)” の例文
取り替えてきた扇は、桜色の薄様を三重に張ったもので、地の濃い所にかすんだ月がいてあって、下の流れにもその影が映してある。
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
おお、洋傘直し、洋傘直し、なぜその石をそんなにの近くまでって行ってじっとながめているのだ。石に景色けしきいてあるのか。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いきいきとけていて、そのいろといい、つちいろといい、そらかんじといい、それはいまにもうごきそうにけていたのでありました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
片口は無いと見えて山形に五の字のかれた一升徳利いっしょうどくりは火鉢の横に侍坐じざせしめられ、駕籠屋かごやの腕と云っては時代ちがいの見立となれど
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その第三頁目には王冠をいただいた白髪小僧の姿と美事な女王の衣裳を着けた美留女姫が莞爾にっこと笑いながら並んでいる姿がいてあった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
それをこれほど寫生的しやせいてきくには、實物じつぶつによつて寫生しやせいしたのでなければならぬといふことなどが、だん/\わかつてたのみでなく
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
久我鎮子くがしずこが提示した六こまの黙示図は、凄惨冷酷な内容を蔵しながらも、外観はきわめて古拙な線で、しごく飄逸ユーモラスな形にかれていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
謡曲うたひの好きな方は、画もよくお解りだから頼もしい。なに、画は屹度きあげますよ。それぢや今日は一つ聴いて戴きますかな。」
くもならば、くもに、うつくしくもすごくもさびしうも彩色さいしきされていてある…取合とりあふてむつふて、ものつて、二人ふたりられるではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
家康は、信雄が、何しに伊勢から出て来たか、目的は何? ——と、もう信雄の顔にいてあるものを、ジロと、細目に読みとって
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あなたのお宅の御主人は、面白いをおきになりますね。さぞおうちのなかも、いつもおにぎやかで面白くいらっしゃいましょう。」
絵具を買って来ると、それを机の上に並べて喜んでいらっしゃるし、……絵をく方は、そんなに絵具が嬉しいんでしょうかしら。
未来の天才 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あんな絵具さえあれば僕だって海の景色を本当に海に見えるようにいて見せるのになあと、自分の悪い絵具を恨みながら考えました。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
天津てんしん方若はうじやく氏のコレクシヨンの中に、珍しい金冬心きんとうしんが一幅あつた。これは二尺に一尺程の紙へ、いろいろの化け物をいたものである。
支那の画 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いや、大きい二重◎が一つ、肉太の二の字が一つ、もう一つ小さい二重◎が一つ、——こんな変哲もないものをいてあるのです。
それでも、ここのみんなと同じように、ひとりでいい気になって見栄坊みえぼうなもんですから、絵では寸法を引延ばしてかせたのだわ。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
ある時のごとき、彼は「天井の中心飾り」と称する線のこんぐらかりを見事にいてみせた。小さい連中は、感嘆これをひさしゅうした。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「ふむ、そうなのか。それにしてはいい体してるじゃないか。僕も一度君をいてみたいと思っているんだが、典型的なモデルだね。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
よし子は何時いつにか、水彩画のつゞきをき始めた。三四郎がそばにゐるのが丸で苦になつてゐない。それでゐて、く返事をする。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
隣にある昔の市長の住んだドガアルの宮殿はモネがこのいた絵で見知つて居たが、僕の着いた当日は何かの節会せちゑで縦覧させない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
其処そこに北太平洋がひそんで居るのである。多くの頭が窓から出て眺める。汽車は尾花おばなの白く光る山腹を、波状をいて蛇の様にのたくる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ききなさるが、さっきもいった通り、女はちょうど師匠が前にきなすった、あの北国五色墨ほっこくごしきずみン中の、てっぽうそっくりの体なんで。……
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
古尾谷こをたにさんが私の出たあとへ来て下すつたさうである。某々二氏の土産みやげのお菓子を桃が見せた。ひかる今日けふいて来たのは男雛をとこひなであつた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そして、土人たちの願いによって、ほばしらの上へ、わが軍艦旗に似た旗印をかかげた。土人が指を切って、その血でいた旗である。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ぐっと差し出した軒灯に、通りすがりにも、よく眼に付くように、向って行く方に向けて赤く大きな煙草の葉をしるしいている。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
