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扉
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と
ふりがな文庫
“
扉
(
と
)” の例文
「行列が動き出そうとするとき、乗物の
扉
(
と
)
の隙間から、花嫁の
裾
(
すそ
)
が
喰
(
は
)
み出していることに気が付いて、私が直してやりましたが——」
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
風雨に古びたまま、幾百年も手入れもしていない建物に、月の白い光が、
扉
(
と
)
の朽ちた四方の破れから刃のように中へさしこんでいた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あたしそう思って、できるだけ早く助けてやろうとしましたが、
扉
(
と
)
に鍵がかかっていましたので、助けてやりようがありません」
オシャベリ姫
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
かぐつちみどり
(著)
一方ヒーヴリャは、なほも烈しく、やつきになつて
扉
(
と
)
を打ちたたく音に急きたてられて、前後の弁へもなく門の方へ駈け出して行つた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
それを見届けると、大蘆原軍医は始めて
莞爾
(
かんじ
)
と笑って、
側
(
かたわ
)
らに
擦
(
す
)
りよってくる紅子の手をとって、入口の
扉
(
と
)
の方にむかって歩きだした。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
暫くすると、激しい靴音がして独逸兵が
扉
(
と
)
を跳ね飛ばすやうな勢で入つて来た。
農夫
(
ひやくしやう
)
は両手の
掌面
(
てのひら
)
に
填
(
は
)
めてゐた顔を怠儀さうにあげた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その駕籠の
扉
(
と
)
に引き添って、地に膝を突いて、小次郎が烈しくあえぎながら、それでも刀は手から放さず、握ったままで静まっていた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ヂュリ おゝ、
早
(
はや
)
う
扉
(
と
)
を
閉
(
し
)
めて、そしてしめてまうたら、わたしと一しょに
泣
(
な
)
いて
下
(
くだ
)
され。もう
絶望
(
だめ
)
ぢゃ!
絶望
(
だめ
)
ぢゃ、
絶望
(
だめ
)
ぢゃ!
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
その
扉
(
と
)
には、女中の言葉の通り昔風の大きな鉄の錠前が、まるで造りつけの装飾物でもある様に、ひっそりと掛っているばかりであった。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
、私は
扉
(
と
)
の外から聞いたんですもの。それは政治のことでしょう。いやよ。すぐ翌日から政治の話をするなんていけないことよ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
往って見ると此は
不覚
(
ふかく
)
、
扉
(
と
)
がしまって居る。
駅夫
(
えきふ
)
に聞くと、睡むそうな声して、四時半まではあけぬと云う。まだ二時前である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そして隣りの室の前を通りかゝりましたら、
扉
(
と
)
が開け放してあって、さっきの給仕がひどく
悄気
(
しょげ
)
て頭を垂れて立ってゐました。
毒蛾
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
玄関の
扉
(
と
)
が、内側から無造作に引きあけられて、よく釣り合いのとれた、
背
(
せい
)
の高い、三十五、六の青年が屈託のないようすで現われて来た。
キャラコさん:09 雁来紅の家
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
午後になって、ドーブレクの留守を幸い、彼は二階の
室
(
へや
)
の戸を調べて見た。一見して解った。
扉
(
と
)
の下のはめ板が一枚巧みにはずされている。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
与兵衛はかえってお玉の縋るのを突き放すように先へ出て、
扉
(
と
)
をハタと締め切って、自分だけさっさと出て行ってしまいます。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
門番の教へて
呉
(
く
)
れた
儘
(
まゝ
)
第二階へ昇つて
直
(
す
)
ぐ左の突当りの
扉
(
と
)
のある鈴を押すと、髪を綺麗に
梳
(
すき
)
分けた白い夏服の
下部
(
ギヤルソン
)
が出て来た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
とにかく犯行の動機は明瞭です。問題は、三人の気狂いの共犯か、それとも三人の内の誰かがやって、あとは
扉
(
と
)
が開いてるを
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
御廟子
(
みずし
)
の裏へ通う板廊下の正面の、
簾
(
すだれ
)
すかしの観音びらきの
扉
(
と
)
が半ば開きつつ
薄明
(
うすあかる
)
い。……それを
斜
(
ななめ
)
にさし
覗
