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きつりつ
ふりがな文庫
“
屹立
(
きつりつ
)” の例文
五六
本
(
ぽん
)
屹立
(
きつりつ
)
した
樅
(
もみ
)
の
木
(
き
)
は
引
(
ひ
)
つ
扱
(
こ
)
いた
樣
(
やう
)
な
梢
(
こずゑ
)
が
相
(
あひ
)
倚
(
よ
)
つて、
先刻
(
さつき
)
から
明
(
あ
)
かるい
光
(
ひかり
)
を
厭
(
いと
)
ふ
踊子
(
をどりこ
)
を
掩
(
おほ
)
うて一
杯
(
ぱい
)
に
陰翳
(
かげ
)
を
投
(
な
)
げて
居
(
ゐ
)
たのであるが
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
西洋の寺院は大抵単独に
路傍
(
ろぼう
)
に
屹立
(
きつりつ
)
しているのみであるが、日本の寺院に至っては如何なる小さな寺といえども
皆
(
みな
)
門を控えている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
じっとその霧の上に
屹立
(
きつりつ
)
して、シュレックホルンの鋭い岩角が、脚もとのフィルンに、蟻のように集まった私達四人を
瞰
(
み
)
下ろしている。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
たとえば
女夫
(
めおと
)
岩という二つの岩の
屹立
(
きつりつ
)
している所があると、それに接続している数町歩の田畑または村里の字をも女夫岩という。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
後
(
うしろ
)
に南支那大陸の
九竜
(
きうりよう
)
半島を控へて居る所は馬関海峡の観があるが、ピンクの
屹立
(
きつりつ
)
して居る光景は島原の
温泉
(
うんぜん
)
が
岳
(
だけ
)
を聯想するのであつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
南方数十歩には、天工の
鉞
(
まさかり
)
で削ったような、極めて
堅緻
(
けんち
)
の巨岩が、底知れずの
深壑
(
しんがく
)
から、何百尺だかわからなく、
屹立
(
きつりつ
)
している。
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
安場は
七輪
(
しちりん
)
のような顔をぐっと
屹立
(
きつりつ
)
させると同時に鼻穴をぱっと大きくする、とすぐいのししのようにあらい
呼吸
(
いき
)
をぷうとふく。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
まず
山雲
(
やまぐも
)
と戦う 時に
油然
(
ゆうぜん
)
として山雲が起って来ますと大変です。修験者は威儀を
繕
(
つくろ
)
い
儼乎
(
げんこ
)
たる態度をもって
岩端
(
いわはな
)
に
屹立
(
きつりつ
)
します。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
岳神、大慈大悲、我らに代り、その
屹立
(
きつりつ
)
を以て、その威厳を以て、その秀色を以て、千古万古天に祈祷しつつあるを知らずや。
山を讃する文
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
もし彼が貴族の家に生れ、顕栄の位地に立つべき身を以て、農民を愛撫し、誠信を以て世に
屹立
(
きつりつ
)
するに至りたる来歴を問はゞ
トルストイ伯
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
いずれも林子平の伝記や功績を記したもので、立派な瓦家根の家の中に相対して
屹立
(
きつりつ
)
している。なにさま堂々たるものである。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
姜維
(
きょうい
)
は、四十九人の武者とともに、帳外に立って、彼も、孔明の
祷
(
いの
)
りが終るまではと、以来、食も水も断って、石のごとく、
屹立
(
きつりつ
)
していた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
第三のは極地の冬空に突き立つた氷山の
尖塔
(
せんたふ
)
を現はしてゐた。北光の集まりが地平線に沿つて槍を並べたやうに密集してほの暗く
屹立
(
きつりつ
)
してゐる。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そこには理智と数学で固まっている、氷づけの結晶した「純美」があり、大理石によって刻まれた造型美術が、
立体結晶
(
キュービカル
)
の冷酷さで
屹立
(
きつりつ
)
している。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
この塔こそはヘクザ館の名物で、山岳地帯にそびえる古塔は、森林のなかに
屹立
(
きつりつ
)
して、十里四方から
望見
(
ぼうけん
)
されるという。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
平原の地平線の上に
屹立
(
きつりつ
)
し、緑の濃い風景、——と、昔の東部アングリアの、光栄と殷盛を想わしめるものであった。
暗号舞踏人の謎
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
意気
軒昂
(
けんこう
)
、不屈
不撓
(
ふとう
)
、孤岩
屹立
(
きつりつ
)
、多少めちゃくちゃな感じかもしれないがおれとしても無関心ではいられなかったさ。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
横町を左へ折れると向うに高いとよ竹のようなものが
屹立
(
きつりつ
)
して先から薄い煙を吐いている。これ
即
(
すなわ
)