ふ、ふ、黒門町のお初ともあろうものを、あんな助平坊主に預けた程のうすぼんやりが、さぞ見ッともないえづらをくのだろうねえ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
此歌は長下ながのしも郡、物部古麿もののべのふるまろという者の作ったものである。一首は、自分の妻の姿をも、画にかいて持ってゆく、そのく暇が欲しいものだ。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
と言いながら、その時次郎は私の四畳半の壁のそばにたてかけた本棚ほんだなの前に置き替えて見せた。兄のいた妹の半身像だ。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
其画それは石壁の上に土を塗りなおその上にチベットの天然の石灰のようなものを塗った所へ種々の方法を尽して立派にき上げたものですが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それにき方が、ある人には煩瑣はんさにすぎると思はれるやうな細かい描写をやつてゐる。一分間の独想を二頁も三頁も書いてゐるところがある。
J. K. Huys Mans の小説 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
さうしてゐる所へ、一人の画家ゑかきさんが参りました。この画家さんは妙な画家で、何一つ自分で考へ出してはけないのです。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
身幅みはばの狭いのは職人だといってダブダブした着物ばかり着ていた。或時は無地物むじもの泥絵具どろえのぐでやたらしまいたのを着ていた。
青絵というのは、染付そめつけのことで、呉須土ごすどいた南画なんがめいた構図で、よく寒山拾得かんざんじっとくのような人物や山水さんすいなどが、達筆に密画でなく描かれていた。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「またきか」とおたつが云った、「そんなものどこがいいだえ、そんなことばっかししてえて頭がめんべえがね」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
日本が好きで遥々はるばる独乙から、やつて来てペン画をいてる、フリードリッヒ・グライルといふのがやつて来たからだ。
散歩生活 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
彼は以前依頼たのまれて二三度絵をいたバルトン美術店の主人を訪ねて事情を打明けたが、世間の景気がわるいので何ともしてもらう事は出来なかった。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「髑髏だって!」とルグランは鸚鵡返おうむがえしに言った。——「うん、——そうだ、いかにも紙にいたところでは幾分そんな格好をしてるな、たしかに。 ...
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
極彩色、生け彩色、俗にいう桐油とうゆ彩色など。その彩色に属するもので、細金ほそがねというのがある。これは細金で模様を置くのである。くとはいえない。
『そうですね、しかしかえってこんな色の方がごまかされてきよいかもしれません、』と小山は笑いながら答えた。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
三羽のとんびしきりいて舞っている空高く、何処どこからともなく勇ましい棟上むねあげの木遣きやりの声が聞えて来るのであった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして畫をく事を教へて上げよう、それからもしも私がもう二月の間おなじやうな進歩をつゞけたなら、佛蘭西語を教へようと約束して下さつた。
この人のいたは、日本でもたれか持っている人があるだろうが、中々なかなか巧いもので、ことに故郷の布哇はわいで有名な、かの噴火口の夜景が得意のものであった。
感応 (新字新仮名) / 岩村透(著)
雨の汚点しみが、壁に異様な模様をいている。化粧台の鏡には大きな亀裂ひびがはいり、縁の欠けた白い陶器の洗面器の中に、死んだ蠅が一匹ころがっていた。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
アハハハ、さかさ屏風とは驚いたろう。裏の坊主が屏風に上手に坊主の絵をいた。これを早口にいってみろ。俺が今いう。いいか最後の上手に坊主の絵を
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
両側へずーっと地口行灯じぐちあんどうかゝげ、絹張に致して、良い画工えかき種々さま/″\の絵をかせ、上には花傘を附けまして両側へ数十本立列たちつらね、造り花や飾物が出来ます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こんなに暗い晩は、きっとお月様が御病気なのだろうと、より江は兄さんのいる店のへ行ってみました。兄さんは帳場の机で宿題の絵をいていました。
(新字新仮名) / 林芙美子(著)
自體じたい周三が、此のき始めた時の意氣込いきごみと謂ツたら、それはすばらしいいきほひで、何でもすツかり在來ざいらいの藝術を放擲うつちやツて、あたらしい藝術に入るのだと誇稱こしようして
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
戸口の上の方には、壁に平らにくぎ付けにされてる一枚の板が見られた。その板には、一人の男が他の一人の男を背負っているように見える絵がいてあった。
「こんなことを言うと変に思いになるかもしれませんが、よしそれが冗談であるにしても、若い女の身体へ絵をくことは決してなさるものではありませんよ」
メデューサの首 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
肖像画をかせるために著席している人との類似を更に完全にしようと、ロリー氏はうとうとと寐入ねいってしまった。朝食が運ばれて来たのに彼は目を覚された。