣いが、
先年、チヤンバーレン
氏が
大發掘を
試みたとかで、
畑地の
方は
斷念して、
臺地北側の
荒地緩斜面の
中に四
人は
入つた。
宜道は
斯んな
話をして、
暗に
宗助が
東京へ
歸つてからも、
全く
此方を
斷念しない
樣にあらかじめ
間接の
注意を
與へる
樣に
見えた。
宗助は
謹んで、
宜道のいふ
事に
耳を
借した。
形だけは
參りもせん
心は
容易くたてまつり
難しと
傳へ
給へと、
事もなく
言ひて
聞きいれる
景色のなきに、お
民いひ
甲斐なしと
斷念して
夫れよりは
又進めずとぞ、
經机の
由縁かくの
如し。
夫人は
屹度無事であらうと
言はれたに
拘らず、
日出雄少年も、
私も、
最早貴女とは、
現世でお
目に
掛る
事は
出來まいとばかり
斷念して
居りましたに。
彼はどうしても
斷念せねばならぬ
心の
苦しみを
紛らす
爲に
蕗の
葉や
桑の
葉を
干して
煙管の
火皿につめて
見たが
さはいへど
人妻ならば
及ぶまじことなり
確めて
後斷念せんのみ、
浮たる
戀に
心ろを
盡くす
輕忽しさよとも
覺さんなれど、
父祖傳來の
舊交ありとて、
其人の
心みゆる
物ならず、
家格に
隨ひ
門地を
尊び
印度洋の
藻屑と
消えてしまつたと
斷念した
時には、
實に
泣くより
辛かつたです。
さりながら
是は
叶なふべきことならず、
仮にもかゝる
心を
持たんは、
愛するならずして
害するなり、いで
今よりは
虚心平氣の
昔しに
返りて
何ごとをも
思ふまじと、
斷念いさましく
胸すゞしくなるは