ち洗湯である。吾輩はそっと裏口から忍び込んだ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「図示しましたその枝川がトウベツ川の本流と合する地点に年古りたる水松が
屹立
(
きつりつ
)
いたし、そこを基点として——」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
拱廊
(
きょうろう
)
のあいだから見あげると、青い空がわずかに見え、雲が一片流れていた。そして、寺院の
尖塔
(
せんとう
)
が太陽に輝いて
蒼天
(
そうてん
)
に
屹立
(
きつりつ
)
しているのが眼にうつった。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
奇
(
く
)
しき
因縁
(
いんねん
)
に
纏
(
まと
)
われた二人の師弟は
夕靄
(
ゆうもや
)
の底に大ビルディングが数知れず
屹立
(
きつりつ
)
する東洋一の工業都市を見下しながら、永久にここに
眠
(
ねむ
)
っているのである。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もし
往航
(
おうこう
)
ならば
先
(
ま
)
づ
左舷
(
さげん
)
の
彼方
(
かなた
)
にエトナが
高
(
たか
)
く
屹立
(
きつりつ
)
してゐるのを
見
(
み
)
るべく、
六七合目以上
(
ろくしちごうめいじよう
)
は
無疵
(
むきづ
)
の
圓錐形
(
えんすいけい
)
をしてゐるので
富士
(
ふじ
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
すくらゐであるが
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
或る大きな都会の
娯楽街
(
アミューズメントセンター
)
に
屹立
(
きつりつ
)
している映画殿堂では、夜の部がもうとっくに始まって、満員の観客の前に華やかなラヴ・シーンが映し出されていました。
気の毒な奥様
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
種子島も見ないづくだつたし、いま、眼の前に
屹立
(
きつりつ
)
してゐる屋久島さへも見ようとはしない。ゆき子にとつては、どんな陸上でもよかつたのかも知れない。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
奇怪ともみっともないともいいようのない、みじめで情ない姿なのだ。中央部から
屹立
(
きつりつ
)
する高さ二十メートルほどの煙突も、半分までを真黒に塗られていた。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
橋あり長さ数十間その尽くる処
嶄岩
(
ざんがん
)
屹立
(
きつりつ
)
し
玉筍
(
ぎょくしゅん
)
地を
劈
(
つんざ
)
きて出ずるの勢あり。橋守に問えば水晶巌なりと答う。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
(酔っていたから、ほんとうに部屋が舟のように思われた。)あたかもギリシャ彫刻にある『大言家の像』のように
屹立
(
きつりつ
)
して、両手を拡げて海の歌をうたった。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
それでも彼はなお進もうとする、その顔には残酷醜悪な色が
溢
(
みなぎ
)
っている。二人の視線ははたと合って、互に
屹立
(
きつりつ
)
したまま
深讐仇敵
(
しんしゅうきゅうてき
)
のごとくに猛烈に睨み合った。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
しかれども封建社会の精神は
巍然
(
ぎぜん
)
として山のごとく
屹立
(
きつりつ
)
するにあらずや。吾人は今日において封建割拠の結合のほかにいまだ政治上の結合なるものを見ざるなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この勢いに激して
屹立
(
きつりつ
)
するはもとより
易
(
やす
)
きにあらず、非常の勇力あるにあらざれば、知らずして流れ
識
(
し
)
らずして
靡
(
なび
)
き、ややもすればその脚を失するの恐れあるべし。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
だから
聯想的
(
れんそうてき
)
形容詞でなく、厚ぼったい匂や、ざらざらな匂や、すべすべな匂や、ねとねとな匂や、おしゃべりな匂や、
屹立
(
きつりつ
)
した匂や、やけどする匂があるのである。
触覚の世界
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
赤城と白根の間に男体山が見える、人夫の一人は男体山を富士山だかと三、四回も自分に質問した、浅間山が
盛
(
さかん
)
に噴煙している、
頸城
(
くびき
)
の平野を隔てて
妙高
(
みょうこう
)
山が
屹立
(
きつりつ
)
していて
平ヶ岳登攀記
(新字新仮名)
/
高頭仁兵衛
(著)
焼ヶ岳は、信濃と飛騨に
跨
(
またが
)
って、穂高と乗鞍の間に
屹立
(
きつりつ
)
する約二千五百メートル、日本北アルプスの唯一の活火山ですから、鳴動することはそんなに不思議ではありません。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
カンヌの町を三方から囲んで
屹立
(
きつりつ
)
している高い山々に沿うて、数知れず建っている
白堊
(
はくあ
)
の別荘は、折からの陽ざしをさんさんと浴びて、うつらうつら眠っているように見えた。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
「そこへ。」とお丹が座を示せば、老婦人の前に光子を押据え、
牛頭馬頭
(
ごずめず
)
左右に
屹立
(
きつりつ
)
せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょうど石で畳んだように、満々と湯をたたえた
温泉
(
いでゆ
)