(
のぞ
)
いた、半身の気高い婦人がある。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
軽い
小刻
(
こきざみ
)
な
韈
(
くつ
)
の音がすると、喬生は急いで
起
(
た
)
って往って
扉
(
と
)
を開けた。少女の持った真紅の鮮かな牡丹燈が
先
(
ま
)
ず眼に
注
(
つ
)
いた。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
はね起きて、どこかに出口はないかと、手探りではい廻ると、幸い
扉口
(
とぐち
)
のようなものを探し当てた。そこで静かに
扉
(
と
)
を明けて、暗い廊下へ出た。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
○二月、歌舞伎座にて「
関
(
せき
)
の
扉
(
と
)
」を上演。団十郎の関兵衛、菊五郎の墨染は、双絶と称せらる。菊之助の小町姫も好評。
明治演劇年表
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
詰らなさうに多喜子は言つたが、『私、かう何だか怖くつて泣いたやうなことを覚えてゐるんだけども……。ぱたん、ぱたんと
扉
(
と
)
が動いたやうな?』
父親
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
と……玄心斎が、蔵の
扉
(
と
)
まえにつづくあんどん部屋の前を通りかかると、
室内
(
なか
)
から、男とおんなの低い話し声がする。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
扉
(
と
)
翻りて
紅
(
くれない
)
のリボンかけたる
垂髪
(
さげがみ
)
の——十五ばかりの
少女
(
おとめ
)
入り来たり、中将が大の手に
小
(
ち
)
さき読本をささげ読めるさまのおかしきを、ほほと笑いつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「
母
(
かあ
)
さん、」とマリちゃんが
言
(
い
)
った。「
兄
(
にい
)
さんは
扉
(
と
)
の
前
(
まえ
)
に
坐
(
すわ
)
って、
真白
(
まっしろ
)
なお
顔
(
かお
)
をして、
林檎
(
りんご
)
を
手
(
て
)
に
持
(
も
)
っているのよ。 ...
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
しかし、
扉
(
と
)
を叩いても返事がなく、やがて階下の炊事場にいるのを発見した。が、お勢は、左枝の視線を見返して
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
冷い壁にかかる銅版画のソクラテスの額の下へも行き、
置戸棚
(
おきとだな
)
の
扉
(
と
)
に張りつけてある大きな姿見の前へも行った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「一の
扉
(
と
)
に到りし時焔はわななきぬ、二の扉に到りし時焔さゝやきぬ、三の扉に到りし時、
灯火
(
ともしび
)
は消えはてぬ」
嘆きの孔雀
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
わたくしは大方馴染の客であろうと思い、出ようか出まいかと、様子を
窺
(
うかが
)
っていると、外の男は窓口から手を差入れ、猿をはずして
扉
(
と
)
をあけて
内
(
なか
)
へ入った。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
面
(
かほ
)
にひやひやと物のこぼるるを、雨や漏りぬるかと見れば、屋根は風にまくられてあれば、
一一三
有明月のしらみて残りたるも見ゆ。家は
扉
(
と
)
もあるやなし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
更に双者交随の所見を呈し度くば、芝居の「
関
(
せき
)
の
扉
(
と
)
、下」に人を誘おう。大伴黒主と桜の精の立合いは、闘争であって舞踊であり、舞踊であって闘争である。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
やがて手探りで
扉
(
と
)
の
閂
(
かんぬき
)
をおろすと、少し安心して、
衣嚢
(
かくし
)
から小さな懐中電燈を出して
四辺
(
あたり
)
を照らしたが、闇を貫くその
燈影
(
ほかげ
)
は、胸の動悸に震えてちらちらした。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ぴたりと閉めきってあるので、そのまま行き過ぎようとしたが、念のためだと二三歩後戻りをして、前後を見廻しながら、そっとその
扉
(
と
)
に手を懸けようとした。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
その
扉
(
と
)
は今
少時
(
しばし
)
がほど明けて置かれよ。やよ。少時が程ぢや。(怒りて。)はれ。内に人が入りておぢやるといふにな。(門全く閉さる。内より女の声聞こゆ。)
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
重そうな
扉
(
と
)
を持った戸棚にしまって、錠を下ろし、灯を消して、さてやっと、起ち上るのであった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
彼は
扉
(
と
)
のしまつた小屋の前に暫くぼんやりと立つてゐたが、仕方なくまたぶらぶらと歩き始めた。
青い焔
