トップ
>
撓
>
たわ
ふりがな文庫
“
撓
(
たわ
)” の例文
ただ
撓
(
たわ
)
み曲った茎だけが、水上の形さながらに水面に落す影もろとも、いろいろに
歪
(
ゆが
)
みを見せたOの字の姿を池に並べ重ねている。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
再び高い
梯
(
はしご
)
に昇って元気よく仕事をしていた。松の枝が時々にみしりみしりと
撓
(
たわ
)
んだ。その音を
聴
(
きく
)
ごとに、私は不安に
堪
(
たえ
)
なかった。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
遮二無二
(
しゃにむに
)
、木蓮の枝にしがみついて、木の
撓
(
たわ
)
むのも、枝の折れるのも頓着なく、凧を引っぱずしにかかるものだから、神尾主膳が
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
梅の木はみな古く、
撓
(
たわ
)
めた幹や枝ぶりが、
午
(
ひる
)
ちかい日光のなかで、いかにも清閑に眺められたが、新八のところからは花は見えなかった。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
盆栽でよく見かける恰好のいい黒槍の一尺ほどのものが、
棕梠縄
(
しゅろなわ
)
で枝を
撓
(
たわ
)
められたまま岩間に生えている。植木屋の仕業に相違あるまい。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
彼女の心は、すでに十分に
鞣
(
なめ
)
され、
撓
(
たわ
)
められてあった。この上はただ、彼女に最後の暗示を与えさえすればよいのであった。……
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
やわやわと
撓
(
たわ
)
み、つづいて沈み、方形であった紙帳が、三角の形となって、暗い中に懸かって見えた。しかし、左門の姿は見えなかった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
クールフェーラックとジョリーとボシュエとフイイーとコンブフェールとが長くささえていた中央部は、彼らの戦死とともに
撓
(
たわ
)
んできた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
男は石膏の
丸
(
たま
)
を放つこと雨より繁かりしかど、屈せずしてかの竿を
撓
(
たわ
)
ませんとせしに、竿は半ばよりほきと折れて、燭の
束
(
たば
)
ははたと落つ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
卑弥呼は鹿の毛皮に身を包んで宮殿からぬけ出ると、高倉の
藁戸
(
わらど
)
に添って大兄を待った。
栗鼠
(
りす
)
は頭の上で、栗の
梢
(
こずえ
)
の枝を
撓
(
たわ
)
めて音を立てた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
依って曰く、敵を殺すの多きを以て勝つにあらず、威を耀かし気を奪い勢を
撓
(
たわ
)
ますの理を
暁
(
さと
)
るべしと。中村は
近江
(
おうみ
)
国の人なり。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
胸の
血汐
(
ちしお
)
の通うのが、波打って、風に
戦
(
そよ
)
いで見ゆるばかり、
撓
(
たわ
)
まぬ
膚
(
はだえ
)
の未開紅、この意気なれば二十六でも、
紅
(
くれない
)
の色は
褪
(
あ
)
せぬ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そは意志は自ら願ふにあらざれば滅びず、あたかも火が
千度
(
ちたび
)
強ひて
撓
(
たわ
)
めらるともなほその中なる自然の力を現はす如く爲せばなり 七六—七八
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
それも強雨の霧しぶきの中の浜辺で、あちこちと奔走している黒い人影までが、つぎつぎと吹き飛ばされそうに
撓
(
たわ
)
んでいる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
路傍
(
みちばた
)
の柿の樹は枝も
撓
(
たわ
)
むばかりに黄な珠を見せ、粟は穂を垂れ、豆は
莢
(
さや
)
に満ち、既に刈取つた田畠には浅々と麦の
萌
(
も
)
え初めたところもあつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
人は何とも思え、自分は正しい勇ましい道を
辿
(
たど
)
っているのだと、彼女は心の中で、ともすれば
撓
(
たわ
)
みがちな勇気を振い起した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
友人が一緒になる場合の条件などを提げて出て行ってから、二時間ばかり経つと、笹村も
撓
(
たわ
)
められた竹が
旧
(
もと
)
へ
弾
(
は
)
ね返るような心持で家へ帰った。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
晴れても曇っても、冬が日一日と溶け去るけはいは争われなかった。街路樹の梢は、いつか
靱
(
しな
)
やかな
撓
(
たわ
)