の池である。
屹立
(
きつりつ
)
する巌のあいだに湧く天然の野天風呂——両側に迫る山峡を映して、緑の絵の具を溶かしたような湯の色だった。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
家の前方には、牧場や木の茂った長い斜面が広がり、
突兀
(
とつこつ
)
たる岩が
屹立
(
きつりつ
)
し、曲がりくねった
樅
(
もみ
)
が
崖
(
がけ
)
にしがみつき、大きく腕を広げた
橅
(
ぶな
)
が後ろに倒れかかっていた。空はどんよりしていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
脚下
(
きゃっか
)
は一
帯
(
たい
)
の
白砂
(
はくさ
)
で、そして
自分
(
じぶん
)
の
立
(
た
)
っている
巌
(
いわ
)
の
外
(
ほか
)
にも
幾
(
いく
)
つかの
大
(
おお
)
きな
巌
(
いわ
)
があちこちに
屹立
(
きつりつ
)
して
居
(
お
)
り、それにはひねくれた
松
(
まつ
)
その
他
(
た
)
の
常盤木
(
ときわぎ
)
が
生
(
は
)
えて
居
(
い
)
ましたが、
不図
(
ふと
)
気
(
き
)
がついて
見
(
み
)
ると
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
二つ目の隆起は、字クワノキ平の標木があった。食慾減退の
祟
(
たた
)
りがそろそろ現れて来たようだ。前に高く
屹立
(
きつりつ
)
した鋸山の最高点へは登らずに済むかと思ったが、どうも登らずには通れぬらしい。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
島の中央に
巍然
(
ぎぜん
)
として
屹立
(
きつりつ
)
する・蝙蝠模様で飾られた・
反
(
そ
)
り屋根の
大集会場
(
バイ
)
を造ったのも、島民一同の自慢の種子である蛇頭の真赤な大戦舟を作ったのも、
凡
(
すべ
)
て此の大
支配者
(
ムレーデル
)
の権勢と金力とである。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それが、広間のところどころに、巨人のように
屹立
(
きつりつ
)
した、数本の太い円柱をめぐって、チラチラと入乱れている有様は、地獄の饗宴とでも形容したいような、世にも奇怪な感じのものでありました。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あるひはまた浅草本願寺の
屹立
(
きつりつ
)
せる屋根を描きたる図中その瓦の色と同様なる藍と緑を以て屋根瓦を修繕する小さき人物を描きたるが如き
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
喨々
(
りょうりょう
)
たる奏楽は満堂の酔をしてさらに色に誘った。母公はふと、玄徳のうしろに
屹立
(
きつりつ
)
している武将に眼をそそいで
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酒田の本間家は現今の富豪であるが、この家号も広く出羽地方に
播布
(
はんぷ
)
しておって佐藤・五十嵐二勢力の外に
屹立
(
きつりつ
)
しているが、この家は佐渡の本間である。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
空濠
(
からほり
)
にかけてある石橋を渡って行くと向うに一つの塔がある。これは
丸形
(
まるがた
)
の
石造
(
せきぞう
)
で石油タンクの状をなしてあたかも巨人の門柱のごとく左右に
屹立
(
きつりつ
)
している。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
※クトリヤ・ピンクは湾に臨んで
屹立
(
きつりつ
)
し、
其
(
その
)
山脈は左右に伸びて山腹と
山下
(
さんか
)
とに横長い市街を擁して居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
青い
沁
(
し
)
みるやうな海原の上に、ビロードのやうにうつそうとした濃緑の山々が、晴れた空に
屹立
(
きつりつ
)
してゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
実にその物凄く
快濶
(
かいかつ
)
なる有様に
見惚
(
みと
)
れて私は湖岸の
断壁岩
(
だんぺきがん
)
に
屹立
(
きつりつ
)
して遙かに雲間に
隠顕
(
いんけん
)
するところのヒマラヤ雪峰を見ますると
儼然
(
げんぜん
)
たる
白衣
(
びゃくえ
)
の神仙が雲間に震動するがごとく
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
金華山
(
きんかざん
)
は登り二十余町、さのみ
嶮峻
(
けんしゅん
)
な山ではない、むしろ美しい青い山である。しかも茫々たる大海のうちに
屹立
(
きつりつ
)
しているので、その眼界はすこぶる
闊
(
ひろ
)
い、眺望雄大と云ってよい。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この湾はサクラ湾とはまったくおもむきを
異
(
こと
)
にし、サクラ湾のように一帯の砂地ではなく、無数の
奇岩怪石
(
きがんかいせき
)
があるいは巨人のごとくあるいはびょうぶのごとくそこここに
屹立
(
きつりつ
)
している
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
“屹立”の意味
《名詞》
屹 立(きつりつ)
山や建造物などが高くそびえ立つこと。
人が少しも動かずに立っていること。
そびえ立つように、あるいは動かずに立つように存在すること。
陰茎が勃起すること。
(出典:Wiktionary)
屹
漢検1級
部首:⼭
6画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“屹”で始まる語句
屹
屹度
屹然
屹々
屹驚
屹坐
屹水下
屹崛峨々
屹度可相立旨