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
浄瑠璃
(
じょうるり
)
『
関
(
せき
)
の
扉
(
と
)
』はこの人の作だそうである。寛政六年八月に、五十七歳で歿した。五郎作が二十六歳の時で、抽斎の生れる十一年前である。これが初代劇神仙である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
露路口に
総後架
(
そうこうか
)
の
扉
(
と
)
のような粗末な木戸があった。入口に三間
間口
(
まぐち
)
位な猿小屋があった。大猿小猿が幾段かにつながれていて、おかみさんが
忙
(
せわ
)
しなく
食
(
たべ
)
ものの世話をしていた。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
申すまでもないことでげすが墨染とはお芝居なんぞの中幕によく
演
(
や
)
るあの
関
(
せき
)
の
扉
(
と
)
でげすな、
大伴
(
おおとも
)
の
黒主
(
くろぬし
)
が小町桜の精に苦しめらるゝ花やかな幕で、お芝居には至極結構なもので
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
辛
(
やつ
)
と
少許
(
すこし
)
入口の
扉
(
と
)
を開けては、
種々
(
いろん
)
な道具の
整然
(
きちん
)
と列べられた
室
(
へや
)
の中を覗いたものだ。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
が、
幸
(
さいわい
)
、その時開会を知らせるベルが鳴って、会場との境の
扉
(
と
)
がようやく両方へ開かれた。そうして待ちくたびれた聴衆が、まるで
潮
(
うしお
)
の引くように、ぞろぞろその
扉口
(
とぐち
)
へ流れ始めた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
たしか
扉
(
と
)
の締まつてゐなかつた一つの部屋にはひると、思ひがけなく、その大きな部屋の中はうす暗く、入り口のすぐ近くのテエブルの片隅で、鷲尾洋三が一人で何か書き物をしてゐた。
思ひ出すままに:「文藝春秋」と菊池と
(新字旧仮名)
/
宇野浩二
(著)
私はやっと振り払って、外に出てその物置へ行った時は、もうその姿は見えませんでした。しかしたしかにその者は来た形跡はあって、
扉
(
と
)
の上には例の舞踏人姿の
画
(
え
)
がかかれてありました。
暗号舞踏人の謎
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
友人と一緒に
捏
(
こ
)
ねかえす人込みの銀座へ出て、風月で飯を食ったことや、元日に
歌舞伎
(
かぶき
)
で「関の
扉
(
と
)
」を見て、二日の朝
夙
(
はや
)
くにけたたましいベルに起こされ、妻がにわかに
仆
(
たお
)
れたことを知り
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
すると此時
忽
(
たちま
)
ち
室
(
へや
)
の
扉
(
と
)
がスーと明いて、入って来たのは此家の老
家扶
(
かふ
)
で、恭しく伯爵の前に頭を下げ、「殿様に申上げます
唯今
(
ただいま
)
之れなる品物が、
倫敦
(
ロンドン
)
の
玉村
(
たまむら
)
侯爵家より到着致して御座います」
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
さわやかな春の朝日が森をはなれて
黄金
(
こがね
)
の光の雨を緑の麦畑に、黄色な菜畑に、げんげさくくれないの田に降らす、あぜの草は夜露からめざめて軽やかに頭を上げる、すみれは
薄紫
(
うすむらさき
)
の
扉
(
と
)
を開き
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
門の外にはいかめしく武装した
清盛
(
きよもり
)
の兵士らがわしの車を
擁
(
よう
)
して待っていた。彼らのある者は
剣
(
つるぎ
)
や
槍
(
やり
)
で
扉
(
と
)
をこわれるほどたたいて早く早くと
促
(
うなが
)
していた。妻はまっさおな顔をしてふるえていた。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
見窄らしく
扉
(
と
)
に
衝
(
あた
)
つて、わが家の角を折れていつた。……二
足
(
あし
)
、三
足
(
あし
)
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
窓を破り
扉
(
と
)
を押しのけて乱入すという勢いに、ロイド・ジョージはついに一語をも発するを得ず、演壇の後方なる一小室に難を避け警官の制帽制服を借りてにわかに変装し、わずかに会場を抜けいで
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
さはかたくうつろの闇の
扉
(
と
)
もとぢし歌の器は——
故郷の花
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
“扉”の意味
《名詞》
(とびら)片方を蝶つがいなどで固定して、それを軸に回転させることにより開け閉めを行う戸。
(出典:Wiktionary)
“扉”の解説
扉(とびら、en: door、ドア)とは、建物や部屋などの入口などにつけられ、開口部を閉じたり、外部と遮断する機能をもつ部分。
(出典:Wikipedia)
扉
常用漢字
中学
部首:⼾
12画
“扉”を含む語句
硝子扉
扉口
大扉
鎧扉
鉄扉
門扉
開扉
車扉
土扉
両扉
石扉
格子扉
二重扉
小扉
閉扉
玻璃扉
片扉
樫扉
諸扉
御扉
...