みを持ち始めた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
一度は掘り返して火に焼いてしまおうと思った、やくざな梨畑の樹という樹は、枝も
撓
(
たわ
)
むばかりに大きな果実を幾つとなくつけているのであった。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
上からサーッと風が吹きおろすと、山の木が一斉に
靡
(
なび
)
いて、鳴きしきっていた蝉の声が、一瞬吹き
撓
(
たわ
)
められるように感ぜられる、というのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
そして芽は幹の尖端に生ずる。枝を持つたのもあるが、先づ幹だけの一本立が多い。何しろとげだらけの幹を
撓
(
たわ
)
めて摘むので、なかなか骨が折れる。
家のめぐり
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
すなわち
撓
(
たわ
)
むの意義からタマの名が起ったと解したのと全然同一の理由で、撓むことがすなわち曲ることなのである。
八坂瓊之曲玉考
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
義を見ては死を辞せざる、困苦に堪へ
艱難
(
かんなん
)
に
克
(
か
)
ち、初志を貫きて屈せず
撓
(
たわ
)
まざる、一時の私情を制して百歳の事業を
成就
(
じょうじゅ
)
する、これら皆気育に属す。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その時のことを想い出して
信神
(
しんじん
)
も信神であるが、これだけのことを
倦
(
あ
)
きず
撓
(
たわ
)
まず、毎日々々やり透すということは普通のものに出来ることではない。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼らはフランス人のごとき
喧騒
(
けんそう
)
浮薄な快活さを有しない。彼らは魂を多分にもち、その愛情はやさしくかつ深い。働いて
倦
(
う
)
まず、企画して
撓
(
たわ
)
まない。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
お梅(かの女の名にして今は予が敬愛の妻なり)の苦心、折々
撓
(
たわ
)
まんとする予が心を勤め
励
(
はげ
)
まして今日あるにいたらせたる功績をも叙せざるべからず。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
ややしばらく
凝視
(
みい
)
っているうちに、彼の心の裡のなにかがその梢に
棲
(
とま
)
り、高い気流のなかで小さい葉と共に揺れ青い枝と共に
撓
(
たわ
)
んでいるのが感じられた。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
私の才能の半ばを
抑
(
おさ
)
へつけ、私の趣味を元來の傾向から
撓
(
たわ
)
め、私が生れつき何の興味も持てない仕事に私を強ひて導き入れねばならないやうな氣がした。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
とそこの、三つばかり先のテーブルに、二十七八の美貌の婦人が、綺麗な左手の指を
撓
(
たわ
)
めながらこっちを視詰めていた。彼はその婦人に向けて眼を
睜
(
みは
)
った。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
ボンヤリ見ている私は手伝いたくてウズウズしている。小僧さんが
天秤棒
(
てんびんぼう
)
が
撓
(
たわ
)
むほど、
籠
(
かご
)
に一ぱいの大きな
瓜
(
うり
)
を担いで来て、
土橋
(
どばし
)
をギチギチ急いで渡ってた。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
どうしても真犯人を見出して処刑し、永年の
癌
(
がん
)
であった彼等一味の、のさばり
加減
(
かげん
)
を
撓
(
たわ
)
める必要があった。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
活溌々転
轆々
(
ろくろく
)
として
凡
(
およ
)
そその
馳騖
(
ちぶ
)
するを得る所はこれに馳騖し、いよいよ進みて少しも
撓
(
たわ
)
まざる者なり。
『東洋自由新聞』第一号社説
(新字旧仮名)
/
中江兆民
(著)
一間もあろうかと思う
張子
(
はりこ
)
の筆や、畳一畳敷ほどの西瓜の
作
(
つくり
)
ものなどを附け、竹では
撓
(
たわ
)
まって保てなくなると、屋の
棟
(
むね
)
に飾ったなどの、法外に大きなのがあった。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
そうして今彼が歩いている弓型に
撓
(
たわ
)
むその町の通りは、急にその反対の方へ反り返えるように思われた。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
梢一杯に
撓
(
たわ
)
み
零
(
こぼ
)
れるほど実ったり、美しい真赤なぐみの玉が塀のそとへ枝垂れ出したのや、青いけれど甘みのある林檎、杏、雪国特有のすもも、毛桃などが実った。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
