始終しじゆう)” の例文
この遊歩いうほあひだ武村兵曹たけむらへいそうめいずるまゝに、始終しじゆう吾等われらまへになり、うしろになつて、あらかじ猛獸まうじう毒蛇どくじや危害きがいふせいでれた、一頭いつとう猛犬まうけんがあつた。
わたし今迄いまゝで朝鮮猫てうせんねこ始終しじゆう露出むきだしてるなんてことちつともりませんでした、眞個ほんとらずにましたわ、ねこ露出むきだすなんてこと
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「でもうちこと始終しじゆうさむしい/\とおもつてゐらつしやるから、必竟ひつきやうあんなことおつしやるんでせう」とまへほゞやうとひかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「私は始終しじゆう云つてゐたのですよ。あなたは、學問で、あの人たちをおしのぎになるだらうつてね。それから、畫はなさいますか?」
れも皆な先生の御蔭様おかげさまなんですからねエ——其れに阿母おつかさん、兼さんから消息おたよりがありましテ、私、始終しじゆう気になりましてネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
狭い可愛い車体だつたが、二等車は案外、贅沢ぜいたくな設備がしてあつた。ソファや、小卓があり、小さい扇風機も始終しじゆう気忙きぜはしく車室をかきまはしてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
このうたこゝろよ調子ちようしも、おんかさなつてゐるところからてゐるのであります。けれどもこれは、始終しじゆうくりかへされると、あき/\するものだといふことをかんがへなければなりません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かれたゞ一つでもいから始終しじゆうしるなかかならずくつ/\としかつた。しかしそれは一同みんないはときのみで、それさへ卯平うへい只獨ただひとりゆつくりとあぢはふには焙烙はうろくせる分量ぶんりやうあまりにらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
篠懸すゞかけの木よ、總大將が乘る親船おやぶね帆檣ほばしら、遠い國の戀に向ふはらんだ帆——男の篠懸すゞかけ種子たねを風に石弩いしゆみの如く、よろひを通し腹を刺す——女の篠懸すゞかけ始終しじゆう東をばかり氣にしてゐて定業ぢやうごふ瞑想めいさうする
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
或はその中に、人道的と云ふ形容詞をかむらせられるやうなものもまじつてゐるかも知れません。が、それはどこまでも間接な要求です。私は始終しじゆう、平凡に、通俗に唯書きたいから書いて来ました。
愚なる私の心得違こころえちがひさへ無御座候ござなくさふらはば、始終しじゆう御側おんそばにも居り候事とて、さやうの思立おもひたち御座候節ござさふらふせつに、屹度きつと御諌おんいさめ申候事もかなひ候ものを、返らぬ愚痴ながら私の浅はかより、みづからの一生を誤り候のみか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
こりはしですよ。蒙古人もうこじん始終しじゆうこれこしへぶらげてゐて、いざ御馳走ごちそうといふだんになると、このかたないてにくつて、さうしてこのはしそばからうんださうです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つき浩々かう/\わたりて、くはふるにはるかのおき停泊ていはくしてる三四そうぼうこく軍艦ぐんかんからは、始終しじゆう探海電燈サーチライトをもつて海面かいめんてらしてるので、そのあきらかなること白晝まひるあざむくばかりで
或る時は室の外に出て行けと命じ、つめたく、棘々とげ/\しい取扱ひをするのは始終しじゆうの事であつた。
私はう云ふお転婆、米ちやんはの通りの温柔おとなしやでせう、ですけども、うしたわけかく気が合ひましてネ、始終しじゆう往来ゆききして姉妹きやうだいの様にして居たんですよ、あゝ云ふことになる晩まで
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
このうたおそらく空想くうそうでせうが、この場所ばしよあるひはさうした景色けしきは、蓮月れんげつ始終しじゆうてゐたにちがひありません。だから空想くうそうであつても事實じじつおなじであり、むしろ事實じじつより力強ちからづよひとこゝろひゞくのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
其上そのうへ最初さいしよひと奇麗きれいいてけば、あとはふう始終しじゆう此所こゝ御出おいでにならないでもみますから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
吸鍔棹ピストンたる器械きかい上下じやうかするにしたがつて、新鮮しんせんなる空氣くうき蒸氣じようきごと一方いつぽう巨管きよくわんから艇内ていない吹出ふきだされ、艇内ていない惡分子あくぶんしは、排氣喞筒はいきぽんぷによつて始終しじゆう艇外ていぐわい排出はいしゆつせられるから
彼女は始終しじゆう書籍の中の仰々ぎやう/\しい文句を繰り返す。が、決して彼女自身の意見といふものを述べることもなく、また持つてもゐないのである。彼女は高尚かうしやうな感情があるらしく云ひたてる。
しかし好きな事にばかり夢中になり易い、又いやな事に始終しじゆう追ひけられてゐたその頃の私には、ついにそれすら果さずじまひに終りました。それだから、私のバイブルに於ける知識は非常に貧弱なものです。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)