打込うちこ)” の例文
東郷大将とうごうたいしょうの名は知って居るが、天皇陛下を知らぬ。明治天皇めいじてんのう崩御ほうぎょの際、妻は天皇陛下の概念を其原始的頭脳に打込うちこむべく大骨折った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
金毛九尾の狐でもい、くずの葉さらに結構、にもかくにも、この女性に飽々あきあきした心をたぎり返らせて、命までもと打込うちこませる魅力を発散する女は無いものであろうか。
猟色の果 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
奇觀きくわん妙觀めうくわんいつつべし。で、激流げきりう打込うちこんだ眞黒まつくろくひを、したから突支棒つツかひぼうにした高樓たかどのなぞは、股引もゝひきさかさまに、輕業かるわざ大屋臺おほやたいを、チヨンとかしらせたやうで面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
数千本の丸太を湖の浅い部分に打込うちこんで、その上に板をわたし、そこに彼等の家々は立っている。ゆかのところどころに作られた落し戸をけ、かごつるして彼等は湖の魚をる。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
関東ではひろくネッキともネンボウとも呼んでいるが、それがまた木のかぎのさきをとがらしたものを、柔かい田の土などの中に打込うちこんで、相手の立てたのを倒す遊びであった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
目元めもと宿やどれるつゆもなく、おもりたる決心けつしんいろもなく、微笑びせうおもてもふるへで、一通いつゝう二通につう八九通はつくつうのこりなく寸斷すんだんをはりて、さかんにもえ炭火すみびなか打込うちこみつ打込うちこみつ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自然しぜん法則ほうそく依然いぜんとしてもとのままです、人々ひとびとはやはり今日こんにちごとみ、い、するのでしょう、どんな立派りっぱ生活せいかつあかつきあらわれたとしても、つまり人間にんげん棺桶かんおけ打込うちこまれて
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
余りの事に友之助がかたりめ泥坊めと大声を放ってのゝしりますと、門弟どもが一同取ってかゝり、友之助を捕縛ほばくして表へ引出し、さん/″\打擲ちょうちゃくした揚句あげくはて、割下水の大溝おおどぶ打込うちこ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
方様かたさまに口惜しい程憎まれてこそ誓文せいもん移り気ならぬ真実を命打込うちこんで御見せもうしたけれ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
水煙すいゑんぶ、逆浪さかなみ打込うちこむ、見上みあぐる舷門げんもんほとり、「ブルワーク」のほとり、士官しくわん水兵すいへいしきりにさけんで、艇尾ていび大尉たいゐラタくだけんばかりににぎめて、奈落ならくち、天空てんくう
あるかれかぶ唐鍬たうぐはつよ打込うちこんでぐつとこじげようとしたとききたへのいゝ白橿しらかしとはつよかつたのでどうもなかつたが、てつくさびさきめた唐鍬たうぐはの四かくあなところにはかゆるんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
地獄の鬼だって、そんなむごたらしい事ばかり追い廻しちゃ居まい——それほど芸とやらが大事なら、美事みごと私も成敗しておくれ。お察しの通り欽さんは私の命まで打込うちこんだ深間さ。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お村は昨夜ゆうべの夜半より、藪の真中まなか打込うちこまれ、身動きだにもならざるに、酒のしたひて寄来よりくの群は謂ふもさらなり、何十年を経たりけむ、天日てんじつ蔽隠おおひかくして昼なほくらき大藪なれば
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
残りなく寸断にし終りて、さかんにもえ立つ炭火のうち打込うちこみつ打込みつ、からは灰にあともとゞめず、煙りは空に棚引たなびき消ゆるを、「うれしや、わが執着も残らざりけるよ」と打眺うちながむれば
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自然しぜん法則はふそく依然いぜんとしてもとまゝです、人々ひと/″\猶且やはり今日こんにちごとみ、い、するのでせう、甚麼立派どんなりつぱ生活せいくわつあかつきあらはれたとしても、畢竟つまり人間にんげん棺桶くわんをけ打込うちこまれて、あななかとうじられてしまふのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
巡「コラ分らぬ奴じゃ、これへ二人の者を打込うちこんだではないか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
よし、と打込うちこんで、ぐら/\とえるところを、めい/\もりに、フツフといて、」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
浜にいるのが胡坐あぐらかいたと思うと、テン、テン、テンテンツツテンテンテン波にちょう打込うちこむ太鼓、油のような海面うなづらへ、あやを流して、響くと同時に、水の中に立ったのが、一曲、かしらさかさまに。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
カン/\カン/\と、不意ふい目口めくち打込うちこまれるやうにひゞきました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)