御影石
(
みかげいし
)
を敷き詰めて枝も
撓
(
たわ
)
わに、
五月躑躅
(
さつきつつじ
)
の両側に咲き乱れた、広い道路を上った小高い丘の中腹には、緑の山々を背景にした立派な家が、
聳
(
そび
)
え立っているのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「たわ」及「たをり」は今日の
撓
(
たわ
)
むという語と、語源を同じくしていることは明かであるが、その「たわ」は山頂の線が一所たわんで低くなっていることをいうのか
峠に関する二、三の考察
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
十八年前にムンツの金属という
撓
(
たわ
)
み易いが、ごく強い金属を硝酸第二水銀の液に漬けると、すぐ
脆
(
もろ
)
い硬い物になることをファラデーに見せようと思って持って行った。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
撓
(
たわ
)
む
艪
(
ろ
)
に押されおされた渡し舟は、ゆっくりと大きな半円を描いてずしんと南の岸にぶっつかった。その足場にとびあがった阿賀妻は、
咄嗟
(
とっさ
)
に、官員の土地を感じた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
その枝の片なびきは、満木の緑を
揺
(
ゆす
)
った劫風の方向を示し、枝の
撓
(
たわ
)
みは、積雪の圧力を物がたる。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
そのかわり葉かげにかくれていた柿の実は色づいて、枝は重さを支え
兼
(
かね
)
るように
撓
(
たわ
)
んで来た。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
これらの樹木はいずれもその枝の
撓
(
たわ
)
むほど、重々しく青葉に蔽われている上に、気味の悪い名の知れぬ
寄生木
(
やどりぎ
)
が大樹の
瘤
(
こぶ
)
や幹の股から髪の毛のような長い葉を垂らしていた。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
何しろ、ポムプへ引いてある動力線の電柱が、草見たいに
撓
(
たわ
)
む程、風が雪と混って吹いた。
坑夫の子
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
樹の鳴る音、枝の
撓
(
たわ
)
む音、葉の触れ合ふ音、あらゆる世の中の
雑音
(
ざふおん
)
、悲しいとか
佗
(
わび
)
しいとか
辛
(
つら
)
いとか
恨
(
うら
)
めしいとかいふ音が一斉に其処に集つてやつて来たやうにかれは感じた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
右手の壁は腰の辺から硝子戸になっているので、
始
(
はじめ
)
て外が見えた。石灯籠の笠には雪が五六寸もあろうかと思う程積もっていて、竹は何本か雪に
撓
(
たわ
)
んで地に着きそうになっている。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「
合点
(
がってん
)
です!」意気込んだ宅助、三角
洲
(
す
)
を右に見て、腕ッ限りグングンと
櫓
(
ろ
)
を
撓
(
たわ
)
める。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不死不朽、彼と
与
(
とも
)
にあり、衰老病死、我と与にあり。鮮美透涼なる彼に対して、
撓
(
たわ
)
み易く折れ易き我れ如何に
赧然
(
たんぜん
)
たるべきぞ。
爰
(
こゝ
)
に於て、我は一種の悲慨に撃たれたるが如き心地す。
一夕観
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
そんな性質にもっとも背馳するもの——なにか深く計算された策略を
撓
(
たわ
)
みなく実践しろとか、卑小な狡さをときに応じて発揮しろなどということを奨めるのはもってのほかであった。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
湿気を含んだ空気は、
沈鬱
(
ちんうつ
)
に
四辺
(
あたり
)
を落着かせた。高く
秀
(
ひい
)
でた木の枝が、風に
撓
(
たわ
)
んで、伏しては、また起き上り、また打ち伏していた。他の低い木の枝は、右に泳ぎ、左に返っていた。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
若
(
も
)
し
強
(
し
)
いて道衍の為に解さば、
惟
(
ただ
)
是
(
こ
)
れ道衍が天に
禀
(
う
)
くるの気と、自ら
負
(
たの
)
むの材と、
莾々
(
もうもう
)
、
蕩々
(
とうとう
)
、
糾々
(
きゅうきゅう
)
、
昂々
(
こうこう
)
として、屈す
可
(
べ
)
からず、
撓
(
たわ
)
む可からず、
消
(
しょう
)
す可からず、
抑
(
おさ
)
う可からざる者
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
撓
漢検1級
部首:⼿
15画
“撓”を含む語句
撓々
不撓
可撓性
撓曲
蝋質撓拗性
不撓不屈
不屈不撓
屈撓性
百折不撓
軟撓
豪胆不撓
袋撓刀
蝋質撓拗症
背撓馬
撓舟
撓直
撓柔
撓枉過中
撓屈
撓垂
...